金の華   作:酒池肉林万歳

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6話・後

 夜の帝都アーウィンタールの皇城。そこを帝国最強の騎士の一角、レイナース・ロックブルズは歩く。

 長い金色の髪は後ろだけではなく、前に掛かり顔の右半分を覆い隠し、露わになっている部分からでも、彼女の顔立ちがとても美しいものであろうことが窺える。

 皇帝の住まう城であるからこそ、その警戒は厳重であるが、夜間という時間帯には警備の人員が少なくなってしまう事は避けられない。

 その中でレイナースは人気のない廊下へと足を踏み入れる。しかし、その目的は警邏ではない。

 帝国四騎士の一人である自分の役割は警備のためではなく、警護だ。そのため、今夜ここを歩いているのは偶然だった。

 人目が付かず、目立った気配も感じ取れない――――

 

「見ーつけたぁー」

 

 筈なのに、自分の耳元で誰かの声が響いた。

 聞いたことのないその声と突如として現れた気配にレイナースは咄嗟にその場を飛び去り、距離を取る。

 そこにいたのは黒髪黒目の美女だ。その姿を視認した瞬間、驚きと困惑が同時に生まれ、少し後に別の感情が生まれる。

「何――――」

 何者なのか、声を荒げて問おうとした瞬間に目の前の女性は口元に人差し指を当てる。

 静かに、という動作にレイナースは口を閉じる。そして、静かに問いかける。

「何者ですか?」

 皇城に招かれた客人の類という可能性もあったが、こんな夜中に自分に全く気取られる事なく、後ろから急に声を掛けるような人間は明らかに不審者の類だろう。だからこそ目の前の女性が何者であるのか、それを探るべくレイナースは対話を試みることを選択した。

 改めて目の前の女性を冷静に観察する。

 頭から獣の耳が生えており、腰の後ろ辺りには二本の尾があった。そして、何よりも際立っていたのはその容姿、それを認識すると自身の中にどす黒い感情が強くなる。

 かつての自分が持ち合わせていたものをさらに上回るほど、目の前の女性は美しかった。その事実にレイナースは嫉妬を覚える。

「ふふフフふ……」

 問いかけに答えることなく、目の前の女性は笑みを浮かべた。

 何が可笑しいのか。レイナースはその笑みに強い苛立ちを覚える。

 目の前の女性の美貌に嫉妬をしている自分に優越感を抱いているのか、そう考えるだけで、レイナースの表情は見る見るうちに歪んでいく。

 そして、その分だけ目の前の女性の笑みを深くなっていった。

「ああ、本当にいいですね。その表情」

「こちらの方は不愉快極まりないですが、それで貴女はどこの誰で、何故ここにいるのでしょうか?」

 辛うじて残っている理性がレイナースに言葉を紡がせた。

 対して、目の前の女性は余裕の態度で言う。

「何者であるのかは後に回すとして、ここにいる理由は貴女をスカウトするためです」

「スカウトですか、素性の知れない者においそれとついて行くような幼稚で愚かしい存在に見えますか?」

「その呪いを解いてあげますと言ったらどうします?」

 

 その言葉にレイナースの思考は完全に停止した。

 

