よく分からないけど、女の子に転生したようです………   作:あんみつ炙りカルビ

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道化の王

1クラウン

 

私の旅路もここで終わり。

 

ただひたすらに走り抜けた物語、そのエピローグの時間だよ

 

人物紹介

 

名前 クラウン

魔法 雷魔法(1日2発限度)生活魔法

容姿 fgoの降ジャックドモレー参照 88 56 85の165cm

能力 同調(リンクス)

年齢 31歳(宮廷魔術師時代 14〜15歳)

概要

トーラ族の街に突如現れた赤ん坊。腫れ物扱いされながらも逞しく生き、デル城の宮廷魔術師となる。クーデター以降、残されたジャスミンと沈黙の森で暮らしていたが、リーフ達と宝石集めの旅に出る。実は影の大王によるテーガンと夢見のオパールの遺伝子を掛け合わせたデザイナーベイビーと判明。厄ネタばかりを持つ彼氏いない歴=年齢の胸や尻が弱い処女。最近の趣味はジャスミンの恋模様を煽る事だがジャスミンから泥棒猫みたいな目で見られる事が最近の悩み。後、もっとみんなと一緒に生きていたくなってる自分に戸惑ってる。

 

 

 

2名無しの道化 18:58:024

 

クラウン姉さんハァハァ…幸せになって…そして王室でリーフと幸せに暮らして…そして子供を…フフフ…末永く幸せになって(切実)

 

3名無しの道化 18:59:101

 

いぇーい

 

4名無しの道化 19:01:032

 

キタキタ

 

5クラウン 19:02:4610

 

前回までのデルトラクエスト!

 

・お姉さんの闇深い過去明らかに

 

・テーガン光堕ち

 

・第二王妃ルート解放

 

それじゃあ──終わりの始まりを話そうか

 

6名無しの道化 19:03:181

 

誰の終わりになるんですかね…

 

7クラウン 19:03:389

 

すみませんね………お姉さんの体が治るまで滞在してもらって。構わない? バルダはいい人ですね〜え、代わりにあの思春期男女をどうにかしろ、と? 最近ずっと小競り合いしてるとな。何が原因なんですかね(張本人)

 

 ほらほら、2人とも喧嘩しない………あぶねっ! くおらっ! ジャスミン! お姉さんにむけて容赦なしに回し蹴りをするんじゃない! お姉さんをキズモノにする気ですか! 何か言いたいなら直接いいなさい!

 

 私の方が先に好きになったのに………後から取るなんて狡いよ!? それは、その………いや待て、私はまだ取ってませんよ!? リーフと話も出来てませんし! え? ずっとリーフを大事にして、守ってた癖に………今更好きになるのは狡い?

 

 はい。そうですね。お姉さんは狡いです、ジャスミン。

 

 でも大事なのはリーフの気持ちじゃないですか?

 

 私達がここで争って彼に迷惑をかける事が問題でしょ?

 

 うん。そうですね。納得はできなくても理解してくださるなら大丈夫です。

 

8クラウン 19:09:266

 

というか常々思ってましたが………何で谷に霧があるんです? 呪いは解けたはずでは? は? トーラ族が魔力で人にも動物にも優しい霧を? 良くやりますね、本当に。で、リーフ達は彼らから食事に誘われてると。じゃあ、私も行きますか。守ってね、リーフ?

 

 うまうま………ゼアン様、何か御用です? 混ざらないのかですか? 見てくださいよ。あの腫物を触るような態度。あれを見せられて、近づこうという気になります? お互いに距離を取る事が大事なんですよ。

 

 まあ、別に何も思いませんから、今更滅ぼしたりしませんよ。だからそんな牽制………えぇ、仲間はずれを恐れてるわけではないですから。いいから。複雑なままなんですよ〜放っておいてくださいよ〜

 

 ………そこまで責任感じてるなら、私達の旅が終わったら大王に喧嘩を売ります。その際に今度は逃げる事を許しません。最期まで戦ってください。私達と一緒に。

 

 おや、空でアクババが何かしてますね。ジャスミン、気にしなくていいですよ。トーラの民が全力出したならアクババ1匹程度軽くあしらえますから。

 

9名無しの道化 19:13:23

 

アクババごとき余裕なんだよー

 

10クラウン 19:16:444

 

アクババは退けましたが、見知らぬ人間が谷に入ってきたですって? ゼアン様手伝ってください。もしかしたらオーカスかもしれません。性懲りも無く、私達を襲いにきたかも。

 

 なんだ………ジョーカーですか。リーフ達も出てきていいですよ〜やーやージョーカー久しぶりですね。この間あったばかりですが。どっかの誰かさんが取り逃したダイアモンドは手に入れましたよ。後ろの彼はエンドンではない事は今の貴方なら分かりますよね?

 

 貴方達はどうやってここへ? ルーカスとスカールに連れられてですか。へーい、スカール元気〜? 魂繋いで返事くださーい。元気ですか〜ならヨシ。

 

 じゃあ改めてを。ジョーカー。デルトラのベルトは集まりました。今こそ七種族集めて、世継ぎを認めさせる時です。

 

11クラウン 19:20:345

 

世継ぎがベルトをつければ真の力を発揮します。それがデルトラの書に………おや、デイン君物知りですね。何でデルトラの書の内容を知っていたんです? リーフ、何を言うつもりでした? まさかデインが世継ぎとか馬鹿な事思わないでください。世継ぎは私が分かってますから。

 

 教えてくれ? 断ります。いや仲間として信頼してないわけではないです。ただ………ギリギリまで隠した方があちら側からの襲撃がなくていいでしょう。まあ私が口封じされた場合でも分かるようにはしてますので。安心してください。

 

 ともかく世継ぎは私が分かってますので、大王による偽物作戦は効きませんから安心してくださいね。あ、それとデイン君。トーラの民にデインの母について話を聞きましたが、そんな奴は誰もいないそうですよ。そもそも街から出たがらないからね。かれらは。

 

 本当に………両親がいるなら、きっと貴方は別の種族かもしれませんね。

 

12クラウン 19:26:484

 

ジョーカー。七種族の代表者はこちらでバルダとリーフに決めてもらいました。読み上げて、リーフ。

 

なるほど

 

デル族はバルダ

 

ララド族はマナス

 

メア族はファーディープ

 

グノメ族はグラソン

 

トーラ族はゼアン様

 

ジャリス族はグロッグ

 

平原族は………迷いましたが、ルーカスとスカールですね。ジャスミン、言いたい気持ちはよくわかります。何で私が平原族代表でないのか。それは大王の策略に嵌る可能性を減らす為です。

 

もし私が平原族の代表になる事が策略に織り込み済みならば大変な目に合います。それならばルーカスとスカールを代表なたしておけば余計な目は避けられるでしょうから。ジャスミン、クリーを使って連絡を………集合場所、いいとこあります? ジョーカー。

 

13名無しの道化 19:28:12

 

クラウン姉さんのおかげで偽物作戦も効かないし上手く行きそうだな

 

>>15

 

14名無しの道化 19:28:29

 

掌の上のデイン

 

>>15

 

15クラウン 19:32:236

 

>>13

 

>>14

 

懸念事項は減らしておくべきですから

 

ベタクサ村………? ジョーカー、名前からして不潔でやばそうですが大丈夫です? 貴方を信頼してますが、最前線の基地になるのでその辺りの安全性は頼みますよ? 

 

 さて、ルーカス。申し訳ないんですが………ええ、はい。いやまあ確かに私が代表をやれれば一番早いんですが、私に何かあると後々面倒になりますので。そこを何とか私からもスカールさんを説得しますから、引き受けてくれませんか?

 

いや、本当、ありがとうございます。成功したら私の魔法薬品、無料で提供しますからね。

 

 ではジョーカー、私達はいつも通りにベタクサ村に行きます。私達が気をひいてる間に向かって下さい。懸念事項はオーカスですかね。奴が死んだとは思えません。奴が出たら私を呼んでください。戦えるのは私だけです。

 

 それじゃあ………出発の前に、ゼアン様。その四人組は何ですか?

 

16クラウン 19:41:034

 

「言わなくても分かりますから、いいですよ。私達の変わり身ですよね。漸くトーラ族の本来の役目を果たそうというわけですか」

 

 冷めた態度でクラウン姉は皮肉げに告げる。それに対し、トーラ族の人達は目を伏せた。

 

「その通りだ、クラウン。これは漸く回ってきた名誉挽回のチャンスなんだ。私達が拒んだ罪滅ぼしと………お前への贖罪をさせてくれ」

 

「許すも何もしないって言ったでしょうが。命をかけていただくのは作戦遂行の上、大いに結構。私への罪滅ぼしなんてチャチな理由をつけるなよ」

 

「クラウン。言い過ぎだ。俺たちが逆の立場ならお前だってやるだろう?」

 

 クラウン姉のあまりの物言いに、バルダの言葉が彼女の発言を止める。遠慮がなくなった分、刺々しくなったクラウン姉は呆れて溜息をつき、

 

「私がトーラ族嫌いなのは私への扱いと………貴方達に文句を最も言いたいであろう人物2人が何も言わないから責めてるんですよ。分からないでしょうけどね」

 

 それが誰を指しているかは私と………お父さんだけが理解したはずだ。クラウン姉は舌打ちひとつすると、ホルスターから薬品を取り出すと4人組に投げ渡した。

 

「これが回復ポーションです。寿命を削りますが、大怪我でも再生できます。危ないから貴方達に上げますよ」

 

「………感謝する」

 

「礼なんていらない」

 

 四人組は仏頂面のクラウン姉に頭を下げると旅立っていく。私はその背中を見て、漸く覚悟を決めた。

 

 私が──デルトラを救うのだと。

 

17名無しの道化 19:46:272

 

そういえば、世継ぎの件誤魔化してたんだったな。

 

今更ながらこれキッツいぞ。

 

18クラウン 19:49:277

 

ジョーカー、デイン。後は頼みますよ〜私達はルーカスの馬車でドナドナされながら向かいます〜いや、狭いな、結構。ジャスミン、ジョーカーと戯れてないで早く行きますよ。

 

 ん? 何です、ジョーカー。苦み走った顔をして。何か異常事態ですか? お前、いい歳して世継ぎに手を出すとか頭イカれたかですって?? 殴られたいんですか?? 

 

 仕方ないじゃないですか!! あれだけリーフがかっこいいのが狡いもん! あざといもん! お姉さんの谷間やら脚線美に目を向けてくれたら女的に嬉しいじゃないですか!!

 

あ、やめて? シャーン様に連絡だけはやめて!? あの人に軽蔑されたくない!

 

 というか立場考えろって何ですか? は? 自分の存在を考えろって言われても? はいはい。世継ぎは代々トーラ族の花嫁を迎え入れますよね。で、私は夢見のオパールというアディンの先祖の血を継ぐトーラ出身ですが、それが何か?

 

 いやいやいやまさか………ジョーカー? まさかそんな事はないですよ、流石に。シャーン様が猛反対するでしょ? 信用できるトーラ出身の王妃という説得力が凄い、いやだけども!

 

 王妃候補ならジャスミン! ほらジャスミンがいますよ! 貴方も一応代々家臣でその娘が嫁入りするならおかしくないでしょ! ねっ!? だから、私が次期王妃候補とかやめて!!

 

19クラウン 19:56:546

 

なんかどっと疲れました………ルーカス、旅路の予定を聞かせてください。デル城まで後1日ですか、帰りたくないんですけど………なんで? ちょっとシャーン様になんてすればいいか分からなさすぎて。

 

 いや、エンドン王はどうでもいいです。私が命をかけるほどの恩があるのはシャーン様の方なので。あぁ、皆さまには私の過去を話してないですね。でしたら子守唄程度に話しましょう。もう隠す事もないですからね。

 

 〜〜という訳でして。何でジャスミン泣いてるんです?? リーフも幸せにする責任………とか怖い事言わないでもらえます?? バルダ?? 俺たちを頼れ? いやまあ頼りますけど、男らしいですね??

 

20クラウン 20:03:185

 

ドナドナ〜憲兵の検閲についたよ〜やべえ。

 

 ルーカスが気をひいてる間に皆様は馬車の下から脱出を。お姉さんとルーカスは気を引きます。というか煽ります。くれぐれも横のガブリ草には入らないでくださいね? 噛まれたら血が止まりませんから。ええ、噛むんですよ、あの草。

 

 馬鹿め! 貴様らが見るのは下ではない! 上だ!

 

『アクババアだ! 馬車の上で高笑いしてやがる!』

 

『テーガンと一体化したマジのババアだ! 気をつけろ!』

 

『周りを探せ! 他の奴らがいるかもしれん!』

 

『反省を促すダンスを踊るアクババアはどうします!?』

 

『ほっとけ!』

 

 テメェらいい加減、名前を覚えてくれませんかね!?

 

 お姉さんは今年でまだ32ですよ、チクショオ!! 新必殺の餌食にしたるわ! 師匠、魔力を回しなさい! 

 

『ほどほどにしときな』

 

 決めに行きますよ──雷霆!!

 

 ふははは!! これが強化版雷撃、黒雷の『雷霆』です!!

 

21名無しの道化 20:06:46

 

相変わらずのアクババア扱いなクラウン姉さん

 

草が噛み付いてくるなんて

 

22名無しの道化 20:07:051

 

クラウンめっちゃ余裕そうで笑える

 

23クラウン 20:07:385

 

はい………お姉さん反省してます。まさか、バルダが落雷に感電するとは。ごめんなさい、いつものやつです。調子に乗りすぎてました………ええ、本番ではないように致しますので。誠にすいません。魔法薬品渡しますから、安静にしてくださいね。いやマジで。

 

 ベタクサ村に着きましたが………ジョーカー殴っていいですかね? おいそこのフード、何で今肩をビクッとさせましたか? そこのジョーカーフード野郎。さっさと案内して下さいよ、この野郎。

 

 さっすがジョーカー! 頼りになりますね!(掌高速回転)いやまさか、崩れた汚物の下に地下室みたいな形で綺麗な部屋があるとは、やるじゃないですか! あ、ジンクス、やっほー! シカトすんな、こらー!

 

 へい、グロック。申し訳ないですが、ジャリス族代表頼みますね! では、私とジャスミンは今後の話をジョーカーとしますね! リーフはバルダを頼みます!

 

 覗いたら殺す♡

 

24クラウン 20:10:545

 

「ジャスミン、先に言っておきます。貴方はこの話を聞いた後、私を殴っても殺しても構いません。私はそれだけの事を幼き貴方に強いてきた」

 

 ジョーカーの部屋に入り、クラウン姉の顔からふざけた空気は消え、差し出されたナイフと言葉を向けられる。戸惑う私にクラウン姉は言葉を繋げていく。

 

「ジャスミン………私は貴方に王族が修めるべき教育やマナーを叩き込み、戦う技術を学ばせました。ですが、それは全て………本物の世継ぎを生き残らせる為のものです」

 

「どういう事………? クラウン姉」

 

「貴方の父の名はジョーカー、いえ──真名はジャード。鍛冶屋であり、エンドンの無二の親友だった男。そして、エンドンの代わりに替え玉とトーラに向かい、追い出され、沈黙の森で暮らしていました」

 

 ジャード、それはリーフの父の名前だ。だがクラウン姉が言った名前にジョーカーは何も言わない。それが本当ならば、リーフの父の真の名前は、エンドン………?

