「カードゲームのアニメみたいな闇のゲー…いや!カードの力を具現化する魔法が欲しい!」
あの日、私はそう願った。
帰り道に現れたタヌキみたいな生き物、キュゥべぇに誘われて。
魔法少女になって魔女退治をしてほしいと。 その代わりなんでも一つ願いを叶えてあげると。
正直、なんで私に?って思った。 アニメとかを見て、そういうキャラに憧れた時期もあったけど、自分はそんなキャラには合わないと思っていたから。
それをキュゥべぇに聞いてみると、素質のある子に声をかけてるらしい。 私は少しガッカリした。 別に私だけの特別じゃないのか。
キュゥべぇの口調には緊迫感が無いし、地球のピンチ!って感じもしない。 魔法少女ってそんなに早急に増やさないといけないものなのか聞いてみると、
「僕たちとしては魔法少女は多い方がいいね。 それに、魔女を倒せば呪いが振り撒かれなくなる。君たちにも利益はあるはずだよ。」
だって。
少し騙されてる気がしなくもなかったけど、願いを叶えてもらえて、魔女を倒す力も貰えて、その力を使って魔女を倒せばいいんだから、残った願いを満喫すれば、プラスだと考えた。 だからキュゥべぇと契約した。
◇◇◇
「…… これで…私は魔法少…」
「…いやこの服ほぼ海○じゃん! しかも腕のこれ…ほとんどデ○エルデ○スクじゃん!! いいの!?」
キュゥべぇと契約し、著作権とか色々危なそうな姿になった私は、とりあえず浮かんだ疑問を口にした。
「衣装は君たちの深層心理を読み取って決められるんだ。 特に問題はないはずだよ。」
「はえ〜…」
確かに願いを言い切った時点で頭の中にこの格好が浮かんでたけどさぁ…
デッキは…既にセットされてる… え?自分でデッキ組めないの?
そんなことを考えていると、グンと何かを感じた。
今まで感じたことのない…こう…なんというか…言葉に出来ない感じ…
ただそれが、魔女の気配であることは直感的にわかった。
「キュゥべぇ!なんか感じたんだけど!!」
「それは魔女の反応だね。近くに結界があるようだ。」
「でもさっきまで微塵も感じてなかったんだけど!!」
「それは君が魔法少女になったからさ。結界は魔法少女にしか見つけることができない。」
「なるほどね… いやものすっごいビンビンに感じるんだけど!? 結構近いよねコレ!! 魔女がこんな近くに潜んでたってこと!?!?」
「そういうことになるね。」
「嘘でしょー!!ここいっつも通ってた道なんですけどー!!!!」
私は頭に手を当てて、側からみればオーバーにリアクションした。
いやだってねぇ… 何百回と通った通学路に魔女が潜んでいて誰も気づかなかったって…怖すぎでしょ。
「魔法少女が魔女を倒さなければ、魔女は町中に溢れてしまうだろうね。」
「で、そうなったらその呪い?とかいうのが増えて人が死ぬ…と。 いやいやいやいや全然ヤバいじゃん。 そういう大事というか、責任ありそうなことは先にいってよぉ。」
「聞かれなかったからね。」
クッソー… 白タヌキめ…
もしかして私…重要なことを伏せてもモノで釣れる安い女だと思われてる…!?
でももう契約しちゃったからなぁ〜…
何はともあれ、近くの結界に向かうことにした。
「これが…結界…?」
明らかに宙に浮いてる変なもの… あからさまに「これが結界ですよ」と言わんばかりの溶け込めてなさ…
かなり見つけやすそうな位置にあるのによく見つからなかったな…
「この中にいる魔女を倒せばいいんだよね…」
正直どうやって魔法を使うのかもわからないけど…
街中で練習するわけにも行かないよね。 ぶっつけ本番でやってやるしかねぇ!!
