HFルートの途中でもし士郎がキャスターを助けていたらというお話   作:ふりかけ@木三中

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37話目 2月14日 夕 VSアサシン

 

「ハッ――ハッ――」

 

 息を切らしながら、柳洞寺の正門へと続く長い階段を駆け上がる。

 柳洞寺の中からは既に溢れ出る魔力を感じる。

 

 やはり、言峰はイリヤを鍵として聖杯を使う気なのか。

 

「シロウ!止まってください!」

 

 突然のセイバーの叫び声にピタリと足を止める。それと同時に俺の目の前を黒い短刀が横切っていった。

 飛んできた方向に目を凝らせば、生い茂る木々の上に黒い人影が見えた。

 

「アサシンか――!」

 

 てっきり、柳洞寺の中で言峰と共にいるのかと思っていたがここで仕掛けてくるとは。

 奇しくもかつてキャスターが召喚したアサシンが柳洞寺への門番をしていたように、このアサシンも正門へと続く階段で俺たちを排してきた。

 

「アサシンごときに――Ere・Hekátē!」

 

 キャスターが宙に描いた魔法陣から紫色の光線が発射される。

 だが、アサシンはひらりと身をかわして攻撃を避けると、そのまま木々の間を縦横無尽に飛び回り、近づいて来る気配はない。

 

「くっ……ここは、障害物が多すぎる、アサシンに有利な環境ね」

 

 キャスターが悔しげに歯噛みする。アサシンには対魔力のスキルは存在していないはずなので、キャスターの攻撃でも当たれば大きなダメージになるはずだ。

 だが、こう逃げに徹されると面倒だな、木々の多いこの場所であの俊敏さを捕まえるのは一苦労だ。

 

 言峰がイリヤを小聖杯として使用するというなら、早く行ってイリヤを助けたいところなのに――

 

「衛宮くん、セイバーとキャスターを連れて先に行って」

 

どうするか思案する俺に、遠坂がそう告げてきた。

 

「綺礼の目的が聖杯の呪いなのだとしら最悪の事態は避けなければならないわ。キャスターには大聖杯とイリヤのリンクを切ってもらって、それでも間に合わなかった時には大聖杯ごとセイバーに吹き飛ばしてもらう。ここは私と桜に任せてちょうだい」

 

 確かに、起こるべき被害を考えれば、ここはアサシンよりもイリヤの奪取を優先すべきなのだろう。

 けれど、ここを遠坂達に任せるのは……

 

「無茶だ、相手はサーヴァントなんだぞ。いくら直接戦闘で劣るアサシンのクラスといっても遠坂達だけじゃ……」

「こんな奴、私と桜だけで十分よ。でしょ桜?」

「はい、ここは私達に任せて先輩は先に言ってください」

 

俺の心配をよそに遠坂と桜は目を見合わせて頷き合う。

 

「……分かった、ここは任せる。けど無茶はしないでくれよ」

 

そう言って、正門へと続く階段を一気に駆け抜ける。

聖杯をどうにかしたら、すぐ戻ってくるからそれまで無事でいてくれよ遠坂、桜――

 

 

 

 

「…………」

 

 階段を駆け抜ける、士郎、セイバー、キャスターをアサシンは攻撃するでもなく、ただじっと見つめて、その姿が消えたのを確認するとこちらを睨む2人へと視線を移す。

 

「ハッ、衛宮君も私のこと舐めてくれるわね。コソコソ隠れることしか能のない輩に遅れをとったりしないわよ」

「はい、先輩に良いとこ見せたいですし、頑張りましょう姉さん」

 

 そうして凛は煌めく宝石をいくつか手に掴み、桜は暗い影の触手をアサシンへと向けるように自らの足元から産み出す。

 

 そんな2人を見ても、微動だにしないアサシンに対して凛が問いかける。

 

「しかし……まさかアサシンが綺礼と再契約してるとはね。2人ともとっくにのたれ死んでるかと思ったけど、しぶとい者同士お似合いってことかしらね」

 

 そんな凛の呟きにようやく髑髏面の暗殺者はリアクションを返す。

 

