宿した者(仮)   作:雲丹

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遅くなり申し訳ない。


EX.一誠の場合

 

 

 

 

 

 

 正直に言うと、数日前の涼夜の家での出来事は結構楽しかった。

 あいつの部屋……いや、あれは家だな。家で二つのリングが並んだ円冠状の器具……アミュスフィアと呼ばれるVRマシンがあったのは驚いた。

 夕食の時に話を聞いてみるとプレイしてたのはGGOだって言ってたけど、時間があればオカ研の皆でゲーム……なんてのもありだと思う。やっぱやるならALOかな。

 小猫ちゃんと木場は話題に着いて来れていなかったけど、俺と匙と涼夜で結構盛り上がってしまった。

 そんな些細な幸せの為にも俺達は頑張らなきゃいけない。

 そして数日後。

 俺の尻が死んだ。

 原因は部長の尻叩きだ。……これに関しては俺が悪いんだけど。

 怪しい易者やフリードと遭遇したその日、俺と部長が家に帰る頃には夕日も落ちきっていた。

 小猫ちゃんは別れ際まで部長に謝っていた。けど後悔はしてないと思う。なんだかんだで涼夜と木場も仲直りしたしな。

 ……その二人が行方不明だけど、二人なら無事でいるはずだ。

 涼夜は銃も使えるから木場となら遠近分かれて戦えるし、簡単に遅れはとらない。

 

 

「ただいまー」

 

 

「ただいま帰りました」

 

 

 玄関に上がってすぐに俺は出血多量で死にかけた。

 桐生のやつが素晴――くだらないことをアーシアに吹き込んでいたのだ。

 

 

「……日本のキッチンに立つときは、は、裸にエプロンだって……」

 

 

 もしも涼夜がいたら「ねーよ!」とツッコミをいれていたことだろう。

 だがな。

 お前が素敵な考えができると評した俺の母、裸エプロン推奨派だったぞ。いや、さすがは俺の親だと思うね。

 そのアーシアの影響で部長まで裸エプロンになり始めてさぁ大変。

 いつからうちは天国になったのでしょうか。

 

 

「父さん幸せだ。一日の疲れが吹っ飛んだよ」

 

 

 仕事から帰ってきた父さんも大興奮である。

 

 

「二人を絶対に娶れな。そうすればリアスさんもアーシアちゃんも俺の娘だ」

 

 

「努力します、お父様」

 

 

 お互いに満足げな笑みを浮かべて、俺達は親子の会話をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も俺と部長とアーシアは一緒に寝ていたのだが。

 深夜。

 俺達はプレッシャーを感じて目を覚ました。

 部長がベッドから飛び起きて窓の前に立った。アーシアも何か感じて身を起こしている。

 窓から見下ろすと、俺の家の前にこちらを見上げる人影が――。

 

 

「……フリード!」

 

 

 挑戦的な笑みを浮かべているのは白髪の少年神父だった。

 野郎! あのあと何があった? 涼夜は? 木場は? クソ! 気になる!

 奴がチョイチョイと手招きをする。

 俺達はとっとと着替えて、玄関を開け放った。

 

 

「やっほー、アーシアたん。さっきぶりイッセーくん。元気してた? ピンポイントで向けた殺気に気が付く辺り、少しは成長したのかな?」

 

 

 相変わらず巫山戯た口調だ。

 涼夜達のことを問うよりも早く、俺達は重圧を受けた。

 咄嗟に上を見上げる。

 月をバックに空に浮かんでいた者。漆黒の翼を持つ、男の堕天使!

 翼が……十!?

 装飾の凝った黒いローブに身を包む若い男の堕天使。そいつは部長を捉えると苦笑する。

 

 

「はじめましてかな、グレモリーの娘。麗しい紅髪だ。忌々しい兄君を思い出して反吐が出そうだよ」

 

 

 うおっ、いきなりだな! 憎悪すら感じるぞ!

 

 

「ごきげんよう、堕ちた天使、その幹部――コカビエル。それと私の名前はリアス=グレモリーよ。お見知りおきを。付け加えるのならグレモリー家と我らが魔王は最も近く、最も遠い存在。政治的なやりとりに私との接触を求めていたのなら無駄だわ」

 

 

 コカビエル!?

