冥王来訪(ハーメルン投稿版)   作:雄渾

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 完成した新マシン、グレートゼオライマー。
マサキは、木星での秘密試験を行うことにした。


孤独(こどく)(たたか)
威力(いりょく)偵察(ていさつ) 前編


 太陽系最大の惑星、木星。

その星は大きさが地球の11倍、質量が地球の320倍ある巨大ガス惑星である。

主に水素やヘリウムで構成されており、絶え間なくジェット気流によって大気が揺れ動いている。

また、非常に強い磁場を持っているため、北極や南極の周辺でオーロラが発生する。

 現在、木星には92個の衛星が存在し、その数は土星の146個に次いで多い。

とくに大きい衛星、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト。

この四つを指して、ガリレオ衛星と称する。

これは、1610年に、科学者・ガリレオ・ガリレイが発見したためである。

 まず最大の衛星・ガニメデは、直径5260キロメートル。

これは水星よりも大きく、また表面は氷に覆われていて、内部に海を有すると想像されている。

 次に氷の衛星・エウロパ。

ガニメデと同様に氷天体と呼ばれ、氷で覆われた衛星である。

 そして、火の衛星・イオ。

木星に最も近い天体で、絶えず木星からの潮汐力(ちょうせきりょく)*1によって影響を受けている。

その潮汐力によって、天体内部が溶け、活発な火山活動が起きているとされる。

2016年から運用中の木星探査機「ジュノー」では、赤外線カメラによって、赤く光っているのが確認できるほどであった。

 

 マサキは、グレートゼオライマーの実験場として、このガリレオ衛星を破壊することにした。

木星本体は強力な磁場から、恐らく着陸ユニットは到達できていないであろう。

そして、衛星イオは活発な火山活動の為、ハイヴ建設には向かない。

 そうすると、エウロパ、ガニメデ、カリスト。

この三つの衛星に、BETAの前線基地があるはずだ。

 BETAに感づかれずに、その惑星を壊す方法はないか……

それはグレートゼオライマーの新しい必殺技である、烈・メイオウ攻撃を浴びせるしかないのではなかろうか。

そういう結論に達した。

 

 さて、マサキといえば。

彼は、朝五時というのに各務原にある岐阜基地の格納庫に佇んでいた。

 ゼオライマーを駐機させておく格納庫は、全長200メートルを超える巨大なものであった。

全高70メートル、幅95メートルで、箱型の形状をしており、観音開きの大戸が備えてあった。

 これは飛行船の格納庫を流用したものである。

飛行船は、第一次大戦から第二次大戦前までの戦間期の航空偵察の主力であった。

 その巨大な倉庫には、二体の巨人の姿があった。

それは、まるで寺院の山門の左右に安置した金剛力士像の様に格納庫の左右に自立していた。

 

 マサキは、二体のスーパーロボットの姿を、感慨深げに眺めていた。

右手には、愛用のタバコ「ホープ」を、左手でコーラの瓶を、それぞれ持ちながら。

 グレートゼオライマーの姿にウットリしながら、コーラで唇を濡らす。

 完成までに、2年近くかかったが、こうして一応形になると何とも言えない気持ちである。

8個の特殊装備の内、4つに限定したのも完成を早める原因になったろう。

 何よりも、これでこの宇宙を自在に飛び回れるマシンが完成したのだ。

甘いカラメルと炭酸の味は、どんな美酒よりもうまく思えた。

 

 グレートゼオライマーの飛行試験は、深夜に行われた。

例の如く、マサキは美久と共に、単騎で高高度の飛行試験を行う名目で基地を飛び立った。

高度2万メートルまで上昇した後、木星近辺に転移した。

 漆黒の闇の中に浮かぶ、巨大なガス惑星。

水素とヘリウムによる、幻想的な階調と複雑な模様。

まるでそれは、天下の名品である曜変天目(ようへんてんもく)の茶碗を思い出させてくれる。

 俺は、人跡未踏の木星まで来たのか。

マサキは、かつてない最高の充足感に浸っていた。

 このグレートゼオライマーの特殊武装を使いこなせれば、地球を、太陽系のすべてを俺の物にするのはたやすい。

これさえあれば、BETA抹殺の夢も、夢で無くなろう。

またとない精神的な満足感に、一人涙を流していた。

 

