宿した者(仮)   作:雲丹

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OK!

 

 

 

 

 

 ライザー達がいなくなり、再び室内を重い雰囲気が包み込む。

 

 

「涼夜様」

 

 

 そんな空気の中、グレイフィアが俺に声をかけてきた。

 

 

「サーゼクス様から極秘の依頼があります」

 

 

「妹とその眷属を鍛えてほしい……とか?」

 

 

 俺の予想にグレイフィアは静かに頷いた。

 

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 

 割り込んできたのは慌てた様子の部長さんだった。

 展開に着いて行けないみたいだ。

 ……当然か。

 俺のこと、あんまり知らないもんな。

 

 

「お嬢様、少し落ち着いてください」

 

 

「だ、だってお兄様は……それに涼夜に依頼って……」

 

 

 グレイフィアに窘められ、勢いを徐々に消していく部長さん。

 

 

「お嬢様はDevil May Cryというのを知っていますか?」

 

 

「Devil May Cry……悪魔も泣きだす?」

 

 

 あ、知らないのね。

 首を傾げている部長さんが、他の部員を見渡す。

 皆が首を振る中で、最後に俺を見る。

 

 

「Devil May Cryは主に悪魔……じゃない。魔物絡みの事件を解決する便利屋だよ」

 

 

 言ってしまえば察するだろう。

 俺が所属している便利屋がDevil May Cryなのだと。

 

 

「そして非公式ではありますが、サーゼクス様も依頼をなさったことがあります」

 

 

 アザゼルもな。

 

 

「一応言っとくけど、俺にじゃなくて師匠にな」

 

 

 大事なことなので言っておく。

 

 

「そうは言いますが、もう十年以上を師と共に過ごし、鍛えられ、依頼をこなしています。実力は折り紙付きです」

 

 

「ねェ、過大評価やめて」

 

 

 俺が頬を掻きながら指摘する。

 

 

「照れているのですか?」

 

 

「照れてないです」

 

 

「顔が赤いですよ?」

 

 

「気のせいですよ」

 

 

「そう言えば褒められ慣れていないんでしたね」

 

 

 知っててやってんのか!!

 しかも今小さな声で「新鮮だったのでつい」って言ったな!?

 あーもう、部長さん達が唖然としてるじゃないか!!

 

 

「でだ。真面目な話、俺に誰かを鍛えるのは……」

 

 

 とっとと話を変えさせてもらおう。

 

 

「あれ? でもお前、小猫ちゃんと特訓してるじゃん」

 

 

 まさかのイッセー先輩から攻撃が来た。

 

 

「そう言えば僕もたまに打ち合ってもらってるね」

 

 

 木場先輩から追撃でござる。

 それを聞いてグレイフィアは付け足した。

 

 

「ちなみに報酬は言い値で払うそうです」

 

 

 と。

 吹き出した。

 冗談抜きで。

 言い値って……お前……。

 

 

「……そうね」

 

 

 あァ? 何を納得してるんだ、部長さん。

 

 

「涼夜、私達を鍛えてもらえるかしら?」

 

 

 ……参ったな。

 さっきの情報のせいで断れなくなってきた。

 

 

「私からもお願いしますわ」

 

 

 深々と頭を下げる副部長さん。それを見て慌てて部長さんも頭を下げる。

 

 

「俺からも……頼む!」

 

 

「僕からもお願いしていいかな?」

 

 

 イッセー先輩、木場先輩……。

 

 

「あ、あの私も頑張りますので、お願いします!」

 

 

「……お願い」

 

 

 ……まァ俺がやろうとしてたことよりマシか。

 全員に頭を下げられては、断れない。

 

 

「…………グレイフィア」

 

 

壁際にいたグレイフィアの前に立つ。

 

 

「なんでしょうか」

 

 

「サーゼクスに伝言。報酬は結果を見て決めろって」

 

 

「かしこまりました」

 

 

 俺の答えが判っていたのか……いや、判ってたんだろうな。

 満足そうに頷いたグレイフィアは転移して行った。

 

 

「……あ?」

 

 

 ふと視線を部員の皆の方に向けると、なぜか俺を見て硬直していた。

 あれ、なんかデジャヴ……。

 

 

「涼夜!」

 

 

「涼夜君!」

 

 

「ヘアッ!?」

 

 

 一番大きなお二人の歓喜の声と共に抱きつかれた。

 それも小猫、イッセー先輩、アーシア先輩、木場先輩を巻き込む形で。

 しかも俺の後ろが壁だったせいで、抑え付けられる形になってしまっている。つまり抜け出せない。

 年長者組に包まれるようにもみくちゃになる俺達下級生組。

 

 

「……きつい……あつい……ちかい……」

 

 

 俺の胸に顔を埋めてしまっている小猫がなんか呟いている。

 イッセー先輩は横の木場先輩を離そうとしているが、背中にいる部長さんと前にいるアーシア先輩の感触を楽しんでいるみたいだ。余裕だな!

