◇
『リアス=グレモリー様、リタイア。
グレイフィアの声が無情に響き、俺は中継室となっていた生徒会室で大きく息を吐き出す。
敗北、か……。
だが結果はともかく、内容は競っていた……と思う。尤も、敗北した場合の条件的にも、皆が傷を負っているという点でも喜べはしない。
「……悪かったな」
それだけ言い残し、俺は部屋を出て行く。中にいた人は何か言いたそうだったが無視した。
どこに行けば皆に合流できるのか。
……会って、何を言えばいいのか判らないな。帰るか。あァでもそれはそれで問題だよな。
「やあ」
「……ゼクス」
廊下を歩いていると、魔王とエンカウントした。
魔王にして部長さんの兄、サーゼクス=グレモリーは俺を見るなり苦笑する。
「そんな顔をすることはないよ。君はよくやってくれた」
そんな顔って、俺はどんな顔をしているんだよ。
「相手の残りは王と一体の僧侶。誰一人欠けることなく、そこまで倒した。十日という期間では本当に大したものだ」
そう、展開だけ見れば上出来なのだ。
部長さんが不死鳥兄の一騎打ちに応じた時はどうしたものかと思ったが、最終的には全員が一騎打ちの場に集まっていた。
基本、皆それなりに傷は負っていたが戦闘には支障のないレベルでだ。
ただ一人副部長さんは辛そうだったが、相手の女王を実質二回倒しているのだし仕方がない。加えて使用制限のあるフェニックスの涙も使用させていたのだからMVPと言ってもいい。
「ただそれでもフェニックス二人は強かった、そういうことなんだから。知っているだろう? 不死という特性の厄介さは」
「それは、な」
結局それなのだ。
不死。加えて炎と風を操るフェニックスの兄妹を相手にするには、六人……いやまともに戦えたのは五人か。五人でも厳しかった。
不死鳥妹は戦う気がないとゲーム内で話していたが、兄が予想外に悪戦苦闘していたために参戦したようだった。
イッセー先輩達も参戦しないという言葉を鵜呑みにしていたわけではなさそうだったが、兄の方に集中しすぎたせいで、結果的に妹の不意打ちを受けるハメになったのも事実。
だが残り時間は僅かだった。
あのままもう少し耐えることができていたら……どうなったか。
戦績で勝敗が決していれば確実に部長さん達が勝てていたはずだ。
「けど……いいのかよ?」
もし俺がサーゼクスの立場だったら、自分の妹があんな男と結婚するなんてのは認められない。
「……今回涼夜君にゲーム参加を許可しなかった理由はわかるかい?」
「眷属ですらない人間なのと……俺がいたらどうあってもワンサイドゲームになるから」
加減して戦えるのは不死鳥兄妹以外になる。
不死という特性を持つ相手と戦うのなら、俺は回復が追いつかない勢いのラッシュをかける必要が出てくる。
どの程度傷つければいいのか、なんてのは俺にもハッキリとは判らないからな。
「そう。そしてそうなると、どうしても不満が出てくる。……けど、そうだね。式に乗り込み、多少の不利すら受け入れ、花嫁を奪還……なんてどうだい?」
「は?」
「これ、赤龍帝の彼に渡しておいてくれるかい?」
なかなか面白いよね、そう言ってサーゼクスは俺に背を向けて歩き出した。
面白い……? イッセー先輩がか。
確かにあの新技には度肝を抜かれた。
中継室にいた生徒会の人達に俺が教えたんじゃないかと疑われたし。……否定したが。だって事実だし。
「……手紙か」
ってこれ封してないじゃんか。
読めってか? あァそういう感じだったな。花嫁奪還とか言ってたし。
◇
あれから丸一日経った。
俺がいるのはイッセー先輩の自室。
「目、覚めたのか」
上半身を起こした先輩に声をかける。
「涼夜! 勝負は!? 部長はどうなった!?」
「不死鳥側の勝利だ」
「――ッ!」
言葉も出ないのか、絶句するイッセー先輩。
その瞳からは涙が零れ始めた。
「いま部長さんと不死鳥兄の婚約パーティが行われてる。場所は冥界」
「……木場達は?」
「部長さんの付き添い。会場にいない眷属は先輩とアーシア先輩だけだ」
不思議そうな顔をした先輩に、俺は言葉を続ける。
「部長さんの願いでな。アーシア先輩はここに残って、イッセー先輩のことを看てたんだよ。今は下にタオルを替えに行ってる」
……傷はイッセー先輩が一番酷く、アーシア先輩が一番軽かった。
イッセー先輩は誰よりも粘っていたからな。
「……納得してないって顔してるな」
「当たり前だ! お前は納得できてんのかよ!?」
そう聞かれると答えはNoではある。
俺だけじゃない。
小猫も、木場先輩も……それこそ眷属以外にも納得してない人は多い。あの生徒会長さんとかな。
「――ほら」
サーゼクスから預かっていた手紙をイッセー先輩の座ってるベッドに投げ落とす。
「これは……?」
読んでみろ、と目で合図する。
封のされていない手紙を読み始める先輩。
内容は知っている。
というか内容という程のものでもない。
「“妹を助けたいなら、会場に殴りこんで来なさい”……」
先輩の目に火が灯る。
「行くんなら声かけてくれよな」
言って、ギターケース片手に部屋から出る。
扉を閉めると、そこにはアーシア先輩が立ちすくんでいた。
「……イッセーさんは行くんですね?」
今にも泣き出しそうな先輩。
行って祝福するわけでもない、それを理解しているからだ。
「あァ、そうだろうな」
俺が嘘を言っても仕方がない。
イッセー先輩が嘘を言うとも思えないしな。
「なら……お願いしてもいいですか?」
……そうか、俺が便利屋なのは知ってるもんな。
断る理由もないので頷く。
「イッセーさんを助けてあげてください……もう、あんな風にボロボロになったところは……見たくありません……!!」
涙を流しながらイッセー先輩を治療し続けた女の子は、本当に優しすぎる女の子だ。今も、哀しそうな表情で必死に頭を下げてきている。
「任せろ。……だけど、そういうのは直接本人に言ってやれ」
イッセー先輩の部屋の扉を開ける。
ちょうど扉の目の前で、着替えを終えたイッセー先輩は立ち止まっていた。
あっ、とか細い声を上げたアーシア先輩と、目を見開いているイッセー先輩。……俺が気配に気が付かないと思ったのかよ。
「下にいる」
そう言い残して階段を下りていく。
イッセー先輩もなんだかんだで隅に置けない。
あんなにいい子を泣かせるんだからな。
下駄箱にギターケースを立てかけて、俺は壁に寄り掛かる。
階段を下る足音は、五分もしないうちに聞こえてきた。
「待たせたな」
「構わないさ……んじゃ、行くか」
俺の言葉に頷き、イッセー先輩は手紙に封入されていた魔方陣を掲げた。
◇
ゲーム本編端折った←
どういう展開になったかはザッと書きましたが、後でちゃんと書く可能性も微レ存。