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フリードという男は強い。
時折見せる狂った言葉に煽るような動作。
その上で、俺に近い戦い方をしてくる。
銃術や剣術は勿論、格闘術も収めている……それでも全体的に練度は俺の方が上だが、それでも無傷というわけにはいかない。
「ヒャーーーーーハッハッハ! いいね! 最高だ!!」
俺の体が祭壇にぶつかり、粉々にして吹き飛ばした。
口に溜まった血を吐き出す。
あーくそ。
剣を持ってきてなかったのが悔やまれる。
アラストルなんて我儘は言わねーけど、そこそこ頑丈なのが欲しい。
聖剣とかもそうだけど、別の空間に補完する術は覚えなきゃやってられないな。
「――っと、言いたいとこなんだがな。剣はないのかよ?」
不満げなフリードに、あったら使ってるつーの、と内心でぼやく。。
遠距離、或いは中距離の銃撃戦なら俺に分があるが、近接に持ってかれるとフリードの方が有利、か? 剣あるし。
あの光の剣は俺にも毒だ。
そりゃあ悪魔と比べりゃ全然マシな方だけど、それでも傷の再生は遅くなる。
「ま、手加減なんてしてあげませんけどね」
もう何度目か判らないが、俺はヴァイスでフリードの剣を受け止めた。
「あ」
「ああ?」
不意に俺のバランスが崩れた。
なんで!?
そう思い足下を見ると階段が顔を覗かせていた。
……そういえば最初に言ってたな。
祭壇の下に地下に続く階段があるって。
剣が銃に押され、俺は大きく倒れそうになり……フリードの腕を掴んでしまった。
「はあっ!?」
「一緒に行こうぜ?」
困惑したフリードが状況を理解して目元をヒクつかせる。
だがもう遅い。
死にさらせえええええええええええええええ!! とフリードは叫びながら、俺と共に急な作りになっている階段を転がり落ちた。
「――くたばれっ!!」
一番下まで落ちてすぐに二人とも体勢を立て直す。
フリードが剣を掲げ、俺はWゴーストを構える。
だがフリードのそれは、ガン! という鈍い音をたてて止まってしまう。
「……あ?」
俺達は首を動かす……刀身は天井に突き刺さっていた。
天井低いな……地下に増設したからか。
フリードがダラダラと汗を流しながら俺を見た。
「
「ガッ、ハアアアアアアアアア!!」
我ながら悪い笑顔だったと思う。
今まで斬られた恨みも含めて渾身のドロップキックをお見舞いしてやると、宣言通り派手に吹っ飛んだ。
「く、クソ野郎……!」
血を吐きながら立ち上がるフリード。
だがその体はボロボロだ。
ちょうど背後にある扉に寄り掛かりながら息を整えている。
んんー? あの扉の向こうが子猫たちの戦ってる場所か。
「っておいおいおいおい! 何を構えてるんですかぁ!?」
「…………ミサイルランチャー?」
わざとらしく首を傾げてやると、フリードは顔を引き攣らせた。
「早くも二度目だ……
いつもならフリードの方が浮かべる相手を挑発するような笑み、それを浮かべて俺は引き金を引いた。
そして直後に爆発。銃で迎撃された。
爆風に飲まれて、俺の体も後ろに吹っ飛んだ。
重量が足りなくなったみたいだ。
「っと」
クルッと回って階段の段差を蹴り、その勢いで扉の向こうまで跳ぶ。
煙を突き抜けたところで、正面にいた神父を右手で弾く。
「がはっ」
ごめんよ。自分の運の悪さを呪ってくれや。
そんな風に思いながら、勢いに任して更に三人ほど殴り飛ばしてしまった。
まァ敵なんだし、別にいいだろ。
「あん? フリードはいないのか?」
床を削るように滑り、止まったところで辺りを見渡してみる。
近くにいるのは小猫と木場先輩。
そこから少し離れた位置にイッセー先輩と金髪のシスターと堕天使。
あとはまァ……たくさんの神父達。
「…………」
皆が口をあんぐりと開けている中、小猫が無言でこちらに歩み寄って来る。
「っていうか今の状況――ごふっ」
……え?
なんで俺の腹に小猫さんの拳がめり込んでいるのですか……?
「……ふん」
鼻を鳴らして木場先輩の元に戻る小猫。
俺がプルプル震えていると、爆炎による煙の中からフリードが出てきた。
「超心配されてんじゃん! ザマーみやがれ!! もっとやれ!!」
「心配なんかしてない」
おっと! と小猫が投げ飛ばした神父をひょいっと避けたフリード。
「っ! フリード!! 人間一人も足止めできないとはどういうこと!?」
堕天使が思い出したようにフリードを怒鳴った。
「……これ、一時期とはいえ上司だったんだぜ? 笑わすよな」
そのフリードが俺を見て言った。
やれやれと首を振っている。
「あ、あなた誰に向かって――!!」
「はいはい、高貴な堕天使様ね。わかったわかった。相手の実力も理解出来ない高貴な堕天使
まくし立てるようにフリードは言い、最後に堕天使に対して殺気を叩き付けた。
「ひうっ!?」
そんな悲鳴を上げて堕天使は膝をつく。
「リョウヤはそれ以上の殺気で向かって来るんですよー? ま、俺も同じだけどなっ」
煙が晴れ始めると、多くの神父が転がっているのが目に入った。
「な、ならっ! さっさとそいつを殺しなさい!!」
ここに来て堕天使はフリードと……俺の実力を改めたようだ。いや、改めざるをえなかったのか。
悲鳴にも似た命令を下されたフリードは俺に向かって――来ない。
「アーシアちゃーん、生きてる-?」
フリードの声に返事は……ない。
なんでこのタイミングで……?
しかし、そうか。
まさかとは思ったが間に合わなかったのか。
俺はイッセー先輩の元に向かう。
フリードの追撃はない。
堂々と足を進める俺を見て、堕天使は叫きながら後退していく。
「先輩」
「……なんだ」
イッセー先輩はアーシアの手を握ったまま返事をした。
「希望はある」
バッと顔を上げる先輩。
一つ、ずっと考えていたことがある。
「部長さんはまだ
「そ、そうか!」
イッセー先輩の瞳に希望が宿った。
聞いた話では
アーシア=アルジェントにぴったりな駒だ。
「そうなるとやっぱり奪われた
助けてやればいい! と言うのは判っていたので、それより早くに言葉を続ける。
「アーシア=アルジェントは元来戦闘向きの性格じゃない。戦う手段もない。ならやっぱり回復役としての
「……部長の眷属だから」
察したようだ。
酷なことを言うが、ここでなんの力もない人間を眷属にすれば部長さんにはデメリットしかないだろう。それに彼女の眷属になれば否応なく戦いに巻き込まれ、命を落としかねない。
だが、
アーシアの噂は、俺ですら知っている。
種族を問わない癒やしの力。
戦略の幅も広がるし、回復役として後衛になるのは間違いない。
「そう。だから――」
「レイナーレは俺がやる」
だよな。
俺が頷くと、フリードが口を挟んだ。
「話はまとまったかーい?」
「あァ、お陰様で」
フリードが笑みを深くする。「心配事があると戦いに集中できないだろ?」と。
相変わらず何を考えているのか判らないが、第二ラウンドということでご満悦のようだ。
俺の傷も再生し始めてるし、さっきまでのようにはいかないぜ!!
◇