三十歳の魔法少女   作:きなかぼちゃん

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12.作られた偶像

 

 今日は登庁する必要がないと気づいたのは、いつも通り目覚ましも無く7時に目覚めて歯を磨いている時だった。

 

 都子は洗面所でうがいをしてからリビングのカーテンを開く。無駄に広く生活感のない、高級で機能的な家具が並ぶモデルルームのような部屋の中に刺すような朝日が降り注いだ。

 

 実質小卒で魔法少女を続けてきた都子には物欲もなければ大した趣味もなく、貯まる一方の貯金は無駄に高い家具や日用品を購入することだけに使われてきた。

 

 冷蔵庫から取り出した作り置きのアイスコーヒーをグラスに入れて、リビングのソファに座るとテレビを付けた。

 丁度どのチャンネルでもニュースをやっている時間だ。若々しい男性ニュースキャスターの落ち着いた喋りが映し出される。

 

 『……昨日夕方、新宿駅に魔神が出現しました。いま現在新宿駅では戦闘により損傷した構内の復旧が急ピッチで進められています。運行再開には1週間ほどかかる見通しで、交通網への打撃は避けられない状況となっています。さてここで、昨日から大きく話題になってはいますが、今いちど魔法庁、鮎川氏のコメントをご覧ください』

 

 そして昨日、魔神を斃した直後の都子の姿が映し出された。

 テレビに自分が映るのはなんとも言えない気持ち悪さがあっていつも慣れない。

 

 都子は魔神を斃したあとの自分の行動を思い出していた。

 

 駅からすこし離れた場所、ビニールテープで区切られた大通りの検問の前で警察官と魔法庁職員たちに見張られながら戦場を伺っていたマスコミへの対応だった。普段であれば絶対に取材には答えない都子が自分からテレビカメラの前に降り立ったことで現場は騒然とする。

 

 ただそれだけで面白い画が撮れると確信したテレビカメラが都子を捉えて、都子はカメラのレンズをまっすぐに見つめた。できるだけ平坦な声音を意識して口を開く。

 

『放送をご覧の皆様、この場をお借りします。今回の戦いで2名の魔法少女が負傷しました。魔法少女たちは万能ではありません。20歳になればただの人間に戻ります。彼女たちはみなさんと同じ人間です。それでも魔法少女たちはこの国、国民の皆様のため命を賭けて戦っています。我々が魔神を倒し勝利することは当然であり、負ければ皆様を危険に晒すことは重々承知しております。ですが、傷ついた魔法少女たちにもよくやったと声をかけてあげて欲しい。どうか、どうかよろしくお願いいたします』

 

 テレビの中の都子はそう言って深々と頭を下げた。そこで画面がニューススタジオに再び切り替わる。

 

 魔法少女が魔神に倒されることによって煽られるのは国民の不安だけではなく、中にはもっと低俗なものも含まれる。

 「若くして高い俸給を税金から貰っているくせに役に立たない」というバッシングもそのひとつだ。

 

 都子がカメラの前で頭を下げたのは病院送りになった魔法少女たちがそれに晒されるのを防ぐためでもあった。

 

 まあ、私がそんな事したところでたいして効果ないだろうけど、それでも心が傷つかないようにやれることはしてあげたい。

 

 都子が願うのは魔法少女たちが無事に20歳を迎えて『卒業』することだけだ。

 魔法少女としていかようにあるべきか、なんて考えるよりも彼女たちが魔法少女を辞めてからどういう人生を歩むかを考えてあげる方が建設的だろう。

 

 生徒との接し方で悩んだ結果、都子は自分にできることの中でそれが一番マシだろうと結論づけた。

 

 見ていて面白く、なおかつ絶対に負けない。

 そのふたつを両立することが現代の魔法少女たちには求められる。

 

 戦闘不能になり足を引っ張れば真面目にやれと糾弾される。苦戦するのもよい、傷つくのもよい。ただし負けるのだけは許さない。

 

 作られた偶像(アイドル)であるために、世論は魔法少女にそんな都合のよい戦いを求める。

 

 『魔法少女が魔神を斃すのは当然である』

 

 魔法庁の技術力の向上によりそれは可能になった。

 

