異聞帯系企画SSまとめ   作:子無しししゃも

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シュメル日常編
時系列は不確定ですが恐らくアステカ戦後?


午睡

「じー」

 

 自分を捉え続ける目線に、和は何とも言い難い居心地の悪さを覚える。

 

「じー」

 

 何故効果音(?)を口に出しているのだろう。

 その疑問と疲労に、収集した情報を纏める手が鈍る。

 

「その、まだ長引きますので……王は神殿にお帰りいただければと」

「いやです」

 

 不機嫌そうに鯨の尾を振る神と視線に耐え切れなくなった魔術師。

 イラク異聞帯、ウル本島王宮執務室での午後の出来事である。

 

「わが子よ 少し 働きすぎでは?」

 

『わが子が普段どのような事をしているのか見てみたい』。

 そう言った彼女がこの部屋を訪れてから、おおよそ一時間が経っていた。

 ナンムも最初は穏やかな笑顔で和の事を静かに眺めていた。

 

 和にとっても悪い気はしなかったので、作業に力が入った事を思い出す。

 ただ、時間が経つにあたってその表情は徐々に変わっていった。

 

 にこにこしながら真剣なわが子の顔を見ていたナンムはある時から首を傾げ、少し難しそうな顔へと変わり。

 それから、今現在のような心配9割非難1割といった表情を向け続けている。

 

「いいえ、休んでいる暇はありませんから」

「王の強さは信頼しています。でも、勝利をより盤石にするためにも、やらなければ」

 

 きっぱりとしたその言葉は彼女の責任感と意思の堅さをこれ以上無いほどに雄弁に語っていた。

 その様子にナンムはふむ、と顎に手を当てて、数秒黙り込み。

 

「わが子 いっしょに お昼寝 してくれませんか」

 

 突然の提案をした。 

 

「わたしが お願いしたいのです」

「最近 夢見が 悪くて 眠れて いないので」

 

 不安そうなナンムの言葉に、和は困ったように笑う。

 それが王の本心ではない事を理解している。

 より正確には、嘘ではないのだろうがそれが第一の理由ではない、と言うべきか。

 

「……そうですね。この前、私も付き合ってもらいましたから」

 

 私も王も、ちょっと狡いmpかもしれないと和は苦笑する。

 相手に無理をしてほしくない。

 ただ、説得しようとしてもこういう時に限って相手は頑なだ。

 

 でもそんな相手を一発で説得する方法を互いに知っている。

 他ならぬ和がついこの間、ナンムに対して使った方法だった。

 

──王様、突然すみません

──一緒に、寝てくれませんか? 不安で、寝付けないのです

 

 自分をダシにすれば相手は断らないと、わかっているのだ。

 

 

 

 二人で都市王が用意した仮眠所に転がる。

 夏の暑さは今日も変わらず、一昨日仮眠した時は寝付けなかったけれど。

 一昨日とは違って和の体に巻き付けられた鯨の尾が、ひんやりとした心地よい感覚を与える。

 

「ゆっくりと 休んで くださいね」

 

 大きな蛇は卵をとぐろの中に隠すとか、前にテレビで見たことがあるような。

 その行動が本能か意識的なものかはわからないけど、神である彼女もそうなのだろうか?

 

「……はい、おやすみなさい」

 

 きっと、久しぶりによく眠れる事だろう。

 そういえば、こうやって誰かに守られるなんて、いつぶりだっただろう。

 そんな事を考えながら、彼女の意識は暗闇に包まれた。

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