 

「世継ぎは私じゃなくて………リーフ? 私は………影武者だったって事………じゃあ、クラウン姉は私にずっと嘘をついていたの!? 何の為に!?」

 

「全てはデルトラの為に。そしてシャーン様の血を継ぐリーフを守る為に」

 

「そんな………じゃあ、私を妹だと言った事も嘘なの!? 私は使い捨ての道具と思ってたの!? お母さんも守らなかったのはそういう事なの!?」

 

「待て、ジャスミン! それは──」

 

「ジョーカーは黙ってて! 私はクラウンと話をしてるの! 答えてよ、クラウン!! 貴方………今まで何を考えて笑ってたのよ!!」

 

25名無しの道化 20:14:00

 

ついに言ってしまったか

 

26クラウン 20:14:487

 

「何となくだけど………わかってた。リーフが何かデルトラのベルトに関わりが深いからクラウンが命をかけて守る価値があるんだって。それが明らかになった今、漸くわかったわ」

 

 もう自分でも何を口にしているかわからない。溢れかえりそうな怨嗟の言葉をただ止めどなく口からこぼしていくだけだ。堰を切ったような言葉の洪水はもはや自分では止められない。

 

「貴方からしたら、私とバルダは肉壁でしかなかったのよね! 私を育てたのは都合の良い奴隷にでもするつもりだったんでしょ!? だからそうした! そう育て上げた!

 

テーガンの子供なだけあるわね! 胎の中まで真っ黒だわ!」

 

「否定しません。私は魂の繋がりと相談して………そう決めました。怒りのまま殺してもらっても構いません。ただリーフにだけは言わないでください」

 

「………は? 何でそこでリーフが出てくるの? もういいじゃない! デルトラのベルトは完成した! 後はリーフが七種族の前でつけたらおしまいでしょ! 今更無駄にヤキモキさせる………あっ、そっか。アンタ、リーフが好きだもんね」

 

 もう、全部がどうでも良くなってくる。クラウン姉が育ててくれた記憶だけは私の確かな真実だった。それがどうだ? 与えられた愛情は無償ではなく、家畜に餌を与える有償のもの。いつか還すべきの利息でしかなくて。

 

「リーフに取り入って、次期王妃になるんでしょ? そしたら汚い過去の象徴なんてゴミだもんね、ポイって捨てちゃえばいいもの………ふざけないで!! 私が、私が、私が!!」

 

 いつからだろう、私が彼に惹かれていたのは。

 

 始まりはきっとうごめく砂でだ。宝石だけでなく、ナイフを返してもらった時のあの暖かさを私は初めて知ったのだ。

 

 次は恐怖の山で毒矢にやられた時には必死にベルトで治療してくれた。抱きしめてくれた。そこからなんとなく、彼を好きになってる自分がいた。

 

 私は間違いなく──クラウンよりリーフを先に好きになったのだ。

 

「──先にリーフを好きになったのに、取らないでよ」

 

 私は気付けばその場から逃げ出していた。

 

27クラウン 20:18:307

 

いつだって私から見たクラウンはリーフを気にかけ、誰よりもリーフを大事にした。下手したら、デルトラのベルトを集めるよりも。命をかける事も当たり前だと言わんばかりに。

 

 時折、揶揄い半分でリーフに色目を使っていたのもわかっていた。リーフがチラチラとクラウンに目を向けてることも。

 

 きっと、リーフはクラウンの事が好きなんだって。

 

 私は2人からいらない子なんだって。

 

 やだよ、やだよ………1人は寂しいよ。

 

 狡いよ、狡いって。どうして側にいて欲しい人だけ皆、私の側からいなくなっちゃうの?

 

 お父さんも、お母さんも………お姉ちゃんも、好きな人も!! 皆、私を置いて何処に行くの!? 私も連れて行ってよ!!

 

 ──私を、置いていかないで。

 

28名無しの道化 20:21:164

 

置いてけぼりで1人のジャスミン

 

29クラウン 20:21:436

 

「ジャスミン、どうかしたのかい? ひどい顔だ」

 

「リーフ………」

 

 部屋に帰る気もなく、ただ廊下で座り込んでいた私をリーフは見つけていた。彼が言うほどだ。大分ひどい顔になっているのだろう。

 

「部屋で休んだらいい。バルダやクラウンは僕に任せてよ」

 

「………部屋には戻りたくないの」

 

 我ながら情けないと思う。大好きな人がいつかは私から離れていくなんて当たり前だ。そもそもリーフは王族なのだ。父が家臣だとしても、結ばれる可能性の低さに自分が惨めになる。

 

「なら、僕の部屋に来るかい? 少し、気になる事があるんだ」

 

 だからってこんな言葉に胸を高鳴らせる自分も恥ずかしく思う。結局、私は駄々をこねているだけなのだ。影武者の件だって私がクラウンの立場なら同じ事をさせただろう。

 

 彼女は父と同じでずっと戦って来たのに。それを私は台無しにしようとしている。

 

 だけど、クラウンとリーフが結ばれる事だけは認められない。認めたくないのだ。

 

「そうね。少し、お邪魔しようかしら」

 

 私はリーフに手を引かれて、足をすすめる。

 

 繋いだ手から私の思いが全て伝わればいいのに、なんて思いながら。

 

30クラウン 20:28:186

 

「夢の泉の水を飲みたいんだ。大王の動きが知りたい。アクババに憲兵団………何か嫌な予感がする」

 

 リーフは部屋に来て、私にそう言った。昼間に水汲みに行ったリーフは危うくベタクサ村を探す憲兵にみつかりかけたのだから。懸念事項を減らしたい気持ちはわかる。

 

「大丈夫。私が側にいるわ」

 

 リーフが安心して眠れるように、枕元で手を握る。

 

 ずっと、こうして側にいれたらいいのにと思いながら。

 

 暫くすると脂汗を流して、リーフが飛び上がる。どうやらよほど酷い目にあったらしい。同時にマナス達もベタクサ村に来てくれたことで嬉しい反面、不安は重なるだらけだ。

 

 クラウンはきっと………ある程度予想はついてるのだろう。父もそうだ。私達を子供扱いしているのは危険から遠ざけるためという事も。

 

「ジャスミン、話があるんだけど。いいかな?」

 

 マナスがジョーカーに情報を伝えに行く間に、リーフから真剣な目で見られる。その吸い込まれそうな目に顔に熱が集まるのを感じながら、私は彼の言葉を待った。

 

「ジャスミン………キミが、王の世継ぎなんじゃないのか?」

 

 期待していたわけではない。けれど今は一番聞きたくない言葉で黙ってしまう。リーフはそれを見て、勘違いしたのか、私の手を強く握ってくれた。

 

「クラウンがキミを守り抜き、育て上げたんだね。ギリギリまで正体を明かさないのはキミを守るためか」

 

「………わからないわ。さっきもそれで喧嘩したもの」

 

 リーフはただ私の話を黙って聞いてくれていた。

 

31クラウン 20:35:256

 

「そっか、ジャスミンは寂しいんだね。今までと皆の関係が変わるのが怖くて僕達にも言い出せなかったのか」

 

 勘違いしたまま話は進んでいくが、リーフの言葉は私の真意を見抜いていた。彼を握る手に更に力が篭り、それを感じた彼が優しく手を重ねた。

 

「ジャスミン。たしかに女王としての生活は、森の中で育った君には窮屈かもしれない。でもジャスミン、この国を救えるのは君しかいないんだ」

 

「でも………リーフ、貴方と離れてしまうわ」

 

「そんな事ないさ。生涯君の側にいて支えると約束する。だからどうか、このベルトを受け取ってくれないか?」

 

 その言葉に、閉ざしていた唇を噛み、大きく開かれていた翠の双眸がわずかに細まる。今にも泣き出してしまいそうだから。

 

 いつだって彼は私が本当に欲しい言葉をかけてくれる。そんな彼が私を見てくれないのが、こんなに辛いなんて知らなかった。

 

「リーフ………貴方、クラウンの事好き?」

 

「えっ、今それ聞く必要はあるのかい?」

 

「答えて」

 

 有無を言わさない私の言葉に、リーフは腰からベルトを外そうとしていた手を止め、口に手を当てて。

 

32名無しの道化 20:39:19

 

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33クラウン 20:39:426

 

「仲間として………信頼してる。ただ彼女が僕に好意を向けてるなって事もわかってるつもりだ。だけど、僕は………」

 

「僕は?」

 

「いや、その、えっと………今はクラウンとどうにかなるつもりはないよ。それは本当。君を支える方が何より大事だからね。僕の父のように」

 

「クラウンより………私を優先してくれるの?」

 

「約束する。君が望むだけ僕は君の剣になろう」

 

 気付けば、大粒のそれは瞬きと同時に流れ出し、私の頬を伝って透明な軌跡を描いていた。

 

34名無しの道化 20:41:201

 

うおおおお!

 

35クラウン 20:42:286

 

は、入りづらい………ジャスミンが心配で追って来たのはいいですが、滅茶苦茶青春してる。いやまあね、リーフがジャスミンにあそこまで大事にしてるなんて思わなかったよ?まあ年も近いしね。

 

 でも、そっかあ………お姉さんは対象外かぁ。そっかあ。

 

 あ、なんかちょっと身体に力が入らない。疲れかな? 疲れだな。じゃなきゃ、ちょっと耐えられなそうだ。

 

 私が最初から優ってる部分なんて、何一つなかったのだ。いやわかってましたよ、本当本当に。

 

 ちゃんと、2人の前でも笑わなきゃね。大した取り柄もないくせに取り繕うことをやめたら貴方に価値はないのだから、クラウン。

 

 ただ、誰かがさっきから2人に聞こえないようにうめき声を漏らしてるのは──誰なんだろうね。

 

36名無しの道化 20:47:32

 

クラウン姉さん……

 

37名無しの道化 20:48:211

 

ジョーカーだったら笑う

 

38クラウン 20:49:007

 

どうしました?ジョーカー。今、ジャスミンは取り込み中ですよ。なんです? この辺りに憲兵がうろついてる理由についての心当たり?

 

 まず一つ目、私に何かしらの大王製の監視がついてるか。

 

 二つ目、デインが情報を漏らしてるか。以上の2択でしょう。

 

 さっさと儀式を始めた方がいいかもしれませんね。準備の方を進めましょう。翌日の朝までに行えたら御の字。ジャスミンが気持ちを決めてくれたら、もっといいんですが。

 

 ………何です? 目が腫れてる? 気のせいですよ。膝がガクガクしてる? 乙女の足は生まれたてのバンビと同じくらいですからね。

 

 失恋したとか言わないでくださいよ………貴方乙女心分かってます?? 

 

39名無しの道化 20:51:28

 

これがリーフ騎士ルートですね……

 

40クラウン 20:54:596

 

朝です………おはようございます。バルダ復活しましたか。助かります。いやまあ、お姉さんはちょっと寝不足なだけですよ。ええ。リーフとジャスミンを頼みます。儀礼の進行をしなくてはなら──爆発!?

 

 チクショオ、今じゃなくていいでしょうに! ジョーカー!? 敵はオーカスですか!? 違う? カーン部隊!?また面倒な。雷撃、魔法薬品は周りにバレるから使えない。厄介な戦略立てますね、このやろう。

 

 戦えるものは表に! リーフの指示に従ってください! 彼の言う通り、今こそ7部族が力を合わせて乗り越える場面ですよ!

 

 よし、リーフの指示通り固まって………ジャスミン、後ろです!!

 

41名無しの道化 20:57:14

 

失恋の感情を今こそ活かす時!八つ当たりじゃぁ‼︎

 

42クラウン 20:57:487

 

目の前で血飛沫が舞う。左腕が切られたクラウンの姿が目に映るが、腹部の衝撃でそれは妨げられた。バルダに抱えて貰えばそこにはリーダー格と対峙するクラウンとジョーカーがいて。

 

「何でお前まで来た!」

 

「大事な妹を放っておけますか!? というかリーダーの貴方が動いちゃ意味ないでしょうが!」

 

「体が勝手に動いたんだ! 仕方ないだろ!」

 

 手助けしようにもこちらもこちらで手一杯。対してあちらは精鋭を率いるリーダー。勝てるわけがない。助けに行かないと!

 

「──ジャスミン!」

 

 ただそれは言葉と掌で遮られた。

 

 その主は安心させるように笑顔で、

 

「信じて」

 

 ただ一言、告げて、2人の道化が肩を並べて迎え撃つ。

 

43クラウン 20:59:426

 

「ジョーカー、あれやりましょう。あれ」

 

「大道芸はやめたんじゃないのか?」

 

「雷が使えない以上、肉体のぶつかり合い。憲兵でも肉弾戦では真っ向からやっても勝てないのに、私ら2人でやれるとでも?」

 

「同感だな。精鋭なら相応だろう。合わせろ、行くぞ!」

 

「来い。ねじ伏せてやろう」

 

 リーダーの空気ごと断つ一撃を私が避けたと同時にジョーカーの蹴りがリーダーの横顔へ突き刺さる。隙を埋めるように細かく攻撃しつつ、少し遅れる形でほぼ同時に私も攻めに出た。

 

 まずは私の右拳がリーダーの顔面目掛けて打ち込まれるが、正面ではなく右頬に狙いを定めている。ちょうど逆手に握ったナイフが正面に来る形だ。

 

 ジョーカーも一緒に攻めているからか、私の拳を受け止めて片腕を塞がれるのは悪手だと判断したのだろう。リーダーは分身の拳を受け止めずに外側へと弾いて顔から逸らす。

 

 その瞬間、手首のスナップだけで至近距離からナイフを投擲した。

 

「……っ!」

 

 超至近距離からのナイフ投擲。これで終わってくれれば良かったが、リーダーは驚いただけで即座に顔を反らして躱す。

 

 ほぼゼロ距離から不意打ちの投擲を躱せるのは凄いと思うが、それくらいの回避能力があることは直に戦っている私が一番分かっている。

 

 投擲したナイフがリーダーの眼前を通過していき──そのナイフをジョーカーが空いている左手で掴み取った。

 

 打ち合わせもしていないのに寸分の狂いもなく合わせられた完璧なコンビネーション。

 

 サマエルの目にはそう映っているはずだ。その証拠にこの戦闘が始まって以来、ずっと余裕ある顔をしていた表情が崩れて目を見開いていた。

 

44クラウン 21:02:367

 

「見事だ………貴様らはただの雑魚ではなさそうだ」

 

 完全に当たるタイミングだった、だがあろうことか、リーダー格の男は手の剣を地面に突き刺し、身を捩るとナイフを避けて足から着地。

 

「だが、私よりかは遅いな」

 

 同時にリーダーが私に肉迫。力任せに振られた横薙ぎを頭を下げた瞬間に、顔面に膝を叩き込まれ、空を舞う。すぐさまジョーカーが駆け寄るが背後に回り込んでいたリーダーの回し蹴りが脇腹に突き刺さり、悶絶。

 

 ガラクタに突っ込んだ私の世界はぐるぐる回っている。どうにも脳震盪を起こしているらしかった。足取りが不確かなまま、顔面から滑るように大地に叩きつけられる。

 

「無様だな、貴様らは。これを大王様に逆らった見せしめにしよう」

 

 匍匐前進で逃げようとするジョーカーを踏みつけ、手にした剣を構えるリーダーに雷撃を落とそうとするが、狙いがつかない。

 

