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俺の作ったチョコレートケーキと副部長の淹れてくれた紅茶をお供に、話がどんどん進んで行く。
兵藤先輩にしたら悪魔やら堕天使やらの話は
ただ皮肉なことに、彼は堕天使と実際に会い、命を奪われている。
そのせいで本能的に真実だと察しているところに、部長さんが悪魔の翼を見せ、納得するしかないような状況を作っていた。
まァ……信じてもらえなかったら兵藤先輩自身にも危険があるし、部長さんも
堕天使によって奪われたの命を、
正確に言うのなら二度目の生を得た、か。ただし悪魔になってしまったが。
部長さんの
眷属になった……つまり兵藤先輩は部長さんの身内になったということ。
その説明が終わり、今度はどうして兵藤先輩が命を狙われたのか。
「
兵藤先輩が部長さんの言葉を繰り返すように呟いた。
聞き覚えがあるみたいだ。
「
「今も世界的に活躍する方々がいらっしゃるでしょう? その方々の多くが
木場先輩に続き副部長さんが説明する。
“聖書の神”が作ったシステムで不可思議な能力を所持者へ与えてくれる。
与えられる能力は様々で、先天的に
「……ん?」
袖を引っ張られ、視線を向けると……小猫。
「おかわり」
「あァ、はい」
小皿を受け取り、ケーキを切り分けて乗せる。
大事な話の最中に、と思わないこともない。
が、説明だけなら部長さんだけでも充分なのだ。
しかも今回の件については既に聞き及んでいるから、わざわざ話を聞いている必要も無い。何かあれば向こうから振ってくるだろうしな。
「五十五点」
「……精進します」
小猫の言う点数はケーキの点数である。
採点基準は味は勿論、形や香り、その他いくつかあるらしい。
先日の「美味しい」という評価はあくまで食べられるレベルになったということなんだそうだ。
ちなみに採点は結構手厳しい。
作ったもの、作った日によって点数は上下するが、今日のケーキの点数は高い方だと言える。
「そういや最初に美味しいって言ってくれたのは何点だったんだ?」
「知らない方がいい」
……泣いた。
うお!? なんか光った!?
「「……うわぁ」」
光源の正体は兵藤先輩だった。
なんか開いた両手を上下に合わせて前へ突き出している。
ついドン引いてしまった俺と小猫は悪くない。
「そ、そんな目で俺を見ないでっ!!」
兵藤先輩が叫くが、その間も光は輝き、その輝きは形を成していく。
その光が消えたとき、先輩の左腕は赤色の籠手が覆っていた。
「あ、な、なんじゃこりゃああああああああああ!!」
叫ぶ兵藤先輩。
凄く驚いている。
俺も驚いている。
「どうしたんですか?」
「あ? あァ、いや……」
あの腕、
いや、この力の感じはどっちかって言うとあの戦闘狂に近い、か? だとしたら兵藤先輩の
「貴方は
ま、いずれ判るか。
にしても……部長さんはハッキリ言うね。
「瀕死のなか、貴方は私を呼んだのよ」
取り出したのは“あなたの願いを叶えます!”と胡散臭いうたい文句の書かれたチラシ。
胡散臭いなどと言ってしまったが、チラシ自体はちゃんとした物で、持ち主の願いに反応して悪魔を呼び出せる簡易用の召喚魔法陣なのだ。
「そうして私はイッセーを救った……さっきまでの話に繋がるというわけよ」
自分の胸を押さえるようにする兵藤先輩。
悪魔の翼を展開する部長さん達悪魔陣。
それに釣られるように兵藤先輩からも翼が生えた。
その翼を恐る恐る確認して、兵藤先輩は辺りを見回した。
「……ってあれ? 黒上は?」
目をパチクリさせて俺を見る兵藤先輩。
「俺は人間だから翼は出ないよ」
今は。
「へっ?」
まァこの部屋にいる俺以外が悪魔なんだから、俺が異端なんだろうな。
呆けた声を上げた兵藤先輩に、部長さんが苦笑浮かべて説明に入った。
「涼夜は人間だけど、悪魔の力を持っているの」
「そ、そんな人間がいるんですか!?」
いるんですよー。
実は俺以外にも結構いるし。
師匠とか師匠の兄貴とかな。
「涼夜のような人間は稀にいるのよ。魔人という単語に聞き覚えはあるかしら?」
「ゲ、ゲームとかでなら……」
あァ、ちょくちょく出てくるよね。
ゲームとか漫画とかでも。
「涼夜はその魔人なの」
「姿と力を変えられるんですのよ?」
俺は一度だけオカ研のメンバーに魔人化を見せている。
レベルは一番下のものだが。
