冥王来訪(ハーメルン投稿版)   作:雄渾

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 米軍の新兵器作戦を聞いたソ連は恐るべき兵器を完成させた。
マサキが知らないソ連の内部で起きた秘密作戦とは……


作戦(さくせん)前夜(ぜんや)

「ひさしぶりじゃないか」

「みんなこそ、元気で何よりだ」

「早速だが、そちらに不穏な動きがあるというのは本当か」

「久しぶりの再会に悪い知らせで申し訳ないが、米軍がリバモア研究所にコンタクトを取り始めたらしい」

「どういうことだ?」

「詳しい確認はまだなんだが、とてつもない戦力を月に送り込むらしい」

「とてつもない戦力?」

「つまり、現在の我々の戦力を脅かすほど強力なものだと」

「その通りだよ。是が非でも阻止しなければ、我々が危ない」

「それで、情報が確実だとして、我々の対策は?」

「敵の戦力を阻止するためには、電磁投射砲の強化を図るしかない。それも、できるだけ早くにだ」

「それができれば最高だ。それをするためには……」

「製造に必要な特殊金属は、すでに海軍側で手配してある」

「いつ届く?」

「私が部隊に戻り次第、船で送る。すでに同志ゴルシコフ提督の承認も取ってある」

 そう言って、男はマイクロフィルムを渡した。

「これが組み立て図面だ」

「ありがたい。そこまでそっちで準備してくれたとは……さすがだよ」

     

 米軍による月面ハイヴ攻略を三か月後に控え、ソ連は無策ではなかった。

極東シベリアにあるスヴォボードヌイ基地では、すでに三か月前から、その準備が着々と進められていた。

 同基地の司令官執務室には、将校と政治将校の一群が集められていた。

整列する彼らを前に、司令官の声が皆の耳朶を打つ。

「ヴォールク連隊の同志諸君。

首都防衛の任も果たせず、二度もゼオライマーに敗れた諸君らは、本来ならば裁判にかけられるところだ。

それでもこうして許されたのは、同志議長の特別な計らいによるものだ。

ソヴィエトのために、心して働くがいい」

「はい。承知しました」

「では、改めて参謀本部から下された重大任務を与える」

「光栄に存じます」

「あれを見ろ」

 そこには、見たこともない新型戦車が何両も並んでいた。

従来の戦車と比べても車高が異様に低い。わずか一・七五メートルほどしかない。

「……ずいぶん低い戦車ですな」

 司令官はぶっきらぼうに答えた。

「RT-1だ。無人戦車だよ」

 その向こうには、別の車両とともに数機の戦術機が並んでいた。

戦術機の手に握られているのは、通常の突撃砲とは明らかに異なる巨大な兵器だった。

砲身だけでも二十メートルを超えている。

「あれは……?」

 連隊長は驚きの色を浮かべた。

「新開発の電磁投射砲だ」

 連隊付の政治将校が、感心したような声を上げる。

「電磁投射砲、実によくできている」

「あれを使うんだ」

 特別戦術機大隊の部隊長は、不満を漏らした。

「あんなものがなくたって……。特別戦術機大隊の力を信じられないのかな。

その『ニューヨークのおじさん』とやらは」

 政治将校が連隊長をいさめる。

「ソ連で一番力のある部隊だからこそ、諸君らを選んだんじゃないか!」

「違うか」

 基地司令が、冷静な声で尋ねた。

「得体の知れないものが敵なんだ。やってくれるか」

「分かっています」

「責任重大だな」

「ここにいる我々以外には極秘だ。一刻も早い完成を目指す」

「作業は慎重を要する。失敗すれば基地を破壊される危険が伴う以上、時が来るまで話さない方がいい」

「そういうことだ」

     