 リーダーは不敵に笑って、剣を──

 

「──お父さん、お姉ちゃん、頑張って!!」

 

 ──振り下ろされる寸前、そんな声がした。

 

45名無しの道化 21:09:211

 

ジャスミンの声援バフ凄そう

 

46名無しの道化 21:10:50

 

テーガンさんにも応援を…。

 

47名無しの道化 21:12:03

 

お父さんガンバ

 

48クラウン 21:19:047

 

目の前の憲兵の精鋭ですら手を焼くのに、リーダー格の精鋭はそれよりも遥かに強かった。最初は押していた2人が瞬く間に押し返されたのだから。

 

 斬りかかる憲兵を蹴り飛ばし、見ればジョーカーへ迫る刃。私自身にやれることはない。2人の真意を知らないまま、お別れなんて真っ平だ。

 

 だから、叫んだ。私のありのままの気持ちを。

 

「──お父さん、お姉ちゃん、頑張って!!」

 

 時が止まったと、私は思った。全てが遅くなる中で、2人の顔が唖然とした表情から、太々しい笑みを浮かべて。

 

「可愛い妹にそうまで言われちゃ………」

 

 クラウンの取り出したナイフがリーダーの右肩に投擲、突き刺さり、刃を振り下ろす腕が止まる。

 

「可愛い娘の前で………」

 

 その隙に踏みつけられた右足を捻り、リーダーを倒すが、リーダーはジョーカーを起き上がらせないように左足で蹴り飛ばす。

 

 しかし、既に回復したクラウンが右腕を取り、リーダー格の男を起点に回転。そのまま投げ飛ばし、剣を落とさせ、倒れたジョーカーを引っ張り上げた。

 

 ふらつきながら立ち上がるリーダーに、2人の道化は不敵に笑う。

 

「「ダサい姿は見せられるかよ!!」」

 

 家族の前でかっこよくありたい。

 

 そんな意地を張り通すために。

 

49クラウン 21:29:027

 

「何故だ………何故、立ち上がる!!」

 

「はっ、父親ってのは………家族の為なら幾らでも立ち上がれるんだよ!!」

 

 憲兵の蹴りの出出しを潰し、返す刀の回し蹴りをしゃがんで回避すればクラウンの上段蹴りがリーダーの顔面に突き刺さる。

 

「意地を張り通すって決めたんですから、負けられないんですよ、アンタらには!」

 

 リーダーの拳を内側から弾いて、同時にカウンター。たたらを踏むリーダーに、ジョーカーの拳が臓腑を撃ち抜き、クラウンの抜手が喉を貫く。

 

「ここで死んでおけば………良かったと、言う事になるぞ!!」

 

「今更そんなものを恐れるか」

 

「私達はとうに死んだ身。いつだって未来に命を捨てる覚悟は出来てます!」

 

 掴みかかる、リーダーの腕をダッキングでかわして、背後に回ると膝関節を砕き、左腕を捻り上げ、喉輪の状態で拘束。

 

 そして、リーダーの目の前に迫るは剣を持ったジョーカーが今にも振り下ろさんといった姿で。リーダーが何かを告げる暇もなく、刃は下ろされ

 

「前哨戦は──俺たちの勝ちだ!!」

 

 ジョーカーの宣戦と夜明けの空に勝鬨が上がるのだった。

 

50クラウン 21:32:507

 

儀礼の少し前、私は扉の前にいた。

 

 大きく息を吸って吐いて、扉を開ける。

 

「………ただいま」

 

「はい、おかえりなさい。ジャスミン」

 

 リーフと話してすっきりした。私は勝手に皆が離れていくものだと自分で決めつけていたのだ。でもリーフはそんな事ないと言ってくれた。

 

 バルダもクラウン、ジョーカーもデル城務めだ。私もそこにいれば離れる事なんてないだろう。今更ながら、王族の教育が役に立つなんて思わなかった。

 

「戻って来たという事は………協力してくれるのか?」

 

 ジョーカーの問いかけに強く頷けば、彼は肩の力を抜き、安堵の息を吐く。そのまま私はクラウンに振り返れば、左手に包帯を巻いたままの彼女に頭を下げた。

 

「クラウン姉………ごめんなさい。私が我儘言ったから、こんな事に………」

 

「いえ。悪いのは私です。ジャスミン。頭を下げないといけないのは私なんです。ごめんなさい、ジャスミン。貴方が生きた16年を利用してしまって」

 

 クラウン姉は頭を下げた。声が震えていたし、床に雫も落ちている。道化を演じていた、と彼女は言っていたけど。それでも目の前に彼女は人を嘲笑うような人ではなかった。

 

「私を信じなくてもいい。だけどこれだけは言わせてください………私は貴方を本当の妹のように思っています。私は貴方達と家族になりたかったんですから」

 

「お姉ちゃん………」

 

 2人して抱き合ってわんわん泣いた。泣いて泣いて、泣き止んで。互いの本心を明らかにして、私達は漸く本当の姉妹になれたのだ。私はそう、思いたい。

 

51名無しの道化 21:33:361

 

よかったよかった...

 

52クラウン 21:36:507

 

いい歳こいた大人がガチ泣きした大丈夫か………? まあなんだかお互いにすっきりましたし、良しとしましょう。ちょっと失恋がめちゃくちゃ後を引きそうですが。くそお。

 

 ではジャスミン。申し訳ないですが、王族として振る舞ってください。私もジャードもそう言う風に振る舞いますから。デインが何をしようとも貴方は守ります。それだけは約束しましょう。

 

 へ? クラウン姉も生きてなきゃやだ? そ、それは確約できかねますというか………人のおっぱいを叩かないでください! 痛いですから! わかりました、分かりましたから! 約束しましょう。必ず生きます。貴方を置いて死にませんから。多分、きっと。

 

 では儀礼会場に向かいましょう。リーフが待っています。

 

53クラウン 21:40:496

 

 では儀礼を始めましょう。司会進行は宮廷魔術師クラウンとデル城の衛兵バルダが執り行います。7部族は前に出てください。はい、ありがとうございます。皆様宝石に手を当ててください。

 

 ………っ! これがベルトの真の力。王族が7部族から承認を得ればこれだけの光と熱を発揮するのですか。流石ですね、リーフ。はい、リーフの推測通り。この場には実は世継ぎがいるのです。

 

 私はかつてエンドンと共に国を出て、トーラに拒まれました。その後、私達は沈黙の森に隠れすみ、やがてシャーン様は女の子を産みました。はい、皆さん、もう誰だか推測がついたようですね。

 

 では、世継ぎ──ジャスミン。前に出なさい。

 

54クラウン 21:44:506

 

息を深く吐き、私は前に出る。

 

 皆からの本当か?という疑惑の目が突き刺さる中で。

 

「正体を隠していて申し訳ありません。私が、私こそが王の世継ぎ………そこにいるジョーカー、いえエンドンの娘なのです」

 

 どよめきが走る。それもそうだろう、自分達レジスタンスが付き従っていた男こそが、かつて自分達をこんな目に合わせたエンドンなのだから。

 

「紹介に預かったジョーカー改エンドンだ。信用ならないし、信じたくないだろう。だが本当だ。だから俺は名前を隠していた。娘との繋がりがバレないようにな」

 

「おいおい、ジョーカー。冗談きついぜ? テメェは今までどんな顔でレジスタンスをやってたんだ?」

 

 ジンクスからの揶揄する声にジョーカーは何も言わない。だからこそ、私が言うべきだ。

 

「父は大王に囚われ、記憶を失っていました。私が王族だという事は姉のクラウンから教えていただきました。彼女はシャーン王妃と仲が良く、信頼に値すると思います」

 

「トーラの長、ゼアンも支持いたします。クラウンは非常にシャーンに懐いていましたから、間違いないでしょう」

 

「そういう事よ、ジンクス。ジョーカーに文句は好きなだけ言いなさい。けど、次代の王に文句は言わせないわよ」

 

 ジンクスがクラウンの眼力に肩をすくめて黙り込む。

 

 ここまでは順調だ。次に行こう。

 

55クラウン 21:51:255

 

「バルダ、リーフ。黙っていてごめんなさい。クラウン姉に口止めされていたから」

 

「全くだ! まさか、王女様と旅をしていたなんてな。リーフは気づいていたのか?」

 

「ついさっきね。ジャスミンが不安そうだったから話をしていたんだ。僕達は変わらないよって」

 

「そうだな。安心しろ、ジャスミン。俺たちは仲間だ。何があろうと共にあるだろう?」

 

「うん、ありがとう!」

 

「ではジャスミン。ベルトをつけます。リーフ。お願いしますね」

 

 私の前でリーフがベルトを取る。私がつけても意味ないそれはただのブラフだ。クラウンは言っていた。王族がいて、スパイがいるなら、間違いなく、この時点で邪魔をするだろうと。

 

 そして、邪魔する人物は──

 

「ジャスミン! エメラルドが褪せてる! 何か来る! 伏せて!」

 

「クラウン!! 何か来たぞ!」

 

 叫んだのは同時。そして、敵の襲撃もまた同じだった。

 

56名無しの道化 21:53:08

 

お、デインか?

 

57名無しの道化 21:55:32

 

誰の仕業なんだろうなぁ

 

58クラウン 21:57:557

 

 破壊したのは熱の塊。揺らめく炎がまるで生き物のように儀式場を破壊していく。何の為に? 敵を探す為に。

 

 地獄の炎より生温い、極炎を纏い、彼はここに来たのだ。

 

「ジャスミン、リーフ逃げなさい。アレは──私のお客様ですから」

 

 大規模な破壊をされた以上、秘密基地としては使えない。ならば全力を出しても問題ないわけだ。昂る感情に伴い、空気が弾け、雷鳴が鳴り、彼女は迎え撃つ。

 

「久しぶりだな、魔術師クラウン」

 

「久しぶりですね、魔導士オーカス」

 

「オーカス!? やはり生きていたのか!」

 

 リーフの言葉に侵入者オーカスはフードを脱ぎ捨てる。そこには右目に一筋の傷が入ったオーカスの顔があった。

 

「随分と男前になりましたね? その傷は自分で?」

 

「ふん。忌々しいがそこの男によるものだ。だが、今は見逃してやろう。最期の勝負だ、クラウン。貴様を殺し、私は自らの正しさを証明する!」

 

「いいでしょう。場所は離れた場所でお願いします。周りに手を出せば………分かってますね?」

 

「当たり前だ。邪魔はさせん。観客は許すがな。よく見ておけ。貴様らの希望が負けるところを」

 

59クラウン 22:04:455

 

さてさてどうしますかねって………ジャスミン、離れてもらえませんか? リーフもバルダも。いや信用ならないなんて、そんな………無理もないですね、ただ最初からやれるならそのまま押し切りたいんです。

 

 オーカスと私は似ています。この戦いはどちらが正しいかの押し付け合い。大王の指示で来たんでしょう、私をジャスミンから引き離す作戦かもしれません。リーフは悪いですが、ジョーカーと協力してジャスミンを守ってください。

 

 ジャスミンはリーフを守ってください。ジョーカーもですよ。バルダは病み上がりですからまだ安静にしてください。周りで見ていてください。危なくなったら参加してください。もしくは助けを求めたら。

 

 皆様のこと、頼りにしてますから。

 

60クラウン 22:07:507

 

キリがいいので前編はおしまいっ! 次回は未定!

 

果たしてスパイは誰なのか………!?

 

オーカスvsクラウンの行方は………!?

 

61名無しの道化 22:09:05

 

お疲れー!俺はどの結末でも受け入れられるぞ...

 

62名無しの道化 22:20:052

 

ハッピー、ハッピー出でお願いします

 

63名無しの道化 22:27:443

 

ハッピーで終わるならハッピーでいいんじゃないかな

 

どうせ次の部で大王ちょっかい出してくるし…

 

>>64

 

64クラウン 22:29:352

 

>>63

 

ちょっかいやめてほしいよね………

 

65名無しの道化 22:48:551

 

2部以降も続くんならバッドでも構わないかな

 

最終的にハッピーエンドなるなら過程が何であれいいのだ

 

>>67

 

66名無しの道化 22:55:151

 

どっちも行こうぜ(強欲

 

67クラウン 23:00:366

 

>>65

まあ、私が死んでも残されたみんなが幸せならいいですからね

 

68名無しの道化 23:01:101

 

ハッピーもバッドも見たい強欲な民

 

天運に任せるしかないか……

 

69名無しの道化 23:04:10

 

そんなこと考えてるの…????

 

>>70

 

70クラウン 23:07:207

 

>>69

 

代替え品の役割なら慣れてますから

 

71名無しの道化 23:40:291

 

ハッピー→ハッピー→ハッピーは無いんですか・・・

 

>>72

 

72名無しの道化 00:28:28

 

>>71

 

ハッピー→ハッピーならあるぞ

 

73名無しの道化 01:07:41

 

幸せな終わりでもいいと思うぞ

 

74名無しの道化 01:09:444

 

≫ジャスミン。たしかに女王としての生活は、森の中で育った君には窮屈かもしれない。でもジャスミン、この国を救えるのは君しかいないんだ

 

≫そんな事ないさ。生涯君の側にいて支えると約束する。だからどうか、このベルトを受け取ってくれないか?

 

 

 

見覚えあるなぁ

 

>>78

 

75名無しの道化 08:25:07

 

リーフ君、ダイヤモンド持ちながらお姉さんにお話しようか?

 

>>76

 

76名無しの道化 11:22:37

 

>>75

 

なんか効果あったっけ?

 

>>77

 

77名無しの道化 11:36:40

 

>>76

 

ジャリス族が有していた透明な宝石。『純潔と力の象徴』

 

心正しき者が持てば力と勇気が湧き災いを避けられる。

 

一方で不正を嫌っており、正しくない手段でダイヤモンドを得ようものなら、報復を受ける。「死」という形で。

 

なんか嘘つくと色褪せるとかそんなんだったがする

 

78クラウン 13:09:075

 

>>74

 

ジャスミンが聞いたらきゅんきゅんするだろうな………と思って引用しましたね。

 

79名無しの道化 18:47:27

 

姉さんがキュンキュンするセリフは…???

 

>>81

 

80名無しの道化 22:06:52

 

 

81クラウン 00:09:173

 

>>79

 

抱きしめられて

 

「──君が好きだ、ありのままのクラウンが」

 

ですかね

 

>>82

 

82名無しの道化 00:55:57

 

>>81

 

あら~。

 

そのまま、リーフ君食べられそう

 

83名無しの道化 08:42:07

 

いよいよ終盤か。

 

次が楽しみだ。

 

>>84

 

84名無しの道化 17:47:44

 

>>83

 

厄ネタ整理したいな。ハッピーエンドになる気がしなさすぎる………

 

85名無しの道化 23:21:49

 

戴冠式が楽しみ

 

86名無しの道化22/01/08 02:11:34

 

保守

 

87名無しの道化22/01/08 13:56:00

 

保守!

