冥王来訪(ハーメルン投稿版) 作:雄渾
異世界に来た木原マサキは、中共政権のBETA殲滅の依頼に応じる。
天のゼオライマーは単機、ハイヴの中に突入する。
マサキは、構造物のそばにあった巨大な縦穴に入っていた。
底知れぬ深さと闇、地表とは違って寒さすら感じる。
次元連結砲で、手当たり次第に破壊し進んでいくが、まるで迷路……
地図を作るべきか、悩んだ。
だが、どうせ地上
おそらく戦術機の速射機関砲などでは、簡単に弾切れを起こすであろう。
無限のエネルギーを持つ次元連結システムだからこそ、出来る方法であった。
その頃、蘭州軍区にある作戦指揮所は、
光線級の排除と、地上部隊の後退が進んだ為、核の集中投下の作戦に切り替わったのだ。
もっとも15キロ以上離れた地点から継続した重火器による火力投射は継続されている。
ヘリや戦術機部隊は補給と整備の名目で退避済み……。
人民解放軍の失う兵力が、少なくて済む。それが中共政権の偽らざる本音であった。
核搭載機による、航空撃滅戦……。
中共の対BETA戦では、戦術機の近接戦闘が優先されつつある。
だが、労力が少なく、効果の大きい核は捨てがたい。
人民解放軍の考え方は、核に依存した戦術が優位であった。
さて、マサキといえば。
ゼオライマーを駆って、道を進むうちに巨大な空間に出ていた。
白い機体は、爆風と衝撃波で全体が薄汚れており、所々に返り血が染みの様にこびり付いている。
次元連結砲をもってすれば
(『化け物どもの巣穴だとすれば、巣の主が居るはずだ』)
その時、轟音と共に見たことのない化け物が表れた。
出力を抑え、前面に向けた攻撃だった為、
最悪の場合は、ワープすれば済むであろうが不安も残る。最新鋭の
電磁波の探査をしてみると直進すれば、50メートルほど先に巨大な空洞があり、400メートルほど下降すると行き止まりになっているとの観測結果が出た。
(『おそらく奴らの主が居る場所だ』)
推進装置を全速力にして、先へ進んだ。
勢いよく進むと壁のようなものに当たった。
電磁波の探査では、この先に大規模な空間があり、何か巨大な存在が確認できる。
砲撃で、壁のような物を破壊すると、開けた場所に着いた。
周囲は暗黒でよく見えない……、だが
マサキは、美久に呼びかけた。
「おい、俺が攻撃すると同時に転送しろ。この場所
美久は、戸惑いながら応じた。
「ですが、地上の部隊はどうするのですか。
彼は失笑しながら、
「あいつ等は、ここまでの道案内にしか過ぎん。そもそも人民解放軍を信用しすぎだぞ。
奴らは俺たちをうまく使って、政治的利益を
美久は彼を
「それは酷過ぎるのでは……」
言い終わる前に、マサキは
「お前はガラクタのくせに甘すぎる」
言い過ぎてしまったかと、美久は思ったが遅かった……、
「そもそも、俺はどれだけ利用されてきたか。
あまつさえ、殺されてしまったではないか!」
「お前は俺が作った人形だ。言う事さえ聞いていれば良い。
下手な
その時、ゼオライマーに触手状のものが絡まってきた。
運よく瞬間的に移動した為、捕まれなかったが、油断はできない。
「メイオウ攻撃で、
スイッチを押した瞬間に振動が走る。
「どうした」
左足に何かが絡まっている……、どうやら化け物の触手に絡め捕られてしまったらしい。
目の前にBETAが近づいてくる……、いや、引き寄せられてるのだろう。
タコのような姿かたちをしており、六つの目が見える。
複数の触手が胴体を縛り始める。発射されるべき攻撃が始まらない……。
「美久、何をしている、早く撃て」
彼女からの反応はなかった。
(『まさか、電子制御を混乱させる妨害波でも出しているのか!』)
彼は焦った。
このマシンは次元連結システムが無力化してしまえば、推力も攻撃力も
自分が作ったものとはいえ、こんな形で欠陥が
補助兵装には火器も刀剣類もない。文字通り素手なのだ。
だからといって、メイオウ攻撃を解くわけにはいかない……
システムさえ回復すれば、こんな化け物を吹き飛ばせる。
次元連結砲のエネルギーを最大まで引き上げた。
もし、エネルギーを吸い取るのであれば、吸い取るだけ吸い取らせればよい。
おそらく吸い取る器のような物があるとすれば、上限があり、
こちらは無限の動力源。
だから、何れは、容量に収まり切らなくなり、やがては向こうは自滅するであろう。
操作盤の電源が復旧し始めた。もう一度呼びかける。
「おい、仕掛けるぞ」
彼女からの返答が返ってきた。
「分かりました」
もう一度、発射操作をしながら、言い放った。
「全力で攻撃した後、できるだけ遠くへワープしろ」
その刹那、一帯は