 そもそもただ魔神を倒すだけなら、無駄に装飾の凝ったバトルドレスなんて必要ないのだ。

 なのに近年の魔法少女たちに用意される装備は汎用画一的ではない。

 

 それぞれの魔法少女が持つ能力がバラバラだからという理由もあるが、それと同じくらい必要以上に派手な戦いを演出して世論に迎合することが必要だった。

 

 魔法少女たちだって、皆もとはただの一般人にすぎない。それをむりやり戦場に放りこむなら相応の理由がいる。

 

 できるだけ傷つかなくて、楽しく、キラキラ目立てて、ちやほやされて、承認欲求が満たせて、魔法少女をやめた後のキャリアにも有利に働く、主人公みたいな仕事。

 

 そんな『国民に愛される魔法少女』を追求した結果生まれたのが現代の魔法少女たちである。

 

 ひたすら流れる魔法少女関連のニュースにうんざりした都子はチャンネルを変えた。ちょうどごつごつした白い岩が生えた草原が映し出された。秋吉台の紹介がゆっくりしたナレーション付きで流れていく。

 

 平穏な自然風景や海外の街並みを紹介する番組をぼうっとしたまま見続けるのが都子の数少ない趣味のひとつだった。

 

 こういう番組はなんとなく平和な感じがして好きだ。BGMも少なくて、何より静かなのがいい。

 

 ローテーブルに置いたグラスは結露していて、温くなる前に飲まないとな、とふと思う。

 こんなゆっくりした時間を過ごすのはいつぶりだろう。

 

 命令違反と無許可での《消しゴム》の発動によって都子にはひとまずの自宅謹慎処分が科された。

 

 マスコミの前で大声で持論を展開したのも影響しているかもしれないが、都子は自分自身にたいした影響力などないと思っているのであんなのは些細なことだろうと判断していた。 

 

 

 

 

 やることもなく適当に食事をとりつつ、夕方までリビングでひたすらテレビを流し続けているとインターホンが鳴った。廊下の近くの壁に備え付けられた小さなモニターを覗くと見知った顔がふたり。

 

 エントランスのオートロックを開けて、ばたばたと急いで最低限の身なりを整えると都子は玄関ドアを開いた。

 

「お休み中すみません鮎川さん。その……なんといいますか……」

 

 目の前でよぞらが不安そうな顔で申し訳なさそうにかしこまっていた。その横でかつての上司がフェルトハットを脱いでいつも通りおどけた笑みを浮かべた。

 

「僕が頼んだんだよ。鮎川くんが久しぶりにやらかしたって聞いてねえ。ま、僕にだって君を心配する権利くらいあるだろうからこうして来たってワケ」

「風間相談役、それならそれで電話くらいしてくださいよ……何のお迎えする準備もできてないんですが」

「だって電話したら絶対何の心配も無いから大丈夫って言うでしょ~君は。ま、僕ひとりじゃ何だから岩村さんにもついてきて貰ったってワケです。それじゃお邪魔しますよ~」

「はあ」

 

 都子の隣をすり抜けるようにして玄関に入ってきた風間を、都子はただげんなりした顔で追いかけた。それを見たよぞらが慌てた様子で都子に頭を下げた。

 

「す、すみません鮎川さん! 鮎川さんが謹慎になって私、心配で。アアッ私程度が鮎川さんのことを心配するなんてどうかと思うんですけど。風間相談役はその、私に気を遣ってああ言ってくれてるだけでその、つまりいきなり押しかけたのはわたしのせいですから」

「ちょっと岩村さん。そういうのはね、言わぬが花ってやつなんですよ。やれやれ、相変わらずデカいくせに何も無い家だねえ~」

 

 都子が返事をする前に、代わりに廊下から遠慮を知らない声が帰ってくる。都子は肩をすくめて苦笑いすると、安心させるようによぞらに笑いかけた。

 

「アハハ、気にしないで。むしろ迷惑かけてごめんね。飲み物くらいは出せるから、何も無い家だけど休んでいって。暑いでしょ?」

「は、はい。お邪魔します」

 

 よぞらは少し安心したようで、それでも緊張した面持ちのままだった。

 上司の家に入る時点で、何も理由が無くても緊張するものだということを都子は気づかなかった。

 

