宿した者(仮)   作:雲丹

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鬼ごろしが安定しねぇよぉ……令呪使わないと勝てないよぅ……。そもそも林檎でBP回復しないから安定するパーティー模索するのも難しいよぉ……(FGO感)。

今話も日常回。
英文は適当なのでスルー安定です。


太陽と月

 本マグロ刺身生クリーム&カスタードバーガーの襲来から数日。

 今日は土曜日。

 休日だからか、朝十時過ぎでも妖館のラウンジには多くの人が集まっていた。……いや、それにしても多いな。

 

 

「あ、リョウヤンだー☆」

 

 

 最初に俺に気が付いたのは夏目残夏。

 明るい髪にウサ耳カチューシャを付けたおどけた雰囲気の男性だ。

 そんな残夏の声を受けて周囲もそれぞれ俺に声をかけてくる。

 

 

「おはー」

 

 

「随分とゆっくりだな。疲れてるんじゃないのか? おはよう」

 

 

「おはようございます、黒上様」

 

 

 レン、凜々蝶、双熾である。

 うちの学校の生徒も個性的だが、妖館に住んでいる者も大概だ。

 俺は他の面々にも挨拶を返しながら一体何事かを問う。

 

 

 

「今日から新しい入居者が来るんだよー☆」

 

 

 近くにいたレンと凜々蝶、そして双熾に問うたつもりだったのだが、いきなり残夏が楽しげに割って入って来た。と言っても、俺も含め皆がそのことに慣れつつあるので大きな反応はとらない。……凜々蝶は僅かに肩を震わせたが、彼女は繊細なようだし、それを踏まえても反応としては薄かった。

 

 

「へェー……どんな奴?」

 

 

「内緒☆」

 

 

「名前は?」

 

 

「内緒☆」

 

 

「……年齢は?」

 

 

「内緒☆」

 

 

「性別」

 

 

「内緒☆」

 

 

 ハッ倒すぞ……!

 ハブられているのではないかと思う程に情報が教えてもらえず、俺は露骨に顔を顰めた。当の残夏は今までと変わらないテンションで「そんな顔しないでー☆」と笑みを深めるだけである。

 

 

「……僕は雪小路(ゆきのこうじ)さんが色々と手を回している聞いた」

 

 

「なら女だな」

 

 

 凜々蝶が呆れた様子で溜め息を吐きながら言うと、レンが間髪入れずにツッコみを入れた。

 レンのSS……シークレットサービスである雪小路という女性は美人だが男には辛辣で、女には凄く優しいのだ。ぶっちゃけ俺も凜々蝶の言葉で新人さんが女性なのだと察することができたほどだ。

 

 

「……で、それとこの人手の多さは関係あるのか?」

 

 

「歓迎会だってさ」

 

 

 レンが割と興味なさげに教えてくれた。

 しかしなるほど、そんなイベントもあったな。

 確かによく見るとラウンジ中を飾っている様子だ。美味しそうな香りも漂ってきているし、豪勢な料理の仕込みでもしているのかもしれない。

 

 

「俺もなんかやる?」

 

 

「リョウヤン、プレゼントは買ったー?」

 

 

 プレゼント? 新しい人にする贈り物か何かか?

 

 

「いや……そもそも新しい人が来るって話を今知ったんだけども」

 

 

「回覧板で回したよー?」

 

 

 んん? 回覧板なら俺もチェックしているが、そんなこと書いてあったか?

 そう思っていると残夏はどこからともなく回覧板を取り出し、三枚あるうちの真ん中……二枚目のプリントの一番下部分を指さした。

 何か黒く汚れている……?