仮にも切り札なので、それ以上のものを見せるのは気が引けた。というかアレは魔力やら見た目やらが凶悪過ぎて人前で簡単に使いたくない。
「見せてあげたらどうだい?」
「えー?」
俺が嫌そうな顔をすると、木場先輩は苦笑を浮かべた。
「なっ、ケチケチすんなよ! 減るもんじゃないんだろ?」
「減るよ。魔力と体力が」
魔人化は大きく俺の戦力をハネ上げる。
その分、莫迦みたいに魔力と体力が持ってかれるのだ。しかも時間で解けてしまうので、使い所は考えなくてはならない。
「それに時間が……」
左手の黒い腕時計を見ると、もう十八時半になる。
人間の俺としては帰りたい。
「……そうね。他にも話したいことがあるのだけれど、それも機会はあるでしょうし……今日はもう解散しましょうか」
「う……わかりました」
部長さんに言われ兵藤先輩も納得してくれた。
皆で鞄を持って部室を後にし、適当に雑談をしながら校舎を出る。
一緒に歩いていた面々も徐々に別れていき、最終的に俺と小猫が残される。
「じゃあまた」
「はい、また」
分かれ道で挨拶を交わしたところで、辺りを妙な気配が包み込んだ。
人の気配も消え、近くには俺と小猫の二人だけしかいない。
「結界ですか?」
「みたいだねェ」
やれやれと思いながら、結界を張ったであろう奴の気配を探る。
「あっち」
小猫が腕を伸ばして指をさす。
あァ、本当だ。
「堕天使か」
言うや否や、黒い影が俺達の目の前の電柱の上に降り立った。
漆黒の翼にスーツを着ている男。
「これはこれは。昨日の今日で数奇なものだ。悪魔の女と人間の男か……小娘の方はグレモリー眷属か? 小僧、貴様誑かされたか」
なんで俺が誑かされたっていうのは確定的な言い方なんだ。
腹立つ。
「どうすんの?」「部長を呼びますか?」
……被った。
「さて、昨日の小僧を探していたわけだが……これはこれで面白そうだ」
あァん? やっぱりこいつが兵藤先輩を襲った堕天使か。
今日聞いた話的にそうだろうとは思ってたが……グレモリーの眷属だと判っててちょっかいを出すなんて
な。無駄に自信家なのか? なんにしても頭の悪い奴だ。
「俺が落として翼も駄目にするから……意識狩れるか?」
「了解」
小猫と僅かな会話をしていると「ん?」と堕天使が首を傾げた。
そして俺は駆け上がる。
電柱を。
「なあっ!?」
「
一瞬で距離を詰めると、驚愕の声を上げる堕天使。
俺はその頭上に蹴りを打ち込んだ。
「ガアッ!?」
悲鳴が上がり、
「アアアアアアアアアアアアアアア!?」
「
弾丸に撃ち抜かれた衝撃で回転する堕天使の体。
その芯を捉えて、小猫は踵落としをかました。
冗談抜きでドゴォン!! という轟音が響き、堕天使の体はコンクリートの道路にめり込んだ。
……ほとんど一瞬で終わってしまった。
「
着地した俺は舞っている土埃を手で払いながら問いかける。
「……ギリギリで」
良かった。
どう考えても
「その銃は?」
ん?
あァ、魔人化は話したけど、こっちの話はしてなかったな。
俺は両手に持っている銀と黒の大ぶりなハンドガンをクルクルと回す。
「魔人化は燃費が悪い。だから」
二丁の銃が小さく輝き、俺の左腕の手首に光の粒子が集まり――形を作った。
「腕時計……ですか?」
そう。
黒い腕時計である。
「
再びさっきの二丁拳銃にして見せる。
「シルバーに黒の装飾を施されてるのが
すると小猫が不思議そうな顔をした。
「なんで二つ合わせると英語でダブルなんですか?」
あァ、ヴァイスもシュヴァルツもドイツ語だもんな。
「んーとな。この武器自体が“WXYZ”で“ゴースト”って言うんだけど、ゴーストのWモードが二丁拳銃、XやYは他の武器って具合なんだ」
「……Wと二つのdoubleをかけてる、と」
まァそう言うこと、と頷き、俺は動かない堕天使を足で突く。
こりゃ軽く一日二日は目覚めることはなさそうである。
結界は張り直したし、部長待ちだな。
「で、連絡は?」
「今さっき」
するとちょうど小猫のすぐ近くに紅い魔法陣が浮かび上がった。
どうやらこの地の管理者の登場のようだ。
◇
はい、涼夜の力に関する情報が出ました。
初戦闘と相まって、気が付く人は気が付くであろう涼夜を拾った男。
詳しく言うのなら拾って鍛えた男ですね。
それは今後、割とすぐにハッキリする方向で進みます。
が、初戦闘ですよ。初戦闘。
やはり描写が難しいですね。……短かったわけですが。
精進します。