「ふむ……私としてはあの神父には忠誠を誓っているわけでも友誼を深めたわけでもあるまい。マスターがおらず現界が困難になったがゆえに利用していただけだ。あちらも戦力を欲しがっていたようだしな」

「利用ね……アイツは聖杯の呪いを使おうとしてるでしょ。アンタだってこの戦争に参加してる以上はなにか願いがあるんだろうし、聖杯をそんなことに使われるのは都合悪いんじゃないの」

「確かにあの神父の腹の底は私も知り得ないが、大した問題ではあるまい。セイバーとキャスターがいる以上、あの男の目論見は潰えるであろう」

 

 どうでも良さげにアサシンがそう語る、その口調からは彼自身の言う通りマスターへの忠誠などまるで持ち合わせていないことが感じられた。

 

「ハッ、呆れた。間桐臓硯のこともあっさり見限ってたみたいだし、主人をそう簡単に鞍替えするなんて、誇りの一つも持ち合わせていないのかしら」

 

 そんな凛の嘲りに対し、なんでもないことのようにアサシンが言葉を返す。

 

「確かに私は高潔な騎士だの誉れ高い戦士が言う騎士道や忠誠心を持ち合わせているわけではない。しかし……それでも私を現世に召喚した魔術師殿には命ある限り力添えしようとは思っていたのがな……」

「なら、何だって簡単に鞍替えしたってのよ」

「ライダーだ、ライダーの霊核を喰らった瞬間に魔術師殿への情もとんと消え失せてな。キャスターが何やら孫娘殿と仕組んでいることも策謀に長けたアサシンのクラス故に薄々勘づいていた。それが魔術師殿にとって致命傷となりうることもな……」

 

 ライダーの影響により情も消え果て、キャスターの策略により勝機の無いことも予測していた。

 ならば……もはや従う必要は無し、かつての主人については、それ故に見限っただけのことだとアサシンは淡々と語る。

「しかし……喰らったものの気質に影響を受けることがあるとはいえ、ここまで色濃く表れることは珍しい。ライダーの怨念がそれほどまでに深かったのだろうな」

「ライダー……」

 

 アサシンの言葉に、桜がポツリと消え去ってしまった自らの従者の名を呟く。

 

「とは言え――ライダーのマスターであった孫娘殿に関して情が湧いたわけでもあるまい。セイバーやキャスターを打ち取る前にまずはお主たちから打ち取らせてもらおう」

「ハッ……三流サーヴァントの分際でかの騎士王や神代の魔術師を倒せるつもりなのかしら?」

「確かに私は一騎当千の猛者というわけではあるまい、セイバーやキャスターを正面から討ち取ることは難しいだろう。だが、そのマスターから崩してゆけばその限りではあるまい。ちょうど私はアサシンだ、方法はいくらでもある。そして……魔術の素養溢れるおぬしらを喰えば、それはより確実なものになる」

 

 その言葉と共に髑髏面の空虚な瞳が凛と桜を睨みつける。

 それに対抗するように凛と桜も視線を返す。

 

「――――Vier……!!」

 

 真っ先に動いたのは、凛だった。

 魔力の込められた宝石をアサシンへと打ち出す。

 

 だが、アサシンはそんな動きなどお見通しとでも言うように、ヒラリと身を避けて攻撃を躱すと漆黒のダガーを桜の白い首筋に向けて投擲する。

 

「ぬっ――――その魔術は……」

 

 だが、音も無く放たれたダガーは、標的を撃ち抜くことはなく、その目前の障害物に突き刺さる。

 桜の産み出した影の壁――黒色の短剣はより深い闇へと呑み込まれるようにしてその姿を消していく。

 

「孫娘殿は魔術に対する造詣はさほど深くないと認識していたが……これもキャスターの差し金か……」

 

 かつて、ランサーやセイバーすらも呑み込んだ桜が従えていた黒い影。

 聖杯と繋がることによって得たその力はサーヴァントにとって天敵と呼べる代物だった。

 

