宿した者(仮)   作:雲丹

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前回の更新は去年の五月二十五日か……もう十六年になってかなり経っちゃったよやべぇよ……最悪でも五月二十五日に更新しよう。そう思ったのが少し前。
……あれ、今日何日だっけ? そう思ったのがついさっき。

遅くなって申し訳ありません。

日付感覚がおかしいんです許してください!
いや本当にね、一週間が早いの。土日も休みが少ないから感覚狂うの。

あ、最新話です。
楽しんでもらえると嬉しいです。


停止教室のヴァンパイア
放課後


 あれから数日。

 ゼノヴィアが駒王学園に入学した。しかも悪魔に転生して。

 

 

「なんてことはない。魔人……いや、涼夜と呼ばせてもらおう。涼夜は人の身でありながら魔物(デビル)の力を持っているだろう? なら私も、聖剣を持ちながらも悪魔になってみようと思ってね」

 

 

 やぶれかぶれなのかと思いゼノヴィアに聞くと、そんなことを宣った。

 納得……できるか!!

 いいのか! それでいいのか!? と問い詰めたが彼女は既に部長さんの眷属。後の祭りだった。

 

 

「デビルハンターとしても活動したいから、その辺り色々と教えてもらえると助かる」

 

 

 加えてこれである。恐らく神の不在のショックもあるのだろうが……。

 ええー? と困惑した俺は絶対に悪くないと思う。

 

 

「まぁそういうわけだ。ああそうだ、学園では私の方が先輩だからな……ゼノヴィア先輩とでも呼んでくれ」

 

 

 笑みを浮かべたゼノヴィアに「お前の頼みからいくと俺は先生になるぞ」と口から出かけたが、そうなったらそうなったで面倒そうなのでギリギリ耐えた。……いや言っちまったら本当に先生呼ばわりされそうなんだよ。

 ――そしてもう一人。

 はぐれとは言えエクソシストだったフリードだが、今はフォルトゥナにいるだろう。

 奴の証言が取れたわけだが……元々はぐれであり、戦闘狂である以外は大きな問題を起こしていなかったので釈放されたのだ。多少過激ではあったのだが……一般人に手を出していないという理由も大きかったのだろう、監視付きとは言え一時的に解放されたのだ。

 まァゼクスの出した解放条件の中に俺が天使化の制御を教えるというものもあったのだが、俺はあくまで魔人。フォルトゥナに住む天使化をモノにしている人物を紹介することで事は済んだ。彼なら真面目だし、上手くいけばフリードを躾けられるかもしれない……そんな淡い期待を込めて。

 

 

「……なにこれ」

 

 

 そして現在。

 俺は部室にて小猫が買ってきたバーガーと睨めっこをしていた。

 他の部員達も引き攣った顔でバーガーを見つめている。

 

 

「本マグロ刺身生クリーム&カスタードバーガー」

 

 

 俺の問いかけに、小猫は一息で言い切った。

 

 

「……食べて?」

 

 

 甘えた声音で俺を見つめる小猫の手には、紙で綺麗に包装された生臭く甘い香りのする……本マグロ刺身生クリーム&カスタードバーガー。

 ズイッと俺の口に伸ばされる異臭を放つパンを、俺は小猫の両手を掴んで止める。近くで何故かイッセー先輩が興奮して声を上げていたが、俺は無視させてもらう。

 

 

「またスリリングな新作を出したのですね、あのお店は」

 

 

 副部長が俺達の様子を見て微笑ましいとばかりに説明を加えた。が、俺としてはそれどころじゃない。小猫、ガチで力を入れてきている……!

 

 

「はい。流石にこれはないと思います」

 

 

「なら買うな」

 

 

 副部長に同意した小猫に対して俺は間髪入れずにツッコンだ。

 こいつここ三日程学校を休んでどうしたかと思えば、なんてものをお土産に買ってきてやがるんだ。甘党の俺でも無理だぞ。っていうか生もの苦手なんだよ! 俺は!!

 

 

「涼夜は生もの苦手だった気がするが……」

 

 

 そう! そうなんだよ、ゼノヴィア! ……なんで知ってるんだよ! お前の俺に関する情報の出所はどこだ!?