 

88名無しの道化22/01/08 23:33:32

 

保守

 

89名無しの道化 05:14:30

 

保守

 

90名無しの道化 15:02:50

 

ほし

 

91名無しの道化 19:45:36

 

保守

 

92名無しの道化22/01/10 02:39:17

 

 

93名無しの道化22/01/10 10:28:56

 

感想スレ落ちたな

 

94名無しの道化22/01/10 18:20:254

 

いやー一気読みしたけど楽しかったな

 

クラウン姉さんの過去編とか失恋の話が特に好き

 

1部のラストがどうなるか気長に待つとしよう

 

>>95>>96>>103

 

95名無しの道化22/01/10 22:49:21

 

>>94

 

私は2.3.4の流れが一番好き

 

96名無しの道化 01:03:434

 

>>94

 

姉さんの過去とか話の構成が上手いよね

 

97名無しの道化 03:14:52

 

保守

 

98名無しの道化 11:48:064

 

こんなお姉さんと冒険に出られたら本当に楽しいだろうなぁ

 

場所がデルトラ王国という魔境なのが数少ない最大の懸念点ではあるのだけど

 

>>99

 

99名無しの道化 22:20:06

 

>>98

 

こういうのってよくエッッッなネタに使えそうな魔法とか原住生物とかあるもんだけど、

 

デルトラは危険すぎて応用も難しいよね。

 

おちおち昼寝もできない…(とある骨を見ながら)

 

100クラウン 07:38:496

 

準備に時間がかかるな

 

101名無しの道化 18:55:23

 

楽しみに待ってる

 

102名無しの道化 21:05:25

 

2日かけて現行スレ追い付いた!!!

 

クラウンお姉さん、ラストも楽しみにしてます!!!

 

>>103

 

103クラウン 23:16:375

 

>>94

 

>>102

 

意外と今から追いつこうとしてる人が多くて嬉しい。因みに今は、クラウンがピーチ姫してます

 

>>104

 

104名無しの道化 23:18:303

 

>>103

 

大丈夫???城壊してない????

 

>>106

 

105名無しの道化 10:23:08

 

保守

 

106クラウン 20:52:05

 

>>104

 

王妃が住む場所を壊しませんよ………いやまあ壊しかけた事はありますけども………

 

107名無しの道化 23:54:35

 

クラウンのアトリエ〜道化の少女と闇の傀儡〜

 

>>114

 

108名無しの道化 11:13:12

 

保守

 

109名無しの道化 13:30:00

 

保守

 

110名無しの道化 23:25:28

 

ほしゅ

 

111名無しの道化22/01/15 06:23:27

 

保守

 

112名無しの道化22/01/15 16:15:02

 

保守

 

113クラウン22/01/15 17:39:579

 

進歩

 

現在リーフ、世継ぎと判明からのラストバトル

 

>>116

 

114クラウン22/01/15 22:52:034

 

>>107

 

サブタイが不穏すぎない?

 

でも実際デル城で過ごしてた時はちょっぴりアトリエ風味だったりします

 

115名無しの道化22/01/16 09:00:52

 

ほし

 

116名無しの道化22/01/16 09:11:43

 

>>113

 

リーフ「クラウン…!?今まで騙してたのかぁ!!」

 

っていうバトル展開

 

117名無しの道化22/01/16 11:40:01

 

保守

 

118クラウン22/01/16 22:20:136

 

明日の夜19時から後編開始です。

 

>>119

 

119名無しの道化22/01/16 22:21:32

 

>>118

 

はーい

 

120クラウン【イメージ画像】 00:06:0611

 

眼鏡を取られてちょっと困ってるクラウンお姉さん

 

>>123>>124

 

121名無しの道化 05:32:02

 

保守

 

122名無しの道化 07:22:52

 

このスレは面白いです

 

123名無しの道化 11:49:18

 

>>120

 

30には見えない若さ

 

124名無しの道化 15:48:09

 

>>120

 

かわよ

 

125名無しの道化 15:49:47

 

これで30後半なんだぜ…まさに美魔女だ

 

126名無しの道化 16:09:15

 

影の大王って本名あるんだっけ

 

127クラウン 19:00:097

 

後編、始めようか。

 

128名無しの道化 19:02:22

 

いえーい!

 

129名無しの道化 19:02:44

 

感想スレ誰か立ててくれない?

 

130クラウン 19:03:406

 

私にとって──奴は何か。

 

 答えはすぐに出た。奴は私と似たモノでありながら、別の道を選んだ怪物なのだと。

 

 私は幼い頃から、人とは別の"力"があった。火を操る力は冬の寒さを越える村で大事に扱われたのだ。だが過ぎた力は身を滅ぼす。

 

 ある日のことだ、村近くに原生生物が現れ、大人達は果敢に挑んだが、ただ餌になるばかり。悲鳴と怨嗟の中で自分はまだ持っていた良心を信じて、莫大な炎で原生生物を燃やしたのだ。

 

 ──以来、私は村の地下で監禁された。

 

 怖かったのだ。彼らにとって、私という人物は。

 

 力に平伏すしかないから、力に怯えるしかない弱い生き物だから。

 

 だから、彼らはその子供を10年監禁して、存在を忘れた。その時だ。牢屋の隅の光も刺さない暗闇で何かが動いたのを。

 

『良い力だ………私の下につけ。私はお前を恐れない』

 

 そうだ、あのお方は私が最も欲しかった。その言葉を言ってくれたのだ。死ぬだけの子に生きる灯火を与えてくれたのだ。

 

 私は人間が嫌いだ。だから私は自分が嫌いだ。

 

 けれど、あのお方の役に立つことができる自分なら──好きになれたんだ。

 

「来たか」

 

 待ち人が来る。観客にいるのはバルダという男にデイン率いるジンクスとレジスタンスの雑用とドール族の長、そして………トーラ族。

 

「決着、つけましょう………私の憎い好敵手」

 

 クラウンは短剣を構えて、そう言った。

 

131名無しの道化 19:06:40

 

新しく感想スレを立てました。

 

>>132

 

132名無しの道化 19:06:501

 

>>131

 

デルトラ二次創作ss感想3次会|あにまん掲示板

 

よく分からないけど、女の子に転生しました………の感想スレです。画像はクラウン姉さん。

 

bbs.animanch.com

 

133クラウン 19:07:144

 

やっぱりというか、リーフやジャスミンは巻き込めなかった。頼りにしたかったが、彼らには彼らの役割がある。命を散らすのはここではない。2人は最後まで渋っていたが、

 

『なら、俺が付き添おう。それでいいな?』

 

 バルダの言葉に渋々納得し、2人はルーカスの馬車でジョーカーと安全な隠れ家を目指す。デインは疑い含めてジンクスと残された。笑う。

 

 結局、私達がデインの尻尾を出す作戦は失敗したわけだ。ただ悪いばかりじゃない。ここで奴らの戦力を削れるのは渡りに船だ。

 

「最初は任せるが、危なくなったら参加する。いいな?」

 

 問題なしと頷く。深く息を吸って、吐いて。自分の魂が兄姉と繋がっている事を再確認。中心では13人の子供に囲まれた師匠が小気味よく笑っていて。

 

『後悔しないように、頑張りな』

 

 その言葉に押されて、私達2人の魔法使いは夜の帳が下りた世界で、光を灯す。太陽の様な揺らめきと月のような煌めきを持って。

 

「来たか」

 

「決着をつけましょう、私の憎い好敵手」

 

 因縁に終止符を打つ。その為に。

 

134クラウン 19:08:083

 

「今宵の私はらしくもなく、苛立ってるようでね………」

 

 燃えるような、鮮血のような、炎の使い魔を並ばせて、虚空に顕現させるのは数百にも及ぶ、熱の弾丸。

 

「小手調べで終わってくれるなよ!」

 

 轟ッッ!と周辺の地理を火の海に変える地獄の業火が巻き起こる。夜空まで焼き尽くし塗り潰すような煉獄の炎上網を展開させ、魔導士は魔術師と対峙する。

 

 対して、魔術師は両手を合わせて離す。それだけで生まれる黄金色の輝き。それが13の怪物の形を取る。魂が繋ぐ力との重ね技。自分以上の化け物と繋がるからこそできる荒技だ。

 

「怪物達と13日の金曜日(ヴァンドルディ・トレイズ)」

 

「まずは使い魔勝負か、面白い!」

 

 炎の使い魔と雷の使い魔がぶつかり合う。その間にクラウンは短剣を持ち、接近。オーカスもまた、炎熱による剣を呼び出し、斬り結ぶ。

 

「魔導士が剣使わないで貰えます!?」

 

「魔術師が剣を使うのもおかしいだろう」

 

 どちらも譲らずにぶつかり合う。両手に持った短剣でオーカスの刃を滑らせて、足をかけて後ろに流すとノールックのまま薬品を投擲。

 

 オーカスは空いた手で炎を放つが、当たった瞬間に視界を煙が包む。

 

135クラウン 19:09:554

 

クラウンが用意した魔法薬品、対オーカス用………空気に触れるだけで凍り始める、液体窒素の強化版。炎を凍らせる真似など出来ないが足止めには充分。

 

 煙を切り裂き、オーカスに刃が飛来。魔法による防御で迎え撃とうとしたが、すぐさまその場から飛び退く。瞬きの間にいた場所に黒雷が落ちる。

 

 余波だけで吹き飛ばされる一撃。雷鳴だけでも鼓膜が破れそうな光景を前に飛ぶ魔法薬品。それを頭を振ってかわすが同時に飛んできたナイフにより、破裂。

 

 フレアの炸裂をまともに受けて、

 

「………化け物ですか、貴方は」

 

「私は炎の魔導師だ。炎にくらい耐性はある」

 

 その男は一片の揺るぎもなく、そこにいた。

 

(炎相手に魔法薬品は無意味ですね。雷霆、雷帝ならばオーカスの魔法防御は破れそうですが………)

 

(使い魔と先程の雷撃。今までならばもう打ち止めだが………あの顔を見る限り、まだ撃てるようだな)

 

 考える。考えなくてはならない。どちらも当たれば即死の炎と雷なのだ。問題はその攻撃をどうやって当てる状況に持ち込むか。

 

(近接に持ち込めば勝機はあります。そのためには──)

 

(逃げ場を潰す物量で押すか)

 

 考える時間はこれで最後だ。後はそこに至るのみ。

 

136クラウン 19:12:296

 

これを言葉にする事が彼女への1番の非礼だろう。

 

 幼い頃、商品に紛れ、トーラの街に入ってきた赤ん坊………粘り強くような、その身に宿す邪悪な魔力。誰もが殺すべきだという。

 

 だがあの子は殺そうとした私の手を握り、笑ったのだ。何かしらの罠かもしれない。分かっていてやっているかもしれない。

 

 けれど、私はそのどちらでもない可能性を信じたのだ。

 

 ただ彼女は生きたいだけなのだと。

 

 長たる私の意見を納得させる為に、妥協を重ねた結果、いつ死んでもおかしくない状況の生活。

 

 それで生まれた恨みや辛さから私達を、街を滅ぼす為に雷魔法を編み出したとばかり思っていた。けれど、それが、

 

『これで皆んなから認められる! シャーン姉様の役に立てる! 恩を返せる!』

 

 ただ、私達に認められたかっただけだと聞いて。私は自分を恥じた。トーラの民も思う所が何人かいたのだ。今更虫が良い話。掌返しの方が多かったのも認めましょう。

 

 それでも私は貴方を認めました。

 

 だから、貴方がもっと世界を見られるようにその眼鏡をプレゼントしたのです。

 

137クラウン 19:14:196

 

貴方は言いました。今回は仲間を頼ると。けれどトーラの民の殆どはこうも思ってしまっている。

 

 ──自分達が出る幕はないのでは?

 

 既に貴方は私達の中でも唯一の魔術師になっている。また相手もそれに連なる強敵。かつての私達なら貴方を信じるなど甘い言葉で逃げていたでしょう。

 

 それでも私達がいるのは、かつての罪から今の罰から逃げない為です。貴方と王族を見捨てた私達は今度こそその命を持って償うべきですから。

 

「久しぶりに………貴様に勝つ為に新たな魔法を生み出した」

 

 オーカスは全身から迸るほどの熱と共に、姿がぶれる。その残穢に炎がまとわりつけば、新たに生まれるオーカスの姿。

 

「使い魔ではなく、本体を増やしましたか!」

 

「そうだ。さてここで質問だが………」

 

 オーカスは腕を出すと、分身たちも腕を構える。

 

「分身が魔法を使うか、使わないか。選ばせてやる」

 

138クラウン 19:18:127

 

「無茶苦茶すぎます! 師匠か、あなたは!」

 

 既に温度は加熱の始まった焼き窯のような有様で、流れ出る汗が端から蒸発し、炙られる肌が今にも焦げそうな状態だった。

 

 飲み込む唾すらない、乾いた唇は既に切れ、クラウンは舌で舐め取りながら、炎の渦を捌き切る。だが完全にジリ貧。数が違うのだ。仕方あるまい。

 

 今までだったら、無理矢理突破。けれど今は頼れる仲間がいる!

 

「バルダ!! 手を貸してください!」

 

「よしきた! 任せろ!」

 

「僕らも行きますよ! レジスタンス!」

 

 既に臨戦態勢のバルダがオーカスの分身に斬りかかる。これでオーカスの分身達をレジスタンスが停めに行く。気を散らせればそれでいい、さっさと決めなくては皆が危ない。

 

 目の前の男が表情を歪めるほどに激情を宿しているからだ。人間に裏切られた彼にとって安い助けを求める私はさぞ滑稽に見えるだろう。

 

「でも、それでいいんです。道化に滑稽なんて褒め言葉ですから」

 

 それに、私が信じようと信じなくても、私を信じてくれる人しか動かない。

 

 現に、トーラ族は動かない。まあ別にいいですが。

 

 けれどそれを目敏く見つける奴は勿論いて。

 

「やはり、貴様は私と同じだ。クラウン」

 

139クラウン 19:21:256

 

「貴様は人間を信じていないだろう? でなければこの場で最も役に立つ人間どもが動かないわけがない」

 

「いけしゃあしゃあと、何言ってんですか。というか、レジスタンスの力を借りてる、私が人間を信じてないわけ………」

 

「──貴様はそうやって魅せるのが上手いな、クラウン。道化なだけある。だが、本当に貴様が人間を信じているのならば。彼らに助けを求めたはずだ。お前はそこまで馬鹿ではないのだから」

 

 オーカスの腕から火の鞭………いや、違う。空気を食らい、熱を呑み、巨大化して行く陽炎の蛇。否、赤き竜。デルトラの象徴とも呼ばれる炎の竜というファンタジーが目の前に顕現した。

 

「貴様は何を拒否している? 奴らが憎いならばさっさと殺せば良かったのだ。私もお前も選ばれた魔法使い。その権利をみすみす人間の為に投げ捨てるというのか?」

 

「なんつー傲慢な………」

 

「傲慢なのは貴様もだろう? 強いから貴様は私と何度も戦ったじゃないか。仲間達を置いて、ただ一人で。それが貴様が真の意味で人間を信じられないからだ」

 

 返答は黒い雷だった。正直に言えば失策だった。

 

 図星を築かれて頭に血がのぼったのだから。

 

 私は"仲間"は信じている。勿論だ。あれだけ私の為に命をかけてくれたのだから。

 

 だから仲間じゃない、トーラ族を私は信じていないのだ。

 

140クラウン 19:22:054

 

「貴様は人間を信じていないだろう? でなければこの場で最も役に立つ人間どもが動かないわけがない」

 

「いけしゃあしゃあと、何言ってんですか。というか、レジスタンスの力を借りてる、私が人間を信じてないわけ………」

 

「──貴様はそうやって魅せるのが上手いな、クラウン。道化なだけある。だが、本当に貴様が人間を信じているのならば。彼らに助けを求めたはずだ。お前はそこまで馬鹿ではないのだから」

 

 オーカスの腕から火の鞭………いや、違う。空気を食らい、熱を呑み、巨大化して行く陽炎の蛇。否、赤き竜。デルトラの象徴とも呼ばれる炎の竜というファンタジーが目の前に顕現した。

 

「貴様は何を拒否している? 奴らが憎いならばさっさと殺せば良かったのだ。私もお前も選ばれた魔法使い。その権利をみすみす人間の為に投げ捨てるというのか?」

 

「なんつー傲慢な………」

 

「傲慢なのは貴様もだろう? 強いから貴様は私と何度も戦ったじゃないか。仲間達を置いて、ただ一人で。それが貴様が真の意味で人間を信じられないからだ」

 

 返答は黒い雷だった。正直に言えば失策だった。

 

 図星を築かれて頭に血がのぼったのだから。

 

 私は"仲間"は信じている。勿論だ。あれだけ私の為に命をかけてくれたのだから。

 

 だから仲間じゃない、トーラ族を私は信じていないのだ。

 

141クラウン 19:24:415

 

 ムカつきますが、奴の言いたい事は大まかに当たっているのです。私は、トーラ族を真の意味で仲間とは認めていない。どうせ私を認めていない人間を仲間と認められるはずがないのだから。

 

 認められない理由は至ってシンプルです。

 

 ──怖い。それに尽きます。

 

 助けを求めた手が何度も振り払われてきました。

 

 救いを願った声が嘲笑われた事もありました。

 

 許す許さないの話ではないのです。

 

 また助けを求め、手を借りようとして、その手を振り払われるのが怖いのです。

 

 貴方達を信じて、本当にいいのか困っているのです。

 

 ではどうすればいいのですか? 誰か分かりますか?