 ソ連の技術陣は、月面攻略のための新兵器開発に精を出していた。

新型の無人戦車、RT-1である。

 この新型戦車は、従来の技術を集めて作られたものだった。

原型となったのは、1964年に試作されたロケット戦車『オブイェークト775』である。

 オブイェークト775は、T-64系の車体を基礎として、砲塔の代わりにロケット発射装置を搭載した車両だった。

車高は1・75メートル以下と低く、敵からの射撃を受けにくい反面、車内から戦場全体を見渡すことが難しいという欠点を抱えていた。

 そのため、実用化は困難と判断され、試作車の段階でお蔵入りとなった。

だが、ソ連軍はBETA戦争で光線級による甚大な被害を経験したことで、この超低車高の車両に再び目を向けることになった。

 光線級は地平線上に露出する目標を探知するため、車高1・8メートル程度の車両であれば、地形条件によっては約11キロ先まで発見されにくい。

さらに、実戦経験から、BETAは同族を誤射することを避けるため、水平射撃をほとんど行わないことも判明していた。

 要塞級が随伴する場合でも、目標が100メートル以上の高度に出なければ対空射撃を行わないことが多い。

そこでソ連は、この超低車高型ロケット戦車を復活させたのである。

 ただし、人的被害を抑えることに加え、操縦の難しい車両だったことから、有人戦車としてではなく、無線誘導による無人戦車へと改造された。

動力系は、最新型の自動変速機へと改められた。

 当時のソ連では、戦車用の自動変速機はまだ一般的ではなく、多くの車両は手動操作式のトランスミッションを使用していた。

そこで今回の改修では、ベトナム戦争で鹵獲したM41軽戦車の動力系を参考に、ソ連独自の自動変速機を開発した。

 電源ひとつを取っても、米国の航空機動要塞のようにG元素を必要としない。

ソ連の月面探査車ルノホート1号で使用された太陽電池と蓄電システムを基礎に、軍用として改良したものだった。

「ロボット戦車の威力を、モザンビークでテストしろ」

「はい」

「今回の作戦は、ヤンキーどもへのはなむけだ。

 この先制攻撃は効果絶大だぞ。フハハハハ」

     

 BETA戦争からほど遠いアフリカは、東西両陣営の草刈り場となっていた。

独立を急ぐアフリカ諸国は、既存の権益を維持しようとする欧米側に対抗するため、中ソへ接近することとなった。

 実験の舞台となったモザンビークもまた、そうした国の一つである。

同国は、植民地支配を続けるポルトガルに対して独立運動が起こって以来、長く政情不安を抱えていた。

 1975年、ポルトガルから独立したモザンビークでは、容共・親ソの政権が成立した。

しかし独立から間もなく、反政府勢力との内戦が始まった。

 ソ連と中共の支援を受ける政府側のモザンビーク解放戦線(FRELIMO)

対する反政府勢力、モザンビーク民族抵抗運動(RENAMO)は、ローデシアと南アフリカの支援を受けていた。

 双方による血みどろの内戦は、東西両陣営による代理戦争の様相を呈していた。

ソ連は、ここで新型兵器の実験を行うこととなったのだ。

 試験は、モザンビーク国境に集結しつつあったローデシア軍の部隊に対して行われた。

その日の攻撃は、モザンビーク軍による、いつもの何倍もの激しい砲撃から始まった。

同時に、おびただしい数の戦術機の唸り声が頭上から降ってくる。

「敵襲!」

「敵襲だ!」

 大叫喚、大騒擾が陣中に起こった。

自動小銃と対空機関砲が空に向かって猛然と唸り始める。

 届きもしない対戦車砲や迫撃砲までが、天に向かって吠え始めた。

前線の正面へ、戦術機が墜落するような勢いでダイブしてくる。

 墜落したかと思った矢先、50メートルほどの低空で姿勢を立て直し、突撃砲から一斉に火を噴いた。

 20ミリ機関砲の弾丸が、雨霰と頭上から降り注ぐ。

叫喚や呻吟とともに倒れる者。爆風に吹き飛ばされる者。

 銃弾と砲火の荒れ狂う嵐の中、突然、耳を聾する大爆音が轟いた。

数キロ先から、何百メートルもの高さへ奔騰する黒煙と火柱が観測された。

 陣地には、小銃や迫撃砲の残骸とともに、ぐちゃぐちゃになった装甲車らしきものが転がっている。

その内部には、血の川とともに肉塊のようなものが叩きつけられ、こびりついていた。

「ええい、対空砲撃は届かんのか!