そう覚悟を決め、結界に突入する。
いくつかの扉を抜けた先は、
「なんだこりゃぁ!?」
摩訶不思議な空間が広がっていた。
全体的に絵本みたいな?夢のような? 現実じゃない感じがする。
結界の中にある物の一つ一つは「それっぽい」のに、それを組み合わせた景色は気持ち悪い。
それから、そこら中にいるのが使い魔? 身体のいろんな箇所が鎖でつながっていて、奴隷みたい。 コイツらも正直気持ち悪い。
でも肝心の魔女、大ボスが居ない。
「おそらく結界の奥にいるだろうね。いくらか使い魔を倒せば、自分から出てくるよ。」
なるほど。 こんな軍勢を引き連れてるのに、案外臆病なんだな。
まずは使い魔を倒さなきゃいけない…と。
ならば!
「いざ!デュエル!!」
私のターン! ドロ… あ!?ドローできない!?デッキかった!! カードが引けないんだけど!!
もしや特定のタイミングじゃないとドロー出来ないのか…? ならどうやってカードを使えばいいんだ…!?
……そういえば変身した時に何枚かカードを持ってたような…
「あったわ… 初期手札の確認を忘れてたとは…」
手札は5枚、さぁどんなカードが来るんだい!!
《翼を持つ蛇》
《オークデーモン》
《キテマイザー》
《緑の森の戦士》
《角を持つ馬》
…うーん。
名前からしてなんかもう弱そうなんだけど。
一応イラストとテキストもついてるし… もしかしたら強い効果がついてるかもしれない…
《オークデーモン》
『闇に飲まれたオーク。その肉体は鋼を弾く。』
……うーーん。
これフレーバーテキストじゃねえか!しかも攻撃力とかのステータスすら書いてねえ!
通常モンスター5枚って!これでどうやって戦えばいいんだ!
そんなことを考えていると、周りの使い魔が一斉に襲いかかってきた。
雑に体を振り回して迫ってくるだけだけど、鎖をブルンブルン振るってるせいで普通に脅威だ。
私は咄嗟に横に飛んで回避する。 思っていたより飛距離があって驚いた。 魔法少女の身体能力ってここまで高いのか。
正直言ってかなり危なかったと思う。 でもそんな状況で私の口から飛び出た言葉は、
「あいつら私のターンなのに攻撃してきやがった!」
「何かのルールに則って戦っているわけじゃない。 今は誰かの番、なんてものはないよ。」
「そりゃそうだよね!義務もないのにデュエルに付き合ってくれる奴なんか居ないよね!!」
またもや飛んできた使い魔の攻撃を避けるため、大きく飛びながらキュゥべぇと会話する。
私が願ったのはあくまでカードを具現化する力… 誰かを強制的にデュエルに巻き込めるわけじゃない…!
それに、デッキが最初から配られてたり、手札をずっと持ってたり、…ドローできなかったり…
あくまで「カードの力が使える」ってだけであって、「カードゲームができる」ってわけじゃないみたいだ。
…あれ?じゃあ召喚権とかどうなるんだ? ……後で色々検証しないとだ。
でも今はとりあえず!
「ここの魔女をぶっ倒さないと!」
敵を蹴散らせれば通常モンスターだろうとなんだっていい!
「こい!!《オークデーモン》召ッ…喚!!」
私は手札のカードを大袈裟に上に掲げた後、地面に叩きつけるように振り下ろし、宣言する。 その瞬間、握っていたはずのカードは光となり消滅し、私の眼前には化け物が現れていた。
そのモンスターはファンタジーとかに出てくるオークを紫にして少しメタリックにしただけの外見をしていた。 体長は3…いや4m程はあって、肌の質感はチープだけど、人間から見れば威圧感と、あんまり会いたくない感があった。
それは使い魔供にも同じなようで、先ほどまでイキイキしてた奴らもこのモンスターにビビっている。
敵を倒す力は出した。 なら次は…!