 

 

「でも食えないわけじゃないだろ? 前にうち来た時は普通に食ってたし」

 

 

 イッセー先輩は余計なこと言うな!

 基本なんでも食えるけどな! 好き嫌いってあるだろうが!!

 色々と言いたいことがあるのに、小猫が本気で俺に食わせようとしているのでそんな余裕がない。今も互いの力が反発しあって震えているのだ。

 

 

「一人ではとても立ち向かえないです」

 

 

「嫌だ!」

 

 

 だが、そんな拮抗状態は長くは続かなかった。

 小猫は不意に力を緩めたのだ。

 

 

「私も食べます……なので先手をお願いします……!」

 

 

 なん、だと……? お前、こんなゲテモノを食べるつもりなのか……!

 無駄に決意の籠もった表情をする小猫に、驚きに表情を氷らせた俺。

 

 

「おっとー……?」

 

 

 ニヤニヤし始めるイッセー先輩。

 

 

「小猫ちゃん……かっこいいです!」

 

 

 どこが? と言いたくなるようなことを言い出したアーシア先輩。

 

 

「小猫ちゃん、本気の顔だね」

 

 

 俺に同情しているのか苦笑いを向けてくる祐斗先輩。

 

 

「世の中には食べたくても食べられないひともいる……涼夜の言葉だったな」

 

 

 早速空気を読むことを覚えたゼノヴィア。笑いを堪えているのが丸判りだ。

 

 

「これは食べないといけない流れですわね」

 

 

 うふふと笑う副部長さん。このひと絶対に俺の反応で楽しんでいる。

 

 

「涼夜、貴方も甘味好きのパティシエなら……覚悟を決めなさい」

 

 

 楽しそうな部長さんには「こんなの甘味じゃねェよ!!」と叫んでやりたい。

 俺が怖ず怖ずと目の前の少女の持つパンの様な物を見やると、小猫はその本マグロ刺身生クリーム&カスタードバーガーを両手でゆっくりと持ち上げた。……もはや臭いがキツイ。絶対に俺の顔は引き攣っている。

 

 

「……。……。……っ」

 

 

 一口含んで俺は片手で口を押さえ、片手で紅茶の注がれたカップに手を伸ばし……一気に飲み干した。

 

 

「……どうでした?」

 

 

「……うん……無理……」

 

 

「甘いの大好きですよね?」

 

 

「……そういう問題じゃ、ない」

 

 

 副部長さんが紅茶のおかわりを注いでくれた。しかも「ふーふー」と息を吹きかけて冷まそうとしてくれている。……さっきは俺の反応で楽しんでいるとか言ってスイマセンでした。

 マグロの旨味を生クリームとカスタードで包み込んでいても、そのマグロの主張の強い事よ。だが決して甘味が弱いわけではない。主張し合う両者。ぶつかり合う二つの味。それらが未だに俺の口を駆け巡っている。正しく味の暴力だ。

 俺の舌……かなり肥えたんだな。そのことに驚きを感じている間に、俺の囓った本マグロ刺身生クリーム&カスタードバーガーを小猫も囓った。

 

 

「……。……っ……無理……」

 

 

 お前俺の反応見てよくいったな。

 辛うじて本マグロ刺身生クリーム以下略を飲み込んだ小猫は小さく震えながら紅茶を飲み干す。

 とは言え二口で残してしまっては勿体ないな……。

 そこで俺は閃いた。

 

 

「――ゲームをしようぜ」

 

 

 ドヤ顔をする俺を部員達が「なに言い始めたんだ」と見つめる。

 

 

「……ハッ、お前まさか!」

 

 

 流石にイッセー先輩は察したか。

 俺は副部長の持つ紅茶に手を伸ばし……たが無意味だった。小猫が攫っていった。

 虚しく宙を舞った右手を、副部長は両手で包み込んだ。全く無駄な行動だが……まァこういうノリが普段通りとも言える。

 

 

「これですわね?」

 

 

 どうやら副部長は無駄な行動とったわけではなかったらしい。

 俺が部室を見渡している間に片手の指を絡めていたかと思えば、今度は新品のトランプを握らされていた。

 俺は「これこれ」とポンと軽くトランプを投げて両手で弄ぶ。

 

 

「今からやるのは……闇のゲームだ」

 

 

 どうやら副部長さんも察していたようだが、今の言葉でゼノヴィア以外は得心いったようだ。もれなく顔を歪ませている。

 

 

「敗者は……この物体Xを一口食べなくてはならない!!」

 

 

 な、なんだってー!

