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不死鳥兄が起き上がらないことを確認したのか、拳を合わせて数秒後には光が俺達を包み込んでいた。
会場に戻ると、必然的に俺達に視線が集まる。
……空気が読める連中ばかりなのか、部長さんの所までは人が捌けた。まるでモーゼの十戒だ。
イッセー先輩が歩いて行く。
そして、部長さんの前に立った。
俺からは見えないが、きっと笑いかけているんだろう。
「部長、帰りましょう」
「……イッセー」
次いでイッセー先輩は視線を動かした。
そこにいたのは部長さんの父親。
「部長……俺の主であるリアス=グレモリー様を返してもらいます。勝手な振る舞いをしてしまい、大変申し訳ありませんでした。でも、部長は連れて帰ります」
部長さんの父は、何を言うこともなく瞳を閉じた。
……サーゼクスはどこに行ったのか。いつの間にかいなくなっている。
するとイッセー先輩は部長さんの手をとった。
「――って涼夜!」
あァ?
「お前も早く来いよ!!」
……断り切れそうになさそうな雰囲気のイッセー先輩に、俺は溜め息を吐いてから近づいていく。
それを確認してイッセー先輩は、手紙に入っていた魔方陣の描かれた紙を取り出した。帰り用の転移符だ。
「キュイイイイイイイッ!」
違った。
召喚系の魔方陣だったようだ。
声を上げながら、紙から飛び出してきたのは――
「グリフォン……」
――だそうだ。
会場の誰かが呟いてくれた。
鷹にも獅子にも見える風貌に翼を生やした魔獣で、イッセー先輩と部長さん。それに俺は、召喚時にその背に乗ってしまっている。
グリフォンが一鳴きし、宙に舞い踊る。
瞬間、俺は飛び降りた。
「「涼夜!?」」
先輩と部長さんが声を上げた。
レーティングゲームもそうだが、今回も一番傷付いたのはイッセー先輩で。部長さんを助けようと一番働いたのもイッセー先輩。
悪いね、俺は空気が読める方なんだよ。
「まだ何も食べてないからさ」
着地した俺は上を見上げ、笑みを浮かべて言った。
イッセー先輩は「それでいいのか」とでも言いたそうな顔をしている。
いやだって折角のパーティー料理だ。
食べなきゃ損だろ。
来た時に確認したが、デザートもあったぞ。
「部室で待ってるから、部員全員連れてこい! いいな!?」
先輩達に手を振って答えると、グリフォンは俺達が入って来た扉を飛び抜けて行った。
……賢いな、グリフォン。
まァいいか。
ごはんだごはん。
そう思い、確認していた料理の並んでいたテーブルの方に方向転回する。
「……おつかれ」
「おつかれさまです」
「おつかれさま」
すると、こっちを見るのは予想通りだと言わんばかりの顔の三人……小猫と副部長さん、木場先輩だ。
それぞれが大皿に料理を乗っけている。
「……でも残念。料理はほとんど片付けられてる」
「なん、だと……!?」
小猫の言葉に衝撃を受けた。
くそ、晩飯いまから作るの面倒だし、なんか買うか……いや、無駄遣いだよな。
買い置きのカップ麺でいいか……。
「っていうか、それはくれないの?」
立食のパーティーはバイキング形式だったし、小猫達が持ってるのはその皿だろう。
「あげない」
即答である。
「あらあら、あまり意地悪をしてはいけませんよ?」
楽しそう笑う副部長さんが、俺に皿とスプーンを渡してくれた。
「涼夜君は夜によくお腹を空かせてますから、三人で用意しておきましたわ」
副部長さんマジ天使。って、それならやっぱり小猫のも俺のじゃん。
「副部長のが主食のピラフで、僕のがローストビーフとか……おかずだね。それで小猫ちゃんがデザートを取り分けたんだ」
あァ本当だ。
確かに綺麗に料理のジャンルが分かれてる。
早速いただきたいのだが、如何せんここは目立つ。
特に俺は、さっきまで戦っていたせいで余計にだ。
「少しいいかな?」
場所を移そうと提案すると、それを聞いていたのか、男性が声を掛けてきた。
さきほどまで部長さんの父と話していた男性だ。
確か――。
「フェニックスの……」
「君に礼が言いたくてね……黒上涼夜君」
部長さんの父にフェニックス卿と呼ばれていたな。
つまり、レイヴェルとその兄の父親……か。
しかし礼だと?