「オークデーモンよ!!奴らを蹴散らせ!!!」
「ォォォオオオォオオ!!!」
私の攻撃宣言に合わせ、咆哮を上げる。 そしてその鋼のような腕で使い魔供を吹き飛ばしていった。
何匹か吹き飛ばされてから使い魔供も応戦しはじめたが… まともに効いてる様子はない。 まあ勝てるだろう。
真の意味で私が力を手にした瞬間だった。
なお、私は今バトルフェイズ中なのかなーとか、通常モンスターだけど全体攻撃かなにかできるのかーとか考えていた。
ぽけーっとそんなことを考えてると、もうすぐ使い魔の殲滅は終わりそうだった。
1体しか出してないのに案外強かったな… 当たりのモンスターだったのかも知れない。
「→→→←←←!!!」
文字に起こせないような音が聞こえる。
それを聞いた使い魔は身を震わせ、ぐちゃぐちゃと声を上げ喜び…いやこれ怖がってんな…
明らかに使い魔じゃない奴が来る。 それに該当するのは1つ。
「魔女サマのお出ましってこと…!」
「▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎◀︎◀︎◀︎◀︎◀︎!!!!」
現れた魔女は私のオークデーモンより巨大で、大きな4つの腕を持っていた。 …それくらいが特徴だった。
しきりに声も上げてるけど、口っぽい器官は見えない。
使い魔は結界もそうだけど、なんというか輪郭が掴みづらい。 多分実体はあると思うけど。
「いけぇ!オークデーモン!!魔女に攻撃ィ!!」
私自身が何かできるわけじゃないから、攻撃指示を出すことしかできない。
まあ使い魔ボコボコに出来てたし、大丈夫でしょ…
通常モンスターなのにあれだけ強かったし、多分1回の戦闘につき1度しか召喚できないとかそんな感じなんだろうな。 カードの具現化ってところに重点を置いてると考えて、フレーバーテキスト通りの能力を持ったモンスターを召喚できるなら…十分に強いな。
そうやって呑気に勝利を確信してたんだけど…
「ォォォ…ァァァアアアァア!?」
「負けたァ!?」
いとも簡単に握りつぶされてしまった。
「所詮雑魚モンスターだったか…」
いーやそんなこと言ってる場合じゃねぇ!
追加でモンスターを召喚…できるのか…!?
なにか制限や…コストがあったりしないか……!?
「【【】】!
魔女はもう動いてる… 私自身は身体能力が少し高いだけ…あの手に捕まればそれまでっ…!
くそっ…! 他の方法を考えてる時間はないか……!
「っ…! 手札より!《緑の森の戦士》を召喚!!」
私が召喚を宣言した瞬間、同じように握っていたはずのカードが消えていった。
そして私を守るように、緑の鎧を纏った片手剣の戦士が現れる。
身長はオークデーモンより小さい。 大きさが全てじゃないけど、やっぱり不安だ。
それでも私よりは強いはず。 ある程度は戦ってくれるはず…!
「≡≡≡≡!!!」
ダメだった。
迫り来る魔女の腕を盾で防ごうとしたけど、盾ごと握りつぶされ消滅した。
ちくしょう! やっぱりただの通常モンスターは雑魚か!?
「えーい!壁ににしかならなくたっていい!! 現れろ!《翼を持つ蛇》!《キテマイザー》!《角を持つ馬》!」
3体の同時召喚なんて出来るか心配だったけど、全てのモンスターはキチンと召喚された。
翼をつけただけのデカい蛇、スクラップの寄せ集めで出来た砲台、ツノがついただけの…いやただのユニコーンだな、コイツ。
「3体のモンスターよ!魔女を攻撃しろぉ!!」
私の指示に従って、モンスターが動き出す。 指示…具体的なことは何も言ってないけど。
《翼を持つ蛇》が腕の周りを飛んで翻弄、《角を持つ馬》は魔女の下部をチクチクと攻撃、そして《キテマイザー》が魔女と付近の使い魔に砲撃。
いいコンビネーションだぞ!
