貴女と共に輝きたい 作:Wisteria
日高さおりが恋愛をしたら……と妄想を膨らませながら書きました。まだまだ至らないところもあると思いますが第一話、読んでいただけると嬉しいです。
とある少年はスマートフォンをけだるそうな目で眺めていた。少年が見つめるその画面の中には罵詈雑言が山のように積み重なっている。やや大きめの舌打ちと共に掠れるような何かを零し頭を搔いた。 数分後、身体を起こして散らかっている髪の毛を手櫛で整えしわくちゃのジャンパーに袖を通す。階段を降り、下の階に妹のしのぶがいることを確認すると「出かけてくる」とだけ言い残し家の門をくぐった。
少年が足を踏み入れたのはとある楽器店だった。その店の一角にあるDJブースに用がある。だが、そこには先客がいた。それを確認した少年は踵を返そうとそう思った時、1人の少女の姿が映る。
少女の華麗な指使いに。綺麗に
永遠に進まない時間に囚われたようなそんな感覚に陥り、不思議なことに少年の足は彼女の元に伸びていた。あと3m程の距離になった時、少女から少年に声がかかる。
「あの、ここ使いますか? 私もう結構ここにいるので大丈夫ですよ」
「えっ! 違います。すごい綺麗だなぁ、と思ってただけで……」
急に声をかけられた少年は驚いて心の内を暴露した。しかし、少年の顔はあたふたしており、顔は林檎の如く真っ赤である。少女はどうしているかというと、『綺麗』というワードに反応し、頬を染めている。
「あ、あの! カッコよかったです。変なこと聞くんですけどクラブとかでプレイされてたりするんですか?」
「あっ、いや、全然そんなじゃないですよ。でもDJは結構前からやってます。家にも一応一式はあるんですけど家族がいるとなかなかできないんですよね」
「それ分かります。便利ですよね、ここ。DJブース一式あって他にも色々ありますし色々見てるだけで一日経っちゃいそうです」
「ふふふ、すごい共感できます。そういえば私はもう満足したので帰りますけどどうします?」
「え……あの! もし良かったらなんですけどどこかでお話しませんか?」
少年としては同じ趣味を持つものとして話がしたかったのだが
「あはははは、本当に面白い方ですね。いいですよ、近くの喫茶店でいい?」
「は、はいっ。お願いします?」
オドオドしながらも喫茶店まで連れていかれる少年であった。
§
喫茶店にて少年は震える手を抑えながらコーヒーカップを摘んでいた。その様子を見て微笑む少女。そこの空気は少し微睡んでいる。
「そういえば自己紹介まだだったよね。私、日高さおりっていいます。まあ、今はこれくらいかな」
「あ、ありがとうございます、日高さん。犬寄直人です。本当に急にすみません」
「さおりでいいよ。私も直人くんって呼ぶからさ。そういえば直人くんはいつからDJ始めたの?」
「小学生の頃にはリミックスしたりしてましたね。でも全然人様に見せられるものじゃなかったんですけど」
「すごいよ。私なんかまだ誰かに見せられるクオリティのもの作れていませんし。その、聞いてみたいなって、思ってるって言ったら聞かせてくれますか?」
「え、えぇっと恥ずかしいんですけど……そ、そんな目で見ないでくださいよ。……聞きたいですか?」
「いやね、そこまでじゃないんだけど直人くんは私のプレイ見たのに見せてくれないんだ〜、って思ってね」
ズルいなこの人。と思いながらなくなくデータの入ったスマートフォンを差し出す直人。さおりはありがとうと言い、受け取るとイヤホンを入れ再生ボタンをゆっくりと押す。
突如始まる鋭い音、それでいて何故かうるささを感じさせない繊細さ。自然と身体が動くかのようなテンポの良さ。そんな直人の音楽にさおりは心を掴まれた。
音が止んだその刹那、さおりは両手を力強く机を叩き直人のいる方向に顔を詰めた。
「なにこれ! すっごくいい! 直人くんって実はすごいDJさんだったりする?!」
「え、ええ? 違いますって。毎回アンチコメに滅多刺しにされてる底辺ですよ。妹の方がもっと凄いんですよ」
「そっか……じゃあさ、今度から作ったら私に聞かせてよ。そんな中身のないアンチコメより私がいっぱい感想言うからさ。あっ、やば! もうこんな時間。バイバイ直人くん、次会ったらもっと話そうねっ!」
さおりは1万円札を直人に渡しその場から駆け出していく。熱の籠った少年の視線に気づかずに。
主人公と日高の邂逅でした。いかがだったでしょうか。
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