全身に絡まっていた触手は千切れ、両腕を持ち上げ、胸の前にかざす。
「失せろ」
カシュガルでの戦闘は通算12時間ほどで終わった。
ハイヴと呼ばれる構造物は、地下数百メートルに渡って崩落し、巨大なクレーターへ変化していた。
核攻撃隊が、新疆に入った時にはすでに遠方より視認できるほどの茸雲が上がっており、中止。
通常爆撃と近隣の基地から飛ばした航空機の近接航空支援による残党狩りへと、作戦は変更となった。
ゼオライマーは爆破直後に、周囲を攻撃しながら、上空から降下する。
やがて地上50メートルの距離で、空中浮揚し留まる。
強烈な吹きおろし風が嵐のように周囲を舞い、近隣の車両や兵に降りかかる。
機体から、外部に向かって声が出された。
「俺の仕事は終わった。あとは好きにさせてもらうぞ」
急いで、4人乗りのジープがやってくる。
指揮員*1の制服を着た人間ともう一人が立ち上がって、両手を上にあげた。
その場で浮遊し続けるとジープから拡声器を取り出し、指揮員は話し始める。
「今日はいったん基地まで引き上げましょう、明日改めて指令が来るまで待ちましょう」
索敵用のサーチライトが、当たって眩しい……
「良いだろう。一旦基地に引き上げる」
轟音と共に、ゼオライマーは飛び立っていった。
さて翌日。
早朝五時に起こされたマサキは、
最初に、安全を最優先で陸路でウルムチまで行き、そこから複数の経由地を経て、ヘリで北京入りする。
その様な話を聞かされた時は、マサキは呆れた。
ゼオライマーで直接乗り込む話をしたが、中々納得して貰えず、2時間ほど待たされた。
後になって、北京の
昼近くまで時間が掛かった事に些か不満ではあったが、承知してすぐに出発する。
高度1000メートルを20キロほど低速力で北へ飛んだ後、ワープ……。
ワープした後、北京郊外から南苑基地に向かった
基地に近づいた瞬間、迎撃用のミサイルと数機の戦術機が上がって来る。
ミサイルを回避しながら、通信で呼びかけると反応があった。
敵意が無い事が判ると、戦術機部隊は下がっていく。15分ほど上空で待機させられた後、着陸許可が出た。
空港に着陸するなり、司令官が
だが、遠巻きに対空機関砲などの重火器が配置してあるのが、視認できるほどの緊張状態。
仮に美久が居なかったならば、流血の事態になる寸前であった。
彼らの弁によると、「予想時刻より大幅に早く」、動揺したためとの事である。
ゼオライマーの飛行を「ソ連側の攻撃と考え、防空体制が引かれた」というのだ。
日本大使館の職員が来るまでということで、南苑に足止めされていた。
迎えが来たのは、深夜2時頃……、仮眠している所を叩き起されると、別室へ案内される。
室内には、屈強な男達が待っており、彼らは挨拶の後、名刺を差し出して来た。
おそらく職員ではなく、治安機関の関係者だろう。
ほぼ全員が拳銃を携帯しているのが、脇腹の膨らみから見て取れた。
まず若いビジネスマン風の男が、ソフト帽を脱いで挨拶をすると、声をかけてくる。
男は品定めをするようにマサキ達を見ていた。
マサキは、こう返した。
「そうだ。早く休ませてくれ。周りが鬱陶しくて叶わない」
手に持った名刺を、中に着たワイシャツの胸ポケットへ乱雑に放り込む。
「先ずは、この服じゃないのを用意してくれ。
彼は、自身の着ている服を指差した。
一度着替えてから、ずっと人民解放軍の深緑色の軍服姿のままだ。
スーツでも、
「帰国するまでには準備します」
男は胸から手帳を出して、記録していた。
その様子を、マサキは間近で見ながら、訪ねる。
「……で、どれ位、かかるんだ」
男は顔を見上げて、続けた。
「早くても船ですから、1週間は待ってもらうしか、ありませんね」
(『この際だ、日本に行ってみるのも良いか。
俺が知る日本ではないのだろうから取り入る余地があるかもしれん』)
話しかけられながら考えていたが、他に良策は無い様に思えた。
米ソの超大国の考えは分からないし、何より生活習慣が違うのは疲れる……
今回のように上手い具合に逃げられれば良いが、そうとは限らない。
両国とも
脱出するまでにどの様な
いくら無限のエネルギーといっても整備や保守もしなくてはならない。
そう考えていると、男が話しかけてきた。
「詳しい話は、帰国船の中でしましょう」
男が言うと、マサキは、
(『たしかに
「良いだろう。詳しい話はあとで決めるとして、先ずは先約は守ってくれるだろうな」
彼がそう言うと、男は不敵の笑みを浮かべた。
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現状維持のままでよい