 まず試験は、両足にある54セルのミサイルで行われた。

近距離防空用24セル、遠距離防空用30セルの核弾頭搭載ミサイルが一斉に衛星ガニメデの地表に向かって放たれる。

 事前の赤外線レーダの探査で、およそ1000万のBETAが群生していることは確認済み。

遠距離用弾頭は、およそ1万メガトン*2

近距離用弾頭は、15メガトン。

15メガトンとは、広島に投下された原爆に相当する威力である。

 搭載された核ミサイルは、すべて別次元から転移される仕組みになっていた。

それ故にどれだけの量を使おうと、機体のエネルギーが尽きない限り、無限に攻撃できた。

 広範囲の核攻撃は、突撃するしかないBETAにとって、効果的であった。

木星の衛星では、ハイヴ建設以来攻撃を受けていなかったので、光線級が存在しなかったのだ。

 

 

 ガニメデの地表面に降りるとBETAの大群は、畢生(ひっせい)の勇猛をふるって、無二無三猪突してきた。

 核の熱で、ガニメデの表面を覆った氷が解け、一斉に大量の水が周囲を覆う。

戦車級、突撃級、要塞級などは、氷を蹴り、霜にまみれ、真っ白な煙を立てて、怒涛の如く、ゼオライマーに接近してくる。

その矢先である。

「ルナ・フラッシュ!――」と一声、わめき、レバーを引く。

グレートゼオライマーの指の先から、超高速で光の弾が放たれていく。

 ルナフラッシュとは、ローズセラヴィーに搭載された連射式のビーム兵器である。

欠点は一斉射撃のたびに、充電せねばならぬことであったが、次元連結システムのおかげで無限に射撃が可能となったのだ。

 たった一回の射撃だけでも、何万というBETAが忽然地上から消え失せた。

水しぶきをあげ、ごうッと、凄まじい一瞬の音響とともに、その影が見えなくなった。

 

 開いていた指を閉じ、手刀の形に変える。 

その際、指先から放たれるビームが収束され、一本の刃の様になった。

「受けるが良い。この冥王の力をな」 

 要塞級めがけて、戛然(かつぜん)一閃(いっせん)の刃がおりてきた。

どうかわす間も受ける間もない。

要塞級は真っ二つになると、血煙を噴いてすッ飛んだ。 

 

「美久、あれを使うぞ。射撃体勢への準備に入れ」

「わかりました」

 その言葉と同時に、背中に搭載されたクワガタの形をしたバックパックが中空に飛び上がる。

ほぼ同時に腰の左右にあるフロントアーマーが胸のあたりまで跳ね上がる。

草摺(くさずり)型のフロントアーマーは90度回転し、垂直に向きを変える。

機体の正面に降りてきたバックパックは、フロントアーマーから両脇を挟まれる。

ガチャンという鈍い金属音が響き渡ると同時に、バックパックが正面に接続された。

 その瞬間、グレートゼオライマーの目が、漆黒の闇に不気味に浮かび上がった。

それは中・遠距離用エネルギー砲への、変形完了の合図でもあった。

「チリ一つ残さず灰にしてやる、BETAどもめ。

このジェイ・カイザーでな!」

 発射口にエネルギーが徐々に充填されていく。

充填完了のランプが操作盤に付くと、右の操縦桿を目いっぱい自分の方に引き寄せる。

「こいつから逃げられると思うな」

 忽然と、堰を切られた怒濤のごときものが、グレートゼオライマーの目の前にへなだれ入った。

しかし、すでにそのときBETA勢は完全に逃げる道を失っていたのである。

砲声は、瞬時の間に起って、BETAの大半を殲滅(せんめつ)した。

 

