宿した者(仮)   作:雲丹

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初スマホ投稿。


BANG THE BEAT

 

 

 

 

 

 会場の中央に急遽作られた球状の映像投射機構。

 その周りを多くの悪魔達が囲っているのを見ながら、俺達は戦闘フィールドに転移した。

 フィールドはまたしても駒王学園。

 

 

「また学園なのか」

 

 

「まァ急だったしな」

 

 

 まず間違いなく、前回の戦いのものを流用したんだろう。

 俺達がいるのは部室……ってことは相手は生徒会室か。

 適当にどう行動するかを話ながら校庭を通るルートで新校舎の方に向かうと、既に不死鳥兄以外の眷属が陣取っていた。……というかちょうど校舎から出てきた。

 うーむ、これはアレだな。

 不死鳥対ドラゴンの構図をやりたいんじゃないか? 不死鳥兄の戦闘前の発言的に、エンターテイメントにしたいみたいだったし。

 ……好都合だな。

 先輩と一言二言交わして、俺だけが敵の前に堂々と姿を現す。

 

 

「大集合だな」

 

 

 アラストルを地面に突き刺して言う。

 

 

「「あれ? あの女の敵は?」」

 

 

 チェンソーを持つ双子が首を傾げた。

 

 

「なに、ケダモノに用でもあんの?」

 

 

「「バラバラにする!!」」

 

 

 あー? あァ、こいつら先輩に服を剥がされた双子の兵士か。

 他にも同じ目にあった不死鳥眷属は目に見えて憤っている。

 ……まァ前回のレーティングゲームは、魔王や問題の中心となった二人の両親にも見られていたのだ。そりゃあ怒る。

 

 

「どうせ近くにいるのでしょう?」

 

 

 不死鳥妹が確信を持って言う。

 

 

「でも残念。俺だけなんだ」

 

 

 笑って、俺は両手にWゴーストを構え――発砲した。

 一瞬のうちに撃ち出された弾丸の数はもはや数え切れない。

 が、最初の数発でわざと逃げ道を作り誘い出し、そこに更に撃ちこんでやるという、見方を変えたらかなり酷い戦法をとってあげたら、かなりの連中が消えてくれた。こういう時、嘗められてると楽ができる。

 悲鳴が飛び交い、俺のすぐ近くで爆発が起きる。

 女王の爆撃か。

 だが焦りからか、かなり距離が開いていた。

 

 

「小賢しいんだよ」

 

 

 銃を腕時計に戻し、アラストルを引き抜き――女王に向かって思いっきり投げた。

 腹部を貫き、ズガン! という音と共に校舎の壁に貼り付けられた女王。消えないところを見ると、まだ戦う意識はあるらしい。

 悪いな……俺はそう吐き捨てると、アラストルは球状に雷を発生させた。

 

 

「貴様ァァァァ!!」

 

 

 その一瞬の間に短剣を持った騎士が体勢を立て直し、こちらに突貫してくる。

 ふむ、女王の方は消えたか。

 っていうか怒るなよ。戦闘自体はもう始まっていたんだから。

 しかし、正式なゲームじゃあないからか、コールがないのが判り辛い。が実戦ばかりの俺にとっては、あまり気にならないことだ。

 炎を纏った短剣が突き出されたが、俺は相手の腕を捻ることで短剣を奪う。

 

 

「なっ!?」

 

 

 そして行動されるよりも早くに胸を斬り裂き、未だに体勢を立て直せてない奴に投擲……リタイア。

 

 

「……話になんないな」

 

 

 残った三人を視界に収めながら、俺は溜め息を吐いた。

 まァ俺の“悪癖”はともかく。

 先手必勝の不意打ちなら……こんなもんか。

 

 

「い、一瞬で……!?」

 

 

「お、お前は人間では……」

 

 

 一人喋らないな……ってああ消えていった。

 流れ弾にでも当たった……いや、焦げてるな。アラストルの電撃が当たってたのか。

 

 

「不死鳥妹が僧侶で、そっちのは……」

 

 

「……イザベラ、戦車(ルーク)だ」

 

 

 へェ……不死鳥はともかく、戦車が生き残ったのか。

 まァ俺は戦闘自体が久々だし、そんなもんか。

 

 

「で、俺が人間かって? よく聞かれるが、逆に訊くぜ……人間は弱いか?」

 

 

 ヴァイスとシュヴァルツをクルクルと回しながら聞いてみる。

 

 

「それは……」

 

 

「いやいい、忘れてくれ。ただの戯れ言だ」

 

 

 不死鳥妹の言葉を遮りながら、俺は二人の方に足を進める。

 イザベラが構えるが、俺はその横を素通りして校舎の二階に刺さったアラストルの柄に飛び乗り、引き抜いた。

 重力に従い落下する俺。

 着地と同時に屋上で爆音が響いた。

 

 

「お、始まったか」

 

 

