冥王来訪(ハーメルン投稿版) 作:雄渾
一方、KGBはシュトラハヴィッツ少将排除とシュミット
ある人物を伏魔殿に呼び寄せた。
深夜22時、ドイツ民主共和国の首都ベルリン。
ここは、東ベルリン市パンコウ区にあるベルンハルト邸。
その屋敷の奥にある
被っていた灰色の毛布から抜け出し、濃紺の寝間着姿のまま、一人窓辺に立つ人物の方に向かう。
その人物は彼女の
深緑色のナイトガウンに黒無地のサンダル姿で
「複数の命を預かり、状況の判断を求められる指揮官は、率先して寝るべきよ。
それにあまり夜更かししていると、明日に影響するわ……」と、
ユルゲンは、薄い笑いを浮かべながら、
「眠れないんだ、昔の事を夢に見てな……」
と、氷の入ったグラスを傾け、
「酒は俺が、飲みたいんでな。つきあってくれ。それとも、嫌か?」と、
ベアトリクスは
「嫌なんてこと、ないけど……」と返す。
ユルゲンは満面に喜色をたぎらせて、
「いいじゃないか。どうしたことやら、何かしらこう、お前と一緒に、一口過ごしたくなってな」
と言うと、月明りで照らされた窓外の景色を眺めていた。
ベットの脇にあるランプの明かりをつけると、ユルゲンはベアトリクスの手を引いて、
「この際、妻になった君には、ソ連時代の事も詳しく明かして置こう」
そういうと、机に腰かけ、語り始めた。
「俺がソ連留学したことを知ってるよな」
ベアトリクスも椅子を脇に寄せ、くっつく様に座り、
「モスクワ近郊のクビンカ*1にいたんだっけ」と応じる。
「そうだ……4年前の夏だったかな、君たちがまだ生徒で、俺によく水泳大会の結果を、書いて
再び酒杯を傾けた後、ゆっくりと語りだす。
「エフゲニー・ゲルツィンという人が、俺達ドイツ軍の教官として指導してくださった」
「どんな方なの……」
「スラブ系なのに珍しく仏教*2を信仰している風変わりな人でな。
詳しい事は明かしてくれなかったが、俺はあの人がエリスタ*3当たりの出身と睨んでる」
ユルゲンは、仏教徒*4と言う事でゲルツィンの出自をカルムイクと勝手に類推していた。
ベアトリクスは、酒杯を片手に、何時になく興奮して話すユルゲンの様を見る。
普段は
満面に朱色を
「俺と同じ空軍パイロット出身の衛士と言う事を聞いた」
「へえ、余程の変わり者でしょうね。問題児の貴方が惚れ込む人なんて」
ベアトリクスは、そう悪びれもなくいうと、同時に、貰った杯で、唇を濡らした。
「放っておいてくれ」
「こうして毎夜、あなたの口から、広い
そう語るベアトリクスからは、いつになく
椅子より立ち上がったユルゲンは、
「そう、いや、それで思い出したが」
「なんか面白い事でも」
「あの頃は
ユルゲンは、思い入れたっぷり、ベアトリクスの顔を眼のすみからぬすみ見る。
さっきから少しずつ酒も入っていたベアトリクスの白磁の様な皮膚は、そのとき
グラスをテーブルに置くと、ベアトリクスの方にずかずかと歩み寄り、いきなりベアトリクスの肩に手を掛けた。
「ベア、俺の熱情を、君はなんと思う。……
「い……いいえ」
「うれしいと思うか」
たたみかけられて、ベアトリクスはわなわな震えた。情炎の涙が頬を白く流れる。
「一体こんな心にしたのは誰よ。ひどいわ。薄情ねえ」
幅広い胸のなかに、がくりと、人形の様な細い
ソ連・ハバロフスク
「まこと、申し訳ございません。よもやこんな事になろうとは……」
灰色の夏季用将官
「ふうむ」と嘆息を漏らした。
「シュタージも手を余すほどの男、シュトラハヴィッツか」
そう告げると、キャメルの箱を縦に振って、飛び出した煙草を口に咥える。
特別部部長は、KGB長官の機嫌を取る様にして、ガスライターを差し出し、煙草に火を点ける。
紫煙を燻らせた後、青白い面色して、
「で、どうするのかね」と詰問する。
特別部部長は、彼の激色がうすらぐのを待って静かにいった。
「もはやシュミットのいないシュタージなぞ、具の挟んでいないサンドイッチの様な物です。
シュトラハヴィッツは
容易に手出しは出来ますまい。故に、奴の腹心、ベルンハルトを篭絡することに致しました」
「それで」
「旧知の仲にある人物を使者に仕立てておきました」
「どんな人物だね」
「クビンカ基地*6で東欧からの留学生相手の教官をしておりました」
「名前は」
「名前はエフゲニー・ゲルツィンと申します。年の頃は35歳です」
「信用できるのかね」
「御心配には及びません。わが特別部所属の名うて工作員です。外に待たせて居ります」
「よし、呼んで来たまえ」
戻って来た特別部部長の後ろには、実に見上げるばかりの
頭髪は豊かな黒髪で、澄んだ緑色の瞳には男の誠実さが伺えた。
エフゲニー・ゲルツィンは軍服の胸をはり、自分を見つめるKGB長官の眼を、しっかりと見返していた。
『私には自信が有る』
カルムイク自治共和国出身で、熱心なラマ教の
カシュガルハイヴ調査の際は、ハイヴ間近まで接近して生き残った数少ない人物。
対BETA戦で、あらゆる
『ぜひ私を東ドイツに派遣してください』
そのゲルツィンの意思が通じたのか、長官は大きく頷くと、
「では特別部部長、書類を作れ」といい、部長を机に座らせた。
そして低い声で、東ドイツへの秘密指令を書きとらせた。
書類が出来上がると、KGB長官は花押を書き添え、極秘の印を押した。
長官は、封に入れた
「良いか、これをドイツ駐留軍内部にあるKGB支部に見せ、そして完璧に実行せよ」
「はい」
ゲルツィンは手を伸ばした。
何処か、おごそかな姿だった。
「約束できるか」
「わが命に代えて」
密書は、彼の手に渡った。
「では行け。ソビエトの為、党の為、そしてこのKGBの為にな」
氷のように冷静にいった。
ゲルツィンが去った後、KGB長官は立掛けた1メートル近くある
脇に立つ特別部部長は、
「明日のイズベスチヤ*7にシュミットに関する声明を掲載する手はずです。
先の東ドイツの事件は、彼の
と告げるも、立ち上がったKGB長官は、握った長剣を剣帯に
「その線で行き給え」
と答え、ドアを開けて、静かに室外へ去っていった。
KGB長官は、一人、庁舎の屋上に立ち、涼しいシベリアの夜風を浴びながら、天を仰ぐ。
何か思い出したように、突然、佩いている剣の
「
といいながら、またも一振り二振りと、
「KGBの組織を守るためには、こうする他に道はないのだ」と、叫んだ。
走らせる剣の声は、まるで男がシュミットの
完全書き下ろしエピソードです。
ちなみに、ベア様の夜のお楽しみは、18禁ページの方で書いてます。
成人で興味ある方は、覗いてみてください。
ご意見お待ちしております。
拙作18禁外伝のURLについて
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URLを掲載して欲しい
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全年齢版なのでNG
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自力で検索するから不要
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題名だけでも載せて欲しい