●月●日
突然だが俺は転生者である。
いやまぁ日記に書いてるだけなので誰にも言わないが、日記の中でくらい明かしてもいいだろ!ということで書き綴ってる。多分他の人が見たら俺は羞恥心で死ぬかもしれないので、読んだ人は誰にもこのことを伝えずそっ閉じして欲しい。
神様とやらに「君チート持って転生してみない?」と誘いを受け、どんな外敵にも負けないチート能力を授かり、現代日本っぽい場所に生まれ落ちて早十数年。
かわいい幼馴染や金持ちの両親を持ち、退屈ながらも幸せな日常を過ごしていた中で、ある事件が起きた。なんと恐ろしい化け物共が世界中で湧きだし、瞬く間に人々を襲い始め、世界を恐怖のどん底に落としたのである。
自衛隊どころか米国の軍隊や核兵器ですら歯が立たないそいつらを相手に、本来ならば嘆き絶望するべきだろうが、なんとも幸運なことに俺は神からもらったチート能力があった!
幼馴染を守りながら迫りくる化け物達を拳一つで薙ぎ払い、今は避難指定場所である体育館で日記を書いているところだ。幼馴染の寝顔がとても可愛い。
不謹慎だが、俺はこの状況に憤慨を覚えると共に、興奮もしていた。
だってずっと使い道が無かった有り余るチート能力を、存分に振るう時が来たのだから!
大事な人をこの手で救い、人々から救世主として崇められる。
そんな都合のよすぎる展開が、もしかしたら叶うかもしれないのだ。
ならば目指すしかないだろう救世主!なれるだけのスペックは多分ある!
とは言っても、まずはどこかに避難しているであろう両親の捜索が先だ。
幼馴染を不安にしないためにも、しっかり身体を休めなければならない。
例えどれだけ動いても疲労しない身体を持っていても、精神が持たない。
怪物達の正体はまだ分からないが、まだラジオは動いている。
各国の都市部には強力な怪物達が大量にいるようだが、田舎や地方都市はまだマシだ。
自衛隊の銃でもそこそこはやり合えるし、ビルよりでかい怪物なんかもいない。
まだ大丈夫、まだ大丈夫なはずだ。
●月▲日
大丈夫じゃなかったようだ。
父さんが勤務していた会社に捜索に向かって、それを見つけた。
父さんにプレゼントした腕時計。腕とセットで。
会社に蔓延っていた怪物を皆殺しにして、母さんが勤務していたスーパーに向かう。
母さんの姿があった。涙を流しながら抱き着こうとして、幼馴染に止められた。
「なんで」と問う俺に、彼女は「よく見て!」と叫んだ。
母さんの顔には、目玉が四つあった。
どうやら、怪物の中には捕食した人間に擬態する種類もいるらしい。
皆殺しにした。
肉の一片も残そうとはしなかった。
そいつらが存在した形跡を全て消し去りたかった。
二日目が終わり、他の生存者は俺をあいつらを見る時と同じ目で見てくるようになる。
まあ、目立ち過ぎたのだろう。しょうがないことだ。
幼馴染だけは俺を俺として見てくれてるし、涙を流した俺を慰めてくれた。
それに、二人の捜索中に発見したまだ幼い少女も、俺を慕ってくれている。
彼女達のためにも、俺がくよくよしているわけにはいかない。
まだ大丈夫、全然いける。二人の分まで、幸せになろう。
■月●日
生存者から、『英雄』と呼ばれるようになった。
東京にいる怪物共を殺し終わった後に、そんな渾名が付いたようだ。
化け物というのは、度を越えると神格化してしまうものらしい。
気が付けば、俺の存在は日本中にいる全ての生存者達の間に広まっていたらしい。
俺がいる場所にいれば安全だと、日本各地から人々が東京に集まっているらしい。
まあ確かに守るつもりではあるが、下手に動くと余計危険だと思う。
それと、幼馴染はまだ生きている。
この子だけはと本気で守り切ったおかげで、今まで傷一つついてない。
とは言っても、最近は俺が働き過ぎてるせいであまり会えては居ない。
「全てが終わったら結婚しよう」なんて告白をつい先日したが、果たしてその時まで俺が生きていられるかどうかは、まだちょっと分からない。
ひとまずは、東京を安全な都市に改造することができたし、徐々に活動範囲も広められている。
生存者達も協力的だし、今のところは歯が立たないような化け物もいない。
ちなみに、あの化け物達のことを生存者達は『
真っ先にクトゥルフ神話的なあれが思い浮かんだが、一応理由はある。
米国の科学者たちの推察では、化け物共は地球に存在しうる生物ではなく、ほぼ間違いなく宇宙から来訪した生命体……つまりは、宇宙人という奴なのだそうだ。
フォーリナー達が人間の前に現れた日の前日には、世界各地で小さな隕石が落ちたらしい。
フォーリナー達は、その隕石から現れたのではないか?というのが米国の見解だ。
まあ、そんなことはどうでもいいが。
どちらにせよ殺し尽くせば、俺は晴れて幼馴染と結婚できる。
それで幸せな家庭を作り、父さんと母さんの墓に結婚の報告をしに行くのだ。
子供は野球チームが作れるくらいにはほしいし、こんなに頑張ったんだから一生働かなくてもいいくらいの金が欲しい。
▲年◆月●日
彼女が死んだ。人間に殺された。俺が一か月東京を離れた隙に殺された。
犯人の動機は、食料を奪うためだったらしい。
彼女は優しいから、街の子供達に食べ物を配りに行って、その時に刺された。
死なないように犯人を痛めつけて、今は四肢をもいで虫に喰わしてる。
まだ十歳の子供だ。関係あるか。絶対に許さない。
犯人を死ぬより辛い目に遭わせた後は、どうしようか。
一番守りたかった人は死んだけど、これから何をしようか。
もう世界は終わっている。生存者は俺がいる街にしかいない。
あいつらへの対抗手段は、俺という戦力しか存在しない。
俺への渾名が、『英雄』から『救世主』に変わった。
もう俺の本名を知ってるやつの方が少ない。
生活も安定して、食料の自給自足も可能になったが、戦力が足りない。
あいつらは徐々に数を増し、進化して、銃弾すら効かなくなった。
だから俺が一日戦うのをサボるだけで、生存者は全滅する。
幾ら動いても疲れないから、彼女が死んだ悲しみを紛らわせることはできた。
もう守る意味があるのかも分からないけど。
俺、なんでこんなことやってるんだろうか?