 残夏が虫眼鏡をどこからともなく取り出し、俺に手渡してくる。

 嫌な予感がしつつも、黒ずみを拡大して覗き見た。

 新しい入居者が増えます。歓迎会をするので贈り物を用意しておいてください。虫眼鏡を使うレベルで小さい文字で、そんな文章が書かれていた。

 

 

「……詐欺だ」

 

 

「詐欺じゃないよー」

 

 

「これ皆読めたのか!?」

 

 

 話にならない残夏を無視して他の三人に確認する。

 

 

「「まさか」」

 

 

 ですよね。

 即答してくれたレンと凜々蝶にホッとした。俺がおかしいのかと思った。

 ……でもそれならなんで――

 

 

「私どもには夏目さんから直接ご連絡を頂きましたので」

 

 

 ――双熾のおかげで納得した。

 

 

「嫌がらせか? 嫌がらせなのか?」

 

 

 残夏の首元を掴んだ俺は悪くないと思う。

 そして残夏、「どーどー」言うな。俺は馬じゃない。

 

 

「あーもう……外で飯食うついでになんか用意しとく」

 

 

 凜々蝶の同情するような視線を受けながらも、頭をガリガリと掻いて立ち上がると何故かレンも立ち上がった。

 

 

「暇だから俺も行くわ」

 

 

 欠伸を噛み殺しながら伸びをするレン。

 

 

「駒王?」

 

 

「任せるわー」

 

 

 雑な、と凜々蝶が呟く。

 だがレンの性格などもう分かりきっているので、とりあえず十分後に第二エントランス集合ということにした。

 ちなみにエントランスは方角毎に四つある。当然だが東西南北である。

 それぞれ出入り出来る街が違うという……かなり高度な術式が施されているのだ。

 元々レンと凜々蝶は同じ学校に通っているが、駒王学園ではないので俺とは違う。というか学校のある街から違う。

 この妖館自体は外からも確認出来るが、建物が実際に存在している空間は別にあるとのこと。

 

 

「――お、早いなレン」

 

 

「財布とってきただけだから」

 

 

 ズボンの後ろポケットから長財布を取り出してこちらに放ってくるレン。さっきまではジャージ姿だったが、今はラフな格好である。

 俺の姿も黒と白ばっかの物だが、レンも似たような感じである。

 片手でレンの財布を軽く上に放りながら近づいていき、弄んでいた財布を返却する。

 

 

「んじゃ行くか」

 

 

「おー」

 

 

 第二エントランスの繋がっている場所は駒王町。

 主に俺の行動エリアである。

 俺達は基本的に通っている学校のあるエリア以外に趣くことはない。と言うのも本来はその街に住んでいないのだから、遠く離れた場所に素早く移動しているのは可笑しいのだ。

 要は余計な混乱を招く可能性を少しでも排除しましょうということである。

 まァそんなわけで、適当にレンと町を周りながら俺は新しい入居者さんへのプレゼントを探して回る。

 つもりだったのだが。

 

 

「えー? いいじゃん遊ぼうよー!」

 

 

「遠くから友達に会いに来たの? 仲良ーい!」

 

 

 デパートの小物売り場にて絡まれた。

 なんかよく分からない女子数人に。恐らく駒王学園生ではない。

 化粧が濃く、髪も当然のように染めているのが分かるカラー。そして強い香水の香り。

 失念していたがレンの外見は大人びており、体から顔まで刺青が伸びている。とてもではないがカタギには見えない。けれどだからこそ、そういう男に惹かれる……と桐生先輩が前に言っていた。火遊びと言うらしい。

 

 

「ソッチの子は年下だよね? 私らとは同じくらいかな?」

 

 

 こちらの話は全く聞かずに何やら勝手に盛り上がっている。

 レンはレンで怠いのか、手やら刺青を触られながらも抵抗する様子はない。……やめてー、と言いながら顔は面倒そうなのだが、それでも本気で振り解くにはまだかかりそうだ。

 そんな様子を眺めていると一人の女が俺に手を伸ばしてきた……ので俺は逃げるように一歩引く。がそれでも懲りないのか、逆に楽しそうに更に手を伸ばしてくる。

 うっぜェ……!

