晴天を乞う者   作:LeaF_Esra

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五話・覚悟と信頼

「遅いねぇ、ヒズミ君」

 

「すみません、私が不甲斐ないばかりに……」

 

 キルリカの独白にハートが反応する。気を失っていた彼女も目を覚まし、三人が拠点帰ってから短くない時間が経っているにも関わらずヒズミが戻らないということは、彼の身に何かがあったことは間違い無いだろう。ハートは自分が気を失わなければヒズミが危険に晒される事も無かったと考えているのだ。

 

「関係無いニャ。ヒズミは自分の意思で囮を務めたニャ。その結果危ない目に遭ったとして、それはハートのせいじゃないニャ」

 

 リーフの言葉にハートの心も少し軽くなったようだったが、それでもまだ気がかりのようだ。ソワソワと落ち着かない様子でエリア1から続く道を何度も見ている。

 

「あ、あれって!」

 

 ハートが叫んだ。つられて二人もエリア1の方を向くと、ゆらゆらと不安定な様子で歩いてくる人影が見えた。

 

「「「ヒズミ!!」」」

 

 キルリカとハートがヒズミの肩を支える。するとヒズミは安心したように力を抜いた。

 

「とりあえずベッドに寝かそうか」

 

 ベッドに寝かされたヒズミは、すぐにすやすやと寝息を立て始めた。それから少しして、ハンター訓練所で鍛えられたように短時間の睡眠で体力を回復させたヒズミは起き上がって作成会議に参加した。

 

「体は大丈夫なのかい?ヒズミ君」

 

「ああ、もう大丈夫だ。心配掛けて済まなかった」

 

「ヒズミさんが殿(しんがり)として残った後、一体何があったんですか?」

 

 ハートの問にヒズミはゆっくりと答える。

 

「ある程度時間を稼いだら俺も離脱しようと思ったんだが、ボルボロスが怒り状態になったんだ」

 

 それを聞いて三人は不思議な表情をする。怒り状態となった大型モンスターは身体能力が著しく向上する。そんな状態のボルボロスと戦ったヒズミは大丈夫なのかという不安と、そこからよくぞ帰ってくることができたという驚きからだろう。

 

「それで、どうやっ帰ってきたんだい?」

 

「怒りが鎮まるまで戦う……つもりだったんだけど、早々に痛手を食らっちゃったから、エリア……いやこの話は良い。もう一度作戦会議をしよう。狩猟中に気づいた事を挙げて行くんだ」

 

 各々が真剣な面持ちで狩猟中の出来事を思い出すが、ハートが倒れてすぐに撤退してしまった為、事前に調べた情報以上の発見は無かった。

 

「強いて言うならば、ボルボロスはやはり手強い、ということくらいか」

 

 キルリカの言葉に他の三人も賛成する。

 

「じゃあ次は連携について話したい。これはおれに意見がある」

 

 ヒズミは三人の無言を了解と捉えると続きを話す。

 

「ボルボロスの攻撃は強力だ。さっきのハートのように一撃で撤退させられる事になるかもしれない。だから、おれが囮役になってボルボロスの攻撃を集中させる。その隙に三人は攻撃を仕掛けて欲しい」

 

「ちょっと待ちたまえ」

 

 ヒズミが言い終わらぬ内にキルリカが抗議の声を上げる。

 

「囮役ならボクが適任だろう。防具の性能こそキミには劣るけど、ボクには盾があるからね」

 

「それは…..…危険だ。インゴットシリーズの方が性能は良いし、太刀は回避がしやすいからおれが務めるべきだろう」

 

 日が陰る。直射日光がなくなり幾分か暑さは和らいだが、その分熱を孕んだ風の不快さが増す。

 

「……ふむ。ヒズミ君、君は思い違いをしているようだね」

 

 キルリカはひとつ咳払いをして話始める。

 

「ボク達はハンターだ。狩りが危険だなんてことは百も承知さ。それでも、自らの信念を、覚悟を持ってここにいる。キミがするべきは怪我の心配ではなく、信頼して共に戦うことだ……違うかい?」

 

 真っ直ぐに見つめてくるキルリカに、ヒズミはいたたまれず目を逸らしてしまう。

 

「もし、ボクがキミをリーダーに任命したから慎重になってしまっているとしたら、それはボクの責任だ。すまない」

 

「いや、そんな……」

 

 頭を下げるキルリカにヒズミは動揺する。

 キルリカの言う通り、キルリカもハートも覚悟を持って狩りに参加している。危険がどうこうと言うのはお門違いも甚だしい。

 もう一度考えてみる。リーフに対してならこんな事は言わなかった筈だ。信頼することなど、共に命を預け合う仲間として持つべき最低限度の礼儀である筈だった。

 

「……ごめん。おれは、キルリカの事を信頼出来ていなかった」

 

 ヒズミはキルリカに頭を下げる。

 

「ボクだってキミと同じハンターだ。頼ってくれよ」

 

 キルリカの言葉を受けて、ヒズミはもう一度作戦について話始める。

 

「もう一度言うけど、ボルボロスの攻撃は強力だ。だから囮役に攻撃を集中させて、その隙に他の三人で攻撃を加える。そしてこの囮役をキルリカにお願いしたいんだ」

 

「任せたまえ。この盾が何のためにあるのかを、ボルボロスに教えてやるさ」

 

 キルリカはにやりと笑って引き受けてくれる。

 

「ハートは演奏で支援しつつ隙を見て攻撃、おれとリーフは泥を剥がすことを狙いつつとにかく攻撃だ」

 

「分かりました」

「了解ニャ!」

 

 太陽を覆っていた雲は去り、強い日差しが再び照りつける。だが、ひたすらに熱されたベースキャンプの熱気は日光だけのせいでは無いだろう。

 再びボルボロスと相見える為、四人はベースキャンプを後にした。




五話お読みいただきありがとうございました。
ボルボロス戦、もう少しお付き合いください。
次話もよろしくお願いします。
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