 とあるモンスターを討伐した時にレイナースは呪いを受けた結果、髪で覆い隠している顔の部分は膿が滲み出る醜いものへと変貌してしまっている。

 今の今まで、この呪いを解くためにありとあらゆる手を尽くしてきた。しかし、どんな人物にも、どんなアイテムでも、呪いを解くことは出来なかった。

「…………質の悪い狂言ですわね。それこそ素性の知れない貴女を信用すると思いますか?」

 そう言葉を絞り出すレイナースに対して目の前の女性は余裕のある態度で言う。

「信用はしないでしょうね。ですが貴女はそれに一縷の望みに賭けている。でなければ、会話を切り上げて今すぐにでも私を排除していた筈です」

 図星だった。そのために目の前の女性との会話の目的を切り替えたうえで続けようという魂胆がレイナースの内に生まれている。

「スカウトとはいったいどの様な組織で、どの様な働きを望んでいるのですか?」

「どの様な組織なのかは私が何者であるかに関わるので、今は答えられません。働きについては一生を私に仕えて欲しいのです」

「仕えるとは……?」

 仕えると言ってもその意味合いは複数ある。今の自分の様に騎士として仕えるのか、はたまた使用人の様になのか、一番悪い意味だと奴隷当てはまるだろう。

「仕事の内容としては今よりは戦いに出る事が減り、事務的な仕事の管理を行ってもらうようになる、と言った具合ですね」

 内容だけ聞けば、今の仕事に比べて幾分も楽そうなものだった。

 だからこそ、レイナースは訝しむ。

 そんな楽な仕事で今の今まで誰にも解くことの出来なかった呪いというのはいくら何でも都合が良すぎた。加えて戦いに出る事が減るというものが疑念をさらに強める。帝国でも指折りの強さをもつ自分を勧誘するならば、むしろ逆に戦いに赴いてもらいそうなものだ。

 そんなレイナースの内心を察したのか、口を開く。

「そうですね。私が貴女を求める理由ですが、貴族としての教養と品格を兼ね備えて、身を守る術を得ているということが主な理由になります」

 確かにその条件に自分は当てはまるレイナースは納得するが、自身の強さは身を守るというには過剰なものだ。

 どうすべきか、レイナースは思い悩む。

 この話が全て真実なら、千載一遇の機会だ。一生の間にこんな機会は二度と巡ってこないだろう。それだけは断言できた。

 虚偽なら呪いはそのまま、今の地位を捨てざるを得ない。そうなれば呪いを解く常識的に考えれば、後者である可能性が高い。答えの出ない思考を巡らせる。

 そんなレイナースの姿を見て目の前の女性はあっけらかんと言う。

「では、呪いを解いてから進退を決めるというのはどうですか?」

「は――――?」

 女性の言葉をレイナースは理解出来なかった。

 それでは目の前の女性には益がない。呪いを解いたとしてもレイナースが勧誘を受けるとは限らないのだ。

 困惑しているレイナースに女性は言葉を続ける。

「呪いを解いたら勧誘を受ける。失敗したら貴女は好きに行動する。これでどうです?」

「私が約束を反故する可能性がありますわよ」

「貴女は約束を反故になんかしません」

 目の前の女性がそう言い切る姿にレイナースは底知れない何かを感じてしまう。

「この提案を受けるか否か、決めて下さい」

 呪いを解く振りをして自分に何かを仕掛けてくるという可能性もあった。しかし、答えは決まっている。

「呪いを解いてください」

 この忌々しい呪いを解くためならば、どんなことにでも手を染めると、そう決めたのだから。

「ええ、ええ、わかりました」

 そう言うと目の前の女性は何も空間に腕を沈み込ませた。そして、少しして腕を引き抜いた。

 その手の中にあったのは黄金の杯だった。

「さて、それでは姿勢を低くして顔の部分を見せてもらえますか?」

 レイナースは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべそうになるのを堪える。

 本来なら醜い部分の顔を露わにすることはレイナースにとって耐え難いものだったが、ここまで来て拒否するという選択はない。言われた通りに姿勢を低くして顔を覆っている前髪を除ける。

 その顔を見て目の前の女性は目を丸くする。

「醜いと聞いていましたが、なんというか普通ですね」

 これぐらいなら、どうとでもなるでしょう。そう何気なし言った。

 意味が分からなかった。この容姿を普通と言えることが、この呪いを大したことがないと言えることが、頭の中で様々な感情が渦巻く。そこから期待が形作られ、それは目の前の女性ならこの呪いを解くことができる確信へと変わる。

「それでは呪いを解くとしましょう」

 女性は杯をレイナースの顔の上まで持ってくると、その杯を傾ける。

 空の筈の杯から雫が垂れ、膿を出す顔へと落ちる。そして、レイナースの中で何か、癒えていくよう感覚が生まれる。

「はい、解けましたよ」

 レイナースに掛かっていた呪いは余りに呆気ないほど簡単に解けた。

 その事実を信じることが出来ずに呆ける。

「あー……そうですね。実際に鏡などを見なければ分かりませんよね。私が見せてもよいですけど、それでは信じられないでしょうから、鏡のあるところまで一緒に行きましょうか」