「食べるのをやめなさい」
小猫にツッコまれた。
俺は渋々とピラフを食べるのをやめる。
そんな俺を見て、フェニックス卿はハハハと笑う。
「いや失礼。戦っている時とはまるで別人でね」
「あァ、俺って切り替えができるタイプだから」
相変わらず敬語を使わない俺だが、彼は気にならないようだ。
「大事なことだ。常に気を張ったままでいるより、ずっと」
朗らかに笑みを浮かべるフェニックス卿。
何か思うところがあるのかもしれない。
「……ありがとう。君のおかげで娘達は大事なことを知った。――フェニックスは絶対ではない、これは中々に教え難いことでね」
「本当はそこまでするつもりはなかったけどな」
別に友人でもないのだから、俺が教えてやる義理はなかった。
「では何故?」
何故、か……。
「……気まぐれ?」
いや、それも違うか。
レイヴェルは、俺を傷つけたくない……そういう目をしていたんだ。
それも最初からだ。
だからこその躊躇いが生まれた。
一方的に傷つけて、罪悪感が生れた。
自分勝手だが、贖罪のつもりだったのかもしれない。
それを口に出すつもりはないが。
「なるほど、気まぐれか」
ふっ、と微笑むフェニックス卿は、特に問い詰めては来ない。
納得したわけでもないが、そこまでして聞き出したいとも思っていないのか?
「娘が君を気にしていたが、その理由がわかった気がするよ」
っ!?
なるほど、勘づいていたってことか? 年の功とはよく言ったものだ。
その考えが正しいかどうかはともかく、いい方向に考えてくれたみたいだ。
……まァ俺は話すつもりがないし、別にいいや。
「ってそうか。君はいつレイヴェルと出会ったのか覚えていないんだったね」
あー……これは父としては気にくわないよな。
謝るべき……ってそういう声音じゃなかったな。
どちらかと言えば、楽しそうな副部長に近い気がする。
「イギリス……これがヒントだ」
イギリス? イギリスで出会ってるってことか。
俺に小さく一礼したフェニックス卿は、小猫達に「兵藤君にもお礼を言っておいてくれるかな?」と尋ねている。
それに合意した三人にも礼を言って、フェニックス卿は歩いて行った。
「ピラフうまっ」
流石は上級悪魔が集まるパーティーだ。
「じゃあ僕たちも部室に行こうか」
「そうですわね」
俺まだ食べ終わってない。
「お皿の持ち出し許可はもらった」
そんな俺の考えを見透かすように小猫が言う。
「あ、そうなの? なら行くか」
アラストル持ったままだと食べにくくて仕方がないしな。
視線もいい加減鬱陶しいし、俺もゆっくりしたい。
それに今からなら、イッセー先輩と部長さんの邪魔をすることもないだろうし。
こうして、部長さんを不死鳥兄から取り戻すことに成功した俺達。
俺の実力が露見してしまったが、知ってる奴は知ってることだし。何より遅いか早いかの差だ。
そう軽く思っていた俺は、後日に悪魔達から届いた大量の手紙の対応に四苦八苦することになる。
◇
これにて二巻は終幕です。
次からは三巻なのですが……ストックが切れしまったので、本格的に投稿が遅くなるかと思われます。
と言っても、上の一文は保険です。
自分としても、できるだけ早く投稿したいとは思っていますし、物語の構想はできていますので。
それでも不定期だとは思いますが。
話は変わって、次巻は二巻とは打って変わってDMC要素が入ります。
DMC好きの人はお待たせしました……になるかと。
まァ次話はクロスオーバーさせた作品の紹介を挟むんですけどね。
最後に、なんか評価やお気に入りが増えてきて……嬉しいです。
ありがとうございます。
近いうちに活動報告でもお礼をしたいと思ってます。