が、魔女の咆哮にビビった蛇が魔女に捕まり消滅、同じように馬も握りつぶされ消滅、残った鉄屑も必死に攻撃するが、どうやら攻撃は全然効いてないようで接近されて破壊。
クソが! こんな弱いなんて聞いてないぞ!!
それに手札だってもう無い…! 何も…できない…!?
その時だった。
「デッキが…光ってる…!?」
なんで…? さっきまでうんともすんともしなかったのに…
だが…もしかしてこれは…
「ドローが…できるっ…!」
鉄のように硬かったデッキからカードを引くことができる…!
気になることは色々あるけど、ここで強いカードを引くことができれば、あるいは…!
「唸れ!!私の右腕ぇ!! ドロォォォォォ!!!!」
この…カードは…!
「っ! 私はァ! 手札よりモンスターを召喚ッ!!」
「現れろッ!《
闇のような鋭い鱗、その名にふさわしい巨躯、ミラ○レアスとかそっち系のドラゴンが現れる!!
うっひょぉ〜! カッコいい!
こんな名前のモンスターが弱いはずがねぇ!!
「ブラックアイズ!魔女を消し飛ばせ!! 滅殺の
それっぽいポーズをビシィッと決め、叫ぶ。
こういう台詞は言ってみたいよなぁ!
私が高らかに宣言すれば、ブラックアイズは大きく唸り、口からドス黒いビームを放つ。 やっぱ出るのかそういうのが!
その力の奔流はモンスター5体で倒せなかった魔女を、粉☆砕!
「つ、強い…!」
厳つい顔立ち、威厳ある佇まい… カードにはレベルすら書いてなかったからどの程度のモンスターなのかはわからないけれど… よき力だ…
魔女が崩れゆくと同時に、結界が薄れ、元の景色に戻っていく。
それから、結界のあった場所には変なのが落ちてた。
「魔女を倒したようだね。 それはグリーフシード。ソウルジェムの浄化に必要なものだよ。」
「浄化って?」
「ああ。 魔法を使うとソウルジェムに穢れが溜まってしまう。 穢れが溜まった状態では魔法は使えない。 だから、グリーフシードで浄化する必要があるんだ。」
のこのこと出てきたキュゥべぇが説明をする。 …コイツ後半居なかったよな。
なるほどね。 で、肝心のソウルジェムはどこにあるんだ?
うーんと…
…デュエルディスクに埋め込まれてるなぁ。
ってあれ?
「なんか全然濁ってないな… まだグリーフシードは使わなくてもいいのかな。」
「…そのようだね。 …どうやら君のカードは厳密には魔法ではないようだ。」
ふーん…。
え?どういうこと?
どう考えても魔法でしょこれ。
「詳しいことは僕にも分からない。」
は?てめーが持ちかけた契約じゃねーか!責任取れや!!
「今日のところはこの辺りで退散させてもらうよ。 今日みたいに結界を探して、魔女を倒すんだ。 それが魔法少女の使命だからね。」
そういうとキュゥべぇは何処かに消えてしまった。
あんにゃろう… 逃げやがったな…
「使命…かぁ。」
あの時、ブラックアイズが引けていなければ普通に負けていたかもしれない…
カードを具現化できるとはいえ、カードによっては力負けする…
毎日のように魔女と戦っていれば、いずれ弱いカードのみで戦わなきゃ行けない時が来るかもしれない。 そうなったら私は…
デッキにどんなカードが眠っているかも分からない。 もし今後も通常モンスターしか引けなかったら?
……ドローの仕組みとか、色々と検証しなきゃいけないなぁ…
「そういえばブラックアイズは?」
…居ない。 時間制限があるのか、それとも結界内でしか存在できないのかな…
私の魔法少女ライフは始まったばかりだ。