それよりも、部隊の増援を早く頼め!」

「通信機器がつながりません!」

「何!」

「モールス信号もダメです!」

 だが、悲劇はそれで終わりではなかった。

数キロ先から飛来したロケット弾や砲弾による攻撃で、部隊は原形をとどめないほどに撃破された。

 

「テストは大成功だ」

 ソ連赤軍は、新型無人戦車の実験と同時に、対電子戦装備の性能試験も行っていた。

カザフ防衛戦で、ソ連赤軍は多くの過ちを犯した。

そして、その事実を隠そうともしなかった。

 BETA戦争緒戦の過誤の多くは、電子通信機器の脆弱さに起因していた。

偵察に使用できる無人機は、事実上存在しなかった。

絶え間ない無線連絡を維持できず、戦局の把握や作戦の採択に手間取った。

 その結果、主力部隊であった第40軍*1はBETAの包囲作戦にはまり、部隊の半数が戦死した。

この不名誉な事件がたたり、司令官以下の高級将校はほどなく銃殺刑に処される事態となった。

 この戦闘は、アフガンからカザフにかけての地域で行われた。

ソ連赤軍の兵力は20万近かった。

 しかし、なにしろ赤軍は電子戦への備えに乏しく、ハイテク化にも遅れていた。

 通信機器はかさばるうえ、操作性にも難があり、効率性や耐久性も著しく劣っていた。

それ以来、5年近くにわたって、その不備を修正するための努力が続けられてきたのである。

「電波妨害装置を強化し、敵の指揮系統を混乱させる。

無人戦車で防御を崩し、その隙に電磁投射砲を叩き込む……」

 男は満足げに頷いた。

「これならば、月面でも使える。ヤンキーどもが何を隠していようとな」

「我々が先に月を取れば、G元素も我らの手中に入る」

「そういうことだ。

ヤンキーどものほえ面が、目に見えるようだわ。フハハハハ」

    

