雄英の事件を別の学校から見るヒロアカ   作:御代川辰

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No.2 天哉

 入学試験日から一日が経過した日の午後。特にすることがあるわけでもなかった研磨は、散歩がてら友人である【飯田(いいだ)天哉(てんや)】に会いに行こうと自転車を漕いでいた。

 何せ幼稚園の頃から手紙を送り会う仲で家族ぐるみの付き合いもあったことも助け、今ではアポ無しで家に来ても当たり前のように談笑するほどである。

 が、基本マイペースな研磨に対して天哉はくそ真面目を絵を描いたような性格で、事前連絡無しに飯田家を訪れる度に説教をするのが一種の恒例行事となっている。

 

「天哉ー、来たよー」

 

 研磨が遠慮も加減もなくドアを叩きながら呼び掛ければ、

 

「何をしている研磨くん!家(うち)に来る時には連絡を入れろと何度言ったら分かるんだ!それと力一杯玄関の扉を叩くな!」

 

 四角いメガネをかけ、ぴしっと言う擬音が聞こえそうなほどに背筋を綺麗に伸ばした青年が勢い良くドアを開けて叫ぶ。

 

「いいじゃん、アポ無し突撃なんていつもの事だろ?」

「いいや、良くない!君もヒーローを目指すのなら親(した)しき仲にも礼儀ありの精神を心に刻むべきだ!」

 

 がみがみと短気で口煩(うるさ)い母親のように捲し立てるがその言葉に強い力を籠めている天哉と、彼の説教を聞き流す素振(そぶ)りをしながら言葉一つ一つを噛み締める研磨。

 心なしか二人の表情は笑い合っているようにも見え、関係が良好であることは疑う余地もない。

 

「ところで、研磨くんはなぜ雄英の受験に来なかったんだ?心配したんだぞ」

 

 長ったらしいが有意義な説教が終わった後、天哉の自室で雑談をしていた二人。天哉はふと思い出したように高校受験の話題を切り出した。

 

「何言ってんの?俺の第一志望は横浜の御総(みふさ)大附属大地輪(おおぢわ)高校なんだけど」

 

 研磨の口から出た答えに思わず目を見開いて繰り返した。

 

「大地輪(おおぢわ)だと!?なぜだ!」

 

 彼が驚くのも無理はない。天哉としてはてっきり同じ雄英の入学試験を受けているものと思い込んでいたらしく、雄英の試験会場に着いても研磨の姿が見えなかったことから違う学科を選択したのだろうと勘違いしていたようだ。

 

「同じ名門なら県跨いだ別の学校でも待遇や授業内容は大して変わらないかなーって思ってさ」

 

 言い方は悪いがある意味核心を突いている。天哉はマイペースな性格から来る研磨の観察眼の鋭さに感服していた。

 

「ちなみに雄英の実技試験の内容ってどんなだったの?やっぱりドンパチと救助のド派手なミックス?」

 

 返す刀で逆に質問を振り、一方の天哉は顎に指を当て、少し考えてから答える。

 

「救助活動に関しては説明がなかったから何とも言えないが、敵(ヴィラン)役のロボットを撃破して戦闘力を測る内容だったな」

 

 向かい合った相手から返って来た答えにふーんと視線を背(そむ)けると、研磨は意地悪な笑みを浮かべて呟いた。

 

「説(・)明(・)さ(・)れ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)優(・)先(・)順(・)位(・)を(・)下(・)げ(・)た(・)ってことは、天哉もまだまだ天晴(てんせい)さんには届きそうにないな?」

「うぐっ……精進しなければ!」

 

 致命的な失敗を指摘されたことでやっと自身が受けた実技試験の本質に気付いた天哉。敬愛する天晴の名まで出されては悔しい表情をするしかない。

 

「では研磨くん!君が受けた実技試験の内容を教えてもらおう!」

 

 自分の至らなさを指摘されたことがよほど悔しいらしく、普段の真面目な態度からは考えられない程に激情した表情で研磨を指差す。

 

「面接と平行して実施された個性の説明と実演だけど」

 

 が、研磨から返された予想外の答えに目を丸くした。

 個性届けから履歴書に明記されているはずの個性の内容を本人の口から説明することを求めるということは、すなわち本(・)人(・)が普段自身の個性をどのように使っているのか、あるいは本人がどのように個性の使い道を増やそうとしているのかを知ろうとしているに他ならない。

 一口に個性と言っても様々だ。

 直接戦闘に向いている個性・全く向いていない個性。

 支援に有用な個性・支援には役立たない個性。

 応用が効く汎用性が高い個性・一芸に特化した個性。

 自由に使える個性・使うには条件が厳しい個性。

 

「大地輪(おおぢわ)高校……末恐ろしいな」

 

 入学試験の時点で高い柔軟性が求められるハイレベルな学校であることを再確認した天哉は、目の前の親友を見遣る。

 

「そうだもうひとつ。入試に面白そうな受験生は居なかった?うちは居そうになかったから」

「面白そうと言うか、なにやらぶつぶつと呟くことが多い受験生が居たな。印象が良くなかったから覚えているが」

 

 癖のある緑色の髪でそばかすがある小柄な人物だったと特徴を並べ立てると、研磨は感心したような声を出した。

 

「いいじゃん……もしその受験生が合格してたら仲良くしてやりなよ。そいつ、鍛えようによっては化けるから」




NAME:飯田天哉(いいだ てんや)
QUIRK:エンジン
HEIGHT:176cm
PERSONALITY:委員長気質

原作キャラでオリ主の親友枠。多分ほとんど出て来ない。
研磨とは幼稚園の頃から文通を続けている程に関係が良好であり、アポ無しで家に来る研磨を度々説教している。
通学していた中学校が違うため、研磨と自分の志望校が違うことを試験日の翌日に本人から明かされるまで気付いていなかった。
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