 そんな叫びが部室中に広まった。ゼノヴィアだけが困惑していたが……本当にこういう時間のノリがいいよね、皆して。最高だ。

 

 

「小猫と俺は既に一口食べたわけだが……」

 

 

「おっと、それはゲームとは関係ないだろう?」

 

 

 わーってるよ、と意地悪そうな顔のゼノヴィアに返す。

 

 

「小猫もいいか? 嫌だってなら、最初の一回だけ俺が食ってやるけど」

 

 

「勝てばいい話ですし……別に構いません」

 

 

 強気な小猫に「そう?」と確認すると頷かれた。言い出しっぺだったから提案したが……別に食いたいわけでもないので、食わずに済むならそれはそれで嬉しい。

 まァこういうやりとりも初めてではない。だからこそアーシア先輩も楽しそうに「なんだってー!」と叫んでいたわけだしな。マジ癒やし。

 

 

「ディーラーは……」

 

 

「今日は僕がやるよ」

 

 

 普段からこんな感じで適当にディーラーが決まっていく。基本的に一日で何人もがやることにはならないが、たまに気分で変わったりもする。

 トランプを祐斗先輩に手渡した俺はXバーガーを包丁で分割していく。

 

 

「部位によっては少し多いな……まァこれは好きなとこ食うってことで」

 

 

 最初に負けた奴の罰ゲームは軽めで然るべきだ。後の罰ゲームの方が酷いってのが定番だし盛り上がる。

 全員が頷いたのを確認して部長さんが切り出した。

 

 

「ゼノヴィアは初めてだけど、状況は理解しているわね?」

 

 

「ああ。トランプでゲームをし、敗北した者がそのバーガーを食すのだろう?」

 

 

 こんな遊びで真面目な顔を作っている部長さんに、ゼノヴィアも同じく真面目な顔で返答する。……そんなに食べるのが嫌か。

 

 

「ええ。基本的なルールはイカサマはなし。イカサマを発見したらきちんと証拠を差し出すこと。証拠があった場合イカサマをした人物は失格。失格者は敗者と同義……こんなところね」

 

 

 ちなみに今まででイカサマをした人物はいない。皆が皆自分の実力と運で勝負を仕掛けている。……性格が出るんだよな、こういうところに。

 っと、そうだ! こういう時こそあの台詞を……!

 

 

「――ゲームの歴史。それは遥か五千年の昔、古代エジプトにまで遡るという。古代におけるゲームは人間や王の未来を予言し、運命を決める魔術的な儀式であった。それらは闇のゲームと呼ばれた。今、千年パズルを解き――」

 

 

「それは違う!!」

 

 

 前にイッセー先輩に借りた漫画に出てきた文章を口にしていたらツッコまれた、イッセー先輩に。

 ……既に全員の手元には二枚のカードが配られている。

 第一回戦、ブラックジャック。

 使用カードはジョーカーを除いた五十二枚。

 カードの数字を足していき二十一になった状態がブラックジャックとなり最も強い役となる。二十一になった者がいなければ二十一以下で二十一に最も近い者が勝利。ただし二十一を超えたら敗北決定である。

 二から十はそのまま。Aは一と十一。JQKは十となる。

 また引けるカードの枚数に上限はない。

 正規のルールとは異なるが、まァ部員間のルールなどこんなものだ。

 

 

「ブラックジャックです♪」

 

 

 知ってた。

 ゼノヴィアを除いた全員がアーシア先輩の笑顔を見て思った。

 神を信仰していたのが関係あるのか、この手のゲームではアーシア先輩のリアルラックが大きく発揮されるのだ。

 AとQのカードを見せてくるアーシア先輩は一抜けである。

 

 

「……十八です」

 

 

「僕は十六」

 

 

 勘の良い小猫、そして引き際を弁えている祐斗先輩。

 前者はJと八。後者は四と四、八である。

 

 

「うふふ、二十ですわ」

 

 

「奇遇ね、私もよ」

 

 

 JがQが一枚の副部長さん。十が二枚の部長さん。

 

 

「十五だ……」

 

 

「……俺は十四」

 

 

 五が三枚のイッセー先輩が、俺の十と三とAを見て一息吐いた。……なぜ……なぜ十の次にAが来なかったんだ……!

