楽しんでもらえたら嬉しいです。
◇
カトリックが秘密裏に計画した聖剣計画。聖剣に対応する者を輩出するための実験が、とある施設で執り行われていた。
被験者は剣に関する才能と
来る日も来る日も辛く非人道的な実験が繰り返された。
実験され、自由を奪われ、人間として扱われず、木場先輩達は生を無視された。
彼らにも夢があった。生きていたかった。神に愛されていると信じ込まされ、ひたすら“その日”が来るのを待ち焦がれた。
特別な存在になれると信じて。
聖剣を使える者になれると信じて。
毎日毎日何度も聖歌を口ずさみながら、過酷な実験に耐えた結果が……処分。
「……皆、死んだ。殺された。神に仕える者に。誰も救ってはくれなかった。聖剣に対応できなかった……それだけで、少年少女は生きながらに毒ガスを浴びせられた」
木場先輩は語る。
皆が無言で聞いている。
「彼らは“アーメン”と言いながら毒ガスを撒いた。血反吐を吐きながら、床でもがき苦しみながら、僕たちはそれでも神に救いを求めた」
一部の者を除いて、能力が平均以下に落ちていた被験者達は要無しと処分されたのだ。
毒に体を蝕まれながらも、どうにか逃げおおせた木場先輩は死ぬ寸前のところで部長さんに出会ったのだそうだ。
そして、今に至る。
「同士達の無念を晴らしたい。いや、彼らの死を無駄にしたくない。僕は彼らの分も生きて、エクスカリバーより強いと証明しないといけないんだ」
話には聞いていた。
それでも……本人の口から離された過去それはあまりにも重い。重みを――感じさせる。
……彼らの分まで生きて、か。
「うぅぅぅ……」
皆が沈痛な面持ちだったが、すすり泣く声が聞こえてくる。
匙先輩だ。
号泣している。ボロボロと涙を流して大泣きだ。
先輩は木場先輩の手を取る。
「木場! 辛かっただろう! キツかっただろう! ちくしょう! 俺は! 今お前にめちゃくちゃ同情している! ああ、酷い話さ! 恨みを持つ理由もわかる! わかるぞ!」
力強くうんうん頷き始める先輩。
「俺はイケメンのお前が正直いけすかなかったが、そういう話なら別だ! 俺も協力する! 俺も頑張るからさ! お前も頑張って生きろよ! 絶対に救ってくれたリアス先輩を裏切るな!」
……思ってたより熱い男だな。そんで優しいひとだ。会長さんも良い眷属を得た。
「よっし! いい機会だ! ちょっと俺の話も聞いてくれ!」
匙先輩は気恥ずかしそうにしながらも瞳を輝かせている。
「俺の目標は――ソーナ会長とデキちゃった結婚することだ!」
……。
同類が見つかり嬉しそうに涙を流すイッセー先輩は置いておき。
「さて、荷物を確認するか……」
デキ婚だの乳を吸うどと声高に語っている二人をを放置して段ボールの解体作業に移る。
木場先輩と小猫は二人を見て嘆息していたが、すぐに俺の方にやってきた。
「……誰から?」
「師匠達」
質問に応えると納得したような小猫と木場先輩。
別に見られて困るものが入ってる感じではなかったので、俺はパパッと段ボールを開けた。
一番下に夜空にも似た黒い服がしかれ、その上にビニール袋に入れられたたくさんの手紙。袋とは別に四枚の手紙が封に入っていた。
「たくさん手紙があるね」
二、三十枚は優に超えそうな数の手紙を見て木場先輩は驚いた様子だ。
俺は袋を取り出し、適当に一枚だけ読んでみることにする。
「……」
とても上手とは言えない日本語で書かれた手紙に、俺は文章を見たまま止まる。
「いつもありがとう……学校楽しんで……?」
手紙を覗き込んだ小猫が音読し、俺は我に帰った。
その文の下の方には英語で名前も書いてある。
「……これは後でだな」
誰が見ても子供が書いたのが判る文字に、俺は少し照れくささを感じながらも手紙を袋にしまい込む。
「……あしながさん?」
小猫が俺を見ながら首を傾げた。
……いや待て。なんで知ってるんだ。
「……。……なんの話だ?」
誤魔化そうと思ったが、次の瞬間に失敗することになる。
「そういえば言っていたね」
誰が? などと聞くまでもない。
「ゼノヴィアか? ……なんであいつが知ってるんだ」
ここ最近でオカ研より俺を知っている人物の到来なんて彼女しかないからだ。
だが俺はあいつにこのことを教えたことはない。
「じゃあ本当に孤児院に多額の寄付をしてるんですね」
そう、俺は孤児院に寄付をしている。
俺が普段から節約じみた生活を送ってる理由の一つは、間違いなくお菓子作りなどの趣味のためだ。が、寄付するためのお金を貯めているのも、同様に理由の一つだった。
溜め息を一つ。
「知り合いと協力して作った孤児院なんだよ……だから自己満? 義務? そんな感じだ」
知り合いってのは堕天使だが、今の木場先輩の前では言わない方がいい、か?
