宿した者(仮)   作:雲丹

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New Day,New Life

 

 

 

 

 

「粗茶です」

 

 

「あ、どうも」

 

 

 小猫の発言に困惑していた俺達だったが、すぐに冷静さを取り戻すことができた。

 ソファーに座るように促された俺は、姫島朱乃から受け取った温かいお茶を特に口にすることもなくテーブルに置く。

 

 

「それで――入部希望……じゃないのよね?」

 

 

「ない」

 

 

 リアス=グレモリーの疑問、そこは即答させてもらおう。大事なことだ。

 それに聞いた話だが、この部活は入部条件が難しいらしい。恐らく、俺も無理だろう。……小猫がいなければ、だが。

 

 

「部長、涼夜は悪魔の力を持ってます」

 

 

 やっぱ余計なことを言う……。

 ……!?

 簡単にバラしますね、小猫さん。

 隣に座っていた少女の言葉に、俺はひっそりと頭を抱える。

 だってリアス=グレモリーがあからさまに目を細めたし。

 姫島朱乃と木場祐斗も驚いている。

 

 

「特に何も感じないのだけれど……」

 

 

「隠すのが上手なんです」

 

 

 すっげー、マジで容赦なく秘密が暴かれていく。

 

 

「最初は気のせいだと思ったんですが……カマをかけたら引っかかってくれました」

 

 

 どこか淡々と話していた小猫が「ですよね?」と俺を見る。

 

 

「……俺自身は人間だけどな」

 

 

 言って、隠していた魔力を僅かに解放してみせる。

 これには小猫以外の全員が目を見開いた。

 ……この力が覚醒した時のことはよく覚えている。だが、宿ったのはいつだったんだろうか。俺にも判らない。

 

 

「ガキの頃に俺と同じような体質の男に拾われて、力の使い方とかを叩き込まれた。悪魔やら天使やらの知識もそう」

 

 

 なんだけど。

 と、今度は俺が小猫を見る。

 

 

「……知られるなら早い方がいい」

 

 

 バレんの確定かよ。

 とはいえ……リアス=グレモリーは魔王の妹だし、生徒会長も同じく魔王の妹。

 そのことを知ったのはこっちに来た時だったが、この学園や街が戦場になる可能性も高いだろう。

 無関係な人間や友人が戦いに巻き込まれてしまえば、俺が不干渉でいるわけにもいかない。

 

 

「それに、涼夜と敵同士にはなりたくない」

 

 

 どこか懇願するように小猫に言われ、俺は言葉に詰まる。

 

 

「女の子って狡いよねェ……」

 

 

 ボソリと呟くと、リアス=グレモリーと目が合った。

 なにか珍しいものを見たような表情で小猫を眺めていたが、俺と目が合うと苦笑を浮かべる。

 

 

「小猫がここまで言うのなら、私も貴方を信用しましょう」

 

 

 姫島朱乃と木場祐斗に視線を向けるリアス=グレモリー。

 すると二人も文句はないと言うように笑顔で頷いた。

 流石、身内に優しいで有名なグレモリーだ。……そこを利用されないといいんだけどね。

 

 

「オカルト研究部は黒上涼夜、貴方を歓迎するわ」

 

 

「あァ……よろしく」

 

 

 伸ばされた腕を取る。

 リアス=グレモリーと握手をしたところで俺はハッとなった。

 完全に流された、と。

 ちらりと小猫を見ると、俺の視線に気が付いて声は出さずに口だけを動かした。

 け・い・か・く・ど・う・り。

 計画道り。

 ……く、悔しい……!!

 

 

「じゃあ改めて自己紹介しましょうか」

 

 

 朱乃、とリアス=グレモリーが促す。

 

 

「はい。――オカルト研究部の副部長を務めている、三年生の姫島朱乃ですわ。これからよろしくお願いしますね」

 

 

 和風感漂う佇まいで差し出される右手。

 

 

「ご丁寧にどうも」

 

 

 その手を握り、離すと、リアス=グレモリーが今度は「祐斗」と木場祐斗に声をかける。

 

 

「僕は二年生の木場祐斗。特に役職はないけど、何かあったら気軽に頼ってほしいな」

 

 

 おォー!

