宿した者(仮)   作:雲丹

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DMCの時系列は4の後です。
一年~数年後、かな。


会議

 

 

 

 

「――それで……人工魔物だっけ? それってなんなんだ?」

 

 

 俺と紫藤が和解し、話を元に戻すとイッセー先輩が首を傾げた。

 

 

「文字通りさ」

 

 

「……つまり、人の手で作られた魔物、ですか」

 

 

 ゼノヴィアの一言で、すぐに小猫が察している。

 他のひと達も同じようだ。

 

 

「作り出している大元は、そこの魔人殿とその師匠らが潰しているわけだが……」

 

 

 いや最後に決めたのは俺でも師匠達でもない。

 

 

「既に生れた魔物は野に放たれた後だった」

 

 

 お前、いつまで俺を魔人って呼ぶんだよ。

 ゼノヴィアに呆れながらも、俺は言葉を続ける。

 

 

「元凶の教団自体は確実に潰したし、資料関連も押収して師匠達が管理してる。それに人工魔物自体、大量の魔物を用いた実験で漸く完成させた存在だ。敵の組織力にもよるけど、簡単に生み出せるものじゃない」

 

 

 生物と無機物が合わさったような存在だし、元になった魔物自体がまだ不明瞭な存在だ。

 そういう意味で、俺や師匠達のような存在は希有だ。この世界にいる魔人って片手で数えきれるらしいし。……まァ碌な人生歩む方が難しいし、少ない方がいいかもしれないな。

 

 

「えっと……?」

 

 

 イッセー先輩はまだ思考が遅いな。まァ知識自体がまだまだ少ないし、仕方がない。

 

 

「――既に作られていた人工魔物を回収して使っている、ということかしら……?」

 

 

「その可能性が高いな」

 

 

 紫藤が思い至り、ゼノヴィアが肯定した。

 

 

「ただまァ……魔物自体は四月にも見てるし、今回の件とは関係ないかもしれない」

 

 

「でも“関係ない”とは言い切れないんですね」

 

 

 そゆこと、と小猫の言葉に頷く。

 まァ関係してるかも。魔物が出てくるかも。それくらいに思っておけばいいとは思う。

 魔物との距離がそれなりに近くだったら俺も気が付くしな。

 

 

「……まぁこんなところか」

 

 

 ゼノヴィアが適当に締めくくる。

 俺の存在や悪魔と教会の関係を考えると、基本は情報交換を用いながらの不干渉だろうし。

 

 

「しかしよく協力することになったな?」

 

 

 首謀者は恐らくイッセー先輩なので、つい聞いてみてしまう。

 どうやって説得したのだろうか。

 

 

「……今回我々はドラゴンの力を借りる。そしてそのドラゴンは魔人と友好関係にある。それだけさ」

 

 

「ゼノヴィアも魔人……黒上君とは友好的な関係みたいだしね」

 

 

「屁理屈じゃん」

 

 

 ドラゴン(一誠)魔人(涼夜)か。

 先輩の代わりに答えてくれた信徒二人に、俺は呆れ返る。

 

 

「知っての通り、私の信仰は柔軟だ」

 

 

「屁理屈も理屈の内って言うでしょ?」

 

 

 フッ、と笑みを浮かべるゼノヴィア。

 可愛らしくウィンクをする紫藤。

 ……いやまァそっちがいいんならいいんだろうけどね。

 そのやりとりを最後に、二人はとっとと出て行ってしまった。

 まァ礼は言われたし、外までの案内にはユリウスがいるから問題ないだろう。

 このマンションの事情は話したから、もしかしたら気を使ってくれたのかもしれない。

 ……ユリウスには後でお礼をしないといけないな。

 

 

「さて、と」

 

 

 部屋に残ったのは四人。

 こっちはこっちで、少し話しておく必要が……?

 部屋中にインターホンが鳴り響いて、俺はゆっくりと玄関の方を向く。

 

 

「ごめん、ちょい待ってて」

 

 

 玄関を開けると……メイドが立っていた。

 

 

「お荷物でーす!」

 

 

 明るく天真爛漫な笑顔である。

 

 

「荷物、別に届けてくれなくていいって言ったじゃんか」

 

 

 メイド――小人村ちのに、俺は苦笑しながら答える。

 彼女は妖館で雇われているメイドであって、別に俺専属というわけではない。つまり、仕事なんてたくさんあるはずなのだ。

 

 

「うん。けど、この階の掃除もあるから……ついでにいいかなって!」

 

 

「そっか……まァありがとな」

 

 

 ちのはそれなりに大きなサイズの段ボールを抱えているので、お礼を言いながら受け取る。 

 どういたしまして! と気さくな笑みで返したちのは仕事に戻り、俺もリビングへと戻る。……と、小猫が木場先輩の服の裾を掴んでいた。

 

 

「……お手伝いします。……だから、いなくならないで」

 

 

 ――っ。

 角度的に見えない。が、小猫は泣きそうな顔で木場先輩を見上げているんだろうな……。

 

 

「……まいったね。小猫ちゃんにそんなこと言われたら、僕ももう無茶できないよ」

 

 

 悶絶しているイッセー先輩をよそに、木場先輩は困惑しながらも苦笑いをした。

 

