冥王来訪(ハーメルン投稿版) 作:雄渾
その際、科学者であるマサキが最前線に出ることを
マサキが戦う真意とは、
晩餐会の翌日、マサキは朝風呂を浴びていた。
そして、いつもとの
やはり、違う種類の酒を、まぜこぜに飲んだせいであろう。
日頃、酒を飲まない彼に、二日酔いの頭痛は堪えた。
何より、西ドイツのキルケと名乗る少女との一時の逢瀬もあろう。
マサキにとっても、キルケのような娘は久しぶりに心を惹かれた女性である。
初対面で平手打ちをされるなどと言う事は、彼にとっては、
ベアトリクスに叩かれたときは、ゼオライマーに強引に乗せようとしたためであったので、自分が悪いのはよくわかっていた。
マライに煙草を進めたとき、嫌な顔をされたのも彼女が喫煙習慣がなかったためであるのを知って、納得していた。
このキルケの
確かに、あまり豊かではない東ドイツ人*1の標準的な身長のマライより小柄で、スリムな体系にショックを受けたのは事実だ。
彼女に男が近寄らなかったのは、背が低く、
あの老将軍の
さしものユルゲンですら、たじろいたであろう。
もっとも、あの男は自分の妻や妹を基準に、女を選ぶ
なので、背丈が低く、胸の小さいキルケは、まず見た目で除外されよう。
思えば、マライも
でなければ、
ユルゲンの確認を取らずに、わがものにしていれば……
マサキは、
マサキは、その様なことを思い悩みながら、たくましい青年の体に、熱い湯を浴びる。
「今日はゆっくり出来るんだろうな……」
脇で、彼の背中を流す美久に予定を尋ねた。
「
「キルケとか言ったな。
あの娘と、遊び疲れたからと言って、断れ」
思わず振り返ると、美久は一瞬言葉を失ったかのようになる。
「ええ、それは
驚く美久にかまわず、ザブっと熱い湯を頭から浴びなおした。
そのようなやり取りをしているとき、風呂場に入ってきた者があった。
「先生、10分で
だんだんと湯気が晴れ渡ってきたとき、乳白色の裸身が浮かび上がる。
白銀は、自分のしたことを
耳まで赤くした美久の姿を一目見て、彼女から目をそむけてしまう。
「先生、20分差し上げますから早いとこ、すましてください」
さて、マサキたちは、予定より30分遅れて朝食会の会場に来た。
大臣から苦笑され、榊と
フランス政府関係者との食事は、北欧風の「スモーガスボード」と呼ばれるものであった。
冷たいハムやサラミ、塩や酢漬けの魚類。ぬるいコーヒーに、硬くすっぱい黒パン。
朝から並ぶワインに、ぬるい
それらはドイツでは当たり前で、朝晩とも、この「
朝食に温かい食事をとるのが当たり前だった、彼にとって非常に不満だった。
「しかし、冷えた食事を出すなど、
と心にある不満をぶちまけた。
マサキが前の世界で長くいた支那では、常に温かい食事が一般的だった。
支那兵たちは寒冷な気候も相まってか、冷えた食事を、伝統的に、極端に嫌った。
野戦でも
そばがゆにしろ、麦の
日本人の様に握り飯に
支那事変の際、帝国陸海軍は支那人
それに東洋人である自分が、北欧のゲルマン系の様に冷たい肉など食えば、体調を狂わせる。
産業革命の産物とは言うが、
思えば、ドイツは貧しい国だった。
人口増加の著しかった中世において、ドイツは常に
また地方領主が税収の為、パン焼き
その料金は、持ち込んだ
農民にとって、日々の生活に欠かせない
文字通り、
その為、パン焼きは週に一度から数か月に一回ほどに減らされて、水分を飛ばした硬く焼しめたものが好まれた。
今日、ゲルマン諸国で、シュロートブロートとして伝わるものである。
マサキは食事をほどほどにして、暖かいコーヒーで唇を濡らすと、
「美久、後でアイリスに
俺は、こんな
こんな暮らしをしていては、どんな男でも、
脇に座る美久は思わず顔を上げる。
薄く笑っているが、
「あまり、皆様を困らせない方が……」
「お前の
こんど
美久の頬が、さっきより赤くなっていることに気が付いたが、あえて無視する。
「フフフ。そう
そんな彼等の様を、彩峰は
マサキが、けだるそうに煙草をふかしているとき、声をかける人物があった。
また青年時代は、フランス共産党員でありながらハーバード大学にも留学するなどと、政治の世界を自在に泳ぐ優れた直観力の持ち主でもあった。
濃紺のチョークストライプのスーツに、ベークライトの茶色い縁の眼鏡をかけた黒髪の男。
日本風に
「ムッシュ*4・木原、どうして科学者のあなたが
天のゼオライマーというスーパーロボット、そして新型の機関、次元連結システム……。
あなたに、
この世界は、
マサキは、通訳をする白銀の言葉を待たずに返答する。
彼に対して、ずけずけと自分の意見を言った。
「それは、この木原マサキという男が、つまらぬ科学者だからだよ。
ロボット工学の科学者だからこそ、遺伝子工学の科学者だからこそ。
俺はルイセンコの
BETAという宇宙怪獣に、40億の労働力が
ただ、それだけの事さ」
首相の眉が得心を見せると、マサキは、その問題をまだ語り尽していないように、
「それに」
と、急いで言い足した。
「
実に、情けないではないか。
あのようなゴム製のスーツを着て、満足な稼働時間もない、薄ぺらな装甲板のロボットに
実に、
首相は、初対面の彼から、いきなりこれをいわれたので、つい目をキラと赤く