 

 その時、彼女は言いました。いつものように憎たらしく

 

『下らないねえ、こう言えばいいのさ。〇〇〇〇〇ってね』

 

 本当に無駄に200年生きたババアなだけあって、その言葉は随分とすんなり入ってきた。じゃあそうしようか。断られても、自分で誤魔化すことが出来るから。

 

『──けろ』

 

 私は叫んだ。今にも炎の蛇が襲い掛かる目の前で。

 

『──私を助けろ、トーラ族!!』

 

 ──随分と傲慢な救援を。

 

142クラウン 19:27:496

 

あの人は昔から不思議な人だった。周りからどう見られるかに徹底的にこだわり抜いて笑ってる、そんな人だった。あの人がジャスミンと呼ばれる女の人の前で笑っていたけれど、あんな笑顔は私の前ですらなかったように思える。

 

 詰まるところ、私は比較的信頼されてるだけで信用までは言ってなかったのだと察した。けれど仕打ちを考えれば当然だろう。むしろ、皆殺しにされないだけ温情だ。

 

 だから怖かったはずなのだ。嫌な筈なのだ。

 

 だけど、彼女は望んだ。

 

『──私を助けろ、トーラ族!』

 

 私達の助けを。あの彼女が。そう、求めたのだ。

 

「ゼアン様!」

 

「ええ、分かっています………分かっていますとも。マリリン」

 

 私の声にゼアン様は強く頷くと、息を吐く。誰もが真面目な顔で、体を回し、いつ来るかその言葉を待っていて。

 

「──行きましょう」

 

 ゼアン様がそれに応えるように足を踏み出し、魔力を手に、空へ掲げる。

 

「行きますよ! 我らが同胞を助ける為に!」

 

 あの人を真の仲間として認める為に。

 

 私達は一丸となって走り出した。

 

143名無しの道化 19:29:55

 

良いとこ見せろー!トーラ族!

 

144クラウン 19:33:497

 

「なんだ、これは………」

 

 意味がわからなかった。確かに先程まではクラウンはトーラ族に助けを求める事を拒んでいた。それが今ではトーラ族達は彼女を守る為に囲んでいる。

 

 拒否されることもなく、見捨てられない、正しく人間の武器である協力、絆、仲間などという生温い光景が目の前に広がっていて。

 

「ふ、ふざけるなぁぁぁ!!」

 

 火の蛇を仕向けるが、トーラ族達の魔法が発動。ドーム状の魔法空間が私の蛇を押し退け、分身達すら消して行く。つまり、分身が消えれば、

 

「そこだぁ!!」

 

 バルダやデインと言った男達の剣が降りかかる。この空間では魔法さえうまく使えない。ならば自分にこの勢いを覆す手段はない。敗北は決定事項だ。

 

だが、奴にだけは負けられない。バルダを剣で受け流し、前蹴りで吹き飛ばし、奴を探す。

 

「雷・速・連携──」

 

 見つけた。バルダの背後。影に隠れるようにして、最後の雷撃。黒い雷を右手に宿した女が真正面からこちらに突っ込んでくる。

 

 あの時と同じ状況。ならばカウンターを狙う!

 

 左手に生み出した熱の剣。それを進行上の彼女に向けて振り下ろし──

 

「オーカス。貴方は強い人です………だけど、怒りで視野が狭くなりましたね。以前の貴方なら勝ち筋があっても容易く乗ってこなかった」

 

 その剣閃を鼻先で停止し、回避したのだ。

 

 まるで未来がわかっていたかのように。

 

「これが………絆の力です。オーカス。貴方が捨てた筈の」

 

 雷帝、と彼女の黒雷が私の心臓を貫いた。

 

145クラウン 19:36:146

 

あ、あぶねー。ギリギリじゃないですか、マジで。最後も1秒の未来予知がなかったら負けてましたし。マジで化け物じゃないですか、オーカス。

 

 死ぬ前ですが何か言い残したい事ありますか? 童貞捨てたいとかならマリリンがやってくれますよ、きっと。痛い!! マリリン!? 人の頭を靴で殴らないで貰えます!?

 

 お、何です? 私と貴方で何が違うかですか? 可愛さとか? おいバルダ、何で笑った? まあ真面目な話。出会いですよ、間違いなく。

 

 私は泥の世界で星を見つけました。その光を見たくてここまで走り続けてきたのです。貴方は泥の世界で闇を見た。そのまま闇に呑まれてしまった。それだけの話ですよ。

 

 オーカス、手を。何を?って簡単な話です。握手ですよ、握手。これだけ似たり寄ったりな人なんですから。もし、もし………もっと別の場所で出会えたなら。

 

 私達、きっといい友人になれていたかもね。

 

146クラウン 19:40:567

 

馬鹿な女だ。大王様はお前を使って、全てをひっくり返そうとしているのに。それを知る事もなく、破滅に向かっているなど馬鹿にしか出来ない。

 

 けれど、その馬鹿だけが手を握りしめてくれた。

 

 誰も触ろうとしなかった私の手を。握ってくれたのだ。

 

 ああ、そうか………こんなに簡単な話だったんだな。

 

 人間に裏切られた私だが、誰かと手を取り合うことが出来たかもしれない。

 

 それならばきっと………私達はいい友人に

 

「なれたかも………しれないな」

 

147クラウン 19:42:587

 

さてさて〜リーフ達と合流しましょうか、バルダ〜?

 

 むっ! 殺気! ふははは、馬鹿め! 貴様が仕掛けてくるとは見え見えよ、デイン! 雷撃が使えないから私を誘拐し、人質にしようとしたんだろうが、そうは行くか、馬鹿め!

 

 皆のもの出会え、であえー! 私は後方でのんびり見学してますからー! 行けー! バルダやってしまえー! ふはは! ざまあみさらせ! (荒ぶる鷹のポーズ)

 

 ………は?

 

 ま、え? 何で、貴方がここに?

 

 死んだはずじゃ………?

 

 あ、んな?

 

148クラウン 19:46:297

 

現れた人物に目を疑ったが、飛んできた回し蹴りはギリギリ未来予知が機能した。スウェーでかわし、返す刀の前蹴りをアンナのガラ空きの腹部へ、

 

「無駄よ、馬鹿ね」

 

 突き刺した瞬間、敗北を悟った。腹部に足が沈み込む。まるで沼のように身動きができなくなっていく。もがけばもがくほど足は呑まれ、機動力を失った私に、

 

「この死体の持ち主はいい働きをしたわ。バイバイ」

 

 人間とは思えない膂力の拳が叩き込まれ、私は気を失った。

 

149クラウン 19:50:116

 

ふと目を覚ましたら、そこは見知らぬ死刑台でした。

 

 いやどうして?(しわしわ)

 

 最後に覚えてるのは死んだアンナの亡霊に殴られたところまでなんだが? 幽霊の拳って岩並に硬いんですね。クラウン新発見。冗談はさておき、愉快な憲兵さーん! どういう状況ですかー!

 

『おいアクババアと目を合わせるな。喋れば食われるぞ』

 

『こいつは生かしておけない………漸く殺せてせいせいするぜ』

 

『アクババ落としたとか言って観察したら、アクババ死んでたとかだぞ? さっさと死刑にできてよかったぜ』

 

『これで俺たちやあいつに殺された奴らの魂も救われるな』

 

 何で私が悪党みたいになってるんですか?? 殴られたいんですか!? あ! 全員目を逸らして、耳を塞ぐな!! クラウンお姉さんを見なさいよ、こらー!

 

 え、何で道化野郎が生きてるんです?

 

150クラウン 19:55:136

 

まあ、私がここにいるのが罠というか誘いですよね、道化野郎。というか貴方は私がドロップキックで突き落とした筈ですが? へ? 偽物? 死体を食べた?? お腹壊しますから、吐いたほうがいいよ、ぺっ。

 

 死体を食べることでその人物に完全に成り代わる?? 体温も臓器も生殖器官も人間と比べて遜色なし………なるほど、ファロー。貴方がSオルですね? ジョーカーが言っていたオルの王と女王。女王はアンナをたべましたか。

 

 しかし、オルの能力全部台無しになりません?? 有能な能力なら引き継げる? まあ気にしてないならいいですけども。で、私はどうなります? 死刑です? 冤罪なので許して♡

 

 おい、人の色目を無視しないでくださいよ。

 

151名無しの道化 19:56:263

 

残念ながら、影の軍団からしたらクラウンはほぼアクババなんだ。

 

アクババの色目に反応するかと言われれば、ねえ……。

 

152クラウン 19:59:076

 

わーなんか周りが騒がしくなってきたゾウ。くっそ〜クラウンお姉さんなんか放ってリーフによるベルトピカー!相手は死ぬ!でいいのに………なんでリーフが7部族から承認得てベルトつけても効果が出ていないんでしょうか?

 

 とすると、他にも何か必要なものがある? ベルトには足りない宝石がある? いやエンドンが宝石レベルの見落としは流石にしないでしょう。となると見落としがちになるのは………ベルトをつける手順か、宝石をつける手順、並べ方のどれかですね。

 

 あ、リーフとジャスミンが見えた! おーい! 私はここですよー! 気づきましたね。彼らも、憲兵も。おい待て憲兵、今火ぶくれ弾打ち上げたな? 何の意味だ、それは! 何を呼び、デインがオルを引き連れてきやがった!?

 

153クラウン 20:02:446

 

頑張ってください! バルダ! ジャスミン! 皆ならやれます! チクショオ! 雷撃さえ打ち止めじゃなきゃあんな奴ら! 

 

 高台に縛り付けられてるのを存分に活かして指示してやります! リーフ! 後ろ! バルダ! ジャスミンのカバーを! マナスもグラソンから離れないでください! スカール、暴れろ! 痛い! 憲兵め! 殴る必要ありましたか? 縄が解けたらお前は殺す。必ずな。

 

 あ! リーフ! 助けに来てくれたのはありがたいですけど、もうちょい体に気を使ってくれますか!? やば、デインが来てます!

 

 行けー! リーフ! がんばえー! 

 

154クラウン 20:08:275

 

驚くほどに体が軽い。デインの動きが止まって見える。そんな気持ちになるのも彼女が応援してくれてるからだろうか。

 

 デインにクラウンが連れ去られた時は体から血の気が引く音を初めて聴いた。だけど慌てなかったのは自分より取り乱したジャスミンがいたからだろう。

 

 あれだけ慌てた彼女は旅でも見たことがない。そして、今も焦る彼女をジョーカーに任せて、僕はここにいる。煌めく刃の閃きが目で見てとれた。

 

 デインはオルだ。ならば弱点は右胸で違いない。問題はどう倒すかだ。デインも僕の攻撃手段は熟知しているからか、右胸は硬化して守っている。

 

 火ぶくれ弾でもあればいいが、そんな都合の良いものはない。デインは驕っている、自分が負けるわけないと思っている。

 

「無駄だ、リーフ! 君が僕に勝てる筈がないんだよ! 君はただの人間なんだから!」

 

 デインの姿は既に人間を離れ、ただの怪物だ。手足も長く、リーチは充分。だけど懐に潜り込めば、その長さが仇になる。

 

「──ベルトよ、僕に力を」

 

 ベルトを緩め、剣を構えた。

 

 その所作を通して、目の前のデインは親友ではなく、敵として倒すために。

 

「来いよ、リーフ!」

 

 ──雨が降り始めた。

 

「行くぞ、デイン」

 

 ──虹の輝きが生まれた。

 

155クラウン 20:13:435

 

押し寄せる漆黒を虹の輝きが打ち払う。

 

 激突はすでに数合、数十合にも及び、リーフは剣が削り合う度に体中に走る衝撃に耐えながら前へと進む。

 

 ベルトから溢れ出た虹色をまとう刃によって強化された剣はオルたるデインにその切っ先を届かせる結果をもたらしていた。

 

 斬撃が繰り出されるたびに両断される魔手が霧散し、塵となって影から消える。原理のほどはわからないが、その虹の剣撃の前にはオルの体は再生しない。

 

 影をひとつ、またひとつと失うたびに、彼の表情に激怒と寂寥が宿るのが見てとれた。

 

 無論、無傷ではない。空気を切り裂き、迫るデインの手の数は常に十を越えている。一振りでそれら全てを薙ぎ払うことなどできるはずもなく、避け切れぬ負傷が肉体を傷付け、

 

「──しまっ」

 

「もらったぁぁぁぁ!!」

 

 痛みに耐えた足が雨により滑り、致命的なチャンスを晒す。デインもそれを逃さずに鋭く尖らせた刃をリーフの心臓部に向け、眼前に迫る死を前に、彼は

 

「リーフ!! 頑張って!!」

 

 守らなくてはならない人の声を聞いていた。

 

 この旅でいつだって使命を果たすためだけに命をかけていた。自分よりも遥かにその覚悟が重い人を自分はずっと見ていたのだ。

 

 ふと思ったのだ。この人は役割を果たしたらどうなるのだろう。夜空の花火のように消えてしまいそうな、役割を果たしたら笑っていなくなりそうな彼女。

 

 誰かが繋ぎ止めなきゃ、消えてしまいそうな空の彼女を。

 

 ──誰かがその手を握らなくちゃないんじゃないか?

