冥王来訪(ハーメルン投稿版)   作:雄渾

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 凶悪犯120人とともにテルアビブにむかう(さかき)政務次官。
ベイルートから脱出したマサキは、その話を聞いて、驚嘆(きょうたん)する。
 急げ、マサキよ。
榊に残された時間は、あとわずかなのだ。


因果応報(いんがおうほう) 後編(旧題:賊徒の末路)

 鎧衣(よろい)たちといえば。

彼等は、米海軍が差し向けた救援隊により、(から)くも窮地(きゅうち)(だっ)していた。

八台のHH-53B/C スーパージョリーグリーンに救助されて、米兵たちとともに乗り込む。

 まもなくベイルートを後にし、遠くなっていくソ連軍基地を見ながら、ぼんやりしていると、

「なんだ、あの光!」

米兵の誰かが叫んだかと思うと、強烈な閃光(せんこう)とともに、雷鳴のような轟音(ごうおん)が鳴り響く。

 

「まさか、ゼオライマーの……」

おもわず口走ってしまったことを後悔(こうかい)する間もなく、白銀(しろがね)が訊ねてきた。

「鎧衣の旦那(だんな)、あれが木原先生(センセ)のマシンの攻撃なのですか。

デイジーカッターと同じくらいの威力(いりょく)はありますよ」

 

 その発言に、デルタフォースの部隊長が仰天(ぎょうてん)して、

「白銀君、あれはデイジーカッターの爆風どころではない。

自分は北ベトナムの大部隊と戦った時に、航空支援を頼んだ折、至近弾を間近で浴びたが……。

今の爆発は、その威力の数倍、十数倍あると思っている」

 

「でも旦那、あなたはハバロフスクに潜入して先生(センセ)と行動を一緒にされたんじゃ」

 ゼオライマーは、公然の秘密だった。

日米の間とはいえ、秘密裡にして置く必要があるとみえ、鎧衣は、いつになく厳として、

「白銀君、それ以上は止めたまえ」と、(いまし)める。

 

 見かねた隊長は、彼らを止めに入った。

「まあ。まあ。ご両人ともこんなところで言い争っても仕方ありません。

木原博士と合流した後に詳しい話を聞かせてもらってからでも遅くはありません」

一旦(いったん)鎧衣は、顔をほころばせると、昂然(こうぜん)と笑い、

「いやはや、この鎧衣としたことが……。

砂漠の熱さで、つい冷静さを()いておりましたわ。

暑気(しょき)(ばら)いに、ウイスキーでも一杯ひっかけたいものですな」

と、いつもの如く、諧謔(かいぎゃく)(ろう)した。

白銀もそれに合わせるようにして、持ち前の明るさで、

「じゃあ僕は、キンキンに冷えたバドワイザーで……」とその場を(なご)ませる冗談を言う。

 

 ヘリの機長は、正面を向きながら、後ろから聞こえた彼らの冗談にこう応じた。

「米海軍の運営する当機では、アルコールの提供はご遠慮(えんりょ)いただいております。

その代わりに、アイスクリンとコカ・コーラについては母艦到着後、何時でもお届けに参ります」

機内は、男たちの笑い声に包まれた。

 

 

 

 

 マサキはゼオライマーで、米海軍レバノン派遣艦隊の近くに着水する。

ゆっくりと空母フォレスタルまで近寄ると、右手を伸ばして、甲板上に臨時の橋を架ける。

首の真下にある操縦席から、飛び出して、右手の上を伝わって、甲板に乗り移った。

 

 空母フォレスタルの水兵の案内を受け、士官食堂にいる鎧衣たちの元へ急いだ。

彼らの顔を見るなり、マサキは開口一番、

「おい、美久は俺が連れ帰った。安心しろ」

突然の報告に、鎧衣も色を失い、白銀もあわてて、呆然と立って見ていた。

「では、(さかき)代議士に連絡せねば……」

マサキは、じっと瞳をその人に向け直した。

「榊がどうかしたのか」

マサキはその言葉に、(いぶか)りが解けぬ様子だった。

「榊代議士は、氷室(ひむろ)さんと引き換えに、超法規的措置で出獄(しゅつごく)させた囚人たちと一緒にいる」

 