堕天使は
子供達の護衛を含む堕天使の人選は俺とアザゼルで行ったから非道な行いをされる心配もない。視察めいたこともしてるしな。
「俺も立場上、そういう子供を見ることは少なくないからさ。どこかに安心して任せられる場所が欲しかったんだ」
「……あ、そうか。飛行機で見つかったっていう子も……」
木場先輩、大正解。
自分がそういう子供達を放っておけなくて、だけど最後まで面倒をみるなんて余裕はなくて……。
言葉にしてみて判るが、ほとんど自分のためなのだ。
だから余り褒められるようなことでもない。
子供達からの手紙の詰め込まれた袋をテーブルに置き、今度は一枚の手紙を取り出す。
封の隅には“D”と書かれている。
「
Dということは間違いなく師であるダンテからの手紙だ。
「服が入ってる」
「うん、それじゃないかな?」
あァ、そういえばそうだったな。
まァいいや。
次の手紙は……“V”と書かれている。
「
師の双子の兄、バージルからの手紙である。
弟と全く逆の内容だ。
「相変わらず二人揃うと妙なことで張り合い出すな……」
昔からそうなのだが、ダンテとバージルは変なところで喧嘩をする。
基本的に反りが合わないことが多い。
人を喰った態度をとるダンテ。
冷静沈着なバージル。
……これだけでも水と油なのが判る。
とりあえず裾に関しては保留。
「三通目は……
封の文字は“T”。
師匠の相棒たるトリッシュだ。
猫かー……こっちにも小さい猫がいますよ、トリッシュさん。本人に言ったらぶっ飛ばされますが。
「誰も涼夜の心配をしてない」
「そういうひと達なんだよ」
小猫の一言に苦笑してしまう。
心配どころか、俺の名前すら出てきていない。
……最後の一枚は――。
「あ、これ長そう」
後にしよう。
“L”と書かれた封の手紙の内容は長かった。
やれ勉強がどうのとか、友達はどうなのか、とか。
L……レディの手紙には何か同封されていた。
「これは……」
写真だ。
両端に扉が半分写っており、上部には看板にネオンで“ay Cry”“Devil M”と書かれている。看板の文章がめちゃくちゃなのは、全く同じ店が二店舗並んでいるからだ。
ダンテのデビルメイクライとバージルのデビルメイクライだ。
二人で同じ名前の便利屋を、別々に経営している。
理由は……前述の通り、兄弟間の反りが合わないから。
隣同士で経営してるのは、どちらが客を取れるか競い合ってるから……らしい。
「「うわっ、美男美女!!」」
おお?
イッセー先輩に匙先輩、こっちに来てたのか。
写真を覗き込んで声を上げた先輩に釣られ、俺も並んでいる面々を見る。
こっちに来る直前に撮ることになった一枚。
数少ない写真の一枚。
ダンテは挑発するように腕を軽く開き、トリッシュはモデルのようなポーズ。俺とレディだけは普通に立っている。
トリッシュの横にダンテ、その横に俺。俺の隣にレディ。
バージルは少し離れた位置、自分の店の前で腕を組んでいる。
「どの人が涼夜の師匠なんですか?」
「……ある意味で全員だな」
トリッシュは魔法を重点的に教えてくれたし、レディは会う度に勉強を教えてくれた……あと重火器。バージルにも鍛えられたし。
――でも。
「強いて言うのなら、赤いコートの男だな」
俺を拾ってくれたのがそうだし。
ほー! と興味を持った全員がマジマジと写真に見入る。
「やべぇ、マジでイケメンだ」
「ああ、大人の貫禄って言うのか」
「このひとが黒上君の……」
「……青いコートの男性と似ています」
変態先輩ズの言う通りだと俺も思う。
木場先輩は心から興味深そうだ。
小猫、本当によく気が付くな。
「名前はダンテ。青いコートの男は双子の兄のバージルだ。金髪の女性がトリッシュで、黒い髪の女性がレディ。全員がデビルハンターで、俺も色々と教えてもらった」
「お兄さんですか……。……お兄さん?」
「……兄の方が若くね?」
ダンテが格好良いおじさんなのに対し、バージルは格好良い大人だ。
「たまにいるだろ? やたらと若い見た目の人。バージルは単純にそれ」
だと思う
レディもか。
トリッシュは悪魔……魔物だから、見た目の変化がない。
魔人の寿命ってのはほとんど人間と同じだから、バージルの場合は本当に見た目に老いが出ていないだけだ。そのことで兄弟喧嘩をしていたのは記憶に新しい。
四人が写真を見ている間に、俺は一番下にあった服を取り出す。
ロングコートだった。
「おお……!」
赤いコートのダンテに青いコートのバージル、フォルトゥナでデビルメイクライを経営してるネロも藍色のコートを羽織っている。
正直に言うと……結構憧れてた。
黒いコートは、よく見ると黒に近い赤と青で模様が入っている所がある。
やべェ……嬉しい。
「……嬉しそう」
ハッとなって小猫を見る。
今度は全員が俺の方を見ていた。……写真を見てたんじゃないのかよ。
「師匠もコートを着ているみたいだしね」
「なるほど。お揃いが嬉しいのか」
「なんだ、可愛い所あるんだな」
木場先輩、匙先輩、イッセー先輩が口々に言い始める。
しまった!
油断していた。
俺はなんとも言えない羞恥心を覚えた。
結局この日は、十七時から十九時までの二時間で街を見回り、解散……ではなく、またうちに戻ることになった。
親睦を深めるという理由で晩飯を共にすることになったのだ。
小猫が作るということで、イッセー先輩と匙先輩は結構嬉しそうだった。
ちなみに俺も手伝った。
料理は好評だったので良かった。……冷蔵庫の中身がアレで、小猫に怒られたけど。
◇
実はここに涼夜の過去をぶっこむパターンも執筆した。
でも木場の後だと、どうしても木場の印象が薄くなるのでやめました。
文章中で初めてダンテの名前を出しました。
そして……バージル生存です。
キャラが崩壊しそうなオリジナル設定。
ごめんなさい。
でも二次創作ですし、許してほしいです(爆)
ちなみに涼夜はDMC3とDMC1に干渉はしてません。
なので1と3の説明回か説明会話はどこかで入れる……かも。