 場面はモザンビークから変わって、ソ連ウラジオストック。

ウラジオ要塞内部に置かれた国防省本部では、間もなく実施される月面攻略での対抗策が練られていた。

「月面戦闘につきましては……こちらの資料をご覧ください」

 数枚のペーパーが配られた。

 それまで興味なさそうにしていた大半の者たちが、ある者は驚き、ある者は顔を顰めながら、資料を読み始める。

「本年8月10日。場所はモザンビーク、レボンボ山脈。

 開発局の独断専行については後ほど問題にするとして……結果は良好と出ました」

「試作兵装……電磁投射砲か」

「ベリゼ少佐、君はこの玩具を、どう使おうと言うのかね?」

 所詮は試作兵装だ。

いまだ制式化の目処すら立っていない。

「政府には、こちらから話を通していただく必要があります。

GRUとKGBは、好き嫌いを言っていられる段階ではありません。

この計画を政治的な成果として売り込むなら、少なくとも計画が形になるまでは、KGBも軍を切れないでしょう」

「だからこそ、技術資料をすべて出せと?」

「ええ。時期を見てです。

出さなければ資金を止める。その程度の圧力は掛けてくるでしょう」

「……先だって、政治局でその話題が上がったそうだ。

首相と外相、そして内相が、会議の席上で国防相と軍需相を激しく突き上げたらしい」

 首相と外相が、それぞれの代弁者として国防相と軍需相に迫ったという。

「なるほど。現実逃避にはもってこいのおとぎ話だ。

それで諸君、そろそろ現実の話に戻してもいいか」

 議長役のGRU大佐が、ある種の冷笑を湛えて周囲を見渡した。

その言葉に、話を切り出したベリゼ少佐の表情が一瞬だけ、ほんの僅かに変化した。

「その手の話は、実現するにしても来年以降の話だ。

我々が今現在ここで話しているのは、今月中のこと。

つまり、月末に予定されている大規模反攻作戦のことだ。

諸君らには、ぜひ現実的な意見を忌憚なく言ってもらいたい。

どのような意見でも、参謀本部は歓迎する」

 会議を終え、会議室を出て自分のオフィスへ戻る廊下を歩いていたベリゼ少佐の視界に、見知った顔が入ってきた。

 思わず足を止め、少しだけ嬉しそうな表情になる。

かつて東ベルリン時代に世話になったバルト・ドイツ人の大佐だった。

「何ですか、同志大佐。その珍しい物を見つけた時のような、嬉しそうな顔は」

「待たせたな、ベリゼ少佐

 だが、もう少しだけ待ってくれんか。書類を置いてこなければならん」

「どうぞ、どうぞ。同志大佐がおられないと、こっちは勝手が分かりませんから」

「その辺に座って待っていてくれ。すぐに済ます」

 すでに課員は退庁したらしく、作戦課内はがらんとしていた。

大佐が課長席で何やら整理しては片付けている間、ベリゼ少佐は物珍しげに辺りを見回していた。

「うん? どうした。何か珍しいか」

「いえ……ここが赤軍の国防中枢かと思うと。

 普通のオフィスと、変わりませんね」

「当たり前だ。一体、どこの伏魔殿だと思っているんだ」

 大佐はそう言うと、外套掛けにある大外套を着込んだ。

「すまん、待たせたな。では行くか」

「はい」

 すでに暗くなった構内を歩きながら、大佐が話題を変えてきた。

「貴様の所も、大変そうだな」

 何か企んでいるような表情だった。

こういう顔をするときは、決まって昔から遊ばれてきたことを、少佐は思い出した。

「国防省の人事に、フルンゼ時代の同期生がいる。貴様のことを口添えしておいてやろう」

「助かります、同志大佐」

 

 どっぷりと日が暮れた夜遅くになって、ようやく仕事が終わった。

ベリゼ少佐は、がらんとした電車に乗って家路についた。

「そう言えばベリゼ、お前の嫁さん、明日実家から帰ってくるんだって?」

 最寄り駅で下車し、家路の途中で、ベリゼ少佐は第三総局のブリノフ少佐に話しかけられた。

二人はベルリン時代からの旧知の仲である。

「ああ。少しだけ電話で話した。

 参謀本部に寄った時に、同志大佐のご好意でな」

「ハハハ。また後で冷やかされたんだろう。それで、同志大佐に何て言われたんだ?」

「『若いって、本当に良いな』だとさ。

俺の顔をまじまじ見つめながら言うんだ。一体何なんだよ、まったく」

     


 

『対象:レヴァン・エドゥアルドヴィチ・ベリゼ。

 1947年生まれ。32歳。陸軍少佐。

 民族:グルジア人

 出生地:グルジアSSR・トビリシ市

 1969年、アルマヴィル高等軍事航空飛行士学校卒業。防空軍少尉に任官。

 1970年後半、空軍(VVS)へ引き抜かれ転属。

 1971年1月15日、ドイツ駐留軍(GSVG)出向。第16航空軍配属。

 1973年1月16日、帰国。この間、一時期、試験開発部隊へ転属。

 1973年6月、中国派遣軍配属。

 1976年6月、帰国。陸軍出向。同年10月、陸軍大尉に任官。第1親衛戦車師団配属。

 1977年10月、陸軍少佐に任官。以降、現職を務める。

 1979年9月、結婚。注釈――部内結婚。

 結婚相手はフィカーツィア・ゲルマノヴナ・ラトロワ。1959年生まれ。

 性格は明朗快活、裏表なし。

 政治的には比較的自由主義的な傾向を示すが、反体制的言動は確認されていない。

 グルジア民族主義への傾倒歴は見られず。

 連隊内の評価は「信頼に足る、歴戦の野戦指揮官」。

 対象A、注釈――ピガゾフ参謀総長、との接触経緯は現在調査中。

 未確定要因評価――継続監視の必要あり』

 報告書をデスクの上に放り投げた。

まったく不明だ。

こいつは……楽しませてくれる。

「若手のグルジア民族主義将校たちに、信条で同調している様子はありません。

また同時に、亡命したピガゾフの派閥への積極的な参加意思も見受けられませんでした。

正直申し上げて……何を考えての行動なのか、読み切れません。

下手に手を出しても、懐柔できる可能性は低いと判断されます。

野戦将校は、我々のような情報部を嫌いますので……」

 部下の防諜担当課長の大佐が、苦り切った表情で報告する姿を思い出す。

 信条的に不明。

 欲望で繋がっているとも見えない。

 謀略を仕掛ける者としては、厄介な存在だ。

懐柔する手口が見えないのだから。

絡め手で動かそうにも、妻以外の家族はいないらしい。

母方の親族も病没し、二歳下の弟も戦死している。

 プライベートの酒の席で、世間話にかこつけて、甥に鎌をかけたこともあった。

甥は空軍少佐で、ベリゼ陸軍少佐の同期生であり、親しい友人だった。

 その甥も、最近の「対象」の行動には思うところがあるようだった。

歯切れが悪い。

 軍人として不足はないが、謀略を仕掛けられるような性格の男ではない。

苦々しい表情を浮かべた甥の顔が脳裏に浮かぶ。

「君の望みは、何なのかね……ベリゼ少佐」

 対象者監視の報告書をもう一度手に取り、KGB第三局長ニコライ・アレクセエヴィチ・ドゥシン中将は、凄味のある目の光を湛えながら、執務室で呟いていた。

     