 マサキの脳裏に、1970年代の過激派の恐ろしい思い出が、また、深刻ににじみ出ていた。

丁度、前の世界の、1975年8月4日に起きた、『クアラルンプール事件』

あの時、人質の命を救うと称して、時の総理*1は、身代金支払いと囚人の釈放に応じた。

 世人を恐怖に陥れたテロリストへの身代金支払いと、凶悪犯の釈放。

この行為は、国際社会を不安に陥れ、日本の信用を損ねた。

 1977年9月28日に起きた、『ダッカ日航機(にっこうき)ハイジャック事件』

事件現場のバングラディッシュでは、呼応(こおう)するように左派軍事クーデター未遂が起きた。

その時も、10月1日に首相*2が『一人の生命は地球より重い』と述べ、金の支払と釈放を決めた。

 

「今、日本航空のチャーター便で、120人の凶悪犯と共に、こちらに向かっているはずだ」

 マサキは、そっと面をあげた。

内に抑えつけていた憤懣(ふんまん)が、一目見えて分かる状態だった。

「そうすると、今度は、(さかき)が危ない……

行くぞ!テルアビブへ」

 

 

 

 

 一方その頃。

東京発、「日本航空(にほんこうくう)」所属のボーニング727-89。通称「よど号」*3

このチャーター機は、空路、イスラエルのテルアビブを経由地として、ベイルートに向かっていた。

 特別便の機内には、100名近い犯罪者たちを満載(まんさい)していた。

その為、客室乗務員(スチュワーデス)の制服姿の婦人警官が乗り込み、厳重(げんじゅう)な警備態勢を敷いていた。

 機長と副操縦士は、帝国陸軍航空隊から選抜されたエリート。

彼等は、先次大戦において、支那(しな)本土への夜間爆撃の経験のある人物であった。

 

 

 機内の犯罪者たちは、超法規的措置により、釈放され、氷室美久との交換することになっていることを口々に喜んでいた。

「ウハハ。これで俺たちは自由の身ってわけよ」

「しかし、お()(どく)だね。俺らと交換する予定になってる(ねえ)ちゃんは……」

囚人たちは、残忍な笑いを湛えて、美久の事をあざ笑った。

 

 PLFLと日本人テロリストの要求で、人質役として政府職員が乗り込んでいた。

国防政務次官の(さかき)是親(これちか)である。

 彼の前に席では、将に今、次のテロ計画が大っぴらに語られていた。

「レバノンに着いたら、米帝(べいてい)*4の大使館を爆破してみますか」

「よお、そいつは見ものだ。一つ派手にやろうじゃないか。同志」

 