 

「今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな。……おかげで真の敵もわかったしね。でも、やるからには絶対にエクスカリバーを倒す」

 

 

 木場先輩もやる気になったみたいだ。

 小猫も安心した様子だし……とりあえず一区切りか。

 俺も小さく微笑んで、ソファーに段ボールを置いた。

 

 

「よし! エクスカリバー破壊団結成だな!!」

 

 

「そうだね。ただ、その前に――黒上君」

 

 

 気合い充分なイッセー先輩を窘めた木場先輩は、ゆっくりと俺に視線を合わせた。

 

 

「この前は無神経なこと言ってごめん」

 

 

 深く、本当に深く頭を下げる先輩。

 少し驚かされた俺は段ボールを持って先輩に近づくが、頭を上げる様子はない。

 

 

「えい」

 

 

「わっ」

 

 

 持っていた段ボールを先輩の頭に乗せてやった。

 ……正直な話。

 木場先輩の指摘は当たっていたので、俺としても困惑……というかなんと言ったらいいのか判らなかった。

 

 

「――今のタイミングでそういうこと言う?」

 

 

 空気が悪くなるぜ、と苦し紛れに言ってみる。

 

 

「……その台詞、そのまま返ってこないか?」

 

 

 今度はイッセー先輩が俺に指摘してきた。

 言われてみればその通りだ。

 

 

「はは……ごめん」

 

 

 サイズの割に軽い段ボールを退かすと、木場先輩は頭を上げて頬を掻いた。

 

 

「俺は気にしてない……どっちもな」

 

 

 思うところはあったが、木場先輩も感情があるのだ。

 年がら年中を笑顔でいられるわけがない。

 今回は理由が理由だし、仕方がないだろう。

 

 

「そっか……ありがとう」

 

 

「ちゃんと全部終わってから礼は受け取るさ」

 

 

 木場先輩の微笑みを受けながら、俺は今度こそ段ボールを置いた。

 ちなみに今回はフローリングの床。

 

 

「じゃあ改めてエクスカリバー破壊団結成だな!」

 

 

 イッセー先輩ってそういうの好きだよな。

 つい苦笑すると、どうやらこの展開に乗り気じゃないひともいたようで。

 

 

「……あの、俺も?」

 

 

 匙先輩だ。

 こちらに割って入るのも気まずいのか、恐る恐る手を挙ている。

 

 

「完全に蚊帳の外なんだけど……。結局なにどうなって木場とエクスカリバーが関係あるんだ?」

 

 

 え……?

 いやいや、ちょっと待ってくれ、匙先輩。

 

 

「……そんな目で俺を見るな、涼夜」

 

 

「いやだって……は? 説明してないのか?」

 

 

 イッセー先輩は気まずそうに顔を反らした。

 

 

「そうだよな!? そういう反応になるよな!!」

 

 

 匙先輩はよほど嬉しかったのか、俺の手を握って嬉しそうに叫んでいる。

 

 

「こいつ“エクスカリバーを破壊するんだ”としか言わなくてな!? 碌な説明もないまま半ば強引に連れてこられたんだよ!!」

 

 

「あァー……うん。うちの先輩と……同級生が迷惑をかけた……かけてるみたいで……」

 

 

 それでも逃げなかった匙先輩は評価したいが……意志薄弱? いや、どう考えても被害者だし、こういう言い方はよくないな。小猫の力なら強制連行も簡単だろうし。

 ……今回の一件、どう転んでも命懸けになるだろう。説明は必須だ。

 

 

「いいんだ! 俺はお前みたいなまともな後輩がいてくれただけで嬉しい……!!」

 

 

 本当に嬉しそうだなァ……。

 あまりの反応に、小猫と先輩二人が気まずそうだ。

 とりあえず首謀者を見る。

 

 

「いや、あのな? 俺も色々と考えてたんだぞ? 元々涼夜には頼み込むつもりだったけどな? 頼むならこっちもそれなりにやれることをやっときたいじゃん?」

 

 

「それが戦力補給だと?」

 

 

「そ、そうだ!」

 

 

「説明も何もないんじゃ、意見も言えないけど?」

 

 

 生徒会の面々にも信徒二人は説明を行っていると聞いている。が、匙先輩も新人枠の悪魔。知らないことの方が多い。

 今までの俺達の会話はさぞかし意味不明だったろう。

 

 

「ぐっ……すまん」

 

 

 しどろもどろに言い訳をしていたイッセー先輩も反省したようだ。

 

 

「何も知らない状態だったなんてね」

 

 

 木場先輩も苦笑いである。

 小猫は……あ、目が合った。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

「うぇ!? あ、いや……ちゃんと説明さえしてくれれば……なあ?」

 

 

 小猫に謝られた匙先輩は慌てた様子で俺に振った。

 

 

「あ? まァ匙先輩がそう言うなら……」

 

 

 なんだ、意外と協力する気はあるのか?

 まァ危険に首突っ込むわけだし、嫌なら抜けてもらった方がいいだろ。

 話してもいいか? そんな意味を込めて木場先輩を見ると、先輩は静かに口を開いた。

 

 

「――少し、話そうか」

 

 

 

 

 

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