 俺がどう対処するか頭を悩ませていると、後ろから聞き慣れた声が届いた。

 

 

It's a chance meeting(奇遇ね、涼夜)

 

 

 聞き慣れた声からは聞き慣れない言葉だ。

 振り向くと案の定、部長さんが私服姿で佇んでいた。横には同じく私服の副部長さんの姿もある。どちらもお上品な印象の服だ。

 

 

「ちょっ、何あん――」

 

 

The partner who plays has to choose(遊ぶ相手は選ばないと駄目よ)

 

 

 不満そうに突っかかるギャルその一だが、部長さんは綺麗に無視をかまして俺に言葉を投げかけた。

 

 

Is it seen as if playing?(遊んでるように見えるか?)

 

 

 笑みを浮かべる部長さんに、俺はゲンナリした様子を装いつつ答える。

 

 

Isn't seen(それもそうね)

 

 

 苦笑した部長さんは俺を背後に隠すようにギャル達の前に躍り出る。

 

 

「He's my companion, please disappear」

 

 

 なんでわざわざ英語で話すんだ……。

 

 

「お嬢様は"彼らと過ごすの自分なので、今日のところはお引き取りを"と言っていますわ」

 

 

 相手に伝わらないだろと思ったが、副部長さんが意味深な微笑みを浮かべながら通訳していた。……しかも多分実際に込められた言葉の意味とは違う訳し方だ。少し柔らかい言い方になってる。

 それでも相手方は納得できないのか食い下がらなかった……のだが、最終的に部長さんがちょっとした暗示をかけて追っ払ってくれた。

 

 

「はぁ……外国人を装っても上手くはいかないものね」

 

 

 部長さんは物憂げに呟く。

 あァ、余り悪魔として力を使わずに場を収めたかったのね。それなら今回は相手が悪かったというか、何というか。

 

 

「助かった助かった……クロの知り合いか?」

 

 

「ん、紅い方が部長さんで黒い方が副部長さん。ってかレンお前なんでされるがままだったんだ?」

 

 

「あー、今の世の中あれだからな、問題になるのも面倒だし。……それに変に怪我とかさせて野ばらちゃんの耳に入っても恐いし」

 

 

 最後のが本音か。基本的に暴力沙汰が嫌いなレンらしい。

 俺は一人納得しながらレンを指さし「うちのマンションの入居者の一人の反ノ塚連勝」と軽く部長さん達に紹介すると、レンは「どもー」と雑に頭を下げた。

 

 

「黒い方の副部長、姫島朱乃ですわ」

 

 

「あ、紅い方の部長のリアス=グレモリーよ」

 

 

 あ、部長が困惑しながらも副部長にノッてる。なんかすいませんね、変な流れ作って。

 

 

「涼夜と同じマンションというと……貴方も関係者なのかしら?」

 

 

 部長さんは早速なかったことにするらしい。

 頬を僅かに赤らめている部長さんを見て副部長さんはご満悦である。

 

 

「レンは一反木綿の先祖返りだな」

 

 

「イケメン一反木綿。略してイケモメンだ」

 

 

 イケメンなのは認めるが自分で言うのはどうなんだ? しかも今最後自分の口で「キリッ」って音つけたな。

 

 

「ふふふ、そんなイケモメンさんと一緒にいたら涼夜君も声をかけられてしまったんですね」

 

 

「部員男衆で出かけても声かけれれたことなかったから油断した」

 

 

 あれは何故なんだろう。

 校内であれだけキャーキャー黄色い声援を浴びせられている祐斗先輩だが、校外ではそこまで人気がないってことなのか? ……そんなことないよなァ。イッセー先輩にしたって顔の作りは悪くないと思うし……。

 

 

「それは……イッセーがやらしいのは町全体に知られているからでしょうね」

 

 

 やらしい(そういうところ)も可愛いのに、と無駄に惚気る部長さん。

 しかしそうか……町公認だったのか……凄いな、逆に感心する。

 

 

「あ、そうだ」

 

 

 ふと思いついた。

 

 