 

156クラウン 20:14:135

 

「う、おおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 マントを翻し、デインから自分の姿を隠すように壁にするとそのまま横っ飛び。デインがマントを切り裂くと同時に腰につけたベルトを外し、剣を投げつける。

 

 咄嗟にデインは急所を守るが、それより下から抱きつくようにデインの腰にベルトを装着させ、暴れてる間に弾かれた剣を拾う。

 

「──終わりだ、デイン」

 

 最後にデインの顔を背中越しに見た。

 

 彼の顔は焦りと恐怖と──安堵に溢れていた。

 

 手から親友の心臓を貫いた感触に歯を食いしばって耐える。液体になっていく彼は最後の最後で、手を差し出した。その手が握られるわけがないと知りながらも、だけど。

 

「君がスパイだった事、悪事を全部許容できるわけじゃない。でも──僕はもっと、君と言葉を交わしたかったよ。デイン」

 

 苦しげに呟き、リーフはデインの死に顔から顔を背けた。

 

 雨空を仰ぎ、1人の王はその瞳に憂いを宿しながら、

 

「──僕は君を、親友だと思ってた」

 

 リーフの囁くような力のない声が、デインの死に終わりをもたらした。

 

157クラウン 20:20:525

 

お疲れ様でした。リーフ。怪我はないですか? なさそうですね。良かった。気に病む必要はありません。彼は敵でしたが………最後の死に顔は安らかでした。何かしら貴方達には思うところがあったのでしょう。

 

 行きましょう、リーフ。貴方の旅路はまだ終わっていません。とりあえず聞きたいんですが、デルトラの書にベルトの正しい装着手順など書かれてませんでしたか? ない? そうですか。

 

 となると代々口伝されてるものでしょうか………エンドンに会わなくてはなりませんね。

 

 ん、初めて人を殺した感触はどう、だったかですか?

 

 ──最悪の気分でしたよ。

 

158クラウン 20:25:025

 

マナス! バルダ! ジャスミンとジョーカーは!? 連れ去られた!? ジョーカーがついていながらですか!? 

 

 えっ、何かジョーカーの知り合いらしい女性が出てきて動揺したジョーカーとジャスミンを連れて行った!?

 

 Sオルですね………野郎、ジョーカーの妻、ジャスミンの母に変化して悪逆をしやがって。久々にガチギレですよ。このやろう。ただではすまさん。

 

 マナス。貴方なら城の秘密の抜け穴に詳しいですよね? ジャスミンとジョーカーが閉じ込められてる場所に案内をお願いします。

 

 先に言いますが雷撃は打ち止め。魔法薬品もありません。私の援護は期待しないでください。

 

 え、普通に肉弾戦強いから心配してない?? 酷くない?

 

159クラウン 20:30:435

 

オラオラどけえ!! 七部族様のお通りじゃあ! リーフ! 貴方が前に出るんじゃありません! 危ないでしょうが! 私とバルダが肉壁になりますから!

 

 マナス! リーフをジャスミンのところに! どうやらわたしにはお客様がいっぱいいらっしゃるようですから。ハロー憲兵さん。雷撃が使えないからってお姉さんに勝てると思ってるのか?

 

 まあ、はい。勝ちますよね、そりゃ。数の暴力怖い。

 

 さっすがに中枢部なだけあって憲兵の数が多すぎます! バルダ! 何かいい案ありますか!?

 

 空!? 空に何が………キン達! 来てくれたんですか!

 

 よしリーフ達は脱出しました! バルダ、私たちも向かいましょう!

 

160クラウン 20:32:365

 

ふははは! バカめ! これでこちらの勝ちはほぼ確定ですよ! 後はエンドンかジャードにベルトの正しい使い方を教えてもらえればそれで勝ち………嘘

 

 シャーン………様?

 

161クラウン 20:36:454

 

「シャーン様………」

 

 ふと、それを誰が口にしたのだろうか。少なくとも隣で聞いていたジャスミンにはその声は届いていた。死刑台に晒されたリーフの父と母。それが今の況では追い詰められてると同意義であることを。

 

「その声………クラウンなのですか! クラウン! リーフは!? リーフは無事ですか!」

 

「母さん! 僕は無事だよ! 宝石は全部集めたよ、父さん!」

 

「そうか、よくぞ役目を果たしてくれた………リーフにバルダ、クラウン」

 

 リーフの父と母はその声に安堵するが、疑問を覚えた。二人からすれば世継ぎの息子がベルトをつけている筈なのに何故効果を発揮しないのか。

 

「だがジャード! ベルトの力が発揮されないんだ! 何か知らないか!」

 

「そいつを黙らせろ!」

 

 そこから先の言葉を言わせないとファローがリーフの父と母を締め上げる。命は私が握っているとばかりにファローは底意地悪く笑って。

 

「ベルトをよこせ! リーフ!」

 

 対価とばかりにそう叫ぶ。リーフの父は渡すなと叫び、リーフはベルトに手を当てて、指を突きつけた。

 

「断る! ベルトを守れ。それが父さんと母さんに約束した僕の使命だ!」

 

 それが答えだとばかりの態度にファローは顔を歪めて、今すぐ殺せと、手を下ろし、

 

「──私の恩人に汚い手で触れてんじゃねえよ、道化」

 

 ──その体をナイフからの雷閃が貫いた。

 

162クラウン 20:40:025

 

雨空のおかげで限界超えての1発でしたが当たってよかったですよ、チクショオ! でもこれで本当に打ち止め! もう無理です!

 

 さあ、リーフ開戦の狼煙をあげましょう! ジャスミンはジョーカーとこの場を頼みます。奴がいる以上、貴方達では無理でしょう。

 

 ジャスミン、ジョーカー。我儘を言わせてください。貴方に母親を殺させたくないし、妻を手にかけさせたくないのです。赤の他人の私が、あの人に家族と認められた私がケリをつけてきます。

 

 いだい! なんで殴りましたか!? 今!

 

 あだっ! ジョーカーまで殴りましたよね!?

 

 ジャスミンはそんな弱い女じゃない。ですか?

 

 ジョーカー、親バカですよね。本当に。

 

 うぐぐ………はあ、わかりました。でもジョーカーはここで指示をお願いします。私とジャスミンであのアンナの偽物を倒してきますから。

 

 リーフ、ジャスミン、バルダ。行きましょう。

 

 最期の戦いです。

 

163クラウン 20:44:487

 

ずっと負い目を抱えて生きてきた。

 

 城から逃げ出した俺はずっと母さんを置いてきた事を後悔していたんだ。後で母親が死んだと聞いて、何故俺はあの時一緒に逃げなかったのかを後悔した。

 

 だからこそ、今度は逃げずにここまで来た。

 

「デルの衛兵のバルダだな? 悪いが邪魔をするな。お前に用はないのだ」

 

 だからこそ、母を殺したあの男と同じ姿をした奴に剣を向けられる。

 

「そうか。俺には用がある」

 

 だからこそ、今度こそ俺はこの名前を名乗れるのだ。

 

「俺の名はバルダ。母の仇と──この国を救うためにお前を殺す、デルの衛兵だっ!!」

 

164クラウン 20:49:216

 

幼少期の母の記憶は朧げだ。

 

 でもよく笑う人だったのはなんとなく覚えていて。

 

「やめてージャスミンーお母さんを殺さないでー」

 

 少なくともあんなに人を食ったような笑い方をするような人ではなかった! お母さんの死体を使うなんて腹の底から憎らしいけど………頭は冷静だ。

 

 だって

 

「貴女、遺言はそれでいい?」

 

 私の隣で私より頭に来てるお姉ちゃんがいるから。

 

 敬語すら取っ払って、全身から研がれた刃のような殺意を撒き散らすクラウン姉を見れば嫌でも落ち着くに決まってる。

 

「あらあら随分と正義の味方を気取ってるけど………貴方、自分の役割、分かってないの?」

 

「大王の役割なんざどうでもいいのよ………私はあの人に恥じない役割のために生きるだけだから」

 

「貴方こそ、誰にでも成り代わる自分がない怪物の癖に、役割なんてあるの? ただの捨て駒じゃない?」

 

 もう、誰も喋らない。ただ双剣を短剣をナイフを抜く。

 

 淡々と、怒りを目に宿し、エネルギーに変えて。

 

「「「殺す」」」

 

 目の前の敵を殺す、その為に。

 

165名無しの道化 20:49:48

 

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166クラウン 20:50:475

 

クラウンが言うにはファローとジャスミンの母はSオルというオルの王と女王らしい。王という名前を冠するだけあると、バルダは僅かな打合いから感じ取っていた。

 

 ただひたすらに剣戟が鳴り響き、揺らめく白刃が狙うは互いの命ばかり。不要なものの全てを削り落として、目の前の敵を討つ為に。

 

「しいっ、」

 

 閃く剣閃はなおも雨粒を折り返し、バルダは鋼越しにファローを睨みつけ、飛び散る火花と剣を弾き飛ばし、喉元に刃を向けるが、

 

「舐めるなあっ!」

 

 ファローは足元に転がる槍を蹴り上げ、片手の突きからの薙ぎ払い。水を掻くような流麗な動きと顧問官として想像もできない苛烈な威力。

 

「人間だと思わない方が良さそうだな………怪物が人間のふりをしているだけか」

 

「言い得て妙だが………それは貴様の仲間にも言える事だぞ?」

 

「クラウンの事か」

 

 剣で滑らせ、前蹴りを放ち、距離を取る。リーチではファローが有利。だがその程度ならば、幾らでも乗り越えてきた。

 

「奴は貴様らにいつか牙を剥く! もしや………今からそうなるかもな………」

 

 故にその程度の言葉がなんだと言うのだ。ハッタリにすらならない、旅を共にしてきた仲間がそんな事になるはずもない。

 

167クラウン 20:54:075

 

 全てを隠して戦ってきた女。ジャードが頼りにし、ただ一人でジャスミンを守った女。そんな頼りになる仲間がどれだけ頑張って来たかを知っているから。

 

「貴様とはまるで違う。ファロー。貴様は怪物としてこの俺が倒す!」

 

 無音の剣閃を嵐のように押し寄せ、無数の剣撃でファローに返答を送る。

 

 白い衣を翻すファローの動きから余裕がなくなる。

 

 水流に乗った木の葉のように、流れて行先に安息の地はない。この上下左右、致命の剣撃は角度を選ばないように。

 

「お前は確かに強い………が、貴様には臣下たる決定的なものが欠けている!」

 

 斬撃を重ねながら、バルダはかすかな違和感を得ていた。そしてその違和感に対する納得もまた、手応えの中に受け取った。

 

168クラウン 20:54:405

 

「貴様の剣には、思いが欠けている!」

 

 戦士としての技量は卓越している。

 

 だがそこには何百回も剣を振った、何キロも走った。

 

 誰かを守る為に剣を握った。

 

 その臣下に至るための信念が欠けている。

 

「お前のような怪物には到底与えられなかったものだ! そして、それは俺たち人間が持っていたものだ!」

 

 懐に飛び込むバルダを槍が迎え撃つ。

 

 それをバルダはそれを剣で巻き上げ、槍が切り裂かれ、同時にファローの半身が大きく開いた。

 

「俺たちを、デルトラを舐めるなあっ!!」

 

 大きく半円を描き、バルダの剣が舞い戻る。

 

 この始まりから今に至るまで、最大の隙を生じたファローが眼前にある。腕の筋肉が膨れ上がり、剣の柄が軋むほど握力がこもる。

 

「これが………母さんに送る手向けだ」

 

 バルダの決定的な一太刀、それは吸い込まれるようにファローの右胸に突き刺さる。剣戟を払い、液体になるファローへバルダはマントを翻し、

 

「俺の剣は──お前より重い」

 

 その言葉を持ってして、訣別とした。

 

169クラウン 21:12:595

 

癖が同じだ。仕草が同じだ。

 

 かつて魂を削る荒行の中、脳裏に描き、焦がれ続けた母の姿。打ち破り、奪うと誓い、会いたくて、焦がれて、魂を焦がして。

 

「はい、ざぁんねん」

 

 この胸を熱くした母の姿と、同じ顔で。

 

 彼女は私の横っ面に拳を叩き込んだ。

 

「ジャスミン!!」

 

 クラウン姉の訴えにも、母の美貌は微塵も揺らがない。キレた彼女の無音と無言と無感情の剣閃が走り、母はそのことごとくを撃墜する。

 

 一人の夜に思い返すのだ。目をつぶっていてもわかるほど愛してくれた事を。

 

 だからこそ、目をつぶりたくないのだ。

 

「──っ!」

 

 今、目の前にいるのは私を愛してくれた母じゃない事を!

 

「ジャスミン、あわせなさい!」

 

 切り返し、刺突、跳ね上げ、袈裟切り。

 

 回し蹴り、足払い、あびせ蹴り、2段蹴り。

 

 落ちてくる刃を受け、切り返す斬撃を流し、放たれる刺突を避け、跳ね上がる切っ先に身を回し、袈裟切りの刃を掲げた双剣で絡め取り、反撃に転じる。

 

 返す足を受け止めて、回し蹴りを防がれて、それすらフェイクの浴びせ蹴りは頭には届かず、2段蹴りも交わされて、万事休す。

 

 流麗な防御を手数で上回り、クラウンの剣速に無理が生じる。たまらず母が後退し、その間隙に私は躊躇せず飛び込んだ。

 

170クラウン 21:16:214

 

「────ジャスミン」

 

 一瞬、私を見る母の瞳を感情が過った。

 

 否、錯覚だ。それはかつて、全く同じ状況になったときの記憶を、女々しいこの心が引っ張り出してきただけだ。

 

 まやかしだ。それでも縋りたくなる私が弱いだけだ。

 

 だからこそ、その躊躇いが命取り。

 

「やっぱり、人間て面白い♡ 死人のフリをしただけでここまで動揺しちゃうんだから」

 

 母が大きく身を反らし、手首の返しで戻る双剣で私の一撃を跳ね返す。鋼同士の軋る音が響き、致命傷を約束されていた斬撃は心技体の乱れた雑撃へと成り下がり、目的を遠ざけて火花を散らす。

 

「バイバイ」

 

 2つの刃を打ち落とし、続けざまの衝撃が私の体を揺さぶる。剣撃の威力を馬鹿正直に受け止め、足の止まる私との間で力比べが発生。

 

 押し切らんと踏み込んだ瞬間、眼前で細い身が回り、空白が生じた。前に足が出て、半歩、隙が生まれる。

 

「──私の可愛い可愛い愚かな娘」

 

 直後、背後から死の感覚が迫り、

 

「カァー!!」

 

「フィー!」

 

 私の髪に隠れていたフィリとクリーが母の眼前に飛びついた。それを見たクラウン姉が頷き、私も短剣を構えて城壁へ向け、走り出す。

 

171クラウン 21:17:313

 

「貴方にジャスミンを娘と呼ぶ権利はっ!