 目の前の女性が言っているが、耳に入っていないレイナースは呆然としたまま布を取り出すと自身の顔に押し付けると、それを離して確認する。

 何もなかった。それが当たり前だ。

 膿で汚れてなどもいなかった。それも当たり前だ。

「もしもし、大丈夫ですか?」

 レイナースの顔を女性が覗き込んでいた。

「――――ええ。大丈夫ですわ」

 女性の声かけでレイナースは我に返った。

「それは良かった。では鏡のある所まで移りましょうか」

「その必要はございません」

 そう言い切るレイナースに目の前の女性は首を傾げる。

「おや、自分の目でしっかりと確認しておかなくてよいのですか? 膿が出なくなっただけかもしれませんよ」

 女性の言う通り、余りにも都合の良い展開なのだから自身の目で確認すべきだった。それでも先程の自分の中で何かが癒えていく感覚を思い出してレイナースは理解した。

「目で見なくても分かりますわ。そして――――」

 呪いが解けたこと。自身が誰に仕えるべきか。

 

 ――――私の生涯を貴女に捧げることをここに誓います

 

 片膝をついて目の前の女性にそう告げた。

 帝国四騎士の自分だが、もはや帝国など最早どうでも良かった。元より忠誠心など薄かったが、この女性のためならば帝国をも売り渡すつもりだった。

 そんなレイナースの変わりように目の前の女性に微笑む。

「では早速、移動の準備を始めるとしましょう」

「移動の準備ですか?」

「ええ、私の拠点は帝国ではありませんから。貴女が私に仕えてくれるのでしたら、引っ越すために荷物をまとめる必要があります」

 

 

 

 その後、レイナースと黒髪の女性はレイナースの自宅に移動すると、荷物をまとめにかかった。

 国境を越えるのだから必要最低限の荷物だけを持ち出そうとしていたレイナースだったが、黒髪の女性はにこやかに「私の空間に幾らでも入れられますから、好きなだけ持ち出しましょう」と言って、様々な物を特殊な空間へと仕舞っていった。

 遠慮せずにどんどん持っていきましょう。とのことなので、レイナースも最低限という限定を外して必要な物だけを選んでいった。

 荷物を仕舞い終えると二人はレイナースの自宅の玄関扉の前にいた。

「さてさて、忘れている荷物はありませんね?」

「はい、大丈夫ですわ。お気遣い感謝致します」

 最早、後ろ髪を引かれる想いは毛ほども存在しなかった。

「では早速、移動するとしましょう」

 そう黒髪の女性はレイナースの肩の辺りには手を触れる。

 その妙な行為にレイナースはいったい何をしようとしているのか、そう思う間もなく――――

 

 ――目に映る光景が変わった。

 

「なっ――」

 突如として周囲の物がレイナースの自宅から別の家の物へと変わった。

 レイナースは一瞬で起きた出来事に混乱してしまうが、すぐに平静を取り戻す。この現象には心当たりがあった。

 空間転移だ。ただし、この魔法を扱える人間をレイナースは一人しか知らなかった。帝国最高、いや全魔法詠唱者(マジック・キャスター)の中で最高峰の実力を持つフールーダ・パラダインである。

 マジックアイテムという可能性もある。むしろ、普段ならばレイナースもそう判断しただろう。しかし、黒髪の女性が何か道具の様な物を用いているようには見られなかった。

 かの魔法詠唱者(マジック・キャスター)だとしても転移には時間がかかる。ならば目の前の女性はどれほどの存在なのかと改めて畏敬の念を抱く。

「ここはリ・エスティーゼ王国の私の邸宅です。空き部屋も沢山あるので好きに使ってください。後はそうですね…………。まずは応接間で自己紹介と参りましょうか」

 そう言うと黒髪の女性は歩き出し、レイナースはその後に続く。

 とある部屋の前まで来ると、扉を開けて中へと入っていく。

 そこは色とりどりの調度品に溢れていた。貴族でもあるレイナースだったが、どの品も目に触れる様な機会がない物ばかりであり、目移りをしてしまう。

「さあ、どうぞ掛けてください」

 ソファーに腰かけた黒髪の女性は対面のソファーを手で勧め、レイナースもソファーに腰を下ろす。

 そして、目の前の女性は何もない空間に腕を沈めると風変わりなティーポットとカップを取り出す。そのままティーポットを傾けると、何も入れていない筈にも拘らず、カップへとお茶が注がれていく。