 男たちの話を聞いて、苦渋の表情を浮かべる榊は、後ろより突然髪をつかまれて、

「おい、政務次官(おやくにん)さんよお……」

テロリストの一人は、彼の耳元で脅すようにして声をかける。

「あんたも俺たちの国際共産主義の連絡網(ネットワーク)を見たろう。

アラビア半島は、すでに世界革命の根拠地の一つなのだよ」

榊は、そこで初めて、こう訊ねた。

「では、PLFPの議長は、レバノン政府を(ほろ)ぼした後で、自分が大統領につく(はら)なんですか」

「同志議長は、そんなことを望んでおられない」

「では、誰が、次の支配者になるのでしょう」

「フフフ、冥途(めいど)土産(みやげ)に聞かせてやろう」

そういうと、男は有頂天(うちょうてん)になって、自分が知る限りの秘密を語りだした。

「レバノン問題は、今の政府を亡ぼしてから後の重大な評議になるんだ。

KGBのほうとも相談しなければならないから」

「へえ?」

詳しく聞き出せると踏み込んだ榊は、男に鎌をかけることにした。

「なぜです。

どうしてレバノンの大統領を決めるのに、ソ連などと相談する必要があるのですか。

昔からロシアは、トルコ国境を(おか)して、アラブ民族を(おびや)かしてきた存在じゃありませんか」

「それは、大いにあるさ」

男は、当然のように答えた。

「いくら俺たちPLFPが暴れ廻ろうたって、金や武器がなくちゃ何も出来ねえ。

俺たちの背後から、軍費や兵器をどしどし(まわ)してくれる黒幕がなくっちゃ……。

こんな短い年月(ねんげつ)に、中東を攪乱(かくらん)することはできまい」

「えっ、ではPLFPのうしろには、KGBがついているわけですか」

「だから絶対に、俺たちは敗けるはずはないさ。

訓練所は東ドイツの都市、ドレスデンにあるシュタージの秘密基地で行ってな。

そこには、KGBの手練(てだ)れ、アルファ部隊の精鋭(せいえい)たちがいた訳よ。

機関銃の扱い方や、自動車爆弾づくり、それに短剣(ナイフ)の訓練まで仕込んでくれるのさ」

 男は、饒舌(じょうぜつ)に、PLFPとKGB、シュタージの関係を明らかにした。

「でもよお、あのゼオライマーのパイロットに入れ込んでいる今の議長……

奴になってから、その秘密基地は閉鎖されちまった。

だから俺たちは、レバノンくんだりまで行ってKGBに直接指導を(あお)ごうってわけさ」

 

 だが、残念なことに榊政務次官とマサキが知己(ちき)の関係であることを知らなかった。

そして今の内容は、マサキが渡した秘密の通信装置によってすべて録音されていた。

「フフフ。どうだ、恐ろしかろう。

あんたも命が()しかったら、俺の配下に入れ、すぐここで。

KGBと関係してれば、何かあっても連中が助けれくれるしよお」

 

 男が(うなづ)くと、榊は礼とばかりに高級煙草のダンヒル*5を胸ポケットから差し出す。

赤に金文字の箱を受け取ると、右手の親指を立て、食指と中指の間に挟む。

 差し出されたライターの火で、スパスパと勢いよく空ぶかしをする。

両眼を閉じて、気障(きざ)にタバコを吸い、ふうっと紫煙を吐き出す。

そして、まるで勝ち誇ったかのように榊をねめつけた。

 

 

 

 

 テルアビブ近郊にあるベン・グリオン国際空港に、航空機は降りた。

テルアビブ近郊の都市リッダに所在するこの空港は、英国委任統治領パレスチナ時代の1934年に建設された。

長らく英国の管理下に置かれたが、1948年のイスラエル建国後は軍民共用空港だった。

1973年にかつての首相、ベン・グリオンを記念して、リッダ国際空港から現在のベン・グリオン国際空港に名前を改めた。 

 この空港に降り立った理由は、給油のため。

機内の囚人たちは休憩(きゅうけい)と称して、機外に()(はな)たれた。

そのとき、榊達、政府職員は奇妙(きみょう)なことに、機内に残った。

 

 囚人たちは、(せま)い機内から飛び出した解放感から、好きなことを口走る。

「ウへへ。あとすこしで俺たちは自由の身だぜ」

「日本政府も馬鹿だな。翼の生えたトラを野に放つようなものなのに」

不幸なことに、囚人たちは空港のロビーの先に待つものを知らなかった。

 

 囚人たちはやがて、警備兵の立っているゲートを超えて、ロビーに入った。

 その時である。

急に、四方にある防火用のシャッターが、閉まり始めた。

 異変を感じた者たちは、非常口に殺到する。

トンプソン機関銃を手に持ち、日本刀を背負った迷彩服姿の男。

彼が、駆けこんできた囚人たちの行く手を(さえぎ)ったのだ。

「ふざけんな!こんなところに立ちやがって」

男の後ろに立つ、別なトレンチコート姿の男は、不敵の笑みを浮かべ、

「ただ、君たちとお話がしたくてね」

「話だぁ?」

囚人たちは、口々に好き勝手なことを口走った。

「俺たちは法律で守られる権利がある」

「なあ、(あん)ちゃん、俺たちを殺しに来たのか。

殺しは、法に反してるから無理だよな」

 

 

 いずこより現れた、深緑の野戦服姿の日本兵。

紫煙(しえん)(くゆ)らせた彼は、囚人の一人の肩をたたく。

「なんだ、てめぇは!