 

 クリーとフィリが引き剥がされた瞬間を狙い、クラウン姉の拳が顔面に直撃、そのまま手首を短剣で突き刺し、剣を落とさせると城壁に蹴り飛ばす。

 

「ありませんよっ! ジャスミン!」

 

「貴方はただの死体じゃない! 私のお母さんはもっと温かな人だった!」

 

 城壁に飛び乗った私の回し蹴りが、母の顔面を蹴り飛ばし、追いついたクラウン姉の膝蹴りと頭突きが突き刺さる。母は暴れるが、クラウン姉が右胸へナイフを握った時に防御態勢に。

 

「ジャスミン! 行きます!」

 

 それを狙ってクラウン姉は母の腰ごと掴み、城壁から捨てると私は城壁から飛び出して、母の体へ飛び乗り、ナイフを右胸へ振り下ろす。

 

「じゃあね、偽物さん!」

 

172クラウン 21:17:485

 

手応えはあった。だが感触が鈍い。母の顔を見ればまるで死体のようで。咄嗟に後ろを向けば、そのまま吹き飛ばされた。

 

「ここまで追いつめられるなんて………まあいいわ。潮時だもの」

 

 オルの女王は刺される間際に母の肉体を捨てたのだ。オルの女王は城壁にへばりつくと、瞬く間に姿を消した。空中に放り出された私は重力には逆らえず、地面に吸い込まれ──

 

「ジャスミン!!」

 

 気づけば誰かの腕の中にいた。確かな力強さを感じるその持ち主は泣きそうな顔で私の顔を覗き込んでいて。

 

「お父………さん?」

 

「………無事で、良かった。ジャスミン」

 

 お父さんはゆっくり私を抱きしめ、

 

「………ジャード、ジャスミン」

 

 懐かしい声で、私達を呼んだ。

 

 既に死んだはずの母親が。

 

173クラウン 21:22:296

 

「ジャスミン、あまり近づくな。なんにせよ、ここで………」

 

「私の、私の………ジャスミン。ジャードと、私に生まれた、あの子が、近くに、いる気が、するの………」

 

 夢を見てるようだった。泡沫の夢を。

 

 死に至るまでの最後の刹那を。

 

「鳥と、木だけが………家族じゃないの………あの子を抱きしめて、あげないと………沈黙の森の、恐怖に、負けない………ように」

 

「お母さん………? お母さんなの………?」

 

「ジャスミン………そこに、いるの? なんだか、目が開かないの………手を、握って、くれる?」

 

 ジャスミンのどうしたらいい? という顔にジョーカーさ黙って頷き、ジャスミンと共にアンナの手を握りしめる。暖かさが熱が、伝わったのか、アンナは微笑んで。

 

「ジャード………いるの? ジャスミンの、そばに、いるの?」

 

「いるとも。私の心臓。私の妻、アンナ。ジャスミンのそばにいるとも。お前の手を握っている!」

 

「ああ、良かった………ジャスミンは、一人じゃない、のね? 寂しがりやだから、貴方が………いて、良かったわ」

 

 どんどんアンナの手が冷たくなる。重なった手から熱は伝わらないけど、アンナはただ言葉を紡いでいく。

 

 辛い世界でこれからも生きていく2人に、最期の言葉を。

 

174クラウン 21:29:555

 

「ジャード………ジャスミンを、よろしく、ね? 貴方に似て、きっと、不器用だから………ちゃんと、導いて、あげて?」

 

「ああ、わかってるさ。アンナ………」

 

「ジャスミン………活発な貴方だから、あまり危ない………真似は、しちゃ、ダメよ? 女の子なんだから………ね?」

 

「うん、うんっ! わかってる、よっ!」

 

 声に覇気がない。手に力が入らない。

 

 それでもアンナは最後にこの言葉を残したくて、全てを振り絞る。

 

「ジャード………ジャスミン」

 

 涙が彼女の頬を伝う。後悔は山ほどあるけども、けれど今の2人が知れたから。死体を利用された甲斐はあったのだ。

 

 だから──これは自分がジャスミンに贈る

 

「心の底から──あいしてる」

 

 最初で、最後の愛の言葉だ。

 

175クラウン 21:35:016

 

 バルダ! リーフの父と母は!? 無事ですか、良かった………下も終わったようですね。アンナにお別れを言えなかったのは残念でしたが。

 

 ジャスミン、ジャード。しっかり、お別れは言えたようですね。ジャスミン、泣きっぱなしだとまたアンナが不安で戻って来ちゃいますよ。

 

 ん? リーフどうかしましたか? ジョーカーをなんでジャードって呼んだか? ジャスミンの母を何故アンナと? 答えは初歩的な事ですよ、リーフ殿下。

 

 それでは改めてご挨拶を。エンドン王、シャーン王妃。

 

 貴方達の使命は無事世継ぎであるリーフ殿下が果たしました。

 

 お帰りなさい。我らが王と王妃よ。

 

 貴方達が無事で本当に、良かった。

 

176クラウン 21:41:325

 

自分が信じられない。

 

「僕が………世継ぎ? ジャスミンじゃなくて?」

 

「ごめんなさい、リーフ殿下。何も言えなくて。私はあの夜、トーラと架け橋になりつつ、大王の目を誤魔化すためにジャードとアンナの替え玉作戦に付き合ったのです」

 

 クラウンさんが淡々と今までとは違う事実を述べていく。ジャスミンが慌てないということは最初からわかり切っていたようで。

 

「リーフが世継ぎ………何という危ない橋を………」

 

「エンドン王曰く、リーフにはデルトラを巡って、世界の広さを知って欲しかったそうです。私は猛反対しましたけどね。馬鹿でしょ、本当に」

 

「クラウン?」

 

「何でもありませんことよ、シャーン王妃? さて、リーフ殿下」

 

「リーフって呼んでくれない? むず痒いんだ」

 

「では、リーフ………改めて紹介させていただきます。我らが世継ぎ、リーフよ。貴方のベルトの力でデルトラを救っていただきたい」

 

 傅くクラウンさんに戸惑うが、そもそも世継ぎだなんて、自分が信じられない。しかし、自分が世継ぎならば何故ベルトは真価を発揮しないのか。

 

「リーフ、ベルトを見せてくれないか?」

 

 父さんの言葉に従い、ベルトを外す。父さんはベルトに嵌った宝石全てを確認し、思案すると目を見開いた。

 

「リーフ、宝石を嵌める順番が違うのだ。私がかつてつけたベルトの宝石の並び順はDERTORAだ。リーフ、一度宝石を外して、ベルトにつけ直せ」

 

177クラウン 21:46:446

 

 やっぱり、ベルトに嵌める順番が違ったんですね………ふふ、でも無事に終わりそうで何よりです。油断はいけませんが、私が周りに注意を払っていればいいでしょう。

 

 これで死んだアンナにも恩を返せます。さあさあ! 早く、デルトラのベルトを完成させてくださいよう! 外し終わったならつけ変えるだけですから!

 

 いやーこれでめでたしめでたしですね!

 

 私の役目もお役ごめんってわけです!

 

178影 21:51:426

 

『そうだな。クラウン。よくぞ役目を果たした』

 

179クラウン 21:56:166

 

「クラウン姉?」

 

 それに真っ先に気付いたのは、ジャスミンだった。

 

 頭を抱えて、膝をつく彼女に駆け寄ろうとした矢先、クラウンの肉体から禍々しい魔力が迸る。

 

「──宝石を万が一全て集められた時の保険が欲しかった」

 

 両手を広げて大口を開けたクラウンの影が大きく膨れ上がる。噴き上がる漆黒の魔手の数は、最大に到達──百を軽々と上回るそれが空に伸び上がり、そして影はクラウンへ降り注ぐ。

 

「私は考えたのだ。Sオルを仲間に入れればいいのではないか? だが奴らは自分勝手だ。指示に従わない。信じられるのはファローくらいのものだ」

 

 黒い繭の中でクラウンの声音でクラウンじゃないものの声がする。

 

「私は考えた。最も信じられる存在を作ろうと。自分自身の複製を、操り人形を作ろうとな」

 

 繭を破り出て来たのはいつものクラウンではない。

 

「魔法が使えるようにテーガンの材料と、操る為の能力を持つ。平原族、夢見のオパールの血を継ぐ人物の遺伝子を掛け合わせた」

 

 肌は純白から毒々しい紫色に変わり、瞳は空のような瞳から爛々と輝く金色に。

 

「200体も失敗し、漸く完成したのがこの"器"だ。魂を繋げる事で肉体を乗っ取れる、魔法を使うに問題ないこの肉体!」

 

 露出はよりいっそう激しく。チューブドレスのような格好で彼女の額からは角が生えている。まるで悪魔のようで。

 

180クラウン 21:56:388

 

「しかし、残念ながら私が繋がる前に誰かと繋がり自我を得た。故に失敗作だったが………私の物持ちがよくて良かったな」

 

 体を確かめるように握ったり、離したりする彼女にシャーン王妃は問う。

 

「──貴方は誰?」

 

 クラウンの肉体を乗っ取ったそれは胸焼けするような色気を振り撒き、妖しく笑うと自分の名前を宣言する。

 

「──影の大王」

 

 誰もがその名前に息を呑んだ。動きを止めた。大王はその隙を見逃さず、指を弾けばリーフの手にあったベルトが吹き飛び、宝石もバラバラに散っていく。

 

 それを行った相手は誰もが信じた体で、顔で、声で、邪悪に笑って。

 

「それじゃあ──終わりの始まりを話そうか」

 

 最後の戦いの幕を開けた。

 

181クラウン 22:00:518

 

気がついたら真っ白な空間にいました。いやここどこですか? というか真っ白な空間を一人で黒く染めようとしてる貴方は誰ですか?

 

 まあ言わなくてもその悪辣さからなんとなくわかりますけどね。貴方、影の大王でしょう? 性懲りもなく人の体を乗っ取りやがって。

 

 丁度良かった、聞きたかったんですよ。貴方は私に何をしたかったのか。貴方は私に何を望んでいたのか。

 

 何の為に、私は生まれたのか。

 

 冥土の土産に教えてください。

 

182クラウン 22:03:427

 

「私はこいつに名前をつけた。道化の王──正確には大王の道化としての意味だがな」

 

 リーフの剣が無可視の壁に妨げられる。次に仕掛けたバルダも一瞥しただけで、吹き飛ばされた。

 

「そして、私はこいつをトーラに送り込んだ。内部から崩す為にな。堕ちた奴らからしたら奴を嫌悪すると思ったが………私の期待を超えてくれた」

 

「クラウンに結界を壊させようとしたのも、貴方の指示なのですか」

 

「そうとも。しかし、さまざまな指示を与えたが結局成功したのは手紙の偽造くらいか。なので次の役割を任せる事にした」

 

 グロッグの爪も牙も羽のように交わされ、しなやかな足がグロッグの側頭部を的確に撃ち抜く。

 

「こいつは魂を繋ぎ、あらゆる技術を手にしていた。宮廷魔術師として。魔法の薬品、私と同じ雷の魔法。体術に武術………そして、房中術も」

 

 ゼアンの魔法を指先一つで相殺し、グラソンの弓矢をノールックのナイフ投げで撃墜。空飛ぶキン達から落とされる爆弾さえ、魔法の壁には届かない。

 

「次の役割は王族に取り入り、子を宿す事だ。ベルトに触りさえできる子がいれば破壊さえ容易いが………奴は下らない恩のためにそれを断った。だろ? シャーン王妃よ」

 

 手に雷が迸る。それが放たれる前に、エンドンがシャーンを押し倒し、交わす。入れ替わるようにしてジャードが飛びかかるがその剣はナイフで止められ、魔力の余波で吹き飛ばされる。

 

「その後は貴様らが知ってる通りだろう。最終的にこいつに魂を繋ぎ、私自身が集まったベルトを破壊する。それが私の最後の策だ」

 

183クラウン 22:09:308

 

 詰まるところ、私はただの貴方の道化でしかなかったと。ふーん。まあ知ってましたし(震え声) 

 

 しかし、今更失敗しかけたからって私の肉体乗っ取るなんてざーこざーこ♡

 

 は? いきがっても無駄? 現実の肉体の主導権は貴様にはないですか? それは魂が繋がってる貴方が支配してるからでしょう。

 

 詰まるところ、私が貴方を倒して魂の主導権を取り返せばいい。出来るわけがない? 魔法使いとして格下だろう?

 

 たしかに私は貴方に比べれば格下もいいところですが………

 

 私の背後から足音が聞こえる。ここに来るまでに幾度となく力を貸してもらった兄と姉が来る。

 

 頭上からは200年生きたババアが降り立ち、不死鳥のように火柱と共にライバルも現れた。

 

「私は一人じゃない。私達全員で貴方を倒させてもらう!」

 

 私は黒雷を迸らせ、指先を影に向けて突きつける。

 

 そして、宣言しよう。戦いに終止符を打つ為に。

 

「それじゃあ──終わりの始まりを始めようか!」

 

184クラウン 22:16:327

 

「近づくことすら出来んとは!」

 

「リーフ! 何か作戦を考えないと!」

 

 眼前に佇む大王は余裕を隠さない。いつでも殺せる相手を前にして、いたぶって遊んでいるのだ。だけど、その傲慢さが付け入る隙に変わる。

 

 考えろ、奴が何かを嫌ったりしなかったか? 今までの言動や態度から振り返れ──

 

「皆んな! ベルトだ! デルトラのベルトを集めて来てくれ!! 影の大王は真っ先にベルトと宝石を分断した! 何故なら大王はあの体になってもベルトの効果を受けるからだ!」

 

 途端に大王の顔が醜く歪む。図星をつかれたようだ。

 

「皆んな! 分かれてベルトの宝石を集めて来てくれ! ここは僕が──」

 

「私とジャードが引き受ける。皆は頼むぞ!」

 

 僕の隣にジャードと父さんが並ぶ。対するは不機嫌そうに腕を組む影の大王が中に入ったクラウンさん。ベルトの力が有ればきっと彼女も取り戻せる。

 

 そしたら、貴方に伝えたい事があるんだ。

 

 だから、必ず取り戻すよ。

 

185クラウン 22:20:506

 

どこか甲高いような、それでいて武骨な轟音が、絶えることなく鳴り響く。そこは光に包まれ、常人ならば目視もできないような状態だった。

 

 左から、閃光。クラウンは、右手の雷で受ける。

 

その時すでに、大王はさらに三回。銀の光を振るっている。

 

常人には反応すら、知覚すらできるはずのない連撃。

 

 数え切れないの光の刃が顕現している。全てが世界すらも切断しうる、絶対の一撃を持つ光。

 

 大王は全てを掌握している。

 

一筋の光条を動かしながら、全ての方角から刃を動せるほど。 時に時間差で、時に完全に同時に。一撃に数十の光を重ね、二撃目に数百の力を束ね。音速を超え、光速に迫り。

 

 それをクラウンは未来予知にて、全てを回避して見せた。

 

 当たりさえすれば消し飛ぶ攻撃も当たらなければどうということは無い。

 

「大王、勝てる気しないんですけど!?」

 

 でも弱音くらいは吐かせてほしい。

 

186クラウン 22:25:056

 

「行け! クラウン!」

 

 オーカスの援護を受けたテーガンが弾いた魔弾と共に飛び出したクラウンが雷電を漲らせ収束する。それ彼女の名を知るならば注意を払わざるを得ない一撃!

 

「 知ってるとも。クラウン。お前とは近距離戦をやらない方がいいとな」

 

 クラウンが大王の背から伸びた闇の双翼に弾かれた同時にテーガンは高速移動で躍り出た大王の背後で爆発魔法。音すら置き去りにし、大地を浚い、砂煙を立たせ、血飛沫を巻き上げて炸裂する。

 

 出し惜しみ無し、いきなりのクライマックス。

 

 それも当然、相手はあの影の大王なのだから。

 

 戦闘力は自分達が1番よく知っている!

