宿した者(仮)   作:雲丹

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ナイトウォッチ

◇

 

 

 

 

 

「全くなにをしているのかしら……」

 

 

 部長さんが呆れたように頭を抱える。

 

 

「正当防衛だよな?」

 

 

「はい、正当防衛です」

 

 

 先に仕掛けてきたのは相手の方だし……あれ? 俺らって別に直接攻撃されてない? あァでも兵藤先輩を狙ってる的なこと言ってたし、問題ないか。

 

 

「はぁ……まぁ怪我がないようで良かったわ」

 

 

 あれからすぐに部長さんの家に連行されて、事情を説明することになった。勿論、堕天使も一緒だ。

 その堕天使、現在は部長さんの家の地下に投獄されている。比喩ではない。

 当然だがただの牢獄ではなく、外部との繋がりを断つ結界の張られた牢だ。

 破壊することも可能だが、あの堕天使には無理だろう。弱すぎる。

 

 

「余裕でした」

 

 

「ありゃ下の中、良くて下の上だろ」

 

 

 大方グレモリー家の眷属悪魔(兵藤先輩)をボコッて、調子に乗ったんだろうな。

 グレモリーという名前は有名所だし。

 

 

「あの堕天使……名前は……ドーナシークといったかしら? 彼には目覚め次第色々と教えて貰うわ。……朱乃に声をかけようかしら」

 

 

 副部長? なんでここで副部長の名前が出てくるんだ? なに、あの人って拷問のスペシャリストかなんかなのか?

 不意に副部長が笑顔で嬲ってる姿が思い浮かんだ。……超恐い。

 

 

「とにかく、二人はお疲れ様。お手柄よ」

 

 

 ご褒美は何がいいかしらね、と嬉しそうに呟く部長。

 

 

「「甘味を所望します」」

 

 

 それに俺と小猫は間髪入れずに答えた。

 

 

「あ、でも俺今日の晩飯まだだ」

 

 

 空腹を感じて思い出した。

 なんだかんだでもう二十時に近い。

 

 

「あら、それならうちで食べていく? というか二人とも泊まっていかない?」

 

 

「ごはんは是非いただきたい」

 

 

 後者の方は遠慮します。

 いや本当に夕飯は頂きたい。今から作る……あァいや、作るっていうほど大したものじゃないけど。用意するのは面倒だ。

 

 

「恥ずかしがり屋ね。……小猫はどう?」

 

 

「いただきます」

 

 

「泊まって?」

 

 

「いきます」

 

 

 ポンポン進んで決まったな。

 まァ小猫がいつから部長の眷属なのか知らないが、このやりとりを見ると結構長いみたいだ。

 部長や副部長からしたら小猫は妹的な感じなのかな?

 

 

「涼夜は本当に泊まっていかないの?」

 

 

「は? いや服とかないし。明日も学校だし」

 

 

 大体女の子二人のいる家に男一人とかなんだよ。居づらくてしょうがないだろ。

 結局、夕食を頂いてから俺は帰宅することになった。

 なんか最後の方の部長が大分力業で俺を泊めようとしてきて困ったが、ぶっちゃけ俺が全力で逃げれば捕まることはない。

 あ、夕飯は凄く美味しかったです。

 家が豪華だからか、夕食も豪華で。

 ただ毎日食べたいとは思わないなァ……。

 明日の夜はピザを食べよう。

 海外(むこう)で食べる機会が多かったせいで、ピザは好きになったのだ。ちょくちょく食べたくなる。

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

 俺と小猫が堕天使を捕縛して二日。

 件の堕天使は未だに目覚めないらしい。……やっぱやり過ぎだったか。

 

 

「んー? そろそろか」

 

 

 時刻は二十三時、俺はギターケースを片手に自宅のマンションを出る。

 今夜は兵藤先輩に悪魔の戦いを見せる日だ。

 他の説明はもう大体終わっている。

 兵藤先輩は“ハーレム王”を目指すのだそうだ。

 具体的に言うのなら爵位を得、眷属を持ち……その眷属を女の子で固めるという、その、なんというか不純な、良く言うのなら男らしい夢を抱いていた。

 

 

「――で、調子はどうなの?」

 

 

 校門の前でオカ研の面々と合流し、討伐の依頼が入った“はぐれ悪魔”の元を目指す中、なんとなしに兵藤先輩に声をかけてみた。

 

 

「あ? ああー……契約は全然……だけど、悪くはない……と思う」

 

 

 一応、部長と話が終わったところで聞いてみたんだが、女性陣と会話していた時とは比べるもなく対応が雑だ。

 まァ聞いておきながらも別段興味は薄かったので、俺も「ふーん」とだけ返す。

 

 

「……血の臭い」

 

 

 小猫が呟き、制服の袖で鼻を覆った。

 辺りに音はなく、背の高い草木が生い茂っている。

 遠目に廃屋が見えるし、十中八九そこだろう。

 

 