「うわあ、すごい広い……」

「生活感ないよねえ。モデルルームみたいじゃないの。高い家具揃えるならもう少しこだわった方がいいと思いますけどねえ」

「えっ、いやいやそんなことは」

 

 リビングに入ったよぞらが呟くと風間が茶々を入れた。はっとして口を手で抑えたよぞらを見る限り、同じようなことを考えたらしい。

 

「風間相談役、文句ならここ借りてる総務課に言ってくださいよ。私は別にこんな広い部屋必要ないんですが。基本寝るだけですし」

「ちょっと鮎川くん。岩村さんもだけど、勤務外の時くらい役職付けて呼ぶのやめない? そもそも相談役なんて嘱託でしかないんだから、立場的には君よりずっと下なのよ」

「それはそうですけど今更すぎますよ……」

 

 風間は子供の時からずっと都子たち魔法少女の直属の上司だったし、都子もそのつもりで接していた。今更自分より偉くないのだと言われてもはいそうですかとは返せない。

 

 すると風間は大袈裟に顎に手を当てて考えるそぶりをした。

 

「ふむ、それならこれから僕は君のことを鮎川隊長と呼ぼうかなあ」

 

 ゲッと声が出そうなのをすんでの所で都子は我慢した。

 

 それはマジで嫌だった。なんか気持ち悪いし、風間さんが「隊長」と呼ぶならそれは静ヶ原先輩のことを指す。

 

 かつての第一次魔法少女連隊隊長。《停止》の魔法少女と呼ばれた静ヶ原萌花(しずがはらもえか)。18歳で魔法少女として徴用され、最年長だった萌花は冷静かつ広い視座を持っていたこともあり、連隊10名を率いる隊長に任命された。

 

 都子はかすかに昔を思い出す。切れ長の瞳が印象的な、常に理を説く人だった。

 

『あいつらだって生きてるんだから死ぬのよ。神でもなんでもない。私達と同じちょっと変な力があるだけの生き物でしかない。そうでしょ。だって小娘がたった10人集まっただけで殺せるんだから、そんな大したものじゃないはず。そう考えたらちょっとは気が楽になるんじゃない?』

 

 言って、怖くてべそかいてばかりの私を理屈で諭してくれたのをよく覚えている。表情が薄くて怖い時もあったけど、泣いて怖がるのを責めることもない、ただ慰めることもない。けして感情論には傾かない人だった。先輩ほど素晴らしい「隊長」に私はなれない。

 

 都子はよぞらをちらりと見やった。

 何にしろ命令違反のせいで岩村さんを振り回してるのは私だ。

 

 風間さんが「隊長」と呼ぶと、どうしても静ヶ原先輩がちらつくし、自分がそれにふさわしくないような気がして気持ちが悪くなる。

 

「はぁ……すみません。風間さん」

「まあよろしいでしょう。僕は昔みたいに呼んでくれるほうが好みだけどねえ」

「前も言いましたが私もいい大人なので嫌です。ふたりともコーヒーでいいですか?」

 

 都子はふと思った。家に誰かを招くなんていつぶりだろう。 

 

 

 

 

 ソファに座って3人でローテーブルを囲むと、都子はちょうど気になっていたことを聞くことにした。

 

「岩村さん、仕事は大丈夫? わたし謹慎になっちゃったから1番隊に行く仕事の対応全部任せっきりになっちゃってると思うけど、ホントにごめんね」

「隊の仕事はそもそも鮎川さんしか対応できないのもありますし、私の方は大丈夫です! 安心してください。ただ、その……木戸先生から伝言ですが「アタシたちの授業時間が増えるっぽいから帰ってきたら一杯付き合いなさい」だそうです」

「あ~……そっちがあるか」

 

 都子は天井を仰いだ。魔法少女たちの教室ではカリキュラムに戦闘訓練が含まれる。もちろん戦闘訓練は都子以外に担当者がいないので、その分の授業時間はまるまる空白となる。それを補填するために他教科の担当者の負担が増えているということなのだろう。

 

「それより岩村さん、鮎川くんに言いたいことがあるんじゃなかったんですか」

「えっ、その……先ほど申し上げたあれはですね……」 

 

 意地悪そうに風間が話を向けると、よぞらはおっかなびっくりした様子でふたりの顔を交互に見た。何か都子の与り知らない話をここに来るまでにしてきたらしい。

 

 もしかして何か不満があるのかもしれない。都子は内心どきりとした。

 激務過ぎて辞めたいとか、わたしが頼りなさ過ぎるとか、謹慎になる隊長はヤダとか、いや全部私のせいだしダメなんだけど、そういうことじゃないよね!?