 ビーム砲の一撃で、怯むBETAの軍勢ではなかった。

地は鳴る。音は響く。

 濛々と土煙を上げて、あたかも堰を切って出た幾条(いくすじ)もの奔流の如く、BETAの全軍は、先を争って、マサキの元へ馳けた。

100万を超える大群が攻め寄せるも、マサキは平然としていた。

 その瞬間、機体の後方にあるバーニアを全開にし、上空に飛びあがる。

木星の強力な磁場すらも、グレートゼオライマーの機体には影響は与えなかったのだ。

「プロトンサンダー!」

 オメガ・プロトンサンダーとは、雷のオムザックに搭載した原子核破壊砲の改良版である。

米海軍第7艦隊を一撃で殲滅した、このエネルギー攻撃はマサキの手によって強化されていた。

 範囲、威力ともに8倍に増強され、100万の軍勢は一瞬に消えた。

木星のBETAは抵抗力を持たず、グレートゼオライマーの敵ではなかった。

 

 すでにガニメデでの激烈な戦闘は、3時間近く経とうとしていた。

徐々に疲労を感じ始めていたマサキは、左の袖をめくりあげ、腕時計を覗き見る。

 日本時間では、深夜2時過ぎか……

そろそろ戻らないと、明日に影響しよう。 

「美久、仕上げにかかるぞ。例の新必殺技を使う」

「本当ですか」

「せっかく人的被害の及ばない木星まで来たのだ。今更、何をためらう必要がある」

「それは……」

マサキのストレートな物言いに、圧倒された美久は口ごもった。

「このグレートゼオライマーから撃つメイオウ攻撃がどれほどの威力か……

正直、私でも想像できません」

 困惑する声を上げる美久をよそに、マサキは不敵な笑みを浮かべる。

妙に含みのある笑いだった。

「破壊範囲も、ジェイカイザーやプロトンサンダーの威力から推定して……

通常のメイオウ攻撃と比べ物にならないでしょう」

 人造人間(アンドロイド)として、副操縦士(サブパイロット)として、アベックとして。

口に出せない美久の心情が、マサキにはよくわかる。

 こんなものでは手ぬるいのだ。

 もっと驚かせてやるぞ……

 美久の当惑ぶりを見るのは、マサキにとって大きな悦びである。

マサキは操作卓に並ぶテンキーを、素早くブラインドタッチした。

「フハハハハ、だからこそ。

BETA事木星の衛星を全て壊して、新必殺技の威力を全世界に喧伝する必要があるのさ」

 それまで垂れ下がっていた機体の両腕が、胸の位置までゆっくりせりあがって来る。

ほぼ同時に、目と胸と両方の手の甲にある宝玉が、漆黒の宇宙の闇の中で煌々と光り輝いた。

グレートゼオライマーの機体は、射撃指令を今や遅しと待っている。

「化け物どもめ、グレートゼオライマーの真の力を思い知るがいい」 

マサキは叫びつつ、いっそう攻撃の準備を早める。

「出力全開」

 メイオウ……

なんとも恐ろしい音がして、胸と両腕の間から光が噴出した。

それは、グレートゼオライマーの新必殺技、「烈・メイオウ攻撃」である。

 今までこんな攻撃をしたことがないのに……

すさまじいまでの衝撃の波が、機体の内部にいる美久の電子頭脳を忘我の境地にさらっていった。 

 

 烈・メイオウ攻撃の一撃は、文字通り強烈だった。

一瞬にして、衛星ガニメデを崩壊させ、宇宙空間からその姿を永遠に消し去ってしまった。

 ショックと感動が同時に美久を襲った。

受ける爆風は操縦席さえ振るわせるのに、飛び切り上等の興奮が次々に沸く。

 もはや美久には、BETAへの攻撃の躊躇などなかった。

むしろハイヴごと、惑星ごと破壊することに喜びさえも覚えた。

 「烈・メイオウ攻撃」の攻撃が木星の各衛星にぶつかると、衝撃波が一気に機体に浴びせられた。

美久は、夢の世界を漂うような心地がした。

「今のは次元連結システムのちょっとした応用にしか過ぎない。

本当の力は、まだまだ、これからだよ……」 

 グレートゼオライマーの操縦席から聞こえるマサキの声を聞いたとき、美久は不安に思った。

木原マサキという底しれない野望を持つ男との関係が、いつまで続くのだろうか。

ぼんやり考えながらも、ゆっくりと機体を動かして、木星の空域から離脱して行った。

*1
強い重力

*2
100億トン




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