「妻や娘が、仮にいたとしても、俺は差し出すような真似はせぬ。
まったく、恥ずかしくて出来ぬわ」
と、マサキは声を上げて、笑い捨てた。
「男が勝負をかけるには、常に全力投球でなければならない。
BETAという怪獣退治は、100点満点のロボットでやらねばならない」
そう話す、マサキは、自身に興奮を覚えていた。
「10点、20点と段階を踏んで、最後に100点などでは遅い。
ここぞというときに、救ってやらねばならぬ存在や守るべきものがあるのではないのか。
違うか」
マサキは、しんから言った。
「この世界の科学者どもは、時間をかけすぎる。
救うべき命や富、貴重な文化。国土や資源も失われてからでは遅い……
だから貴様らが救えぬようなら、この俺が地球ごと
首相はマサキの話を聞いているあいだに「うむ」と、二度ほどうなずいていたが、
「ムッシュ木原、ではあなたは今の
と、マサキは、彼のせきこむ語気をさえぎった。
「ああ、そんな事は、
そもそも男女は、その成り立ちは脳からして違う。一緒には出来ぬ」
と、マサキがこのとき、婦人解放運動に
そんな語気を出したので、将校はみな彼へ疑惑の眼をそそぎかけた。
「人種もそうだ。白色人種、黒色人種、黄色人種……
筋肉量も違えば、脳の大きさ、特定の毒物の耐性、IQも人種ごとに異なる。」
しかし当のマサキは、そんな
初対面だった首相は、このとき、マサキという人間に、一見、よほど感じたところがあったらしい。
「ムッシュ木原、よおく分かりました。
では、我らの話を聞いていただけますね」
「よかろう」
「わが国の航空機メーカー・ダッソーにおいて、開発された新型戦術機……
ミラージュⅢに、関してですが……」
そういって、彼の秘書官から資料を受け取る。
欧州の陸軍国、フランスにおいて開発された、最新機ミラージュⅢ。
その機体は、F-5フリーダムファイターを元にした戦術歩行戦闘機の一種である。
F-5フリーダムファイターに関して、ご存じではない読者もいよう。
ここで、改めて説明をしたい。
1973年に始まった、BETA戦争における戦場の花形、戦術歩行戦闘機F-4ファントム。
この現代の騎兵は、ソ連機MIG-21に多大なる影響を与えた事がつとに有名であろう。
だが、このF-4ファントムの電子戦装備や、高価格な機体。
生産能力を持たぬ自由陣営に属する諸国は二の足を踏んでしまった。
日本や英国、金満国である帝政イランともかく、後進国のパキスタンやエチオピアでは整備すら難しい。
共産圏と対峙する韓国、台湾、南ベトナムなどの国家への配備も進めなくてはいけない。
事態を重く見た米国政府は、
新人衛士の訓練機であるT-38タロンを基に新型機を採用し、世界各国に特許情報を公開した。
その機体こそ、F-5戦術機である。
17.3メートルと小型で軽量な機体は、欧州戦線で高く評価され、フリーダムファイターの名を得た。
木原マサキが、F-5フリーダムファイターを初めて見たとき、その姿を
50メートルを
自身が作った八卦ロボと比して、跳躍力も飛行時間も短く、バランスも悪い。
またマサキ自身が、この世界に来て初めて見た戦術機。
それは、MIG-21の兄弟機であった、人民解放軍の
そして一番深く触れた機体は、F-4ファントムのライセンス品である
帝国陸軍での正式採用機であった為に、いろいろとノウハウを得られたのも大きい。
度々かかわらざるを得なかったのは、MIG-21バラライカであった。
ユルゲンの対BETA戦闘データを得る観点からも、ソ連の暗殺隊から降りかかる火の粉を払うにも。
ソ連赤軍の正式採用機、MIG-21バラライカの研究は、必要だった。
故に、海のものとも山のものとも知れない、F-5フリーダムファイター。
この機体に関しては、好きになれなかったのだ。
フランス語の資料を
「装甲板が薄すぎる。俺の求めるものではないな」
「ムッシュ木原。
でもあなたは、米海軍が採用を目指しているF14の開発者、ハイネマン博士にお会いになったばかりではありませんか」
男の質問に、マサキもいささか
「俺は、あの男と話をする前に、レバノンで火遊びをした。
ニューヨークに帰った後、そのまま、ボンに来てしまったからな……」
男は、マサキの話をじっと聞いている風だった。
重苦しい無言に押しつぶされそうだった。
「ただし、ダッソーとの研究ノウハウは俺も欲しい。貴様らとの関係も続けたい。
既存のジェットエンジンから、レイセオンのエンジンで強化する案などは気に入った」
男は感情の読み取れない目でこちらを見た後、微笑を浮かべて、手を振った。
「では、後日。
パリの首相府において、またお目にかかりましょう」
と、早々にいとまをつげて、部屋へ返っていった。
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マサキの恋愛路線に関する質問
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女と遊びながら、戦う
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色恋より戦闘描写
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