俺たちを逮捕しに来たのかい。早く令状を見せなよな」

からかわれた青年は、不敵の笑みを浮かべる。

「そんなものは、ない」

彼は、物もいわず、動きもせず、くわっと、(にら)みつけてきた。

「何!」

 その場に衝撃が走った。

周囲の人間はその言葉を受けて、たちどころに凍り付た表情に変わる。

「冗談だろう……」

囚人たちの口々から思わず漏れる声に、男は笑って説明した。 

「俺には法律は通用しない。なぜなら既に、二度死んだ人間だからな」

目の前の日本兵は、判決を言い渡す司直(しちょく)(ごと)く、冷徹に答えた。

 

 囚人の代表格の男が、飛び出して、日本兵に答えた。

「日本を支配する旧態依然(きゅうたいいぜん)とした反動勢力、五摂家から解放するためには暴力が必要なのだ」

 

 日本兵の服装をした男はマサキだった。

彼は、囚人の頭目(とうもく)(さげす)みの目を向けながら、応じる。

「革命?闘争だと?たわけたことを抜かしおって、笑わせてくれるわ。

ソ連のKGBにいいように使われた、間抜けの癖をして……」

「ソ連や中共、PLFPやシュタージの手を借りたのは、その手段にしかすぎん。

この、日本政府の犬野郎め!」

マサキは天を向いて、高らかに笑った。

「フフフ、情けないのう、みじめよのう。

自力で革命も、できぬとは……」

 

 満面の笑みで、自動小銃を構えなおす。

「じゃあ、俺が本当の暴力とやらの手ほどきをしてやるよ」

M16小銃の槓桿(こうかん)を強く引き、弾倉(マガジン)内の銃弾を薬室に送り込む。

「待って、待ってくれ。は、話せばわかる」

親指で安全装置(セーフティ)を解除し、連射(オート)の位置に動かす。

「この冥王、木原マサキが手づから裁いてやるのだ。喜んで死ねぃ」

そういうと三人の男たちは一斉に囚人に向け、機関銃から弾丸を放った。

 

 鎧衣の持つイングラムM10短機関銃は、轟音(ごうおん)と共に火を()き、囚人たちをハチの巣にした。

白銀は、逃げ出そうとする者を見つけると、躊躇(ためら)いもなく(とど)めの一撃を下す。

 

 

 囚人たちは、逃げまどい、物の陰にひそみ、うろたえるのみだった。

「助けてくれ、俺たちは、お前に何もしてないだろう」

 (いのち)()いを無視しながら、マサキは、銃剣を胸に打ち込んだ。

ぱあと霧のように鮮血(せんけつ)が、一面にほとばしる。

「今になって懺悔(ざんげ)の言葉などを口走るとは……。

俺ではなくて、貴様らが手に掛けた人間に言うべきだったな」 

マサキは叫びながら、二度、三度と男の脾腹(ひばら)に刃先を突き立てた。

 

「しまった」と、狼狽(ろうばい)しているところへ、鎧衣と白銀が、機関銃で彼等めがけて盲射して来た。

すべてが()(ちが)って、囚人達は度を失い、近くにある棒をもって大立ち回りをする。

白銀めがけて鉄棒を振り回し、抗戦した。

「死ね。この野郎」

と、()(ぷた)つの勢いで、叩きつけて来た。

「あっ」

 白銀の軍靴は、コンクリート敷きの床を、ぱっと蹴った。

さすがに油断はなかった。

6尺*6近い体躯を、軽々と、後ろに跳びかわしていた。

「あきらめの悪いやつが」

 と、背に負う長剣を引き抜くやいな、一刀に斬り下げて、すさまじい血をかぶった。

日頃こらえていた怒りを発して、一閃と共に見事、両断して見せたのだ。

 

 

 鎧衣が、白銀が、殺人マシンの様に、冷徹に囚人たちを処刑している間。

囚人の代表格の男の事を、マサキは部屋の隅に追い詰めた。

そして、KA-BAR*7の茶色い革の鞘に入った短剣を投げ渡す。

「木原よ。お前は欲深い男よ」

男は、短剣をぴゅっと鞘から抜き出し、震える手で握りしめながら答えた。

「せめて、中東の地で、至らぬ身を悔悟(かいご)しつつ、死んでいく。

そう覚悟を決めたこの俺を、テロリストに引き戻そうというのか」

 

 マサキは、不適の笑みを浮かべながら、銃剣を小銃に装着する。

短剣を構えて、身動ぎすらせぬ両名の間に、何とも言えぬ空間が出来上がろうとしていた。

まるで触れることさえ、許されざる様な存在……周囲のもの達は、遠巻きに推移を見守った。

 

