冥王来訪(ハーメルン投稿版) 作:雄渾
気が付くと宇宙怪獣・BETAが暴れる異世界に来ていた。
赤色支那政府からの依頼に応じて、BETA退治に関わる彼の真意は……
ここは、支那、
暗くかび臭い資料室の中で、木原マサキは、この世界について調べていた。
うずたかく積まれた書類の山に埋もれる様にして、思慮に
まず、気に為ったのは故国、日本。
国家元首の皇帝*1。
そのほかに、
そして将軍を
三軍の他に、
日本語の資料を手に取りながら、ふと独り言を漏らす。
「不合理な社会制度をしているな」
資料から判ったのは、異世界に来てしまったということだ……。
19世紀中葉までの大まかな歴史の流れは一緒だが、細部が違う異世界。
おそらく次元連結システムの影響で、本来の世界や次元を超越してしまったのだろう。
次に、気になったのは航空機だった。
大型旅客機や爆撃機はあるが、戦闘機は写真資料や文献から類推すると元の世界より発達が止まっている。
あっても、1950年代までの水準。
先日説明を受けた『
あるいは、戦術歩行戦闘機とよばれるロボットの開発の為に、航空機分野の発展は遅れてしまったのだろうか。
実物を手にしてみて構造や性能を理解してみないと結論は出せないであろう。
そう考えていると、兵士が呼びに来た。
案内する兵士の後ろで、マサキはつらつらと、中共政権と人民解放軍の事を考えた。
ここの司令官が呼んでいるのだという。しかし、人民解放軍の制度はよくわからない。
何せ、階級制度を廃止*2した為に、誰がどの役職で、どの様な立場に居るのか、不明だ。
精々分かるのは、制服の色から三軍の違いと、上着のポケットの数で指令員*3と戦闘員*4を判別することぐらいだ。
これでは現場指揮官が戦死したときに、誰に引き継ぐかも決められていなくて混乱したのであろう。
おそらくカシュガルに飛来したBETAへの対応が遅れて、核爆弾投下やソ連軍への協力要請が遅延した。
それは、プロレタリア独裁の負の一面のが強く作用した為であろうと、類推できる。
時間を置かず、飛来したBETAへの対応に、米軍は核攻撃を以てして成功していることを鑑みれば、そうであったと考察できる……
そのような思いを巡らせているうちに、呼ばれていた指揮所へたどり着いていた。
紫煙が立ち込め、騒々しい戦闘指揮所に着くなり、司令官がいる席に案内された。
その席に近づくなり、椅子に座った男が立ち上がって敬礼をしてくる。
ぎこちない動作で敬礼を返すと、折り畳み椅子をすすめられたが、そのまま立ち続ける。
脇から通訳やら事務手続きをする人間が集まってきた。
その様にしていると、司令官という男は着席し、彼から通訳越しに告げられた。
「本来ならば、外国人であるあなたには命令する権利はありませんが、今回の作戦へ協力をしてほしいのです」
これは命令ではなく、要請ということか。
木原マサキは、不意に微笑んでしまった。
(『あの時と一緒か』)
中共政権の低姿勢ぶり。
それは、かつて前世で、ゼオライマーの出撃を日本政府から要請という形で促されたことに重なって見えた。
彼は椅子に座るなり、足を組んで、どこからか用意された熱い茶を飲む。
しばし沈黙した後、答えた。
「いいだろう、だが俺の好きにやらさせてもらう。
そして今回の作戦が終わったら、ここから出ていく」
その場に沈黙が訪れた。
周りで作業していた人間が立ち止まり、こちらを見ている
けたたましい音を立てながら電話が鳴ると、再びその場の静寂は破られて、元の状態に戻っていった
司令官は口つきタバコ*5を、勧めてきたので受け取る。
冴えぬ顔色の男は、紫煙を燻らせながら、再び口を開いた。
「条件については私の方で留保しておきます」
マサキは、タバコに火を付け、目の前の男に尋ねる。
「では、何をしてほしい。単純に言えば……」
「戦術機と合同で、光線級の注意を引き付けてほしいのです。
光線級さえ排除できれば、砲弾で対応できるので、十分です」
言葉を選びながら慎重に、マサキの質問に答えた。
マサキは、机の上にある引き延ばした写真を、指差す。
「もう一つ尋ねるが、この構造物はどうするんだ」
彼が構造物と呼んだもの。
それはBETAが、地上に建設したハイヴと呼ばれるのもの。
カシュガルの他に、全世界に今のところ4か所ほど。
ソ連のウラリスク、ヴェリスク、ミンスク、イランのマシュハド。
それらは大本をたどると、すべて新疆のカシュガルにある『甲1号目標』とか『H:01』などと称されるハイヴにたどり着くという。
男は、灰皿に吸いかけのタバコを投げ入れ、新しいタバコに火を付けながら続けた。
「出来るものなら、その存在を消してほしい。出来るものならば……」
茶を飲むと、立ち上がって右手を、マサキに差し出してきた。
飲みかけの茶を置いて、マサキも立ち上がり、
「大体の話は分かった。ゼオライマーのできる限りをを尽くすとしよう……」
と、右手を差し出して応じた。