「なんか妖館に新しく入居者さんが来るらしくて、皆で贈り物をしようってなってるんだけどさ……何が良いと思う? 蕎麦とかも違うだろうし」

 

 

 寧ろ蕎麦は貰う側な気がする。

 折角だし女子二人の意見も聞いておきたい。

 

 

「贈り物……相手の趣向は分かっているのかしら?」

 

 

「いや? それどころか恐らく女性なんだろうってことしか知らない」

 

 

 俺の言葉に部長さんは呆れ……てないな。そこは普通なんで情報がそれしかないんだってならない? やっぱこのひとも少しズレてんのかな。

 顎に手をやって考える素振り見せる部長さん。

 

 

「男だけだと女性の喜ぶ物とか分かんないんだよねェ……レンは知ってても良さそうだけど」

 

 

 SS的にも。それにレンはなんだかんだでモテていると聞く。

 

 

「いや野ばらちゃんも大概よ? それこそ幼女から老婆までイケる口だし」

 

 

「ストライクゾーンの広い方ですわねぇ」

 

 

 うわァ……。副部長さんは興味深そうに感心しているが、レンの言い方的に幼くても男の子はアウトっぽいぞ。それこそ本当に大概である。

 

 

「で、どう?」

 

 

「そうね……相手の趣味趣向が分かれば、それと被らないようにするべきなのだけれど……」

 

 

 ん、そうなのか? 好きな物あげた方が喜ばない?

 そんなことが顔に出ていたのか、部長さんは優しい声音で「考えてみなさい」と言う。

 

 

「相手の趣味趣向というのは、そのことに関しての知識は詳しいものでしょう? そしてそれに種類があるのなら既にいくつも所持しているかもしれない」

 

 

 あァ……確かにな。

 

 

「例えばワイン好きのひとにワインを渡したとして……中途半端な物を渡しても苦笑物でしょう?」

 

 

「簡単に言えば本好きに本を渡すのは難しい、ということですわね」

 

 

 副部長さん分かりやすいな!

 オチをとられて部長さんは若干不服そうだが、貴女の説明も充分に分かりやすかったです。

 

 

「――けどそうなると……って最初っから相手の好みには合わせらんねェんだ」

 

 

「ならクロの趣味で選べば?」

 

 

「いいわね……やっぱりお菓子かしら」

 

 

「女性は甘い物が好きといいますし、よろしいのでは?」

 

 

 ここに来てポンポンと進んだ。

 確かにお菓子なら誰でも食べるし……最悪嫌いでもひとにあげるように勧めることもできる。いいかもしれない。

 

 

「確か今日の六時には歓迎会だろ? 今が昼過ぎだから……いや、厨房も既に使用中だったし、クオリティ的にも市販の物かな」

 

 

 流石に手作りってのはあれだし。

 一人頷く俺。

 

 

「それなら地下に行きましょうか」

 

 

 独り言を拾った部長さんはニッコリ笑うと、俺の腕を掴んでずんずんと歩き出した。そんな俺達の後ろをレンと副部長さんが雑談をしながら続いているのが分かる。

 場所は変わってデパートの地下。略してデパ地下。

 お菓子、料理、生物と色々な香りが混ざり合う不思議な空間である。

 

 

「これはベルギーチョコね」

 

 

 お菓子売り場にて部長さんは試食用のチョコを抓んだ。

 

 

「ベルギーってどこよ」

 

 

「あァー……西ヨーロッパ」

 

 

 俺とレンはそんなことを言いながらチョコに手を伸ばす。

 美味い。普通に美味い。素晴らしくまろやかだ。……確か最高級カカオを極細にして使うのがベルギー流だったな。

 本場の店や王室御用達の店とは比べものにならないだろうが、それでもこの美味しさ……やはり素人とは全然違うな。

 このプラリネは……アーモンドにヘーゼルナッツか。ポピュラーながらに良い出来だ。

 

 

「クロ真剣だなー」

 

 

「あれはお客の視点で考えてないわね」

 

 

「職人の視点、ですわね」

 

 

 っと、今日は一人じゃないんだし余り考え込むのもよくないな。

 ん? なんで三人揃って微笑ましいと言わんばかりの視線を向けてくるんだ。……そういや三人とも高三か。俺に対する視点は兄だったり姉だったりするのか……?