 だがゼノヴィア。あいつは強気に手札を増やしていたからな。俺は淡い期待を込めて視線を送る。

 俺の視線を受けたゼノヴィアの口元が釣り上がった。

 

 

「――ブラックジャックだ、残念だったな」

 

 

 A、二、三、六、九が綺麗にテーブルに並べたゼノヴィア。

 おおー! と皆が感心する中で俺は戦慄した。確かにアーシア先輩は二枚目でカードを揃えるという引きの良さを発揮したが、ゼノヴィアの五枚も引いてブラックジャックというのもかなりの強運だ。

 なんだ、神を信仰していると神に愛されるのか。

 

 

「ちなみに俺が一枚追加してたらどうなる?」

 

 

「……これだね」

 

 

 苦笑する祐斗先輩。

 カードは……Kである。

 正直ゼノヴィアが二十一を超えるとばかり思っていたがそうはならず、追加したらしたで俺の敗北である。……ゼノヴィアが引く前に引いていれば勝てたかもしれないが、今さらである。

 

 

「涼夜ってこういう賭けには滅法弱いわよね」

 

 

 部長さんが意外そうに告げる。

 それも知っていたさ。だからこそ週休六日を謳っている何でも屋"Devil May Cry"が金銭難に陥った時もカジノや賭けにだけは手を出さなかった。……いや金銭難がすぐに終わらなければやっていた可能性も……ない、か。賭けに関しては遊び以外ではやりたくないし。

 でもいたなァ……師の借金の為にイカサマテクを磨いて賭けで金を巻き上げてたやつが……アレンだったかな。あいつ、俺と同い年だったけど、元気にしてるだろうか。

 

 

「……どうぞ」

 

 

 小猫が分割された本マグロ刺身生クリーム&カスタードバーガーの乗った皿を差し出してくる。

 飲み物を用意して最も小さく見える物を選んで一気に飲み込む。そして飲み物を流し込む。

 

 

「……まっず」

 

 

 普通にマズい。

 別に食っても腹は痛くならないし、意識がなくなるわけでもない。だからこそ罰ゲームとなったわけだが……なんでこんな物を開発したんだろうか、あの店は。

 それこそ本当に罰以外の利用法が思いつかない。

 

 

「じゃあ次は負けた涼夜から始めましょうか」

 

 

 俺は既に食していたこともあり、そこまで盛り上がることはなかったが…… 第二回戦だ。

 ゲーム名はダウト。

 プレイヤーは一から十三までの数字を巡に伏せて出していく。その際は手札で対応しているカードを何枚で出して良い。

 もし出せる数字がなければ他の数字を偽って出していく。もし自分以外のプレイヤーの出したカードが嘘だと思った場合は「ダウト」と宣言。嘘をついていた場合は出したプレイヤーが、嘘でなかった場合は宣言をしたプレイヤーが、今まで伏せられていたカードの山札を回収しなかればならない。

 手札が無くなれば上がりだが、このゲームは人数が減ればその分誰が何を所持しているのかが推察できるようになる。

 残り三人になったら一先ず終了かねェ……。

 

 

「んじゃま一を二枚な」

 

 

 ペシッとカードを放る。

 それを皮切りに順繰りにカードを伏せていく。最初の二週は特に問題なく進み、誰も「ダウト」宣言をしていない。

 まァこの流れはいつも通りとも言える。

 

 

「次は私ですね」

 

 

 るんるん笑顔のアーシア先輩が自分の手札を端から端まで見渡す。……その顔に雷にでも打たれたかのような衝撃が走った。

 

 

「……十です!」

 

 

 アーシア先輩……判りやすいなァ。いや、これでも大分マシになったのだが。

 当初なんて言葉に詰まるは舌を噛むわで大変だったからな。

 俺達はあまりにも純粋なアーシアに「ダウト」と言うことなど出来ないでいた……のが最初の頃。最近はある程度タイミングを見て誰かが言うようにしている。……今日はまだ始まったばかりだし――。

 

 

「ダウトだ」

 

 

 ゼノヴィアの容赦のない一言に「あ!」と口を揃えた俺達。

 今日はこいつがいたのだった。

 

 

「うぅ……正解です」

 

 

 残念そうにカードを捲るアーシア先輩。置かれたカードはJだった。……惜しい! そして近い数字を置く辺り先輩らしい。

 ……これ、大丈夫か? 主にアーシア先輩のメンタルが。

 今はまだ一回目だったし、先輩自身も楽しそうにしているが……いやでも毎週対応した数字がないってことはないよな?

