和さんが夢に見たりするであろう話です
……愛しています、愛しています。
あなたたち人間を、愛しているのです。
あなたたちのためなら身を引き裂かれても惜しくはなくて、狂気に果ててしまうほどに愛おしいのです。
でも、何故でしょうか。時折、酷く不安になってしまうのです。
こんなにも愛しているのに、あなたたちは、私の手から――
「はあ、ふぅ……う、ぅぅ……!」
体中が、悲鳴を上げていました。
神核を砕かれ、真体を失い、残されたのはこの脆弱な頭脳体だけ。
それすらも、今にも滅びそうで。
でも、そんなことなどどうでもよかったのです。
それよりも、大事なことがあったのです。
「わが子、たちよ……誰か、生きては……いないの、ですか」
――母上、お気持ちはわかります。ですがこれは総意なのです
――貴女の手に抱かれて終わるならば、彼らも本望でしょう
最初の、わが子たち。
わたしと同じように力持つ者として産んだ、彼ら。
ある日、彼らはわたしにこう言ったのです。
嘆きに狂い、争い。
わたしは敗れ、深淵の海に沈められ。
……そこで、奇跡的な邂逅を果たして。
力を取り戻したわたしは、最初のわが子たちを。
でも、全てが手遅れだったのです。
世界は海に飲み込まれて、制御を取り戻したわが肉体、その海の中には、たくさんの
わたしは全てを失ったのです。子どもたちの全てを、喰らい尽くしてしまったのです。
でも。
「主よ……」
わたし以外に誰もいない、世界。
わたしが皆殺しにした、世界。
全てが終わってしまった世界で、声が聞こえました。
聞き分けのない幼子のようにそちらに駆け出して、ひざを折って祈りを捧げるその姿を目にして。
その時のわたしの歓喜がどれほどのものであったか。
「大丈夫、ですよ。もう安心です」
生きていたのです。わたしの愛しい子は、まだ滅んではいなかったのです。
母としての体裁を繕う時間も惜しくて、髪が乱れているせいで醜く果ててしまった左目を晒したままなのも忘れて。
わたしは彼らを安心させてあげるために、急いで説明をしました。
「他の神は滅んだのです。あなたたちの滅びを決定した者たちは、もういないのです」
「全て、わたしが滅ぼしました」
「だから、もう大丈夫」
わたしを見て、跪くわが子。
確か、ジウスドゥラという名だったでしょうか。
息子が気に入っていた人の子でした。
「あなた、様は……」
跪くその体は、酷く震えていて。
大気の神が消えてしまい、気候の調整がうまくいっていないのでしょう。
星の神が消えてしまい、暗闇そのものなのです。
……こんな世界ではとてもとても、生きてはいけない。
ああ、なんと愛おしくて、脆弱な命。
だから、わたしは決めたのです。
わたしは、愚かな神でした。
あなたたちに、愛するわが子に、二度とこのような苦労はさせません。
わたしの中には、わたしが手にかけてしまったわが子たちの魂も、記憶も残っています。
手の中には、生命を循環させる力。
戦いの中で一度失い、そして奇跡的にも取り戻せた権能があります。
……手遅れではなかった。
……まだ、やり直すことができる。
わたしは、愚かな神でした。
神と人、ふたつのわが子たちを、放任の果てに殺めてしまった。
今度はもう、離さない。
あなたたちに、愛するわが子に、二度とこのような苦痛は経験させません。
「大丈夫です。わたしに、全て委ねてください」
「あなたたちは、わたしの海に揺られていれば良いのです」
わたしの決意を聞いて、祈りを止めて仰ぎ見た、彼の。
その時の表情が、思い出せない。