 部長さんと副部長さんに関しては今さらな気もするが、レンは……あァいや、お前そういや凜々蝶の兄貴分なんだっけか。

 迷惑とは思わないが、むず痒い。

 結局三人と相談しつつ、高すぎることもなく安すぎることもない、ぼちぼちの値段の物を購入。

 

 

「――あら、それじゃあこの子は歓迎会をサボったの?」

 

 

「まぁ他の新人と一緒にする歓迎会だったから、問題ないと言えばなかったけどね」

 

 

 時刻はおやつ時。

 俺達は喫茶店にて一息吐いていた。

 隣に座るレンは目を瞑りながらグラスを仰ぎ、部長さんは俺を意外そうに見た。

 

 

「そういうイベントは好きそうですが……」

 

 

 部長さんの横の副部長さんも同じで意外そうである。

 

 

「……入学式の日だったんだけど」

 

 

「ああ、それで……って貴方、その日は明るいうちにこっちに着いていたのでしょう?」

 

 

 なんで知ってるんだ部長さん。俺は話してないし……あァ、小猫に聞いたのか。

 確かに俺は入学式にこそ間に合わなかったが、駒王町には昼のうちに到着していた。

 

 

「歓迎会があるなんて知らなかったからさ……」

 

 

「遠い目をしてるけどあれだろ? 隣町の喫茶店で閉店時間まで食べてたんだろ?」

 

 

 ちなみにレン達はそのことを知っている。

 俺が新天地でお世話になるであろう人達にお土産にと、その喫茶店……翠屋で多くのお菓子を買っていったから。

 あの時は結局店長さんが車を出してくれたんだよなァ……。

 

 

「美味かったろ、翠屋」

 

 

「凄く」

 

 

 レンは即答してくれた。

 話題を逸らした俺を見て部長さんは溜め息。

 

 

「けど……確かに美味しいわよね、翠屋は」

 

 

「涼夜君にお土産を貰った週の休日に早速向かうくらいですものね」

 

 

 それは俺がオカ研に入部してすぐの頃の話か。

 

 

「あっ、あれはソーナが食べてみたいって言うから!」

 

 

「それだけ美味しかったと伝えたのでしょう?」

 

 

 副部長さんノリノリである。

 そんなに恥ずかしいことだとは思わないが、部長さんにとっては違うらしい。頬が熱を持っているのが一目でわかる。

 はしたない! とか、食い意地を張ってるみたい! とか思ってるのだろうか。

 

 

「意地が悪いわ……」

 

 

 うぅ、と落ち込む部長さん。

 

 

「リアスが可愛くて……つい」

 

 

 そんな部長さんを見てお茶目に笑う副部長さん、絶好調である。

 

 

「そんな落ち込むことじゃないと思うけどなー」

 

 

 レンは脳天気だな。

 だがそんなレンに副部長さんは「ふふ」と笑った。

 

 

「残念ながらハズレですわ」

 

 

 ハズレ? とレン、そして俺はオウム返しをする。

 どういうことだ? 多分俺とレンの考えは似通っているようだし、イコール俺もハズレってことだよな。

 副部長さんは俺の反応に「やっぱり」とでも言いたげだ。

 

 

「リアスは涼夜君……それから今はいない小猫ちゃんには姉として振る舞っていたいのです」

 

 

「朱乃!? 大体それは貴女も同じでしょう!?」

 

 

 何を言い出すの!? と部長さんが慌てふためくが、副部長さんはいつも通りの笑みである。

 いやそれもそんな慌てるようなことなのか? 俺としては親身に思ってもらえて結構嬉しいんだけども。きっと小猫もそうだ。

 まぁまぁいいじゃない、と部長さんを宥める副部長さん。

 