 

「言うべきことは上司であっても言わないといけませんよ。それは君自身のためでもありますから」

 

 風間は安心させるようににこりと人好きのする笑みを浮かべた。

 それを見て決心したのか、よぞらは小さく深呼吸する。

 

 そして内心どきどきしている都子と目を合わせると、目の前にズビッと右手の指を三本立てた。都子は意味がわからず目を瞬かせる。

 

「ちなみに私は3ヶ月減給になりました!」

「えっ」

「鮎川さんはああ言いましたけど、全部隊長のせいにしてシラを切るなんてできるわけないじゃないですか。そんなことしたら私が私を許せなくなります」

 

 流石に『全部私のせいにしろ』は無茶振りだったかと都子は反省した。

 

「えーっと……ご、ごめんね。岩村さんのカットされた分の給料わたしが立て替えるから……」

「そういうことを言ってるんじゃないです!」

 

 よぞらは語気を強めた。都子はびっくりしてほんのすこしのけぞった。ここまでよぞらが強い口調になるのを初めて見たからだ。

 赤い眼鏡越しによぞらの強いまなざしが都子を射貫いた。

 

「もっと私を信用してください。桜班の隊員である以上、私は鮎川さんの指示に従います。それでもあそこはああいう風に言って欲しくなかったです。ごめんけど一緒に処分されてくれ、くらいのことは言って欲しかったですよ。私は鮎川さんの重荷にはなりたくありませんから」

「そ、それはどうなんだろう……?」

 

 都子は少し引き気味に呟いた。

 

 それはそれでどうかと思う。岩村さんはなんだかちょっと私に入れ込みすぎているところがある気がする。私のせいでキャリアに傷を付けて欲しくはないんだけれども。

 

 都子は助けを求めるように風間の顔を見たけれど、当の本人はやれやれと肩をすくめるばかりだった。

 

「この間、任せられるところは人に任せて適当にやんなさいって言ったんだけどねえ。どうしても君はなんでもかんでもひとりでやりたがる癖が抜けない」

「それは……! 今回の戦いだって下手したら犠牲が出てたかもしれないんですよ」

「笹川くんの件については正しいよ。君が救援に行ったのは正しい判断。でもレベル4をひとりで倒したのは君のワガママなんじゃない?」

 

 見透かすような風間の瞳が都子をとらえた。いたたまれなくなり思わず目をそらす。

 あれは確かに魔法少女たちが成長するための戦いだった。その機会を私が奪った。

 そう言われても仕方がないかもしれない。でも、それでも。

 

「っでもわたしが、わたしたちがこれからも危ないヤツは全部倒せばなんとかなるって。今までだってずっとそうして」

「鮎川くん」

 

 伸ばされた風間の手が都子の肩に置かれていた。それは懐かしい感触だった。

 かつて子供だった自分を勇気づけてくれた大きな手はいつしか小さく見えて皺のある手に変わっていたけれど、その感触だけは昔と同じだった。

 

「心配なのはわかるが、もう少し他の人を信じてあげなさい。他の魔法少女たちのことも、もちろん岩村くんのこともね。色々と思うところもあろうが、全てを君ひとりに背負わせる時代じゃあない。まあ、かつて君にひとりで戦い抜くことを強いてきた僕が言えることじゃないけれども」

「それは風間さんのせいじゃ……」

 

 風間修二は最も多くの魔法少女を死地に送り込んできた人間である。だがそれは本人が望んでそうしたわけではないことを、部下であった魔法少女たちは皆知っていた。望まずとも少女たちに死んでこいと言えるからこそ、魔法少女の指揮官として選ばれたのか。

 

「それが僕の責任というものだよ。僕は君たちに対して大きな責任がある。今じゃあただの相談役だけれども、君のためにやれることは何でもやるさ。ま、君から見たらこんな老人で頼りないかもしれないけどねえ」