 女性は茶托ごとカップを差し出し、もう一つのカップの様なものにお茶を注ぐ。

「まずは自己紹介から、私の表向きの名前はダリア・ディオナエアと言います。一応は商人として行動しています」

 ダリア・ディオナエア、聞き覚えの無い名前だった。商人と言う事と王国を拠点にしているとのことなので、知る機会がなかったのだろう。それよりも気になる事を言った。目の前の女性は表向きは、と言った。

「本当の名前はハミズ・ハナミといいます」

 こちらの方もレイナースに心当たりがなかった。

 魔法詠唱者(マジック・キャスター)としてもその名に覚えがなかった。世に潜んでいた者なのかとレイナースは推測した。

「さてと、どこから話しましょうか?

「まだ信頼は勝ち取れていないでしょうけど、差し支えなければハナミ様の目的を教えて頂けませんか」

 組織に入って間もないレイナースに全てを語ってくれるかは微妙なところだったが、目的を理解することができれば、そのためにどのように行動すれば良いのか、推察しながら会話を進める事ができる。

「ああ、いいですね。とても端的で良いです」

 レイナースは肩をすかし食らった。

 普通なら答えるのを渋りそうなものだったが、目の前の女性はそんなことを気に留めていないようだ。

 先もいった通り、レイナースは勧誘を受けてハミズに仕えることを誓ったが、ただそれだけだ。まだハミズのために、呪いを解いてもらったことへ報いる行動は何もしていないのだから、正直に答える必要はない。無論、これから語ることが全て真実であるとは限らないが、目の前の女性はそのような虚言を弄するようには思えなかった。

「私の目的はそうですね。どこから話すべきでしょうか……」

 ハミズは顎に手を当てて思考する。

 少しして顔を上げ、右手を胸に当て口を開く。

 

「私は国を創りたいのです」

 

「………………」

 ハミズの答えにレイナースは沈黙してしまう。

「……あの、それはどのような意味で?」

「そのままの意味です」

 自分の想像していたスケールの何倍も大きな話だった。途方もない話であり、馬鹿げた話でもあっただろう。しかし、自身の呪いを解いたマジックアイテムを所持し、空間転移を扱えるほどの魔法詠唱者(マジック・キャスター)ならそれが絵空事でもないのだろうが、レイナースは違和感を覚える。

「国が欲しいのでしたら、リ・エスティーゼ王国ではなくとも良いのでは?」

 先程、ハミズはリ・エスティーゼ王国の私の邸宅、と言っていた。そして、拠点であるとも、そこから推測するなら王位の簒奪、立身出世などを経ることで国を得ることが考えられる。それならば、バハルス帝国若しくはローブル聖王国辺りでも良い筈だ。

 ハミズはレイナースの疑問を察する。

「ああ、勘違いしているようですね」

 その答えにレイナースは眉をひそめる。いったい何を勘違いしているというのか――

「私は国を()()()()()のではないのです。国を()()()()のです」

 その言葉でレイナースも理解した。

 国家の支配ではなく、国家の創造。それがハミズの目的なのだ。

 ただ、それでも疑問は残る。

「それでしたら、なぜリ・エスティーゼ王国を拠点に? それこそ帝国や聖王国を拠点にしても良かったのでは」

「逆に問います。この国以外で国家の創造、建国と言い換えますが、それが出来るとお思いですか?」

 そう返されたハミズの問いにレイナースは即答する事が出来なかった。スケールが大きすぎる話に想像が及ばなかったのだ。

 ただ、自身の生まれ育った国ならば、ある程度の推測はできる。

「……確かに帝国は難しいですわね。現皇帝が国内部に新たな勢力が生まれることを良しとする筈がありませんわ」

 今のバハルス帝国は現皇帝によって封建国家から専制君主制になった国家である。つまり皇帝に権力を集中させ、他の勢力の存在を認めていないに等しい。

 そして、国境で区切られた今の世界で建国を行うというのは何処かの国の内部で新たな勢力として確立することだ。そんなことを現皇帝を認める筈がなかった。いや、どの国も認める筈はなかったが、帝国はその中でもそのような時流に敏感だと言えた。