 

「なかなかだ、テーガン。まさか貴様が私に牙を向けるとはな」

 

「仮にもデルトラの最高の魔女が、他所からやって来たやつに負けるわけにはいかないんだよ!」

 

 予想通り、テーガンの一撃を氷の盾防いでいた大王にテーガンの子供達が迎え撃つが、大王の上段蹴りがイガボットを捕らえ、吹き飛ばす。

 

「はああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 読み通り、クラウンは未来予知で夜の刃をすり抜け、大王の前に躍り出た彼女が落雷を実現化させた剣を振り下ろす。

 

 それを読んでいたのか、大王は前髪数本を切り飛ばさせバック転しながらかわし、空振る剣が大地を穿つ。

 

 だが大王は着地すると同時に、手にした氷の剣をクラウンに向けて横払いに振り抜かんとするが、

 

「テーガン!」

 

 テーガンの魔法に守られ、返す刀でクラウンが短剣を振り抜き、大王の氷の剣を弾き、そこから双剣を握り締めバックステップを踏む。

 

187クラウン 22:29:046

 

追いすがり尚切りかかる大王の魔弾を、短剣を逆手に構えて風車のように回しながらいなし、逸らし、逆に飛びかかる。

 

 空中に身を投げ出しながら身軽さを活かした錐揉み飛行のように切りかかり、逆手を振り上げて氷の剣を押し返す。大王は指先を向けるが、

 

「やらせない!」

 

「っ」

 

 オーカスの滝のように降り注ぐ魔力によって生み出された炎が雨霰とばかりに二人の肌を焼く中で、テーガンの詠唱が完了する。

 

「食らっていきな!」

 

 一合十合百合と赫亦を散らし剣劇を演じ剣の舞を踊った2人ごと水滴さえも燃やすような世界が生み出されていく。

 

188クラウン 22:32:066

 

「今っ!」

 

「言われなくても分かってらあ!」

 

 炎の中を突っ切って、テーガンの子供達が襲い掛かるが、

 

「ぐはっ!!?」

 

「私は魔法使いだ。あらゆる魔法に耐性はある」

 

 燃える世界を解除した大王は上体と背中が地面につきそうなほど倒しながら、右足をバレリーナのように蹴り上げジニとジッドを垂直に打ち上げる!

 

「雷帝!!」

 

 それを見たクラウンがすかさず大王へ黒雷の拳を放つが、魔法防御に妨げられ、鍔迫り合いから二人同時に後ずさって距離を取り睨み合う。

 

 兄や姉達による支援が取り囲み、見守る中にあって、戦う彼らだけが互いの力量を正確に見極めていた。

 

「勝てなくない!? というかオーカス、何で貴方がいるんですか!? 有難いですけど!」

 

「何を言う。私とお前は友達だろう?」

 

「友達認定が早い! いいけども!」

 

 でもって、理解した。少なくとも最高クラスの魔導士が3人いて。大王には手も足も出ないことを。彼を殺すことは不可能だ。

 

189クラウン 22:36:345

 

「はあっ!!」

 

「ハアッ!!」

 

 地面を踏み込み、一気に懐に飛び込みナイフで切りかかるジャスミンに、生体電流を操作し一気に突きを繰り出す大王が交差する!

 

「まだまだ私には届かないぞ」

 

 再び散らした火花が消え入るより早くジャードはエンドンの肩を踏み台に、空中に移動し、飛翔の限界点から剣を振り下ろす。

 

「神風特攻は馬鹿な行動だな」

 

 大王が放つ魔弾がジャードの体を正確に纏めて撃ち抜き、凍らせて、

 

「まだだ!!」

 

 た所をジャスミンが更に移動し月面宙返りから大王の背後に現れ出でて

 

(速い!!!)

 

 急降下しつつ斜め下に蹴撃を繰り出して来るのを大王は振り向くことなく、魔法防御で受け止める。

 

 だが一瞬押し流された勢いは殺せず、その間に肉迫したリーフが左フックを、ジャードが右ストレートを放った。

 

 しかし大王はそれを首を傾けてかわし、リーフの右腕を手に取るとその勢いのまま一本背負いを繰り出した。

 

 されど地面に叩きつけられる前に、回り込んでいたエンドンが受け止める。

 

「しっかりしろ、リーフ。今に皆が宝石を集めてきてくれる」

 

「そんなに上手くいくと思うのか?」

 

190クラウン 22:40:595

 

ジャードの励ましに大王は鼻で笑うと、空高くに手をかざす。夜の闇より暗い中から大王に従って、怪鳥が舞い降りる。

 

「アクババ。宝石を回収し、何処かに捨ててこい」

 

 端的にそう告げると、大王は不敵に笑って魔法を放つ。避けられない距離の中でジャードが咄嗟に2人ごと突き飛ばして回避する。

 

「戦いに希望を織り込むな、王と世継ぎよ。甘すぎて吐き気がする」

 

 大王の言葉はある意味で真理かもしれない。だけれどそれでも希望があったからこそ、リーフはこの旅路を駆け抜けてこれたのだ。

 

 そんな自分が希望を捨てるなどあり得ない。

 

「今に見ていろ、影の大王! 必ず僕の仲間達が宝石を集めてベルトを完成させる! その時がお前の最後だ!」

 

 リーフは再び、剣を抜く。

 

 デルトラと、クラウンを取り戻す為に。

 

191クラウン 22:48:104

 

先程から近接戦に巻き添えしないように狙い済ませた魔法の援護を行うテーガンも一撃一合に瞠目させられる思いである。魔法を警戒して大王は一ヶ所に留まれない。

 

 クラウンも大王の双翼を回避するには他の2人の魔法で牽制し、逃げ回るより他ない。肉弾戦と白兵戦で間合いを保ち、双翼を展開する暇を与えない作戦だ。が

 

(このままじゃ、ジリ貧ですよね! くっそ)

 

 大王の双翼を警戒し、テーガンの魔法とオーカスの炎に姿を隠し、駆けて来るクラウンが繰り出す雷を纏った高速移動からの右ハイキック。

 

 だが大王はそれを軽々と氷による左手で受け止めたところで氷の魔弾と闇の双翼による力で弾き出す。一瞬の内に冷や汗と共に戦慄し、脂汗と共に苦痛に顔を歪めたクラウンが身を屈めて後退るその頭上から

 

「ぐぎゃああああ!」

 

「──!!?」

 

 大王へ降って来る子供達の連撃に大王による黒い炎が全てを燃やし尽くし、回避、帰す刀で生み出されたクラウンの頭上に飛び出した黒光する鋼鉄の破片をオーカスが焼き尽くした。

 

 だが消えない炎に焦がれながらも歩みを止めない化け物──イガボットが大王にしがみつく。すぐさま凍らせて砕かれるが、致命的な隙だ。

 

「今だ! 畳み掛けるよ!」

 

192クラウン 22:52:114

 

大王はテーガンに右腕を撃ち抜かれ、たまらず氷の剣を取り落とし、闇の双翼を広げ、クラウン、テーガン、オーカスを薙ぎ払うが

 

「勝ちは拾わせない!!」

 

「!?」

 

 兄や姉達の手から放たれた、しょぼいが数による魔力矢が大王の双翼ごと白い世界を覆い尽くす。それによって翼による防御で後手に回るのを大王が先手を取ろうとするが、オーカスはそれ以上に必死に。

 

「はあっ!!」

 

 炎により生み出した竜により移動し、手にした炎熱の剣で切り上げ大王へ振り抜かんとする。だが大王もすぐさま氷の盾を手に取り、ルナールの切り上げに対しぶつける事で受け止め再び肉弾戦の応酬となるが、あと一手が足りない。

 

 あと1人、前衛をやれるものがいれば──

 

「──来た甲斐があったようだね」

 

 息が上がり始めたクラウン達を見て、ある男が勝負に出る。その姿を見たクラウンは開いた口が塞がらない、戸惑ったまま短剣を握る。

 

「師匠!」

 

「合わせな、馬鹿弟子!」

 

 曼荼羅のような魔法陣がを起点に展開され、両者とも互いに飛び出してきた影の糸に身動きを封じられる。更に加えるように走る電撃が、大王ごと彼の動きをとめた。

 

193クラウン 22:55:394

 

すかさず、闇の翼を広げようとした大王だが、オーカスの炎がその翼を震わすことすら許さず、

 

「──もし、許されるなら今だけはこう名乗らせてくれ」

 

「──裏切るか、貴様!」

 

「ああ! 僕は大王の配下のオルじゃない! レジスタンスのリーダーで、王の親友のデインだ!」

 

 更に大王の動きを止めていた彼の………デインの肉体が変化し、巨体がその翼ごと完全に動きを止めた。

 

「まだだ! 私には魔法がある!」

 

「させないよ! オーカス! 最後の力を振り絞って道を開け!」

 

「当然だ!」

 

 大王はしぶとく、溢れ出る魔力を用いて氷や炎、雷撃の弾幕を作り上げたが、それら全てをオーカスとテーガンによる魔法の弾幕で相殺する。

 

「──これで決着です!」

 

 そして、取れる術がなくなった大王の眼前にはこれ以上ない邪悪な笑みを浮かべたクラウンの黒雷が迫っていた。

 

194クラウン 23:01:295

 

ここに来るまで色々な事があった。

 

 沈黙の森で家族になって、妹ができて、仲間ができた。

 

 嘆きの湖では自分のルーツを知った。

 

 ネズミの街で真の意味で3人と仲間になった。

 

 うごめく砂では親友に再会できて。

 

 恐怖の山では兄や姉の所在が明らかになって

 

 魔物の洞窟ではライバルとかつての敵が師匠になった。

 

 いましめの谷で漸く過去を乗り越えて

 

 ──私は今、ここにいる。

 

 空っぽのまま走り抜けた私の旅路はいつからか、夢と希望と愛に溢れた物語に変わっていた。

 

 辿り着いたのは皆が笑う未来で、色めくような世界で。

 

195クラウン 23:02:006

 

終わりにしなくちゃいけないのに、終わりにしたくなくて。泣きたくなるくらいの寂しさを抱えて、私はただ笑っていた。

 

 楽しすぎて泣いていた。悲しすぎて笑っていた。

 

 貴方達と過ごす日々が何より嬉しかったから。

 

 ああ、幸せになってしまったな。

 

 ああ、失うのが辛いな。

 

 私の見る未来の世界が確定して。

 

 そこに私がいない未来が見えていても。

 

 それが私が皆を愛した罰ならば、私の我儘で全部ムダにするわけにはいかないのだ。

 

 大王が意地悪く笑っている。私に倒されるのも含めて、それが作戦ならば大したものだ。褒めてあげよう。皮肉まじりに。

 

「さようなら、皆んな。良き人生を!」

 

 黒い雷の閃光が影を切り裂き、霧散する。

 

 それが意味するのはただ一つ。覆せない事実で。

 

 ああ──終わりなんだ、なぁ。

 

196クラウン 23:02:365

 

リーフ! 最後の宝石よ! 受け取って!」

 

「させるか!」

 

 リーフはジャスミンを迎えにいく、その時に漸く大王は焦りを覚えた。大王は翼の全てをバラまくように羽に変え、全てを射殺す光を一斉掃射でリーフへと撃ち込む。

 

 前後左右上下、蟻穴すら許さない千丈の堤が押し寄せるが如く光の羽根による流星雨を放つが、それより先にリーフの腰につけたベルトに宝石が埋め込まれる。

 

「───っ!」

 

 瞬間、虹色の光が星座をも崩す連撃を、どこにも逃さぬように包み込む。形を失った破壊は何一つとして壊せぬまま光の翼に取って代わり、大王の攻撃は発動前に巻き戻される。

 

「くっ、不味い………」

 

 虹の光に耐えられる肉体なだけあるが、もう大規模な魔法は撃てない。すぐさまリーフを狙いを定めるがジャードとエンドンの剣がそれを許さない。

 

「大王。これが僕達の──デルトラの力だ! ベルトよ、僕に力を!」

 

 目が潰れるほどの虹の光をが大王の魔法防御を超えて、突き刺さる。リーフもジャードもエンドンも誰もが勝ったと思った。

 

 今までだったら、間違いなかった。

 大王の肉体がクラウンでなければ。

 

197クラウン 23:06:366

 

虹の光が収まっても、大王はいた。本人は安堵の息を吐くくらいにギリギリだったようだが。それでも健在だった。

 

「万が一………万が一をかけていた甲斐はあったな。ベルトは私を傷つけられない。夢見のオパールかつ、血を継ぐかなり特別な、そう言う遺伝子を選んだからな」

 

「………どう言う意味だ!?」

 

「──クラウンの父はアディンの三男だ」

 

 それだけで全てを悟った。デルトラのベルトの創設者、その息子。それだけでベルトの効果を妨げられた理由がわかる。

 

「お前たちはこの私をクラウンから追い出したいらしいが………不可能だ。クラウンの魂と私は繋がっている。ベルトが無意味な以上、私を殺さなければ無意味だ」

 

 その言葉は………少なくともリーフの膝を折るには充分だった。ここに来て、彼は選ばなくてはならないからだ。

 

 これから先のデルトラの未来と──

 

『リーフ!』

 

 ──初めて憧れたあの人の命を。

 

198名無しの道化 23:08:20

 

んー? どうした? リーフよ。覇気が消えたぞ?」

 

 ジャードとエンドンに爆発を叩き込み、優雅な歩き方で、膝を折るリーフに向かう大王。その声には喜びと嘲りが混じっていて。

 

「この女が大事か………まあ確かに。私としてもこいつを殺すのは勿体無い。どうだ、リーフ? 取引をしないか?」

 

「リーフ! 聞いちゃダメよ!」

 

「クラウンを返してやろう。代わりにベルトを壊せ。お前の手でな」

 

 大王の甘言に、リーフの手に力が入る。クラウンの足に縋るように彼女に腰にしがみつき、まるで懇願するように。ジャードもエンドンも目を覆った。

 

 痛いくらいに気持ちがわかるから。

 ここにいる誰もがクラウンに世話になったのだから。

 その選択を責めなくてはならないが、その重さゆえに責められない。

 

「影の大王様………貴方にお願いがあります」

 

「ああ、何かな?」

 

リーフはベルトを外し………クラウンの腰に装着する!

 

「クラウンはそんな事を望まない! 第三の選択肢だ! 君がこの国から消えろ!」

 

 ベルトが邪悪を打ち滅ぼす為に真の力を発揮。瞬く間に溢れ出した虹の光を前に大王の肉体が剥がれ出す! すぐさまベルトを外そうとした大王だったが、

 

「ジャード! 最後だ!」

 

「ああ、行くぞ! エンドン!」

 

 背後から飛び掛かってきた2人に両腕を押さえられてしまう。大王は魔法を放とうとするが、目の前には剣を抜いたリーフの姿。

 

 咄嗟に大王はリーフに炎を放ち、吹き飛ばした後に、ジャードとエンドンに雷を流そうとして、

 

『はーい、大王。さっさと私の肉体を返しなさい。できないならそのまま動くな』

 

「クラウン!!」

 

 体の動きが自分に従わない。無理矢理にでも動こうと身を捩った所で、顔に影が差し──ジャスミンが、ナイフを持ってクラウンの心臓部に狙いを定めていた。

 

 だが大王は下衆以下の性格だ。

 だからこうした。

 

199名無しの道化 23:08:37

 

 

 

200名無しの道化 23:12:472

 

ねえさぁぁぁぁん!!

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