「こちらボルドー守備艦隊司令!謎の武装勢力と遭遇!攻撃された!武装勢力は明らかに戦闘用の艦艇が約2万隻!ただちに救援を請う!直ちに救援を!」
この一報以来、ボルドー系からの通信は一切がとだえており、壊滅した模様である。
統合作戦本部内では、ボルドー系は既に武装勢力に占領された、と推定し、近隣の各開拓惑星防衛艦隊と中央の宇宙艦隊の招聘により、これに対処せんと検案す。
謎の武装勢力であるが、現在の情報から異星人の可能性がある。帝国軍でも、同盟からの離反目的でも無いことは確認済みであるが、他にこのような大規模な艦隊を運用できる組織はフェザーン以外存在せず、フェザーンがこの地域でこのような行動に出る合理的な理由に乏しい。よって可能性の問題から、異星人の侵略という説を提唱する次第である。
ついては国防委員長閣下に置かれましては、アスターテへ派遣される予定の3個艦隊をボルドー系奪還作戦に投入することを検討されたい。
「ふむ、この仮想戦記のようなレポートはなんなのだね?」
首都星ハイネセンの官庁街の一角、最高評議会議事堂は国防委員会長室でヨブ・トリューニヒト議長はため息を吐いた。
「閣下、仮想戦記でも大学生のレポートでもありません、れっきとした事実です。統合作戦本部内でも半信半疑ではありますが」
「冗談はよしたまえ、君もアスターテの件は知っているだろう?第1、荒唐無稽すぎる、なぜイゼルローンにも、フェザーンにも、ハイネセンにも遠い·····ええと「ボルドー星系です」そうだ、ボルドー系などという銀河系最内縁部の辺境に艦隊が出てくるのだね?しかも現地守備艦隊の報告だと·····
「しかし閣下、実際に守備艦隊は降伏電を出しています。現在確認中ですが、事実の場合は大変まずいことになりますが·····」
「そんなあやふやなものよりも、帝国軍遠征艦隊に注力したいんだがね?率いてくるのはローエングラム公らしいじゃないか、私としてはそちらの方が驚異に映るのだが?」
「ええ、わかりました·····続報があり次第お持ち致しますね·····」
「わかってくれて何よりだ、私はこの後会食があるからね、あまり時間を取らせないでくれたまえ。」
この時、この場にいた2人は知る余地すらなかった。その頃のボルドー系では何が起こっていたか、など··········
ボルドー系第3惑星 シェルブール
衛星軌道は完全に制圧され、駐留していた同盟第92守備旅団も主戦力の大半を失って山間部へと撤退した。そして、シェルブールの惑星首都に退去して押し寄せた部隊は完全に首都構造物を制圧、逃げ遅れた同盟の州知事とシェルブール市長はその「侵略者」の前に跪つかされていた。そして、彼らのトップと思わしき人物がやって来て、知事ら同盟側の文民統治陣に対して言葉をかけ始めた。
「ボラー連邦永久管理機構は寛大である。この惑星にも慈悲を与えよう。その首輪を拾え」
(また総督の悪い癖が始まった·····)
(ボローズ総督、この癖さえ無ければもっと栄達できると思うんだけどなぁ·····)
(この癖、毎回被征服民怒らせてるやん·····後始末するこっちの身にもなってくれ·····)
「はっ·····はっ?!我々に家畜のように首輪をつけろと?!如何なる権利があってそのような暴挙に出るのか?!」
「愚かなことは考えぬ方がいいぞ!この惑星は完全に包囲されている!中央政府に対して救援を要請したようだが、来るまでに我々の前進基地は完成する!ここにいる我がボラー連邦の2個前衛艦隊は、たかだか数百隻の艦隊で勝てる相手ではないぞ!」
「まぁいい、貴様らの艦隊と陸戦部隊、寡兵にしてはよくやった方だ。その点に免じて惑星ごと破壊することは辞めてやる。拾え、首輪を·····!」
「··········っ!!わかりましたっ······」