 副部長さんは必要に俺や小猫の頭を撫でているし……もうどいつもこいつも鬱陶しい!!

 

 

「ちょ、離せ! まだ勝てると決まったわけじゃないんだよ!!」

 

 

 俺がそう叫ぶと、ハッとなったのか部長さん達は離れてくれた。

 意外と言うこと聞いてくれるのな。……副部長さんは渋々だったし、イッセー先輩は残念そうだ。あ、アーシア先輩の顔真っ赤じゃん。大丈夫か?

 

 

「ご、ごめんなさい。貴方が頼りになるのは知ってたけど、まさかグレイフィアにあそこまで言わせると思ってなくて……なんて言うか……ホッとしちゃって」

 

 

 それは……もうさ。

 言い方が卑怯なんだよなァ……。

 ちょっと目が潤んでたし、不安だったってことだろ? 本当に勝ってもらいたくなる。勝たせたくなる。

 ……あァ、やれるだけやってやるさ。

 

 

「顔がニヤけてる」

 

 

「これからのことを考えてるの」

 

 

 小猫、俺は別に部長さんがなんか可愛かったとか思ってるわけじゃない。副部長は頭撫でるの上手かったなとか思ってるわけじゃない。

 ……本当だからその疑わしげな目をやめなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで話を戻すわけだが」

 

 

 クッキーがテーブルに置かれ、全員の手に副部長の紅茶が行き渡ったところで俺は切り出す。

 

 

「十日の間……学校は?」

 

 

「それは私の方でなんとかするわ。場所もグレモリーの敷地を提供できるから、そこを使うのがいいと思うの」

 

 

 部長さんの言葉に頷く。

 なら十日はフルに修行に当てられるってことな。

 

 

「敵の眷属の特徴は知ってるのか? (キング)が不死鳥なんだろ? 感覚だと、もう一人似たようなのがいたが……」

 

 

 俺のことを覗き見てた金髪ちゃん。

 

 

「それはレイヴェルね。ライザーの妹よ」

 

 

 なるほどな。

 いも――

 

 

「――妹?」

 

 

 俺は素で聞き返してしまった。

 

 

「あいつは自分の妹にも手を出してるんですか!?」

 

 

 俺の言葉をかき消すほどのイッセー先輩の言葉。

 あァ、うん。そうなるよな。

 俺も驚いた。

 いかにも……というか確実に眷属に手を出してる奴だ。

 その眷属に実妹がいるとは……。

 

 

「手を出している……かは分らないけど、血の繋がった妹よ」

 

 

 ……とんでもないな、あの男。

 そしてイッセー先輩、少し落ち着こう。

 「くそなんて羨ま……いや、最低な……けど……」とまさに百面相だ。

 

 

「じゃあやっぱり不死なんだな?」

 

 

「そうだけど……よく分ったわね?」

 

 

「あんだけ近くにいりゃ判る」

 

 

 こともなく言うと、全員が唖然としていた。

 

 

「……相手の力量、能力、そういうのが一目でザッとでも理解出来る。そういう直感とも言えるスキルは経験積めば覚えるよ。ただまァあくまで目安だけど」

 

 

 なんだかんだで必須技能だ。

 力量差が判らないと逃げることすらできない。

 

 

「それはいい。他は?」

 

 

「ユーベルーナ……私と同じ女王(クイーン)で、爆弾女王(ボムクイーン)と呼ばれている方がいますわ」

 

 

 爆弾の女王……。

 

 

「あれか、ディープなキスをしてた」

 

 

 頷く副部長。

 けどあのメンバーで厄介なのは、その辺りか。

 兵士(ポーン)っぽい連中が相手ならアーシア先輩以外なら問題なさそうだ。まァプロモーションされたら話は別だが。

 

 

「結論。フェニックス兄妹以外なら確実にどうにかなる……といいなァ」

 

 

 願望!? と総ツッコミを喰らった。

 

 

「聞けよ。俺にできんのは能力の底上げだ。戦術はあまり教えられない。で、戦略は部長さんが考えろ」

 

 

 レーディングゲームはやったことないからな。

 セオリーとかも知らない。

 意見を出すことはできるけどな。

 

 

「それからフェニックス……不死ってのは結構厄介だ」

 

 

「それは涼夜でも……?」

 

 

「いや、あのくらいの不死なら殺しきれる」

 

 

 イッセー先輩に答えると、ほっとしたようだった。他の部員もだ。

 

 

「不死ってのは大概が殺し続ければ死ぬ。肉体的にしろ精神的にしろな」

 

 

 魂ごと吹き飛ばすって手段もあるが、と付け足し……俺は言い放った。

 

 

「今回狙うべきは精神の方だ」

 

 

 こいつは賛否両論かもしれない。

 だが、それ以外の道はない、俺はそう言い切った。

 

 

 

 




レーディングゲームに参加しない涼夜ですが、彼の見せ場はちゃんとありあます。
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