「私ももっと頼ってください! 戦うことはできないですけど、鮎川さんのいちばん近くにいるのは隊員の私ですから!」

 

 ふたりして元気づけてくるのを見て、都子はなんだかおかしくなって笑った。

 こんな風に思ってくれる人がいるだけで救われている自分がいた。

 いや、余裕がなさすぎて私が見てなかっただけで、もともといてくれたのだろう。

 

「あと今回の謹慎処分はそれほど長くはならないと思うよ。色々と悪いようにはならないようにしておいたし、理不尽な命令も少しは減るんじゃないかな。怪我の功名ってことでね」

「えっ」

 

 都子とよぞらが同時に風間の顔を見た。本人はどこ吹く風で飄々とした調子に戻っている。

 元次長とはいえ、相談役にそんな根回しできる権力が残っているんだろうか。

 

「風間さん、相談役になったんじゃ……」

「まあそこはね、あの手この手が僕にも残ってるってことで。要は魔法庁は一枚岩じゃないのよね。今はお上の介入とかもあるから。その中で今回の一件は魔神を侮りすぎている一派への牽制にもなり、パワーバランスを元に戻すきっかけになったわけです。だからそこまで悪いことばかりじゃないですよ」

「なんか聞いちゃいけない部分な気がしてきました」

「ええ、ええ。岩村さんは是非そのままでいてください」

 

 よぞらが両手で耳をふさぐと、風間はわずかに口角を上げて笑った。そして都子に向き直る。

 

「こんな内部のゴタゴタで君の足を引っ張ることはしちゃいけないんだけどね。魔法少女の社会的意義を追求するうちに着地したのが今の状況。ま、時代だよねえ。うちの娘も板挟みで苦労してるみたいだよ」

 

 風間はそう言うとあてもなく窓の外の空を見やった。

 その様を目で追いながら、都子はレベル4が現れた当日の亜矢とのやりとりを思い出した。

 

「娘も娘で考えてることはあるんだろうけども。器用に見えて不器用だからねえ」

「大丈夫ですよ。亜矢の思ってることはわかってるつもりですから」

「そう? 大丈夫? うちの娘いつの間にかスッゴイ堅物で薄情になっちゃってさあ。副司令になってからはもう全然連絡もしてこない。昔はお父さんお父さんってくっついてたのにねえ~。ったくキャラ変しすぎじゃないかなあ? 鮎川くんもそう思わない?」

 

 大げさにため息をつきながら寂しそうに言う風間を見て都子はくすりと笑った。

 そして薄々思っていたことがある。

 

 亜矢が私を強く突き放したのは、あえて不満を抱かせて万が一の時に強行出撃させるためだったんじゃないだろうか。

 

 都子は亜矢が上層部と現場の板挟みで苦労していることをそれなりに察している。都子の出撃頻度が減るにつれてふたりは疎遠になっていった。上層部から煙たがられている都子と個人的に強い結びつきがあるという事実は亜矢が出世するための足枷になっていたのかもしれない。

 

 まあ「あなたがそう思いたいならそれが答え」なんてあいつは言いそうだけど。

 上の声を気にしなくていいくらい出世したなら、きっとまた昔みたいに話せるだろうか?

 

「大丈夫ですよ。キャラ変しても薄情にはなってない、と思います。多分」

「そう? 娘のこと全然わかんないんだよねえ僕」

 

 風間はそう言うと困ったような顔をして頭を掻いた。心底悩んでいるように見える。

 いつもおどけているところばかり見ていた都子は意外に思った。

 

 この人も娘のことで悩むんだなあ。

 

 

 

 

 ちょうど都子の謹慎処分は1週間後、新宿駅の仮復旧が完了したのと同じ時期に解除された。

 

 都子が学校に出勤して早々、『サポート系の魔法少女でありながら、ふたりの魔法少女を庇いながら魔神に立ち向かった』画がネットニュースで大きく取り上げられて人気が出てしまった日菜乃から、げんなりした顔で「ネットを見るのがしんどい」「取材受けたくない」と相談を受けたのはまた別の話である。

 





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はじめてのオリジナル小説というのもあり手探りな部分ありますが、質問にもできるだけ答えていきたいと思います。
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