「臭いなァ、もう……」

 

 

「黒上も鼻がいいのか?」

 

 

「あー……かも」

 

 

 兵藤先輩に問われた。んー? 嫌われてるわけじゃないのか。

 しかし本当に匂う。

 

 

「これ、殺されたの一人や二人じゃないねェ……それに悪魔の臭いもあるし」

 

 

 俺の呟きを拾って木場先輩が口を開く。

 

 

「討伐の依頼があったのははぐれの悪魔だよ?」

 

 

 あァ? ……そういや言い方が違うのか。

 

 

「……そっか。じゃあアレだ。魔物」

 

 

 なんとなしに言った一言に、先頭を歩いていた部長と副部長が振り返った。

 

 

「今のは本当?」

 

 

 部長が目つきを鋭くさせて俺を見る。

 

 

「どうせコバンザメみたいな連中だとは思うけど」

 

 

 はぐれ悪魔……バイサーだったか? 奴が喰らった屍肉の一部を分けて貰ってるんだろうよ。

 

 

「ま、そっちは俺が掃除しておくさ」

 

 

 慣れてるからな、と続けると部長の目が俺を捉え……溜め息。

 

 

「危険だと判断したら加勢するわ」

 

 

 俺の力を一部とはいえ知っている部長さん。

 彼女にしてみれば妥当な判断なのだろう。……実際は的外れもいいところだが。

 

 

「あ、あの……魔物って……?」

 

 

 知識が無く、置いてけぼりだった兵藤先輩が恐る恐る割って入った。

 

 

「魔物というのは……そうですわね。イッセー君はゲームをする方なのですよね?」

 

 

「あ、はい」

 

 

 副部長の問いに素直に頷いた兵藤先輩。

 

 

「そういった作品に出てくる異形の悪魔、それを私達は魔物と呼んでいますの」

 

 

「基本的に理性はないから、はぐれよりもよっぽど獣に近いわね」

 

 

 部長の補足も入って納得したようである。……少し違うが。中級上級の奴らなら喋れる奴も意外といるからな。

 そしてそのまま悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の説明に入った。

 爵位を持った悪魔はチェスの特性を下僕悪魔……眷属悪魔に取り入れたとか、そういうお話。

 まァ俺には関係のない話だ。

 

 

「部長、俺の駒ってなんなんですか?」

 

 

「そうね――イッセーは」

 

 

 そこまで言って、部長さんは言葉を止めた。

 廃屋に入って、敵意と殺気が濃くなったからだ。

 

 

「不味そうな臭いがすろぞ? でも美味そうな臭いもするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?」

 

 

 地の底から聞こえるような低い声音。

 チラッと兵藤先輩を見ると、顔に恐怖がありありと浮かんでいる。

 

 

「貴方を消滅しに来たわ、はぐれ悪魔バイサー」

 

 

 部長さんが臆せずにはっきり言うと、バイサーはケタケタと笑い始めた。

 異様な笑い声を響かせながら姿を現したのは上半身裸の女性。

 しかしその体は宙に浮いていた。

 

 

「あらら、自分の体を餌にするタイプか」

 

 

 多いよね、そういう悪魔。

 バエルとかダゴンとか。まァあいつらは疑似餌だけど。

 バイサーは女の体の上半身に……巨大な獣の下半身を持っている、例えるのならケンタウロスのような感じだ。

 その周りをわちゃわちゃしているのは、布きれを縫い合わせたような“かかし”のような……悪魔。

 

 

「なーんでスケアクロウがこんな所に出るんだ」

 

 

「スケアクロウ? あの周りの魔物かい?」

 

 

 木場先輩に頷く。

 

 

「雑魚だけど、見ての通り数が多い」

 

 

 手か足に付いた巨大な刃物をガシャガシャと鳴らしたり、幽鬼のようにゆらゆら揺れているスケアクロウ。

 非常にカラフルで、一見するとサーカスのピエロのように見える悪魔……あァいや、魔物はザッと見三十。

 

 

「涼夜、流石に数が……って何をしているのかしら?」

 

 

 ギターケースを床に置いた俺を、部長さんが訝しげに見た。

 俺は「ん」と中から両刃の長剣を出して見せた。

 

 

「まさか……魔剣ですか?」

 

 

 帯電しているようにも見える剣を見て副部長が目を見開いた。木場先輩もだ。

 

 

「師匠から預けらた武器の一つでな」

 

 

 右手で軽く振り回してみる。……うん、いい感じだ。

 

 

「じゃ、手はず通りに」

 

 

 え? と抜けた声を上げた部長を無視して、俺はスケアクロウの群れに跳び、重力のままに一体を頭から切断してやった。

 

 

「Shall we dance(踊ろうか)?」

 

 

 俺は魔剣――アラストルを床に突き刺し、左手でショットガンを構えた。

 

 

 

 

◇




スケアクロウとアラストルを出しました。
はい。
DMCです。
デビルメイクライです。
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