 だが、現在は桜の肉体からは聖杯のカケラは摘出されている。

 それは第三の聖杯の材料として使用するためであったし、彼女自身を汚染された聖杯の悪影響から守るためであった。

 

 それゆえにアサシンは、間桐桜はもはや脅威になり得ないと認識していたのだが……

 

「私も……いつまでも守られてばかりじゃありません。今度は私が先輩や姉さんを……!!」

 

 その言葉と共に影の刃がアサシンを襲う。

 彼女が今行使している魔術は聖杯の力に由来したものではなく、彼女自身の素質と盗み見た臓硯の魔術知識から成るものだ。

 

 この聖杯戦争を経て、彼女自身が得た強さの証。

 

 アサシンは煩わしげにその攻撃を躱す。

 

「妹に守ってもらうほど、私だって焼きが回ってないわよ!!」

 

 桜に負けじと、凛も手にした宝石をアサシンに向けて放つ。

 

 赤、青、黄、色とりどりの鉱石が魔弾となってアサシンを襲う。

 

「ぬ…………ぅ…………」

 

 桜の産み出す影の刃、凛の放つ宝石の魔弾。

 

 その物量にアサシンも僅かに押され始め、影の刃が体の節々に切り傷を魔力の込められた魔弾が火傷となって確実にダメージを刻み始める。

 

「全く、姉妹揃って勇ましいことだ。しかし、所詮は人の身……どれだけ才があろうともサーヴァントには敵うまい」

 

 そう呟くと、アサシンは異形の右腕を2人に見せつけるかのように持ち上げる。

 

「っ…………宝具!!」

 

 ライダーやランサーを葬ったというアサシンの宝具の情報は凛と桜にも知らされている。

 詳しい原理までは不明だが、サーヴァントの霊核すらも抉りとったというその技を発動されては2人では防ぐことができないだろうということも。

 

「けど……宝具を放つ際は隙も大きい、そこを狙えば……!!」

 

 魔力を練り、宝具の真名を解放するその瞬間はどんなサーヴァントでも隙ができる。

 

 その隙を狙わんと、凛と桜も魔力を練りあげ一撃を叩き込まんとする。

 

 だか、しかし――

 

「所詮は実戦経験もろくにない小娘2人……こうも簡単に釣れるとはな」

 

 放たれたのは異形の右腕による宝具ではなく、左手から闇に紛れるように投げられたダガーであった。

 

 宝具である右腕を見せつけたのはブラフ――そう気がつくころにはダガーは凛の右肩へと突き刺さり、赤い鮮血が飛沫をあげる。

 

「くっ…………」

「姉さん!!」

 

 右肩から溢れ出る血を左手で抑えながら、凛が力なく崩れ落ちる。そんな姉の様子に思わず桜は練り上げていた魔力を霧散させて駆け寄ってしまう。

 

「他者を案ずる心は美徳だが、戦場ではそれが命取りよ」

 

 シュルシュルとアサシンの右腕に巻かれた黒い布が解かれ、今度こそ本当に宝具を発動せんと魔力が集まる。

 

「妄想心音―――」

 

人を呪う精霊の腕が、桜の心臓を握り潰さんと迫り――――

 

「ギッ――ガァァァァア!!!」

 

痛みによる叫び声をあげたのは、アサシンであった。

 

「えっ…………?」

「一体、何が…………?」

 

 桜と凛は何が起こったのか分からず、呆然と状況を把握する。

 

 見れば、アサシンの宝具たる右腕の肘から先が吹き飛んでおり、ボタボタと血が流れ出ている。

 

 そして、その近くには右腕を吹き飛ばしたと思われる黒い矢が突き刺さっていた。

 

「この矢は……衛宮君?いや違う、この矢は……」

 

 凛と桜は矢が放たれたであろう方向に視線を向ける。

 

 そうだ、この矢には見覚えがある――

 

 矢を放つ射手――そのクラスの名は――

 

「アーチャー!!」

 

 凛達の視線の先、薮の中に紛れて赤い外套を纏った男がニヒルな笑みを浮かべていた。

 