 そう思いつつ、アーシア先輩に対して保護者にも似た過保護を発揮しているイッセー先輩を見てみると、ちょうど先輩もきちらを見てきたので目が合った。……首を横に振るイッセー先輩。それはあれか、ヤバイってことか?

 

 

「あ、えーっと、そういえば涼夜のクラスにも転校生来たって?」

 

 

「お、おう……まァこっちのは完全に一般人っぽいけど」

 

 

「変な次期なんだし色々と"フォロー"してやれよ? なにかあったら"俺も"手ぇ貸すからさ」

 

 

 フォローと俺もの部分だけ少し強調してイッセー先輩は言う。

 なる程。察した。

 つまりフォローしろと。イッセー先輩もするが、俺もしろと。

 ちなみに察しているのは何も俺だけではない。というか当人とゼノヴィア以外は察している。

 だがゲームはダウト。……どうやってフォローするか。

 別にアーシア先輩を勝たせる必要はないが、毎回顔に嘘だと出してしまうからその度ダウトと言われる可能性がある。……そうなったらアーシア先輩でなくても楽しめなくなる。普段からこの手のゲームをやる時は楽しむことを重要視しているから、それはいただけない。

 ゼノヴィアに後で色々と言っておくとして……。

 

 

「あ、それダウトで」

 

 

 イッセー先輩の出したカードで宣言する俺。

 順番は俺、部長さん、副部長さん、祐斗先輩、イッセー先輩、アーシア先輩、ゼノヴィア、小猫となっている。 カードはそれなりに多いが、このタイミングで一度ゼロにしてしまえば……。

 

 

「マジかー!!」

 

 

 イッセー先輩が出したカードを裏返し、積まれていた山札を回収していく。

 そこから互いに機を見計らってダウトを挟んでいく。ゼノヴィアが割と容赦のないタイプなのでアーシア先輩が上がることもなく、その後数巡して漸く一人上がった。

 上がったのは副部長さんだ。

 

 

「うふふ、お先に失礼しますわね」

 

 

 ダウトってのは手札が一枚の相手が出した場合はダウト宣言しなくてはならない……何故なら上がってしまうから。だから基本的に最後の一枚は嘘をつかないのがセオリーだ。

 この人数だと結構それは難しいのだが、副部長さんは涼しげな顔でやってみせた。

 ダウト宣言をした祐斗先輩が今は一番手札が多いな。

 ……。

 その後。

 小猫、部長さん、ゼノヴィアが抜けて行き、残すところ俺とイッセー先輩と祐斗先輩のみ。

 男三人は立ち上がり――

 

 

「「「じゃんけん……ぽん!!」」」

 

 

 じゃんけんをしていた。

 というのも前述した通り、このゲームでビリを決めるのは難しいのだ。

 まずイッセー先輩が抜け、次に勝ったのが俺だった。

 あっぶねーな、おい!

 

 

「じゃあ……いただきます。……。……!」

 

 

 苦笑いで本マグロ刺身生クリーム&カスタードバーガーを口に含んだ祐斗先輩だったが、その苦笑いを保持したまま数秒間に渡ってフリーズした。

 その後発した言葉は一言。

 

 

「これはないね」

 

 

 その一部始終でイッセー先輩は大笑い。部長さんや副部長さんも珍しいと笑い、他の面々も笑いに包まれた。

 次いで第三回戦。

 大富豪。

 プレイヤーに均等にカードを配布、順々に出していき無くなった者の勝利。

 カードには強さがあり、先に出された数字より強いものでなくては出せない。また同数のカードなら複数枚まとめて出せる等、いくつかのルールがある。

 

 

「出す?」

 

 

 俺がAを出して皆に問う。

 このゲームでは三が一番弱く、二が一番強い。順当に言うのなら三、四~J、Q、K、A、二となる。

 数巡した今、Aはそれなりに強い役だったりするのだ。

 

 

「僕はやめておくよ」

 

 

「俺も」

 

 

 男子二人が自分の手札を見て首を振る。

 どうやら他の面々も出さないようだ。

 俺は「流すぞ」と出されたカードの山をずらし、また一枚のカードを出す。

 

 

「二。……で流すぞ」

 

 

 俺の手札は残り二枚……いける!

