徐々に前の話も表示を変えていきます。
また変態博士に抗議という名の束縛を受ける羽目になってしまった。今回は俺とコウタだけではなく、アリサもともに受けることになった。
今回の講義のテーマは、自然環境と共生だ。
アラガミを構成しているオラクル細胞はなんでも食べる。動物や植物だけではなく、鉱物やプラスチックなどの合成樹脂、さらには通常の生物には危険な核廃棄物をも食す。建造物や大地も例外ではない。その例が俺とレティシアが一番初めに転移して辿り着いた贖罪の街だ。結果、『食べ残し』である従来の環境は、現象の一途を辿っている。この辺りには春には桜を、秋には紅葉を見るという習慣もあったらしい。現在はもちろんない。というよりも、できない。俺も様々な世界を渡ってきたが、ここの環境の悪さには驚いた。何もないのだ。
アラガミは食べたものの性質を取り込むことがあるらしい。最近では光合成を行うアラガミも発見されたとか。窒素79%に酸素21%。世界中の植物が二〇年前の三割まで減ってしまったにもかかわらず、今でも地球の大気は保たれている。理由は簡単、アラガミによる光合成だ。
「………うぅん………かぁちゃん、もう食べれないよ………」
そしてこのタイミングでのコウタの寝言。
「………ホント、自覚が足りない人ですね」
それに対してのアリサの呟き。でもいいんじゃないかな。コウタみたいな奴が一人くらいはいないと暗くなってしまってしょうがない。ムードが明るいか暗いかで大分戦闘の結果がかわるからな。明るければテンションも上がって攻撃に積極的になれる。逆に暗ければテンションが下がり、攻撃に出れなくなり、防御ばかりになり、撤退することになる。撤退できればいい方だろうな。最悪殺されるし。あくまでも個人的な見解だからな。俺自身はそうだということだ。
講義はまだ続いた。
『ノヴァの終末捕食』という言葉が出た。………俺が終末に何かを捕食するのか? そんなことを考えて言えると、アリサが口を開いた。
「えぇ。アラガミ同士が食い合いを続けた先に、地球全体を飲み込むほどに成長した存在、『ノヴァ』が引き起こすとされる『人類の終末』………ですか?」
「その通り。誰かが言い始めたのかも知らない単なる風説に過ぎないとも言われているけどね」
………やばい、それ俺のことじゃないか? 地球全体を飲み込むほど成長というのはありえないが、俺―――――ノヴァが引き起こす人類の終末―――――人類最終試練―――――ラスト・エンブリオ。………まぁありえないけど。似ているだけだからね。
「『エイジス計画』が完成すれば、それからも守れるんだろ?」
コウタが言った。それに対して俺は、
「無理に決まっているだろう」
「え………?」
目を見開いて唖然とするコウタ。こいつはとことん人の話を聞いていない。
「地球全体を飲み込むほどに成長した存在、『ノヴァ』が引き起こすとされる『人類の終末』だぞ? 地球全体を飲み込むんだぞ? 地球全体が飲み込まれるのに、地球上に造り上げる『エイジス計画』でどうやって対処するんだよ」
「あ………」
このくらい少し考えれば分かることだと思うのだが。コウタはそれっきり考え込んでしまった。おおよそ、どうすればいいかでも考えているのだろう。
変態博士は急に犬のことを話し出した。犬の数は大分少なくなってしまったが存在はしているらしい。今でも稀に外部居住区で見かけることがあるらしい。犬は賢く………言葉は話せないが、俺達人間―――――神とコミュニケーションをとることができる。犬のような性質を引き継いだアラガミがいれば、共生ができるかもしれないらしい。これに対しアリサは、
「………アラガミと仲良くなんて、出来るわけないじゃない………」
と言った。確かに悪神共に創造・改造されたアラガミは絶対に不可能だ。だが、天然の、通常種なら可能性はあるかもしれない。可能性は0%じゃない………はずだ。
ここで抗議は終わった。
☆☆☆
俺は今、リンドウとアリサと一緒に任務に出ている。始めてアリサと一緒に任務に出る。少し楽しみだが―――――少し怖い。どのタイミングで心が壊れて発狂するか分からないからな。すぐに対処できるようにしておかないとな。
「お………今日は規格外と新型とお仕事だな。足を引っ張らないように気をつけるんで、よろしく頼むわ」
「旧型は、旧型なりの仕事をしていただければいいと思います」
おいおいアリサ、命を預け合う仲になるんだからその言い方はないと思うぜ。だがそんな事よりも―――――
「おいリンドウ。規格外とは俺のことか?」
「ヤイバ、お前意外に誰がいるんだ?」
「エデンではこの程度常識だ」
エデンの名を出した瞬間、アリサの目の色が変わった。今まではどうでもいいような者を見る目だったが、今はキラキラと輝いている。
「エデン………? も、もしかしてヤイバさんってエデンの方………なんですか?」
「そうだが? というよりも知らなかったのか?」
「知りませんでした!! す、すいません!! とんだご無礼を………」