「アーチャー、あんたなんで……?ランサーにやられて消滅したはずじゃ……まさかやられたフリをしてたの?いや、それにしたって契約は切れてるんだから魔力が保つはずがない……一体どうやって……」

「凛、説明は後だ。まずは目の前の敵を片付けてからだ」

 

 自らも剣を投影し凛の傍へと駆け寄りながらアーチャーがそう答える。

 そんなアーチャーにアサシンが忌々しげな視線を向ける。

 

「アーチャー……よもや生きていたとはな。今の攻撃は完全に虚を突かれた。片腕で放たれた攻撃でなければ霊核ごと抉り取られていただろうな」

 

 そう、今のアーチャーは片腕が無い。衛宮士郎に自らの左腕を譲り渡したからだ。

 

 だが、そんなことはなんでも無いと言うようにアーチャーは言葉をかける。

 

「そう言う貴様はランサーやライダーの霊格を取り込んで、霊基の底上げを図ったのは良いが、毒されすぎてアサシンの本分を忘れたな。初手の攻撃を避けられたにも関わらず姿を晒して戦闘を継続し、伏兵の存在にも気づけない。さらには、こうしてご自慢の宝具まで失った。もはや貴様は脅威では無い」

 

 闇に紛れ、凶刃を振るってこその暗殺者のクラス。

 こうして目の前に対峙してる以上はもはや恐れる必要はないとアーチャーが挑発をかける。

 

「……宝具を使えぬのはお互い様であろう。今までどこに潜んでいたのかは知らぬが、貴様の体からはもはやほとんど魔力を感じぬ。そうして立っているのもやっとなのではないか」

「…………」

 

 アサシンの問いに対し、アーチャーはただ無言で答える。

 

「それに白兵戦が本分では無いのはお主もだろう。ランサーとライダーの霊格を取り込んだ今のワタシに敵うとでも思っているのか?」

 

 言葉と共に甲高い風切り音が鳴り響く。

 

 アサシンが手にした短剣アーチャーに向けて振るったのだ。

 

 アーチャーも投影した剣で応戦をするが、明らかにアサシンの方が動きが早い。

 

 ヒュンヒュンと幾度も切りつけられる短剣に、アーチャーは致命傷こそ避けつつも、いくつもの傷をその身に刻み、赤い飛沫が夜の空に舞い散る。

 

「……確かに、今の私ではこうして攻撃を受けるのが精一杯だ」

 

 だが、そんな状況でもアーチャーは悲嘆するどころか、むしろどこか楽しげにそんなセリフを口にする。

 

「しかし……貴様を倒すには十分だ。なにしろ、頼もしいマスターがいるのでね」

 

 瞬間、アサシンの死角――遠くの薮の中から護符が放り投げられた。

 

「なに――――!」

 

 アサシンが驚愕の声を上げると同時に護符は辺り一面を照らす閃光を放つ。

 

 ただの目眩しでしかない簡易的な魔術礼装……しかし、第三者の存在を予期していなかったアサシンは完全に不意を突かれ、光に潰れた目を覆う。

 

「グゥ――おのれ……、一体誰が……」

 

 アーチャーがここまで生き延びていたことは驚いたが、これ以上は乱入者となりえる存在などいないはず。

 

 混乱する思考と霞む視界の中、礼装が放たれた薮へと視線を向ける。

 

「えっ――兄さん――!?」

 

 戸惑いの声を上げる桜、その視線の先には彼女の義兄である間桐慎二が立っていた。

 

「どうして……家から飛び出してどこか遠くへ逃げたと思っていたのに、なんでアーチャーさんと一緒に……」

「……ふん、僕にも色々あったんだよ。ホントに……うんざりするほど色々ね」

 

 戸惑いの声を上げる桜に対して、慎二は面倒くさそうに声を返す。

 しかし、その声はトゲのあるものではなく、どこか心の重みが取れたとでもいうべき軽やかさがあった。

 

「なるほど……魔術が使えない人間であってもマスターになることはできる、アーチャーが今まで現界できていたのはこれが理由か……」

 

 未だに視力が回復しないアサシンは、目を覆いながら恨めしげにそう呟く。

 