 コカビエルで堕天使の幹部って言ったら聖書にも出てくるあれだろ!?

 改めてコカビエルの顔を見ると、赤い液体が頭から顔に伝って来ていた。

 

 

「ボスー、血ィ出てるぜィ」

 

 

 あ、やっぱり血なのか。……ってなんでだよ。初っぱなから手負いですか?

 

 

「――忌々しい。あんな鼬の最後っ屁のようなものを受けるとは……」

 

 

 乱雑に血を拭うコカビエル。

 

 

「だから言ったじゃん。涼夜ちゃんはそこらの雑魚ぽんとは違うって。しかも結局涼夜ちゃんは元気なまま帰って行っちゃったしさ。絶対また来るよ。……まァ俺的には大いにありだと思いまっす!」

 

 

 涼夜!? あいつ、堕天使の幹部に傷を負わせたのかよ!

 けど良かった。涼夜は無事なようだ。なら木場も……。

 

 

「ああ、お前の言う通りだった。ゴミ三匹を庇いながら、あそこまで戦えるとは……」

 

 

 三匹……三人か。木場と……イリナ、それにゼノヴィアか!?

 

 

「まぁ今はいいか。それから交渉だったか?」

 

 

 フリードと少しの会話をした後に、コカビエルは話を戻した。

 

 

「そんなバカげたことはしない。妹であるお前を犯して殺せば、サーゼクスの激情が俺に向けられるかもしれないが……ああ、それも悪くはないな」

 

 

 部長は侮蔑したような目でコカビエルを睨んだ。

 

 

「なら目的は?」

 

 

「お前の根城である駒王学園を中心にして、この町で暴れさせてもらうぞ。そうすればサーゼクスも出てくるだろうし、上手くいけば悟ヶ原(さとりがはら)も釣れる」

 

 

 嬉々として告げるコカビエル。

 悟ヶ原ってのはわからないが……なんてことを考えてやがる!?

 

 

「……また戦争がしたいのかしら?」

 

 

「ご明察。聖剣を、それもエクスカリバーなんて大物を盗めばミカエル辺りが戦争を仕掛けてくれると思ったんだがな……寄越したのは数える程の少数。しかも聖剣使いを含めても雑魚しかいなかった。だからサーゼクスの妹の根城で暴れるんだよ。楽しそうだと思わないか?」

 

 

 舌打ちをする部長。……これは相当キレている。

 ミカエルって神様の次に偉い天使だろ? そんな大物に喧嘩を吹っ掛けてる時点でもヤバイのに、更に魔王にまで喧嘩を売るなんて!

 

 

「戦争狂め」

 

 

 忌々しそうに言う部長に対して、コカビエルは狂ったような笑みを浮かべている。

 

 

「クク、そうだとも! 俺は戦争が好きだ! 争いが好きだ! 殺し合いが好きだ! 三つ巴の戦争が終わってからは退屈で死にそうだった! なのにアザゼルもシェムハザも神器(セイクリッド・ギア)などという役立つかどうかもわからない物の研究に没頭しはじめた! 俺達の決定的な武器になるかもわからない物のな! ……まぁそこのガキの持っている物クラスなら話は別だがな」

 

 

 コカビエルの視線が俺に及ぶ。

 凄まじいプレッシャーだ。

 俺は震えるが、それでも強気の姿勢だけは崩さない。

 

 

「……俺の神器(セイクリッド・ギア)も欲しいのかよ?」

 

 

「俺は興味ない。が、アザゼルはどうだろうな。最近は人間の作ったゲームに夢中とはいえ、あいつのコレクター趣味は異常だ」

 

 

 アザゼル? 堕天使組織の総督で……涼夜も面識があるみたいだったな。

 神器(セイクリッド・ギア)を集めてるのか?

 

 

「どちらにしろ、俺はお前達の根城で聖剣を巡る戦いをさせてもらうぞ! 魔王二人の妹が通う学舎だ、さぞかし混沌が楽しめるだろう! エクスカリバー本来の力を解放するにも最適だ! 戦場としてはちょうどいい!!」

 

 

 狂ってやがる!

