『次の停車駅は
目的地の一歩手前の停車駅から電車が離れる時刻が近付き、車内放送が響く。日の光によって変わり行く窓の向こうの景色を眺めながら、研磨は電車内に漂う生暖かい視線に苛立っていた。その
「なあ萌絵画……」
ため息を一つ
視線を向けられたことがよほど嬉しいのか、走り出したばかりの電車の揺れで二つの膨らみが腕を刺激するのもお構い無しに腕の力をより強くしている。
「子供じゃねぇんだからいい加減離れろよ」
無論この程度の文句に従うような相手ではない。研磨の注意が気に入らなかったのか目に見えて不機嫌な表情になり、視線を全く意に介さず反論を垂れる。
「子供じゃないもん、恋人だもん」
「子供扱いされたことの反論がそれか」と思わず呆れかえり、ますます生暖かさを増す乗客たちの視線に怒りを覚えるが、萌絵画の個性が個性なので面倒な問題を起こして警察に迷惑をかけるような騒ぎにはしたくない。
言葉を間違えれば事件にも繋がりかねないのでぐっと
「まだ交際してるわけじゃないだろ……」
「恋人みたいに見られてるって言ったの!」
恋人と言うよりは女が積極的で男が堅物なバカップルではないのか、と研磨が思うのも自然。しかし公衆の面前でよくも堂々と恋人宣言ができるものである。
「いい加減人目の付くところで堂々と奇行をするのはやめてくれ……」
言葉遣いは悪いが、確かに萌絵画の行いは奇行ではある。だが彼女にとってはスキンシップの一つに他ならないため、やめろと言われて直ぐにやめるような思考回路 はしていない。
「研
この瞬間、笑いを堪えていた乗客の何人かが遂に吹き出した。異性をきゅん呼びする女性を初めて目にするのだから当然ではあるが、呼ばれ慣れていることもあり研磨は全く動じずに切り出す。
「だからその
「お父さんに言われてもこの呼び方だけは譲れないから!」
一組の男女の言い争いは、