 

「それにそんなことで幻滅されるような子じゃないでしょう?」

 

 

「そ、それは分かっているわ……ただ……情けないじゃないの」

 

 

 部長さんがチラリと俺を見る。目が合う。

 その目は少し潤んでいる。……こういう反応を部長さんが俺にするのは初めてである。

 新鮮さを感じながら俺は首を傾げた。

 

 

「……っ」

 

 

「……!」

 

 

 ……いや何で部長さん達が衝撃を受けたような反応をするんだよ。しかも副部長さんまで顔が赤くなったぞ。

 話の続きは? そんな意味で傾げたのに、これじゃあ傾げ損じゃないか。

 

 

「クロってさー」

 

 

「んん?」

 

 

 なんだよ、レン? 真面目な声音しちゃってさ。

 

 

「たまにあざといよな」

 

 

 あざとっ!? あざとい!? 俺が!?

 こっちまで照れちゃうわー、とレンはクネクネと気持ちの悪い動きをする。

 だが俺はツッコむ余裕がない。

 だってあざといってなんだよ……! 生涯初だぞ、言われるの!!

 

 

「俺が、あざとい……? 俺がアザトース!?」

 

 

「いえ、アザトースではないわ」

 

 

 こちらの様子に冷静になったのか、部長さんが俺の言葉に綺麗にツッコむ。

 どうしてラヴクラフトの邪神が出てくるの、と部長さんが未だに赤い顔で呆れているようだが……待て俺。冷静になるんだ……!

 

 

「――俺は……あざ、とい……ですか?」

 

 

 どうにか口から捻り出したのはそんな言葉だった。

 俺にとっては重要な質問だ。だって俺の憧れているひと達は、そういうタイプじゃないんだから。

 

 

「そんなに苦悶するのか」

 

 

 レンの呟きが耳に届くが、俺はただテーブルに突っ伏すしかない。

 頭の隅で素数を数えながら三人……特に女性二人の意見を待つ。

 

 

「……安心しなさい。普段はどちらかと言うとカッコイイから」

 

 

「そうですわね……それにたまに見せるあざとい言動では小猫ちゃんの方が上ですわよ?」

 

 

 本当ですか、部長さん。

 そして副部長さん、小猫と比べられても……。

 

 

「確かに小猫も凄いわね……。でも実際はあざといと言うより、何かしら? ギャップがある? とでも言うのかしら?」

 

 

「戦闘中はかっこよく、普段は親しみやすい。けれどたまに見せる可愛らしい動き……ですわね」

 

 

「ギャップ萌えかー」

 

 

「それね」

 

 

「それですわね」

 

 

 レンに満場一致だった。

 ギャップ萌え。

 ……ギャップ萌か。

 つまり意外性ってこと、か? それならあざといよりは……マシ……か?

 少なくともあざといよりは男にも使われている感じはあるけども。

 あァでも普段スケベなイッセー先輩がいざって時には頼りになるのと同じ感覚か。

 

 

「……妥協した」

 

 

 突っ伏したまま首を横に動かすと、三人の顔が窺えた。

 それは良かったと口々に言う三人。

 そのまま適当に雑談をしていた俺達だったが、時刻が十七時を回ったので解散することになる。

 俺達とレン、そして部長さん副部長さんが各々の帰路に着いたのだが、

 

 

「私思うの……最後の涼夜も可愛かったって」

 

 

「あれもあざ……ギャップ萌えだったものねぇ」

 

 

 後者二人組が顔を綻ばせながらそんな会話をしていたのを知るのは……かなり後になってからだった。




Q.涼夜のキャラがぶれてる?
A.ダンテやバージルの影響を受けた涼夜の、非常に素に近いテンションです。
彼にもカッコ付けて師匠の真似をしていた時期もあるので、少なくとも入学当初と数ヶ月が経った現段階ではテンションに差異がある……のかも。

次話は歓迎会!
一体誰が来るんだろうなー(棒読み)。

16/06/05 投稿
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