 男は短剣を強く握りしめると、マサキのほうに駆け出す。

余りの怒りの為、彼の眼は三白眼(さんはくがん)の状態になっていた。

「所詮は、犯罪者は、犯罪者として……」

その瞬間、短剣ごと右手を勢いよく繰り出した。

「死ねということか」

マサキは、すんでのところでかわすと、小銃の先を男に向ける。

 その刹那(せつな)、短剣からの鋭い光が、銃剣をかすめる。

火花が散り、カチンと鈍い金属の音が、不気味(ぶきみ)に響き渡る。

 男は、30分ほど抗戦したが、相手は鋭気(えいき)に満ちた若い青年である。

マサキに、さんざんに打負かされて、彼は怒声とともに、銃剣を喉元に突き立てらた。

 男の絶叫(ぜっきょう)(とどろ)くとともに、頸動脈(けいどうみゃく)からの血しぶきが、マサキに向かって降りかかる。

 

「俺からの手向(たむ)けだ」

マサキは、懐中から回転拳銃(リボルバー)を取り出し、強烈な一撃を真額(まびたい)に放つ。

男は、脳天を粉砕されるとともに、こと切れた。

 

 その日、イスラエルのベン・グリオン国際空港は、囚人たちの血で真っ赤に染まった。

こうして、マサキと日本政府の秘密工作員は、日本人テロリストをこの世から消し去った。 

 

 

 

 

 翌日、御剣(みつるぎ)雷電(らいでん)と合流したマサキたちは、彼から72時間の休暇を言い渡された。

テルアビブ市内から一切、出なければ、自由にしてよいとの条件付きで。

 さて、マサキといえば。

近代的な首都、テルアビブ市内からほど近いフリッシュマンビーチにいた。

 彼といえば、身に着けているのは、黒の海水パンツ一つで、ベンチに寝そべっていた。

燦燦(さんさん)と輝く太陽から、身を隠すようにしてビーチパラソルの陰に隠れながら、

()()かぬ生活を、この世界でもするしかないのか」と、一人、口走っていた。

 脇で、同様にしていた美久は、茶色の長い髪を風にたなびかせ、半身を上げた。

灰色のクロス・バックストラップの水着姿といういでたちで、彼に寄り添う。

「これから、どうなさるのですか。

また、この世界の人間が、あなたを、ゼオライマーを追い回すでしょうね」

マサキの表情に、硬さは残っていたが、口元は緩んでいた。

「美久、三度(みたび)俺を見送りたいか」

少しおびえたような上目遣いを向け、美久は尋ねる。

「え、それは……」

 マサキは、茶色の長い髪の彼女の顔を、じっと見つめていた。

なにかに(かわ)いている唇が、その激しい胸の高鳴りに耐えているさえ、思わせる。

 

 濃厚な沈黙を破って、マサキから美久の唇を奪った。

美久は、マサキのたくましい両手を握りしめながら、唇を吸う。

 急激な恥ずかしさが、美久を襲う。 

その行為に驚き、美久はハッとマサキの体を突き放した。

「俺は……マサトの肉体が気に入っているのだよ。

俺の三人目の肉体……もう一度赤ん坊からやり直すのを見たいか」

マサキは、再び、美久との距離を縮めて、

「それにな、世界征服の野望も、まだ道半ばだ。

(ことわざ)にあるとおり、三度の目の正直とも言おう。

俺がしでかす悪事(あくじ)を、楽しみに待って()れ」

マサキは、彼女の顔を、両腕の中にいれてじっと見ていた。

*1
三木武夫。第66代内閣総理大臣

*2
福田赳夫。第67代内閣総理大臣

*3
マブラヴ世界のよど号は、史実とは違い、1970年3月31日にハイジャック事件が発生しなかった

*4
アメリカ帝国主義。米国の蔑称

*5
ダンヒルは1967年にカレーラス・タバコ・カンパニーに買収された関係で、ダンヒル名義で煙草や喫煙具を出すようになった

*6
一尺=30.303センチメートル

*7
1889年創業のナイフメーカー、W.R.ケース&サンズ・カトラリーの商標名




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(暁の方でも構いません)


 これで、第五部は終わりです。
次回からは暁で連載中の第六部に移ります。


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(アンケート期間は2023年8月1日の午前5時まで。一番多い結果を採用させていただきます)

作者に書いてほしい話に関して(暁の連載にも影響します)

  • ミラ・ブリッジスをめぐる騒動
  • 太陽系のBETA偵察
  • 米国の陰謀及びソ連の復讐
  • アイリスディーナの軍隊生活
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