宿した者(仮)   作:雲丹

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激情

 

 

 

 

 レーディングゲーム。

 チェスの要素を取り込んだ、眷属同士を戦わせるゲームだったな。

 

 

「お父様はどこまで私の生き方をいじれば気が済むのかしら……」

 

 

「では拒否すると?」

 

 

「まさか。こんな好機はないわ。ゲームで決着をつけましょう」

 

 

 部長さんは苛ついた様子だったが、グレイフィアに対してはすぐに答えを返した。

 その挑戦的な物言いに、ライザーは口元をニヤけさせた。

 

 

「俺も構わないが……いいのか? 俺は既に公式のゲームも経験しているんだぞ」

 

 

 こちらも挑戦的に返したライザー。

 部長さんは勝ち気な笑みを浮かべた。

 

 

「やるわ。ライザー、貴方を消し飛ばしてあげる!」

 

 

「いいだろう。そちらが勝てば好きにするがいい。俺が勝てば即結婚だ」

 

 

 睨み合う両者。

 

 

「承知いたしました。御二人のご意志は私グレイフィアが確認させていただきました。ご両家の立会人として、私がこのゲームのジャッジを執らせてもらいます。よろしいですね?」

 

 

「ええ」

 

 

「ああ」

 

 

 二人はグレイフィアに迷いなく即答。

 

 

 

「わかりました。ご両家の方々には私からお伝えします」

 

 

 確認したグレイフィアが一礼した。

 

 

「なあリアス、まさかここにいるメンツがキミの下僕なのか?」

 

 

 ライザーの一言に部長さんは片眉をつり上げる。

 

 

「だとしたらどうなの?」

 

 

 クク、と面白そうに笑うライザー。

 

 

「これじゃあ話にならないんじゃないか? 雷の巫女ぐらいしか俺のかわいい下僕に対抗できそうにないな」

 

 

 言いながら指を鳴らすライザー。

 どうやらまた転移してくるようだ。

 話の流れ的にライザーの眷属なのは間違いない。

 現れたのは……十五人、加えてライザー。つまりフルメンバーか。

 

 

「と、これが俺のかわいい下僕達だ」

 

 

 あァ、かわいいかわいい連呼してたし、やっぱそういうことなのね。

 全員が女。

 

 

「な、泣くなよ、イッセー先輩」

 

 

「りょ、涼夜……けどよ……!」

 

 

 この状況でよく泣けるな。

 あァいや、戦力差に絶望とかしてないのはいいと思うけど。

 

 

「お、おい、リアス……この下僕くん、俺を見て大号泣してるんだが……しかも給仕に慰められてるんだが」

 

 

 あァ、流石に引くよな。

 そして俺は給仕でもない。

 

 

「その子の夢はハーレムなの。きっとライザーの下僕たちを見て感動したんだと思うわ」

 

 

 うんうん、と頷く先輩。

 本当にそういうのには素直だな。

 

 

「きもーい」

 

 

「ライザー様ー、このヒト気持ち悪ーい」

 

 

 あらら。

 ライザー眷属にも言われちゃったよ。

 

 

「ほら先輩、言われてるから。そろそろ自分が恥ずかしいことしてんのに気が付こうぜ?」

 

 

「お前は! うりゃーましくないのか!?」

 

 

「人語忘れてるぞ。日本語か英語辺りで頼む」

 

 

 他にもいくつか話せるけどな。

 ……さてさてしかし、あの金髪の縦ロールはどうして俺をチラチラ見ているのか。……どっかで会ったことあったっけか。全く覚えてないんだが。

 

 

「せっかくだ、見せつけてやろう」

 

 

 そしてライザー。

 お前は一体どういう思考回路をしているんだ。さてはお前、根本的にはイッセー先輩と同類だな?

 

 

「んっ……あふっ……」

 

 

 眷属とディープキスを始めたライザーを呆れたように見る部長さん。

 

 

「ありゃ部長さんじゃなくても嫌になるわな」

 

 

 かく言う俺も、当然だが呆れており、少し前に焼き上がっていたクッキーをオーブンから取り出していた。

 

 

「アーシア先輩(せんぱーい)

 

 

「はぅぅ……」

 

 

 こっちはこっちで処理落ちしてるので、強引に体を反転させて口にクッキーを放り込んでやった。

 

 

「美味しい?」

 

 

「ひゃい……おいひいです」

 

 

「じゃあこれ渡すから、終わるまでこっち見て食べてような」

 

 

 クッキーの乗った小皿をアーシア先輩に渡し、今度は小猫を見る。

 こちらは嫌悪感を隠すこともなくライザーを睨んでいた。が、こちらに気が付いて俺を手招きした。

 

 

「ほい」

 

 

「ん…………六十点」

 

 

 クッキーを一口、そして採点。

 おお、上がった上がった。

 

 

「美味しくなった……」

 

 

(あゆむ)がコツを教えてくれたんだ」

 

 

「……鳴海君?」

 

 

 そうそう、と俺は頷く。

 鳴海歩はクラスメイトの一人で、長めの茶髪とピアスが印象のクールな男の子だ。

 

 

「あいつ料理もデザートも得意らし――」

 

 

「ブーステッド・ギア!!」

 

 

 お?

