宿した者(仮)   作:雲丹

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AS ONE

 

 

 

 

 

 WXYZ(ゴースト)をショットガンの形にして、近くにいたスケアクロウ数体に向けて発砲する。

 撃ち出された弾丸は大きく弾け飛び、被弾したスケアクロウは壁に吹っ飛んだ。

 

 

「っ、祐斗!!」

 

 

「はい!!」

 

 

 後ろでそんな声が聞こえたが、俺は気にすることもなく戦闘を続ける。

 バイサーの槍が迫って来たのが見えたが、俺は軽く跳び回避。その際にこちらに跳んできたスケアクロウ四体をアラストルで斬り払う。

 

 

「ぎゃああああああああああああっ!!」

 

 

 お? 木場先輩がバイサーの両腕を西洋剣で切断してる。

 思ってたより速いな、流石はスピード特化の騎士(ナイト)だ。

 それに、

 

 

「ありゃ魔剣か?」

 

 

「祐斗先輩は神器(セイクリッド・ギア)持ち」

 

 

「なるほど」

 

 

 小猫に背中を合わせ、両手を左右に開いて二丁拳銃(Wゴースト)を連射する。

 

 

「小虫めええええええええええええ!!」

 

 

 足下が陰り、バイサーの巨大な足が俺達に落とされたが……小猫が受け止めてくれた。

 小猫は部長の戦車(ルーク)

 その特性は単純に肉体強化、と言ったところか。防御力と攻撃力の強化だ。

 ヒュー♪ と口笛を吹き、床に刺しておいたアラストルを引き抜き駆ける。

 

 

「――全員下がりなさい!!」

 

 

 んん?

 アラストルを振り回していると部長さんの声が響いた。ちょうどバイサーが小猫に吹っ飛ばされた後だ。

 どうやら副部長が魔法を使うっぽい。

 前線に出ていた三人が距離を取る。

 その際にスケアクロウを蹴るなり、撃つなりしてバイサーの近くに寄せておくのを忘れない。さり気なく小猫が結構飛ばしてて笑った。

 

 

「いきますわよ?」

 

 

 副部長が上に手をかざした刹那、上空が光り輝き、雷が落ちた。

 そして鳴動するように俺の右手のアラストルが震える。

 ……やれってか?

 ハッ、しゃあねーなァ。

 

 

Eat this(くらえ)

 

 

 アラストルを大きく薙ぎ払い、俺も雷の波を飛ばす。

 その雷は副部長のソレと混ざり合い、閃光と共に辺りに炸裂した。

 

 

Too easy(チョロいな)

 

 

 スケアクロウ達が消し飛び、バイサーが動かなくなったのを確認。

 俺はアラストルを右手でぶんぶんと振り回し、左手のショットガン(Xゴースト)を肩に掲げながらオカ研部員の方に向かう。

 あれ? なんでそんなに俺を見てるの?

 

 

「えーっと、涼夜?」

 

 

 はい?

 返事をすると部長が怖ず怖ずと口を開く。

 

 

「今のは何かしら……?」

 

 

「アラストルは雷の魔剣だからな。副部長の魔法に触発されたみたいでさ」

 

 

 副部長が雷を落としたときに震えていた理由はそれだ。

 まァこれくらいなら可愛いもんだ。

 

 

「それが結果として、私の雷と混じり合って力が増幅されましたのね」

 

 

「だろうな」

 

 

 片手で取り回しが出来るように、小柄な設計となっているショットガン(Xゴースト)。副部長にそう答えながら、そいつを左手でクルクルと弄ぶ。

 

 

「……想像以上ね」

 

 

 呆れと驚きを含んだ声音で呟き、部長さんはドス黒い魔力の塊を撃ち出す。

 その魔力がバイサーを包み込み、消えた時にはバイサーの肉体も消滅していた。

 

 

「おわりね。皆、ご苦労様」

 

 

 部長さんのその一言で、空気がいつものものに戻る。

 俺はギターケースにアラストルを仕舞い、ゴーストを腕時計にして辺りを見回す。

 悪魔……じゃない。魔物の気配はない。

 残ったのはスケアクロウのボロ布と、脚部などに使われていた家具の足だけだ。

 俺達は魔物も悪魔と呼んでるけど、悪魔からしたら魔物と呼ぶのが通例なんだよな……気を付けないと。

 

 

「さっきの剣、アラストルだったかい? 良かったらよく見せてくれないかな?」

 

 

