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涼夜がやたら修行期間が短いってこと呻いていたけど、それがここに来て俺にやっと理解できた。
十日……修行中はキツイことばっかだったけど、終わってしまうと、もうか! ってなった。
アーシアとギリギリまで家で静かに過ごしたおかげで、俺の緊張もアーシアの震えも収まったけど……涼夜のやつはもう別室に案内されてしまったらしい。
「イッセー、アーシア」
部長に呼ばれ、返事を返す。
一体なんだろうか……。
「涼夜から伝言よ。“お前らは強くなった。後は全力を出すだけだ。ただし油断はせずに”ですって。それから照れるように“応援してる”と言っていたわ」
~~っ!!
そうか! 強くなってるか!!
良かった、結局俺は技を一個しか覚えれなかったから不安だったんだ。
修行の後半でブーステッド・ギアを使わせて貰って、ある程度は戦えるようになったのはわかる。けど、それでも涼夜に言ってもらえると安心する。自信が持てる。
あいつは……本当に強かったから。
「皆さん、準備はできましたか? 開始十分前です」
部屋の魔方陣から現れたのはグレイフィアさんだった。
「開始時間になりましたら、この部屋から戦闘フィールドに転送されます。場所は使い捨ての空間なので、思う存分にどうぞ」
なるほどなるほど。
そんな空間を用意するとは……改めて悪魔って凄い。
そうして雑談をしているうちに時間になってしまった。
「皆様、魔方陣の方へ」
グレイフィアさんに促され、俺達は魔方陣に集結する。
「なお、一度あちらへ移動しますと終了するまで魔方陣での転移は不可能となります」
……帰ってくる時は勝敗が決した時ってことか。
俺はグッと拳を握る。
すると光が包み込み、転移が始まったのだった。
……目を開けるとそこは。
あれ? 変わってない。
転移失敗? もしかして俺のせい――!?
『皆様。この度、グレモリー家、フェニックス家のレーディングゲームの審判役を担うことになりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます』
校内放送だ。
『我が主、サーゼクス=ルシファーの名の下、ご両家の戦いを見守らせていただきます。よろしくお願いいたします。今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う学舎・駒王学園のレプリカをご用意いたしました』
なるほ……って俺さっきからなるほどって言い過ぎか?
とにかく、この場所は作り物なのか……って作り物!? まんまじゃん!!
淡々と続く説明を聞きながら、俺は驚かされっぱなしだ。
えーっと、異空間に学校のレプリカがあって、それが今回の戦場で。
今いる場所が俺達の本陣。
焼き鳥の本陣が生徒会室。……つまり俺は生徒会室周辺に行かないとプロモーションができないってことだ。 新校舎最上階の端っこ……遠いな。
逆を言えば相手もそうだけど……
「全員、この通信機を耳につけてください」
朱乃さんがイヤホンマイクタイプの通信機器をくれた。
これを使って味方同士でやりとりをするんだそうだ。
『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明け前まで。それではゲームスタートです』
鳴り響く学校のチャイム。これがスタートの合図か。
こうして俺達にとっての初レーディングゲームの狼煙が上がった。
「さて、まずはライザーの兵士を
部長がソファに腰を下ろしながら言う。結構余裕だ。
朱乃さんもお茶の準備始めてるし……。
「祐斗」
「はい」
部長に促され、木場がテーブルの上に地図を広げた。
学校の地図だ。
マスで区切られ、縦と横に数字と英語か書き込まれてる。ああ、これチェスのボードに倣ってるのか。
「涼夜が言っていたことは覚えてるわね?」
「……フェニックス以外の戦力なら負けていない、ですね」
小猫ちゃんの言葉に部長が頷く。
「ええ。でもそれは単純にぶつかり合った場合の話よ。実際はフィールドを用いた策を練るのがレーディングゲーム。私達も、ライザー達もね」
部長が旧校舎と新校舎の端っこを赤ペンで囲った。これが俺達の本陣と、相手の本陣か。
「私達の本陣近くに森があるわ。これはこちらの領土と思って構わないわね。逆に新校舎はライザーの陣地。そして校庭。ここは新校舎から丸見えだから、通るのは避けた方がいいわね」
窓から丸見えだもんな、校庭。
「じゃあ使うのは運動場ですか?」
俺の問いに部長は苦笑する。
「普通ならね。でもそれは相手も理解しているわ。そうね……運動場の部活棟。そこに
騎士は機動力が高いからか。
兵士を一緒に置けば運動場全体を把握するためだよな。
そこに木場が意見を言う。
「体育館は狙い目ですね。新校舎までのルート確保と相手への牽制、両方が可能です」
部長が頷く。
「そうね。まずは体育館を取りましょう。室内ならば投入されるのは破壊力重視の
部長は次から次へと指示を出していく。
うーむ、難しいな。
と、とにかく迷惑だけはかけないようにしないと……。
「この戦い、私達は
……相手はレーディングゲーム経験者で、しかもフルメンバー。戦績は実質全勝。対して俺達はゲーム初経験で、数も揃ってない。
修行中に涼夜にも言われたことだ。
「私も色々と考えたし、涼夜とも相談したけど、やっぱり勝率は高くない。それこそライザーを落とすには全員で挑む必要があるわ」
それってつまり俺達は誰一人として欠けることを許されてないってことか。
当たり前とは言えプレッシャーだ。
「でもこの十日間でお互いの動きは大方把握できたし、連携のレベルも上がった。……充分やれるわ」
部長が皆を安心させるように笑う。
「部長! 俺絶対に部長を勝たせてみせます!!」
本心で、決心だ。
部長が嬉しそうに微笑んだ。
「ええ、期待しているわ。イッセー……それに皆も」
その言葉を皮切りに、木場と小猫は怪しげなトラップグッズを持って、朱乃さんは森周辺に幻術をかけるために出て行った。
その間の俺?
部長の太ももは最高だったと言っておこう。
◇