 イッセー先輩の怒鳴り声と神器(セイクリッド・ギア)の気配に、俺は咄嗟に体の向きを変えた。

 

 

「お前みたいな女ったらしと部長は不釣り合いだ!」

 

 

「は? お前はその女ったらしに憧れているんだろう?」

 

 

「…………」

 

 

 そこで論破されんなよイッセー先輩……。

 

 

「う、るせえ! それとこれとは別の話だ! そんな調子じゃ部長と結婚したって、他の女とイチャイチャしまくるんだろ!?」

 

 

「英雄、色を好む。確か人間界の言葉だよな? いい言葉だ。まあこれは俺と下僕のスキンシップだ。お前だってリアスに可愛がってもらっているんだろう?」

 

 

 「……同族嫌悪」とぼそりと呟いた小猫。

 それには同感だが、無駄に喧嘩を売るのはやめなさい。

 不死鳥相手は、まだ早い。……あァ、そうも言ってられないのか。ならやはり俺が戦うのが手っ取り早いが……。

 

 

「何が英雄だ! お前なんかただの種まき鳥野郎じゃねぇか! 火の鳥フェニックス? 焼き鳥の間違いだろ!? はは、フェニックスに詫びやがれ!!」

 

 

「焼き鳥!? 下級悪魔ぁぁぁ! 調子こきやがって! 上級悪魔に対して態度がなってねぇぜ! リアス! 下僕の教育はどうなってんだ!?」

 

 

 部長さんはそっぽを向いた。

 心情は察するが、この展開はちょっとまずいんじゃないの?

 グレイフィアを見ると、小さく溜め息を吐いていた。……珍しい。あ、目が合った。……からの小さく咳払い。少し照れているようにも見える。……あァこれがギャップ萌えね。これで人妻なんだから驚きだ。

 今度サーゼクスに会ったら教えてやろう。

 

 

「ゲームなんざ必要ねぇ! 俺がこの場で全員倒してやらぁ!!」

 

 

『Boost!!』

 

 

 イッセー先輩の籠手の甲にあろ部分から音声が発せられ、先輩の力が増す。

 その様子にライザーは嘆息するだけだった。

 

 

「ミラ、やれ」

 

 

「はい、ライザー様」

 

 

 ライザーが命を下した。

 小猫と同じくらい小柄で童顔な少女。

 得物は棍。

 その少女が駆け出した瞬間、俺は魔法を発動させた。

 急ブレーキをかける棍を構えた少女。

 

 

「っ!?」

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 イッセー先輩の方は少女が急に接近してきたことに驚き、次いで目の前の光景に息を飲んでいた。

 黒い魔力で形成された刀の葬列が、ちょうどグレモリー側とフェニックス側を分かつように現れたからだ。

 

 

「きれい……」

 

 

「……うん」

 

 

 誰かが呟いた。

 黒い刀は透き通っているから、確かに見ようによっては美しい。

 まァ個人的には師匠の兄貴の使うやつのほうが綺麗だと思ってるけど。

 

 

「幻影剣、ですか」

 

 

 グレイフィアが呟くと、必然的に彼女に視線が集まる。

 

 

「グ、グレイフィア、これは貴女の……」

 

 

「……いえ、これは彼の魔法です」

 

 

 グレイフィアが俺を見、今度は視線が俺に集まってしまった。

 

 

「随分と数を出せるようになりましたね」

 

 

「魔法なら幻影剣(これ)を一番使うからな。必然、練度も上がる」

 

 

 俺の言葉にグレイフィアは納得したように「なるほど」と言い微笑んだ。

 

 

「ってそれは置いといて。イッセー先輩、俺言ったじゃん。相手が間抜けじゃないと溜める時間はないって」

 

 

「う、でもよ……」

 

 

「それに今の……えっと誰だっけ? まァいいや。その棍使ってるやつの動きは見えたか?」

 

 

「み、見えませんでした……」

 

 

 俺が女を指さすと、イッセー先輩は唇を噛んだ。

 ちゃんと認めるか。

 なら上出来だな。

 後は……。

 

 

「……ふん、人間にすら劣っているのか。弱いな、お前」

 

 

 場の空気に飲まれてたわりにデカイ口を叩くんだな、不死鳥は。

 

 

「これならそこの給仕を参加させた方がいいんじゃないのか?」

 

 

 愉快そうに笑うライザー。

 その言葉を聞いて、俺はグレイフィアに視線を送った。

 

 

「今回はあくまで両家の問題ですので、涼夜様の参加は認められません」

 

 

 ……予想の範囲内だな。

 グレイフィアは――グレイフィアとその主は、俺が参加したらどうなるかを理解している。

 

 

「それは残念だ。少しはマシになると思ったんだが」

 

 

 ライザーは顎に手をやって、何か思いついたようだった。

 

 

「そうだ。ゲームは十日後にしよう。それなら少しは面白くなるだろう?」

 

 

「……私にハンデをくれると言うの?」

 

 

「嫌か? 屈辱か? 自分の感情だけで勝てるほどゲームは甘くないぞ? いくら才能があろうと、いくら強かろうと、いくら神器(セイクリッド・ギア)が大物でも。力を発揮できなくては、待っているのは敗北だ」

 

 

 ……それに関しては理解できるな。

 戦いってのは感情で勝てるほど甘くはない。

 それが判っているのか、部長さんも黙って聞いている。

 

 

「――十日だ。キミなら十日でなんとかなるだろう」

 

 

 ライザーの視線がイッセー先輩に移る。

 

 

「リアスに恥をかかせるなよ。リアスの下僕であるお前の一撃が、リアスの一撃なんだよ」

 

 

 ……そういうことも言えるんだな。

 少し意外だ。

 

 

「リアス、次はゲームで会おう」

 

 

 そう言い残し、ライザーは眷属を連れて消えていった。

 

 

 

 

 

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