 木場先輩に呼ばれ振り向くと、そんなことを言われた。

 

 

「いいけど、触んない方がいいぞ」

 

 

「どうしてだい?」

 

 

 首を傾げる先輩。

 イケメンは何をやっても絵になるな。

 

 

「アラストルは使用者を選ぶんだ」

 

 

「選ぶ?」

 

 

「俺の時は刺されたな、腹」

 

 

 サッと木場先輩の顔が青くなった。

 まァそうなるよな。でも師匠は心臓に刺されたらしいんだよね。

 

 

「まァ見るだけなら問題ないだろ」

 

 

「というかよく生きてましたね」

 

 

 ひどいな小猫。

 

 

「俺って再生能力とか高いんだよ」

 

 

 師匠も同じだ。

 ただ俺は心臓を刺されたことは流石にないので……どうなるんだろうなァ。

 気になりはするが、簡単に試せることでもない。

 アラストルを取り出し、床に突き刺す。

 まじまじとそれを見つめる木場先輩と小猫、副部長。

 

 

「部長、俺の駒ってなんなんですか?」

 

 

「ポーンよ。イッセーは兵士なの」

 

 

 後ろを見ると部長さんは微笑んでいるが、兵藤先輩の顔は引き攣っていた。

 兵士(ポーン)はチェスで一番多い駒。

 下っ端だとでも思ってるんだろうな。

 実際は重要なのに。

 それは何も悪魔の駒(イーヴィル・ピース)に限った話ではない。

 

 

「それで……涼夜」

 

 

 部長さんが俺を見る。

 

 

「魔物と戦い慣れてるみたいだけど……貴方“便利屋”って言ってなかった?」

 

 

「便利屋にも魔物を殺してくれって依頼は来るぞ?」

 

 

 首を傾げる。

 っていうか、ぶっちゃけ悪魔(魔物)を狩るのが仕事だったし。

 

 

「それに俺はただの人間じゃないからさ。ガキの頃から“そういう”のに巻き込まれてたし」

 

 

 なんとなしに言った俺の言葉に、兵藤先輩を除いた部員達がハッとなった。

 アラストルを見ていた部員もだ。

 

 

「……そう。変な事を聞いてごめんなさい」

 

 

「いえいえ」

 

 

 んん? なんか変な空気になったな。

 木場先輩達が満足したようだったのでアラストルを再び仕舞う。

 出したり仕舞ったり大変だ。

 

 

「……ありがとう、いい剣だね」

 

 

 どうも、と木場先輩に返してギターケースを背負う。

 兵藤先輩は……なんか難しい顔をしている。

 

 

「……十年? いや、もっとかかるか? ……ハーレムは遠いなぁ」

 

 

 ……どうでもいいことに頭を悩ませているようだ。

 

 

「あーあ、腹減った」

 

 

「ファミレスでパフェ?」

 

 

「お、いいねェ」

 

 

 流石は小猫、よく判っている。

 

 

「あらあら、この時間はワグナリアはやってませんよ?」

 

 

 副部長が楽しそうに混ざってきた。

 けどそうか。もう閉店か。

 ファミレスではワグナリアのパフェが美味しいんだけどなァ……。

 

 

「それに涼夜君はそろそろ眠いのでは?」

 

 

「それな」

 

 

 確かに日付はとっくに変わってしまっている。

 副部長は優しいなァ……でも俺は見たぞ。

 雷を落としたあの時、副部長は冷徹な嘲笑を浮かべていた。

 それは先日、部長さんの家で想像していたものと酷似していた。

 俺は確信したね。

 副部長は絶対にサディストだ。

 

 

「しっかし凄まじかった……」

 

 

 あァ本当に副部長は……?

 兵藤先輩の言葉に同意しかけたが……何がだ? 絶対に会話は噛み合ってない。

 

 

「黒上は魔人化ってのはしてないんだよな?」

 

 

「してないねェ」

 

 

 今夜のは一番下(クォーター)ですら使う必要ない、そういうレベルの敵だった。

 

 

「イッセーは本当に魔人化が見たいのね」

 

 

 クスクスと笑う部長さん。

 魔人化を見たがるね……兵藤先輩は少し勘違いしてそうだな。

 格好いいものだとでも思っていそうだ。

 

 

「ま、そのうちな」

 

 

 兵藤先輩は不満そうだが、俺もほいほいと使うつもりはないのだ。

 ……今日はこれで終わり、だな。

 

 

 

 

 

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