「ですが、聖王国はどうですか? あそこは――――」

 そう言いかけてレイナースの口は止まった。

 それを見てハミズも頷く。

「理解していただいたようですね。確かにあそこは南北に勢力がわかれているため、足の引っ張り合いなどを利用することで、建国を有利に進められるでしょう。ですが、建国を進めたとして、何か旨味がありますか?」

 何もない。特に致命的だったのがアベリオン丘陵の存在だ。アベリオン丘陵は聖王国に隣接する多くの亜人が住まう地域で、聖王国は常にこの地域から来る亜人たちの脅威に晒されていた。

 同じ理由で竜王国も除外される。竜王国は聖王国以上に亜人による脅威に晒されており、ビーストマンの侵略を受けていた。

「法国と評議国も帝国と同じような理由で除外されますわね」

 近隣諸国で最大の国力を誇るとされるスレイン法国では監視の目も厳しい事が予測される。

 アーグランド評議国はドラゴンが治める国であり、ドラゴン自体が強大な存在であることに加えて、人間の割合が少ないとの噂なので、行動を起こすには厳しい制限があるだろう。

 そして残るは王国、ここは最早メリットしかなかった。

 肥沃な大地に、有り余る国土から他種族の脅威に晒されない土地を選ぶこともできる。封建国家であり、王族と貴族だけではなく、貴族同士でも権力争いに身を投じており、暗躍するのであればこれほど適した国家もないだろう。

「まあ、帝国を拠点にして王国で建国を行うという選択肢あった――というよりも今もあるのですが、如何せん効率が悪いのですよねぇ…………」

 ハミズはそう不満気に呟いた。

 唯一、王国を拠点にしたところにデメリットがあったとすれば、やはりそれは人材不足という一転に限るだろう。だが、帝国を拠点にしていたとして、人材を得るたびに王国に送り込まないという手間があるうえに八本指の件しかり、ハミズ自らが直接手を下す必要のある行動の度に足を運ぶという手間もある。

 財力、兵力、権力、他にも課題は多いが、何よりも必要があった。

「効率が良かろうと悪かろうと、途方もない時間が掛かりますわよ」

 そう何においても時間という存在はついて回る。

 だが、ハミズは気にもしていなかった。

「何百年掛かっても、別に構いませんよ。幸いにも私には時間が有り余っていますから」

 ハミズの種族ついては把握はしていないレイナースだったが、獣の耳と二本の尾からハミズがエルフのような長命な種族なのだろうと考えた。

「なぜ――」

 だからこそ、レイナースは気になってしょうがなかった。

「貴女は何故そうまでして国を創りたいのですか?」

 それがレイナースには未だ理解できていなかった。

 王になりたいのなら、建国よりも何かしらの手段で国家の支配を試みた方が何倍も簡単だろう。しかし、ハミズは国を創ることに拘っている。それには何か訳がある筈だ。

 レイナースの問いにハミズは肘をつき、どうでもよさそうに口を開く。

「別に強い拘りはありません。建国というのはただの手段に過ぎませんから」

「…………はい?」

 理解の及ばないことを立て続けに耳にしたレイナースだったが、ここに至って一番理解不能の言葉を聞いた。しかし、ハミズは言葉を続ける。

「正味な話、建国でなくともよいのです。私の夢を叶える手段は他にもあるのですから」

 ここにきて新しい単語が出てきた。夢、それがハミズの最終的な目的であり、建国というのは過程にすぎないのだとレイナースは理解した。

「ハナミ様の仰る夢とはいったい、何なのでしょうか」

 ハミズは不敵な笑みを浮かべて答える。

「これ以上のことは貴女と親睦を深めたときに語るとしましょう」

 後の楽しみというやつです。そして、そう呟くのだった。

 




頭の良さそうな会話をそれっぽく書きましたが、そのうちご都合主義のタグを追加するか、それかこの話だけを書き直すかもしれません……
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