 場面は再び、1979年10月15日のソ連に戻る。

ウラジオストク要塞では、特別戦術機大隊に対する政府主催の秘密壮行会が行われていた。

 そして、そのことについてKGB第三総局長室では、密議が凝らされていた。

「マリク外相の演説は、見事だったな。

年の功と言うべきか……あやかりたいものだ」

 ゲオルギー・ツィネフ*2KGB第一副議長は、隣に座るドゥシン*3中将に訊ねた。

「不利も極まる状況を説明した上で、『好機だ』……ですか。

見事でしたが、同志大将があやかる必要はないと思われます」

「私のような凡俗に、厳しい要求をするものだ。

だが、窮地に陥ることを防げたのは事実だな……」

 おそらくヤゾフあたりが、軍の側から手を回した演出だろう。

それで落ちかけていた士気が回復したことを、ツィネフとドゥシンは実感していた。

 ソ連はまだ勝利への道の途中にある。

そう広く周知できたことの意味は大きい。

 二人は、ヤゾフという軍人に対して、感謝の念さえ抱いていた。

 しかし、絶望的に近い戦況だ

だからといって、その程度で膝を折る我らではない。

 陸軍、海軍は当然、特別戦術機大隊も、その本懐を果たすべく急ピッチで編成を完成させるだろう。

 準備期間は、シャトル発射を含め、1日もない。

万全の状態で戦闘に臨むことなど、不可能だ。

「ふん……だからどうしたというのだ。

どのような強敵であれ、最後まで諦めるはずがあるまい」

 いかに強大な帝国が乗り込んでこようと、全力をもって最後まで戦い、そして打ち倒してきた。

トルコ、ナポレオン、そしてヒトラーと……

 それこそが、キエフ・ルーシ以来の武人の在り方だと、ツィネフは考えていた。

「この国の命運を賭けての戦い、逃げる者などおるまい」

 ドゥシンは訝しげに眉を顰めた。

 その言葉を否定することはできなかった

 だが、軍人の忠誠心だけで、この戦争を最後まで支えられるのか。

ドゥシンは敬礼すると、直ちに部下へ命令を伝えた。

「全部隊に通達せよ」

 ツィネフの命令を受け、ドゥシンは了解の声を返す。

「了解しました、同志大将……全部隊に通達します」

 ツィネフもまた、次の報告を受けるため、執務室を後にした。

*1
史実で第40軍が編成されるのは、1979年12月16日。マブラヴ世界では中央アジアがBETAとの激戦地になったので、この二次創作では史実より6年早く編成させた

*2
Гео́ргий Ка́рпович Цинёв(1907年4月22日 - 1996年5月31日)ソ連の軍人、チェキスト。ブレジネフ書記長との親友でKGB内で影響力を保持した

*3
Николай Алексеевич Душин(1921年-2001年)ソ連の軍人、チェキスト。1940年に軍に入隊後は政治将校。大祖国戦争時(第二次大戦)の1943年から、軍事防諜組織スメルシ(SMERSH)に配備された。スメルシ以降、MGB,KGBと移りながら、一貫して軍内部の裏切り者やスパイを摘発してきた人物。1974年2月から1987年7月までの13年5か月の長期間にわたり、ソ連軍内部を監視する特別部(オソブイ・オトデール)を統括していた




 4年近く出ているグルジア人大尉は、ラトロワ中佐の名前のない旦那さんです。
この際、グルジア人らしい名前にしました。
 ほぼオリキャラに近いですが、このグルジア人の旦那さんはいろんな二次創作ではラトロフ姓になっていますが、ラトロフ及びラトロワはバルト・ドイツ人やボルガ・ドイツ人の名前なので、べリゼというグルジアで一般的な姓にしました。
なおソ連は政権成立から間もなく夫婦別姓が認められているので、公的な立場でも半数程度は別姓でした。慣習で同姓にしていた東ドイツや東欧よりもこちらが自然かと思いこうしました。
ご意見、ご感想お待ちしております。

主要オリキャラの名前に関して。

  • 役職だと史実人物と混乱するから命名しろ
  • 史実と混同するからそのままでいい
  • 作者に一任する
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