 上を見上げて呟く。

 イッセー先輩には別ルートで生徒会室に向かって貰ったんだが……移動したのか。

 まァ生徒会室は教室にしちゃ広いが、戦場としては狭いもんな。

 

 

「なっ!? まさか本当に一人で!?」

 

 

「おいおい、お前ら王以外のメンバーが堂々としてたんだ。そりゃあ先輩には別ルートで行ってもらうさ。っていうか、そっちもそれを望んでたんじゃないのか?」

 

 

 先輩でも外壁使ってすぐに生徒会室に行けるレベルはある。

 俺一人で事足りるとはいえ、それでは意味がないのだから。

 

 

「それは、そうですけれど……」

 

 

 予想外か? そうだろうな。

 魔物も悪魔も、人間という存在を知らなすぎる……って純粋な人間じゃない俺に言えることじゃないか。

 

 

「……一応訊いておく。降伏する気は? あァ、不意打ちをしておいて……なんて言うなよ? 数の上で不利なのはこちらだし、お前ら二人は話ができそうだからこその問いだ」

 

 

 それに消えていった連中も死んでるわけじゃないしな。なんだっけか、戦闘不能になると強制的に除外されて治療を受けるんだったか。……やり過ぎてるか? いや、技術的に大丈夫か。銃弾も急所には当たってないだろうしな。

 

 

「……訊きますが、不死鳥を相手に勝ち目があるとお思いですか?」

 

 

 不死鳥妹が真剣な表情で問うてくる。

 

 

「なァ不死鳥妹」

 

 

「レイヴェルですわ。レイヴェル=フェニックス」

 

 

「あァ? あァ、俺は黒上涼夜だ。……でだ。レイヴェル、銃弾を撃ち込まれてどうだった?」

 

 

 ……向こうは一方的に俺を知っていたようなことを、前回のゲームでイッセー先輩と話していた。が、きちんと自己紹介はしていなかったな。

 レイヴェルは傷こそ塞がっているものの、そのボロボロのドレスが、俺の弾幕を防ぎきれていなかった証拠だ。

 黙って俺達の会話を聞いているイザベラも、体の彼方此方から出血している。

 

 

「どうって……」

 

 

 判り難かったか。

 なら。

 

 

「痛かったか?」

 

 

「……それは、まぁ。不死でも痛みは感じますから」

 

 

 ゆっくりと頷いたレイヴェル。

 さながら何を当たり前のことを、と言ったところか。

 

 

「そうか。なら生きたまま頭や心臓をぶち抜かれたら、さぞかし痛いんだろうな?」

 

 

 ヴァイスとシュバルツを見せつけるように言うと、想像してしまったのか顔を青くしたレイヴェル。

 

 

「首を切り落とされたら? 自分でその事実を認識して、お前はまともでいられるか?」

 

 

 追い打ちをかけるように、殺気を纏いながら俺は続ける。

 

 

「肉体だけじゃない。精神(ココロ)を鍛えることをしなかった不死ってのは、どうしようもなく脆い。嬲られれば、壊れるからな」

 

 

 それが精神の死だ。

 精神の死ってのは立ち直るのが難しい。ほとんどが死ぬまで廃人だ。

 一歩を踏み出す。

 

 

「っ!?」

 

 

 レイヴェルは後ずさったが、イザベラは顔を青くしながらもレイヴェルを庇うように前に躍り出た。

 

 

「この前のレーティングゲーム、我々がああも苦戦した理由がわかった。あれはキミ……いや、貴方の仕業だな?」

 

 

「あれは先輩達のスペックが高かっただけさ」

 

 

 そうか、と俺の言葉に納得したようなことを呟くイザベラ。

 その顔には恐怖と……尊敬の念が抱かれていた。

 俺の言葉に納得してないだろ。完全に俺が何かしたと思ってるだろ。……事実だけどな。

 

 

「……そういえば負け無しだったな」

 

 

 だが俺も俺で納得した。

 結果はともかく。

 個人では先輩達に敗北しているのだろう。

 だが、そうか。

 こいつも知らないのか。

 

 

「だが私も引くわけには……!?」

 

 

 イザベラの顔色が大きく変わる。

 レイヴェルもだ。

 二人とも呼吸が激しくなっている。

 

 

「……」

 

 

 アラストルで地面を削りながら二人に歩み寄る。

 今までにない、強烈な殺気を叩き付けながら。

 レイヴェルとイザベラの呼吸音と、ガリガリと地面の削れる音。俺の足音だけがやけに大きく聞こえる。

 

 

「最後の問いだ」

 

 

 ――まだ俺と戦うだけの気概があるか?

 二人のすぐ目の前で立ち止まり、低い声でそう尋ねた。

 

 

「あ……う……」

 

 

「っ……う……」

 

 

 体中から汗を流し、膝から崩れ落ちた二人の少女は……乾ききり、擦れた声で負けを認めたのだった。

 

 

 

 

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