 爽やかだ。紛う事なきイケメンだ。

 同性から見ても女性に騒がれるのが判る。

 そうして握手。

 

 

「小猫……はもう親しいみたいね」

 

 

「はい。同類ですから」

 

 

 同類? とリアス=グレモリーがオウム返しをした。

 

 

「甘党で猫舌です」

 

 

 意外だとでも言うような視線が俺に集まる。

 

 

「では、それでお茶に口を付けていないのですね」

 

 

 姫島朱乃が手をポンと叩き、納得するように言った。

 

 

「てっきり警戒されているのかと……」

 

 

 自分の出したお茶を、警戒されて飲まれていないと思っていたのか……それは悪いことをしてしまった。

 でも猫舌なのって一々ひとに話すようなことでもないんだよなァ……。

 

 

「だが私は謝らない」

 

 

「謝ってください」

 

 

「うごっ」

 

 

 小猫のツッコミという名の拳が俺の脇腹を襲った。

 殴られた場所を抑えて震える。……小猫さん、あなた自分の力を理解してるんですか?

 

 

「大丈夫、相手は選んでる」

 

 

 さいですか……。

 

 

「――すいませんでした」

 

 

「いえいえ、私が勝手に勘違いしてしまっただけですので」

 

 

 姫島朱乃……朱乃? 副部長でいいか。

 副部長に頭を下げると、彼女はにこやかに気にするなと言ってくれた。

 

 

「最後に。私が部長のリアス=グレモリーよ。彼らの主であり、グレモリー家の……ってその辺りの知識はあるのかしら?」

 

 

 頷く。

 ざっとではあるが知っている。

 グレモリー家は純血の悪魔で、爵位は公爵だったか。

 

 

「そう……爵位は公爵で――ってそういえば貴方、涼夜と呼んでもいいかしら?」

 

 

「どーぞ」

 

 

 海外育ちのようなものなので、名前で呼び合うことに特に抵抗はない。

 

 

「涼夜は私の眷属になる気はないかしら?」

 

 

 眷属悪魔、ね。

 この部室にいる俺以外は全員悪魔。

 リアス=グレモリーが主で、その他が眷属悪魔(それ)だ。

 文字道りの主従関係で、悪魔の駒(イービル・ピース)という道具を用いた契約のようなものだ。

 

 

「んー、特に悪魔になる理由はないな。それに俺の能力知らないで誘うのは軽率だと思うぞ?」

 

 

 悪魔の駒(イービル・ピース)を使うということは、悪魔に転生するということだ。

 悪魔としての能力は勿論、本来持っていた能力も併せることになるのだが……なにもメリットだけじゃない。悪魔は日光とか苦手だし。

 ……まァ確かに俺は最初っから悪魔依りだけど。

 悪魔の駒(イービル・ピース)には数の制限がある。

 ちょっと迂闊だぜ、リアス=グレモリー。それとも何か気に入られたのか、俺は? ……ないか。

 こっちはなんて呼ぶか。部長?

 

 

「……残念。気が変わったら言ってちょうだいね?」

 

 

「はいよ。……俺は部長とでも呼べばいいのか?」

 

 

 思い出してみれば、部員連中はそう呼んでたし。

 

 

「そうね。皆もそう呼んでくれてるし、それでお願い」

 

 

「あいさー」

 

 

 小悪魔的な笑みを浮かべる部長さん。

 いや、悪魔的と言った方が正しいのか。……どうでもいいわ。

 結局、入部しませんとか言えなくなっちゃったし。

 はー……まァいいか。

 元々どこかの部活に入るつもりもなかったし、強いて言うならバイトがしたかったけど……それもなんとかなるか。

 いざとなったら部長さんに相談すればいいしな。

 

 

「んじゃ、こちらも改めまして。黒上涼夜、一年。小猫とは同じクラスで、甘味仲間。これからよろしく」

 

 

 俺は小さく頭を下げたのだった。

 この日、一人の男子生徒が命を落とし――新たな生を受けた。

 そのことは後になって知った。

 

 

 

 

 




プロローグ的な二話です。
最後の一文が誰のことは明白ですね。
彼のデートの日はどう考えても休日なのですが、この小説では平日です。
放課後デートです。
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