ガラガラと車輪が回る。
幾度となく竜車に踏まれ、草の生えなくなった森の中の
「ハンターさん、もうすぐ森を抜ける。そうしたらクオル村だ」
竜車を御する商人の声に呼応して荷台から顔を覗かせたのは太刀使いのハンター、ヒズミ。装備はインゴットシリーズだが、今はヘルムを外しており、紫色の髪が風になびいている。
「いよいよか」
ドンドルマから竜車に揺られて二日。ようやく近づいてきたのはクオル村。山の麓に築かれた、ヒズミがこれからハンター生活を始める村だ。
「随分と長い道のりだったニャぁ」
疲れた声で言うのはヒズミのオトモアイルーのリーフ。自慢の緑色の毛並みを覆うのはロアルネコシリーズだ。
リーフがうなだれるのも無理はない。丸二日も竜車に揺られて過ごすなど初めての経験で、竜車酔いと疲労が同時に来ているのだ。
「村に着いたら村長に挨拶しなきゃだから、もう少し頑張って貰うぞ」
「うにゃぁ〜……ヒドイニャ~」
そうは言っても、村長に会わないことには家もないのだから仕方ないだろう。
そんな事を言っているうちに、周囲の木々が無くなり視界が開けた。
「おお……ここが……」
︎︎まず目に入ったのは立派な門。続いて背後に聳える山。
ㅤ山頂には薄く雪がが積もり白く染まっている。麓に近付くにつれ斜面が急になっており、地上と接する辺りには大きな洞窟が口を開けていた。洞窟の中にも明かりが見えるのは、洞窟内部まで人の営みが続いているからだ。
近づくほどにその大きさが実感出来る。旅人を歓迎するように佇むそれを抜ければ村人達の活気が伝わって来た。
「俺はこの村の商業組合に寄らなきゃならないから、ハンターさんはここで降りてくれ。ああ、荷物は後で届けるから安心してくれ」
「分かった、ここまでありがとう」
「ありがとニャー」
「さてと、村長の家は……」
ヒズミは商人と別れた後事前に貰っていた村の地図を眺める。
クオル村は大きく二つに分けられる。住居が多く存在する平地のエリアと、商業施設が集中している洞窟エリアだ。
「洞窟エリアの方か」
洞窟エリアはその名の通り、山に空いた広い洞窟の中にあり、村の主要な施設が多く集まっている。地図から顔を上げれば、目の前の山にぽっかりと空いた洞窟が見て取れた。
ちらりとリーフを見ると、呑気に毛繕いをしている。竜車内では気分が悪いようだったが、今は大丈夫のようだ。
「リーフ、行くぞ」
「ニャ〜」
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「ごめんくださーい」
村長の家は簡単に見つかった。扉を叩くと、直ぐに家主が現れた。
「はいはーい、どちら様……っと、見ない顔だね。という事は、もしかして君達がヒズミ君とリーフ君かい?」
出てきたのは男性の竜人。糸目でニコニコと微笑んでおり、ひとつに結んだ黒髪は腰ほどまである。
ヒズミ達の事は村長にも伝わっているようだ。ならば話は早い。
「はい、今日からお世話になるヒズミです」
「リーフニャ!」
「うん、二人ともクオル村へようこそ!早速だけど、君達の家に案内するよ」
案内する道すがらヒズミは村長と雑談を交わした。
「いやぁ、君達が来てくれてホント助かるよ!」
クオル村は今、外部からハンターを募集しており、ヒズミとリーフはその募集に応えてクオル村へやって来た。村長の反応はそのためだ。
「前任のハンターが引退したんでしたっけ?」
「そうなんだ。長い間頑張ってくれてたんだけど、いかんせん歳だったからね。あ、ここが君達に使って貰う家だよ」
着いたのは年季の入った長屋。古びた見た目の割に補修痕が少なく、丈夫な建物であると見て取れる。
「少し古いけど、生活に必要な物は一通り揃ってるハズだ。前の住人が置いてった物もあると思うけど、部屋の中にあるものは全部自由に使ってくれて構わないからね」
案内された部屋に入ると、家具は勿論、アイテムボックスや防具立てなどハンター生活に必要な物も揃っていた。
「これが俺の家かぁ!」
「ニャ!オレの寝床もあるニャ!」
「気に入ってくれてよかったよ。僕は家にいるから、何か困り事があったらまた訪ねておいでよ」
「ありがとうございます!」
「ありがとニャ!」
村長が去った後、部屋の中を一通り確認してみる。
「お、アイテムボックスの中に色々残ってるな。回復薬に薬草ハチミツ……凄い、暫くはアイテムに困らなそうだ」
どのアイテムもきちんとした保存処理がなされており、すぐにダメになるという事はない。ヒズミのする処理よりも出来がよく、これを残した前入居者はかなり経験を積んだ者であると伺える。
「ハンターさん居るかい?荷物持ってきたよ」
戸を叩く音と共に竜車に乗せてくれた商人の声が聞こえて来る。
「はーい、今行きます!」
こうしてヒズミのクオル村での生活が始まった。
お読みいただきありがとうございます。
主人公のヒズミは私の前作「モンハン噂話」にも登場しています。そちらを読まずとも楽しめるように努力するつもりですが、もしお読みいただけるなら幸いです。