晴天を乞う者   作:LeaF_Esra

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序・昔話

 

 

遥か昔、まだ村の名も定まっていない頃。この村は深い雪に閉ざされていました。

 

あまり大きくない村でしたが、厳しい寒さに耐えながら、村人は、身を寄せ合ってなんとか日々を生きていました。

 

そんなある時、村に火の王様が現れました。

 

火の王様はとても横暴な性格で、村人達にこう言いました。

 

 

『今日からここは私の国だ』

 

 

村人達は当然反対しようとしましたが、火の王様はとても強い力を持っていたため、諦めて従うことにしました。

 

しかし、火の王様が来てからと言うもの、雪は溶け、日照りが続いて作物は上手く育たず、余りの暑さに村人も参っていました。

 

 

『このままではこの村で生きて行けなくなってしまう』

 

 

最初のうちは我慢しようと思っていた村人達も、あまりの暑さに耐えることができません。

 

村人達は悩んだ末に、火の王様に抵抗することにしました。

 

ですが、何人束になっても火の王様にはかないません。挑んだ村人は次々と倒れ、抵抗を激しくすればする程、倒れる村人が増えるだけでした。

 

作物が育たないため食料も底を尽き、川が干上がって水も汲めず、生きるのもやっとな村人達にはもう打つ手はありません。

 

もうだめだ。村人達が諦めたその時、今度は天の神様が現れました。

 

 

『人々を苦しめる火の王よ。我が力を以て貴様を成敗する』

 

 

錆び付いた鎧を纏った天の神様は、火の王様の攻撃などものともせず、その圧倒的な力で火の王様を追い払いました。

 

更に天の神様は雲を連れており、村に恵みの雨を降らせました。

 

乾き切った大地に雨が染み込み、再び命が芽生え、水不足に喘ぎ苦しんでいた村人達の元気も元通りです。

 

火の王様によって溶けた雪が戻ってくることはありませんでしたが、村には平和が戻ったのです。

 

村人達は天の神様にあらん限りのお礼をしようとしましたが、天の神様はそれを断り、連れてきた雨雲と共に直ぐに村を去ってしまいます。

 

ですが、代わりに天の神様はこの地を去られる前にこう言いました。

 

 

『人の子らよ。私はこの地に分身を残して行く。再び厄災が訪れし時、もう一度この地に舞い戻ろう』

 

 

天の神様と雨雲が去った村の上空には、それはそれは美しい晴天が広がっていました。

 

こうして村人達は天の神様にとても感謝し、「天神様(アマカミサマ)」と呼んで祠を作り、年に一度感謝を捧げるお祭りを開いて天神様をお祀りしているのです。

 

天神様の分身は、今でも祠の中に佇んでいます。お祭りの日は欠かさずにお祈りをしましょう。それが、今を生きる私たちが天神様にできる唯一の感謝なのです。

 

 

 

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