「万が一、衛宮士郎達が間桐臓硯を倒せなかった時の伏兵として隠れていたのだ。奴がそのまま倒された後は凛の下へ戻るつもりだったが、たまたま彼を見つけてね。他にやることもあったし、彼の保護がてらしばらくこの街を離れていた」

「保護ってなんだ、お前がいきなり絡んできたんだろう!行きたくもないのに変な人形師とかいうやつのところへ連れまわされたり碌な目に遭わなかったし……」

 

 ぎゃあぎゃあと喚く慎二を無視して、アーチャーは凛と桜へと視線を向ける。

 

「さて……残念ながら私にはもはやアサシンにトドメを刺す余力が残っていない。凛、桜……後を頼めるかな?」

 

 ニッと口角を上げてそう告げるアーチャー、そんな彼に凛も同じくニッと笑って言葉を返す。

 

「当たり前よ。知らない間に慎二と契約を結んでたみたいだけど、アンタのマスターは私よ。あんまり舐めないでよね……桜、いくわよ」

「はい……姉さん」

 

凛と桜は頷きあい、それぞれが撃てる最大の魔術を発動させる。

 

「Vier Stil Erschiesung……!」

「Mein Blut widersteht Invasionen…………!」

 

 五大元素の力を込めた眩き宝石

 虚数魔術の力を秘めた深き闇

 

 二つの魔術は混ざるようにうねりあい、アサシンの体を飲み込んでしまう。

 

「ッ……………!!」

 

 アサシンの最後の言葉

 

 それが勝者への怨嗟の声か、賞賛の声か

 どちらとも分からぬままその身は跡形も無く消滅する。

 

「ハ……これで、こっちはなんとかなったわね」

「はい、やりましたね……」

 

 アサシンを打倒し、微笑み合う凛と桜だったがすぐに凛は眉を吊り上げてキッとアーチャーを見つめる。

 

「さて……どうして慎二なんかと一緒にいたのか説明してもらいましょうか?」

「……ふむ、それは先程説明したはずだが?間桐臓硯への伏兵として潜んでいたと」

「アンタね……それにしたって一言ぐらい……」

 

 せめてマスターである自分には説明ぐらいあって然るべきだと憤る凛であったが、その糾弾の声が途中で止まった。

 アーチャーの体がサラサラと霊子になってこぼれ落ちていることに気がついたからだ。

 

「……ここらがタイムリミットか、騙し騙しここまで生き延びてきたがランサーに与えられた霊核へのダメージも酷くてね。今から凛と再契約してもどの道すぐに消えるだろう」

 

 消えゆく自らの体を眺めるアーチャー、しかしバッと顔を上げると凛と桜の二人をマジマジと見つめる。

 

「しかし、まさか君たち2人がこうして仲睦まじくしている光景を見れるとはな……」

 

 沈みつつある夕焼けを背にしながら、どこか嬉しげでにアーチャーは呟く。

 

「桜、凛をよろしくな。優等生ぶってはいるがそそっかしいやつだから。それと……兄貴の方もあれで存外寂しがり屋だ、構ってやってくれ」

「えっ……はい、分かりました!任せてください!」

「はー!?誰が寂しがり屋だよ!僕がいつも桜の世話を焼いてやってたんだってーの!」

 

 喚く慎二に凛は五月蝿げに耳を覆う仕草をする、そんな二人を苦笑したように桜とアーチャーは眺める。

 

「やはり、家族で殺し合いをしている様を見るよりはこっちの方が何百倍もいいな……」

「は?アンタ、それどういう……」

 

 凛、桜、慎二を見てそんなことを呟くアーチャー。

 その真意を聞き出そうとする凛だが、既にアーチャーの体はほとんど消滅してしまっていた。

 

「さて……それじゃあ、みんな達者でな」

 

 飾り気の無い別れの言葉は、しかし晴れやかな想いを込めて。

 

「……全く、召喚した時もドタバタしてたけど消える時も急なやつね」

 

 文句を言いつつ、先程までアーチャーがいた空間を眺める凛。

 

 その口元には僅かに笑みが浮かんでいた。

 

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