晴天を乞う者   作:LeaF_Esra

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未知の樹海、BGMが良いですよね。


十話・不可視の魔物

 クオル村の近くには、未知の樹海と呼ばれるエリアが広がっている。

 正式な狩場としてギルドに認められている訳では無いものの、調査の名目で狩猟や採集が容認されている場所だ。

 入り組んだ地形や様々なモンスターが現れる事から危険な地帯でもあるが、付近に住む人々からすれば他の狩場と同様に食料や鉱石、薬草などを採集できる資源のひとつでもある。

 クオル村も例に漏れず、未知の樹海と呼ばれるその場所で日々の糧を得ていた。

 

 

「そろそろ帰ってくる頃かニャぁ」

 

 リーフは酒場と併設されているクエストカウンターでジュースを飲みながらヒズミの帰りを待っていた。

 

「出発した時間から考えてそろそろじゃないかしら?」

 

 返事をしたのは受付嬢のメデー。薄紅色の長髪をポニーテールにしギルドの制服を身に纏う彼は、ドンドルマの受付嬢がそうであるように酒場のウェイトレスも兼任している。ただ、今は人が少ない為リーフと1対1(サシ)で話している。ちなみに制服のデザインはバルバレ式らしい。

 リーフがちびちびとジュースを飲んでいると、遠くからドタドタと騒がしい足音が聞こえてくる。時間的にヒズミ達が帰ってきたのだろう。

 

「あら、随分騒がしいご帰還ね」

 

 足音が近づきメデーも気付いたらしい。二人して入口の方を眺めていると、ヒズミと鉱夫達が慌てふためきながら酒場に転がりこんできた。

 

「な、なんか!なんかいたんだ!!」

「オレたちの鉱石が!!」

「なんもいなかったんだよ!!」

「気付いたら無くなっててよォ!!」

 

「み、みんな一旦落ち着きなさい!?」

 

▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 メデーがヒズミと鉱夫達を沈めるまでにそれほど時間はかからなかった。流石いつも酔っ払い達を相手しているだけのことはある。

 

「それで、今日は未知の樹海へ鉱石採掘に行ってたのよね?一体どうしたのよ」

 

 ヒズミが受けたクエストは鉱夫達の護衛。鉱石採掘をする鉱夫達をモンスターから守っていたはずだが、鉱石は全て投げ出してしまったのかひとつも所持しておらず、それどころかピッケルもスコップも、鉱夫達の背中には見受けられない。

 

「ええっと、どこから話したものか……」

 

 ヒズミは迷いながら、順序だてて話し始めた。

 

「まず、おれたちは採掘を終えて帰ろうとしてたんだ。手押し車に鉱石を乗せて、拠点まで運ぼうとしてた」

 

 ここまではいいよな?と確認するようにヒズミは鉱夫達をちらりと見る。鉱夫達は全員が頷いており、ここまでは間違いないようだ。

 

「それで、ここからが問題なんだ。一人がピッケルを採掘場所に置いてきたっていうもんで、取りに行かせて、そいつが戻って来て。気付いたら、その、鉱石が、無くなってたんだ……!」

 

 ヒズミの語る内容に、鉱夫達は怯えた様子で何度も頷いている。

 

「……それでみんな驚いて、ピッケルもスコップも放り出して逃げ帰って来た訳ね」

 

 呆れたようにメデーが言うと鉱夫達は、今更自分達が仕事道具をほっぽり出してきた事に気が付いたのか恥ずかしげに頭をかいた。

 

「それにしても、無くなってたって……なんで無いのニャ」

 

「それが分からないから困惑してるんだよ……周囲には何もいなかったし……」

 

 頭を抱えるヒズミ達に、鉱夫の一人がおずおずと声を掛ける。それはピッケルを取りに行っていた鉱夫だった。

 

「お、俺、実は戻って来る時に見たんだよ。詳しくは分からないけど、なんかが動いてたんだ!」

「本当か!?どんな姿だったんだ?色は?大きさは?」

「そんなまくしたてないでくれ!俺もよく分からないんだ。よく見ようと思っても、お前らの他には岩しか無かったし、薄く霧が出てて見えづらかったしよぉ……」

 

 確かにあの近くには大きめの岩が露出しており、霧が出て肌寒く思ったことも覚えている。しかし、それと鉱石の消失に関係があるとは思えなかった。

 

「もしかしたら、古龍かもしれないわね」

 

 メデーがニヤリと笑みを浮かべながら古い書籍を持ってくる。

 

「こ、古龍ニャ!?」

 

 「そんな訳ない」と言うリーフを制止し、メデーは持ってきた書籍のあるページを開いてみせる。

 

「この''オオナズチ''という古龍を見て。かつて遭遇した人によると『わずか一瞬しか姿が見えず、いつの間にか持ち物がなくなっていた』との事よ。目撃時には霧も出ていたらしいわ。……これって、今回の事件と一緒じゃない?」

 

 ヒズミ達はオオナズチについて書かれたそのページを覗き込むが、目撃情報が極端に少ないらしく、先程メデーが語った内容以外には霞のような姿の龍絵が描かれているのみだった。

 

「変な姿だニャ」

「こんなモンスターが本当にいるのか?」

 

 ヒズミ達は訝しげにぼやくが、後ろから除きこんでいた鉱夫達は不安げな様子だった。

 

「でもよぉ、古龍っつったら殆ど伝説上の生き物だぜ?こんな姿でもおかしくねえんじゃないか?」

「『天災そのもの』なんて言われるくらいだし、ありえない話じゃないよなぁ……」

 

「よし決めた。ハンターさんに依頼を出そう!」

 

 鉱夫達が異口同音に不安を口にしていると、鉱夫のリーダーが声を上げる。

 

「俺たちに?」

「お前さん達以外に誰がいるってんだ。頼むぜ、古龍にしろなんにしろ、こんな状況じゃ仕事が出来ねぇ」

「仕事道具もぜーんぶ置いてきちまって、手入れすら出来ないからなぁ」

 

 他の鉱夫も頷いている。

 

「そういう訳だ。よろしく頼むぜぃ!」

 




お読みいただきありがとうございました。次話もよろしくお願い致します。
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