 

 

「ひゃはっ! 俺も聖剣貰ったし、涼夜ちゃんとも戦えそうだし大満足ですよん」

 

 

 フリードが腰に二本差し、更に右手に持っていたのはエクスカリバーだ。右手に持つ聖剣眺めて、フリードは笑む。

 

 

「バルパーの聖剣研究もなかなかだな」

 

 

 やっぱり組んでるのかよ、コカビエルとバルパーは。

 

 

「ハハ! 楽しい戦争をしよう!」

 

 

 フリードが目くらましのアイテムを発光させると、既に敵の姿は消えていた。

 俺達は急いで学園に向かうことになる。

 堕天使の幹部との大決戦だ。

 作戦……という程でもないが、生徒会のメンバーが学園に大掛かりな結界を張り、中での影響が外に出ないようにしてくれている。

 その間に俺達はコカビエル達と戦い、サーゼクス様の来るまでの時間を稼ぐというものだ。

 ……涼夜と木場はまだ来ていない。

 

 

「これは……」

 

 

 俺達が学園の敷地に乗り込むと、校庭には三本の剣が神々しく光り、宙に浮いていた。そしてそれを中心に怪しい魔方陣が展開されている。

 魔方陣の中央には初老の男。あいつがバルパー、か?

 

 

「三本のエクスカリバーを一つにするのだよ」

 

 

 バルパーは面白おかしそうに口にした。

 

 

「あとどれくらいで統合はおわる?」

 

 

 ッ!

 空中から聞こえてくる声に、部員全員が空に視線を向ける。そこには月光を浴びるコカビエルの姿があった。

 

 

「もう終わる」

 

 

「そうか」

 

 

 コカビエルはバルパーから部長に視線を移す。

 

 

「サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーか?」

 

 

「お兄様とレヴィアタン様の代わりに――」

 

 

 風切り音が聞こえ、すぐに爆音が響いた。

 俺達も爆風の余波を受ける。

 なん、だ……?

 体育館が……消し飛んだ!?

 

 

「まあいい。余興にはなるか」

 

 

 体育館のあった場所には巨大な光の柱が突き刺さっていた。

 あれが槍か!? デカすぎだろ!!

 

 

「フリード、お前も暴れたいだろう?」

 

 

「おお? まァメインディッシュにはほど遠いけど、やっていいならやっちゃうよ?」

 

 

 コカビエルに問われたフリードは校庭の隅の木に寄り掛かったままニヤリと笑みを深くした。

 

 

「朗報だ、こちらも完成した」

 

 

 んな!? もう!?

 バルパーの声を聞き、コカビエルは拍手をする。

 

 

「三本のエクスカリバーが一つになる」

 

 

 神々しい光が校庭全域に広がり、俺達はその強い輝きに顔を隠す。

 眩い光が集束した時、校庭にあったのは青白いオーラを纏う一本の聖剣だった。

 

 

「他の術式の完成も近い。あと……三十分ほどだ」

 

 

 三十分……?

 あの術式がなんなのか分からないが、これは三十分以内にケリを付けないといけなさそうだ。

 

 

「フリード、使ってみせろ」

 

 

「いいね、テンション上がってきたぜ」

 

 

 ひとっ飛びで校庭の真ん中にまで移動したフリードは躊躇うことなく聖剣を引き抜いた。

 

 

「問題は?」

 

 

 バルパーに問われ、フリードは数回に渡って聖剣を振って見せる。

 

 

「いいんでない?」

 

 

「ふむ……お前に与えた因子の方も問題はなさそうだな」

 

 

 最悪だ。

 あの狂犬と称される戦闘狂が、聖剣三本分……いや、三本が一つになって更に強力になった聖剣を得てしまった。

 ……けど弱音を吐いてる余裕はない。

 フリードも、バルパーも、コカビエルも倒さなくてはならないのだ!

 

 

 

 




しばらく更新を停止しようと思っています。
身勝手な話ですが、リアルで多忙な時期が続くのです。
その間、ぼちぼち改稿作業をしていこうと思っていますが、本編の更新は期待しないでください。

14/10/27
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