男は、厚く太い指をした手でしっかりと握手をすると、敬礼をして、部屋を出ていくマサキを見送った。
作戦開始の号令とともに、砲撃が始まった。
砲撃と並行するように戦術機部隊に出撃が命じられ、同様にゼオライマーへの出撃も打診される。
全長50メートル近いゼオライマーは、先行する戦術機部隊に追随したが、段々と速度を落として距離を放されていた。
前方投影面積が一般的な戦術機の二倍以上ある、この機体ではレーザー光線や誘導兵器の直撃を受けやすく、近接する兵器への二次被害を避けるためである。
もっと次元連結システムの応用によるバリア機能があるが、それを極力
前回、BETAとの遭遇戦の際は、メイオウ攻撃によって一網打尽にしたことと、深夜であった為、十分な視認をしなかったのだが、今回の作戦は日中。
マサキは、この世界に来てから初めてBETAの姿を見た。
薄気味の悪い昆虫のような姿をした化け物が、無数に
先行する部隊と砲撃によってだいぶ数が減らされてはいるが、近寄れば群れになって絡みついてくる厄介な存在。
部隊の隙間から抜けて近寄ってくるBETAを、両腕の次元連結砲から繰り出されるビームと衝撃波で蹴散らす。
だが、数が多すぎた。
(『これでは時間が掛かり過ぎる』)
その刹那、目の前にいたBETAの群れが左右にひき始め、先行する部隊も散開し始める。
直後、ゼオライマーにレーザーが照射され、数秒のうちに連続してレーザー光線が発射された。
「避けろ、大型機!」
先行部隊の隊長が通信を入れると同時に数十発のレーザーが直撃し、ゼオライマーが焼失したかに見えた。
「いくら大型でも、間に合わなかったか……」
悔しい思いをしていても仕方がない……。
彼はそう考え、光線級へ、突撃砲の連射を続けた。
戦術機隊が攻撃するよりも早く、連射される光線により、仲間の機体はどんどん数を減らしてゆく。
今のところ、距離を保ちながら後退をしているから、戦死者は思ったより少ないが、動ける機体が減りつつある。
まるでBETAが
動ける機体が間隙を
彼の脳裏に、これまでの戦闘で無残に散っていった同士のことが
「これまでか……」
大型の群れの真下が光り輝き、巨大な機体が表れた。
白磁色をした機体が地上に飛び出し、ザっと血煙を浴びながらBETAを薙ぎ払う。
仁王立ちするゼオライマーは、BETAの集団の方に振り向くと、即座に両腕を胸に押し当てる。
胴と両腕にある、三つの球体が発光すると、同時に
強烈な閃光と衝撃波が、BETAのみならず、周辺に居る戦術機隊にも降り注ぐ。
爆風と付随する振動によって近接する数機が横倒しになり、計器類も狂ってしまった……
けたたましい警報音によって、混乱する。
操縦席より脱出して、敵陣を走破しなくてはならない……。
そう考え、座席に仕舞ってある自動拳銃の準備をする。
弾倉に7発、クリップに止めた予備弾が2列……。
拳銃の確認をしている間に、数度の閃光が
彼は諦めて右手に拳銃を握ると、機外に脱出する。
そして急いで横転している僚機のそばへ駆け寄った。
僚機は、両腕が爆風でもがれ、全身にBETAの返り血がこびり付いている。
右手で警戒しながら、左手で機体をたたくと返事が返ってきた。
どうやら仲間は無事らしい……。
操縦席の扉が開くと、頭から血を流した衛士が出てきた。
圧縮包帯包を投げ渡し、周囲を警戒してると数名の衛士が駆け寄って来る。
多少怪我をしている者もいるが、奇跡的に無事だったようだ……
衝撃で、ほぼ全ての手段_無線連絡_が壊れたので、信号弾の準備をしながら警戒する。
しかし30分近く経つが、BETAが寄ってこない。
緊張と砂漠の日光で、喉が渇く……。
「不気味だ」
僚機の衛士は、仲間に応急処置をされながら、不安な面持ちで、こう呟いた
「俺もだよ。
奴らが寄って来ないなんて、不思議じゃないか」
双眼鏡で周囲を警戒する衛士が、叫んだ。
「車が来たぞ」
猛スピードのオートバイに先導された、古いソ連製のジープが、2台が近づく。
戦術機から降りた衛士達は、車に乗り込むと、その場を後にした。
(2023年11月5日10時改稿)
どの様なご感想でも、お待ちしております。
また暁の方でも構いません。どうぞ忌憚なき意見お願いいたします。
脚注やフリガナに関して
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脚注の数が多すぎる
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脚注の数が少なすぎる
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フリガナが多すぎる
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フリガナが少なすぎる
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現状維持のままでよい