「ああ、それと山間部へと撤退している部隊もだ。彼らを降伏させよ。」
「無理です、彼らは既に死守命令を自ら発してるでしょう。友軍の救援以外の全ての降伏勧告は無視するでしょうな·····!」
「なにを馬鹿なことを言っている!とっとと降伏させよ!」
「控えよ、そもそも彼はあの部隊に対する指揮権を持ってないのだろう。地道に掃討するしかあるまいて·····」
「はっ、しかしそれでは友軍の被害が·····」
「構わん、占領統治政策の構築が優先だ。それが首相官邸からの至上命題だからな·····」
こうして、ボラー連邦に構成共和国がひとつ増え、同盟とボラーの長い戦争が始まったのである·····
「ご苦労ボルテック。同盟の不穏な動きと聞いたが、今の情勢は?」
「どうも銀河系最内縁部の開拓惑星で正体不明の勢力と接触したようです。詳細は不明ですが、艦隊戦力にして同盟軍2個艦隊に匹敵する量の艦隊が侵入してきている、と」
「なんだと?!出処は?第2のハイネセンか?」
「情報部もその線をメインに、銀河連邦時代に遺棄された植民地域の筋でも探ってみましたがどちらも違うようです。」
「となると、同盟内部で反乱か?厄介な」
「いえ、現在の最新情報から推察するに、宇宙人、かと、思われます·····」
「何、宇宙人だと?」
「はい、そもそも現在侵攻されているとされるボルドー系が同盟の中でも最も銀河系内部に近いような地域になります。帝国とは真逆に位置し、帝国軍が進出することは困難でしょう。また、同盟の反乱にしては数が多すぎます。同盟の正規艦隊はほぼ全てがトレースできています。国防予備艦隊も過半数が把握出来ていて、これだけの艦隊が動いた形跡はありません。」
「そうなると、異星人の仕業と考える方が辻褄が合う、か」
「はい。現在は異星人だった場合の対処プランを制作している最中ですが、如何せんそのような想定はほとんどされておらず·····」
「仕方がないな、連邦時代から銀河系に人類以外の知的生命体は存在しない、と思われていたのだ。しかしそこで思考硬直しては行けない。同盟も帝国も現状を掴めてはいないだろう、先回りして手を打つぞ。」
「ラ、ランデスヘル閣下!至急です!帝国内部でも宇宙人と思われる部隊を観測しました!現在駐留艦隊が戦闘中!」
「やはり、か。ボルテック、対応策を至急まとめてくれたまえ」
「はっ」
ボルテックが退出したあと、ルビンスキーは1人、酒を飲みつつ零した。
「異星人、か·····地球教の老人共には想像もつかないだろうな·····いや、まて。地球教からの通信が入らないのはおかしい、あそこなら我々よりも早くこの情報を掴んでてもおかしくないが·····」
そう思い、秘匿されたコンソールを叩いたルビンスキーが驚愕する。
「地球からの応答が·····ない?いや、微弱な通信は拾っているが、明らかに暗号方式が違う·····まさか帝国の奴らが·····!?」
「こ·····地球·····軍·····艦·····バ·····応···」
「いや、これは·····暗号化などされていない·····?!本当に地球教なのか·····?」
「繰り返す!こちら地球連邦軍所属戦艦アルデバラン!応答せよ!貴殿の官姓名、所属、交信の目的はなんぞや!応答せよ!」
「地球·····連邦·····?おとぎ話では無いのだぞ·····?それに戦艦アルデバランだと·····?」
「繰り返す!貴殿の官姓名、所属、交信の目的はなんぞや!」
「·····いたずらか、私の働きすぎかのどちらかだろう·····なんらかの装置の故障かもしれない、また明日試してみよう·····」
そう言い、ルビンスキーは帰宅の準備を始めた。
2205ネタは複数入ります。
銀英伝側、実は旧作未履修なのでキャラ崩壊の可能性が高いです、ご注意を。