「別に構わない。さっさと行こう。少し試したいこともあるし」
俺がそう言うと、リンドウがうなづいて一言。
「じゃあせいぜい期待に沿えるように頑張ってみるさ」
そう言いきり、ポンとアリサの方に触れた瞬間だった。
「キャア!!」
アリサが悲鳴を上げて後ろに飛び跳ねた。その瞬間、俺はアリサの目を見て確信した。洗脳はリンドウに関係があると。いや、正確には対象を何かからリンドウに移されたというべきか。
「あーあ………随分と嫌われたもんだなぁ」
「あ………す………すいません!! なんでもありません、大丈夫です」
「フッ………冗談だ。んーそうだなぁ、よしアリサ。混乱しちまったときはな、空を見るんだ。そんで動物に似た雲を見つけてみろ。落ち着くぞ。それまでここを動くな。これは命令だ。そのあとこっちに合流してくれ。いいな?」
「な、何で私がそんなこと………」
「いいから探せ。な? よし、先に行くぞ」
リンドウがイケメンだ。だが今はどうでもいい。後でサクヤにチクればいいからな。リンドウに一緒に行くように促されたが、正直このままアリサを一人置いて行くのは心配だ。通常のアラガミならまだしも、ここら一帯には荒神もいる。万が一荒神とアリサが出会ったら確実に殺されてしまう。なので―――――
「先に言っていてくれリンドウ。俺はここに残る」
「………そうか。なら先に行ってるぞ」
リンドウも察してくれたようだ。だが一人歩いて行くリンドウの背中からは寂しさがにじみ出ていた。サクヤにチクるのは勘弁してやろうかな………
「ヤイバさん。なぜ残ったんですか? 私なら大丈夫です」
「んー………アリサが気になるのもあるんだが………一番の理由は―――――」
一度そこで区切り、辺りの気配を深く探る。おぉおぉいるいる。最低でも一〇体はいるな。そしてすぐに言葉をつなげる。
「―――――こいつらだ」
「え―――――」
そう言った瞬間、地面から荒神が出現した。アリサが驚愕しているのを横目に荒神の形状を確認。今回は鮫型だ。そして俺はすぐさま相棒の名を叫ぶ。
「―――――《二天龍の双龍刀》!!」
右手に紅、左手に白銀の刀が収まる。
「え? え? い、一体どこからそれを………」
背後でアリサが戸惑っているが気にしてはいられない。この地形で鮫型は面倒すぎる。地面にもぐって地面から飛び出すのと同時に攻撃してくるからな。なので簡単に倒す方法は―――――本気で震脚をしてからの一撃。これに限る。
右足を頭の高さまで振り上げて一気に地面に振り下ろす。その衝撃で飛び出してきた荒神目がけて白銀の刀を投げる。そして紅の刀を振り回して白銀の刀を操作し、荒神を斬りつける。それと同時に音声が鳴り響き―――――
『Extinct』 『Extinct』 『Extinct』
『Extinct』 『Extinct』 『Extinct』
『Extinct』 『Extinct』 『Extinct』 『Extinct』
鮫型荒神が消滅していく。これで荒神の片づけは終わった。あとは背後で唖然としているアリサをどうするかだな………。
「アリサ。大丈夫か?」
「―――――は、はい!! だ、大丈夫です!!」
「そ、そうか」
大丈夫そうで何よりなんだが、なんだその目のキラキラ度は。
「じゃあリンドウと合流しようか」
「そ、そうですね」
☆☆☆
「なるほど………大車ダイゴね」
「うむ。そいつがアリサを洗脳した者だ」
任務を終えた俺は、レティシアからのアリサに関しての調査の報告受けていた。レティシアにはアリサが洗脳を受ける過程に関してエデンのネットワークを調べてもらっていた。レティシア曰く、どっさどっさでてきたようだ。その中でも一際目立ったのが大車ダイゴだ。
アリサはアラガミ―――――ディアウス・ピターとプリティヴィ・マータに両親を食い殺されるのを目撃してしまったらしい。女性医師リディア支えによりなんとか立ち直り、アラガミへの復讐の為に新型ゴッドイーターとなった。だが ロシア支部で友人となったリディアの妹オレーシャを自身のミスによってアラガミに殺されてしまったらしい。ここまででもう悲惨すぎる。こんなことがあったら誰でも発狂するわ。
二重のトラウマを負いかけたアリサだったが、担当医の大車ダイゴの手によってオレーシャに関する記憶を消去され、ロシア支部から離れた日本支部へと配属されててきたらしい。そしてこの時にアリサは記憶消去と同時に洗脳をされた。そしてその洗脳がリンドウへの敵意だ。両親を殺したアラガミをリンドウと置き換えたと。
完全とはいかなくても、ほとんど俺の推測が当たっていたな。
ということはだ。これ、リンドウと一緒に任務に行っていたらまずくないか? なんらかのきっかけで敵意が爆発してリンドウを殺すかもしれない。もしくは発狂して被害が出るかもしれない。
どうするべきか………
「レティシア………どうしたらいい?」
「私には刃がいたから問題はなかったからな………やはり支えとなる人間が必要なんじゃないか?」
支え、支えか………。誰か適任はいないかねぇ………