 

 

「ジョーカー。……で――」

 

 

「――ジョーカーを出すわ」

 

 

 山札を流そうとした俺の手が止まる。

 見ると部長さんがニッコリと満面の笑みを浮かべていた。片手で俺が出した物とは絵柄の違うジョーカーを持っている。

 このゲームは最も強いカードでは上がれない。ジョーカー然り、二然りだ。状況によっては反転して三が強くなることもあるが、現状ではない。

 

 

「上がり阻止ですね……!」

 

 

「うふふ、ずっと機を窺っていたのですね」

 

 

 小猫がナイスです! と喜び、副部長さんが部長さんを見た後に俺を見て微笑む。……なにそれ、俺狙い撃ちにされてるの? いや確かに手札が一番少なかったの俺だけども。妥当だけども。

 

 

「流っ石は部長っす!」

 

 

 とイッセー先輩達も喜び出す現状に俺は苦笑いである。

 

 

「ドンマイだね」

 

 

 祐斗先輩だけが微笑みながら慰めてくれた。

 上がり損ねたとは言え俺の手札は一枚。それに結構強いカードだ。まだまだチャンスはある。

 

 

「じゃあ私からね……ツーペアを出しましょうか」

 

 

 ツーペア。文字通り同数のカードを二枚出すこと。ルール上次にカードを出すプレイヤーは先に出された数字より強いカードをツーペアで出さなくてはならない。

 俺の手札……一枚。どう足掻いてもペアには出来ない。

 また上がれなくなった――!

 ……。

 

 

「流石は司令塔の役割もあるキングだな」

 

 

 ゼノヴィアが部長さんを見て感嘆する。

 ……一番最初に上がったのは部長さんだった。どうやら部長さんの手札は、俺の手札が一枚になった時点でペアしか残っていなかったようで……俺は完全に封殺されました。

 

 

「大富豪は戦略を練れば勝てるでしょう? 昔から得意だったの」

 

 

 久々の見せ場が嬉しいのか、とても嬉しそうな笑顔である。キラキラしている。

 俺の前略は甘かったのだろうか……。結局その後も波に乗れずに四位だったし。

 

 

「涼夜の戦略は悪くなかったけれど、二枚目のジョーカー……そしてスペードの三の存在を確認しておくべきだったわね」

 

 

「……その二種類を持ってたのは部長さんだけどな」

 

 

 スペードの三はジョーカーに対して問答無用で勝利する、言わば対ジョーカー用の切り札なのだ。しかも強制的に場を流せる。

 部長さんは最強クラスの手札を持ち、確実に勝つための手段を講じてきたというわけだ。……引き良すぎだろ、ジョーカーとスペ三って。

 ゲンナリする俺と意気揚々している部長さん。

 そしては頬を引き攣らせているイッセー先輩。先輩は本マグロ刺身生クリーム&カスタードバーガーを右手で抓んでいた。……此度の敗者である。

 先輩は普通に嘔吐き、部長さんとアーシア先輩によって介護されるという情けない体たらくである。まァトイレに駆け込んで戻ってきたら顔真っ青だったもんな。一般家庭出身にはキツイのかな。

 

 

「それじゃあ今日はもう終わりにしましょうか」

 

 

 それから数ゲームこなし、部長さんはそう締めくくったのだった。




物語は進まないぜ☆

こういう日常的なの好きなんですが、いざ自分で書け……となると難しいですね。戦闘とはまた違う難しさです。

次話は妖館の方のお話になります。

16/05/28 投稿

日付変わると同時に投稿するつもりが、後書き書いてる間に過ぎちゃった……。

16/05/30 改稿
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