今となっては、日記を書いても分からない。
自分の心すら、文字で書き記せなくなっている。
●年◆月▲日
子供を作ることになった。
なんでそんなことをするかというと、俺が死んだ後のためだ。
あの日から十年が過ぎた。良く持つものだと自分でも思う。
生活範囲も拡大し、間に合わせだったバリケードも街を守る防壁に生まれ変わった。
未だに進化したフォーリナー達を倒す手段は俺のみだが、守るだけなら俺なしでもそこそこできるようになり、生存者が子供を作る余裕も、育てる余裕もできた。
生活水準はまだまだあの頃より下だが、かなり持ち直せた。
しかし、そんな生活ができるのは、俺が働いているからだ。
自分で言っててなんかダメな親父みたいだなぁと思うが、事実だから質が悪い。
だがまあ、俺も多分寿命はあるから、いつかは死ぬ。
俺が死ぬということは、生存者も残らず死ぬということだ。
そうなった時の保険のために、俺の遺伝子を受け継いだ子供を作ろう。
そんな提案を、かつて助けた時は小学生くらいの彼女がした時は驚いた。
俺はあんまり乗り気じゃなかったが、他の生存者達は概ね賛成だった。
それどころか、積極的に俺の子を産みたいという女性が後を絶たなかった。
普通ならば喜ぶのだが、あまりにも迫力があり過ぎて少し引いた。
彼女達が求めているのは、多分俺ではなく『救世主』なのだろうけど。
最初に俺の子を産むのは、かつて助けた少女となった。
成長し、大人びた彼女は他の女性が嫉妬するほどに美しい。
そんな彼女を、俺は未来を守るための道具として使うのだ。
なんともまあ、腐り切った大人になったものだ。
◆◆年●●月■■日
産まれた子供は、俺のチートの力をほんの少しだけ継いでいた。
初めて、人類の中で俺以外にフォーリナーに対抗しうる者が生み出された。
まあ、そうなれば当然、俺は戦うことより産ませることを求められた。
毎日毎日、見知った女性や見知らぬ若い女性が俺の寝床に案内される。
中には夫がいる女性や、まだ二十にもなっていない少女もいた。
基本的に健康で体が強く、美しい女性があてがわれた。
多分俺の機嫌を取るために、下手な女は送れないと思ったのだろう。
俺の遺伝子を継いだ子供達は、何故か皆女の子として生まれた。
例外は一つも無く、全員が女性で、男性達が見とれる程に美しい。
彼女達は『
ほんの一欠片であろうと、チートを受け継いだ彼女達は強力だった。
銃弾でも貫通できない皮膚を拳で容易く貫き、炎や冷気、雷を放出できる。
ワルキューレを産んだ女性達は特別な待遇を得て、普通よりいい生活ができる。
そんな地位を求めてか、女達はこぞって俺に産まされるのを望むようになった。
種馬になった気分だ、反吐が出る。
●●●年◆◆◆月×××日
「お父様」と俺を慕う子供達の傷だらけの姿を見て、いつも心が悲鳴を上げる。
できることなら戦わせたくないけれど、彼女達が戦わなければ多くの人が死ぬ。
生活圏はかなり広がり、今や一つの国と言えるほどになった。
眼下に広がる街は活気に溢れ、科学技術が発展し、あの頃よりもSFチックになった。
ワルキューレはIQも常人の水準より遥かに高いらしく、天才が次々と産まれたのだ。
時折できた技術を俺に見せに来るが、残念ながら頭の出来は生前と同じなのだ。
見せられても理解できないので、娘達の言葉にただただ頷くくらいしかできない。
それでも喜んでくれる辺り、ほんと俺の子とは思えぬほど愛らしい。
そしてそんな愛らしい子達の内一人が、ついに戦死した。
ワルキューレ達では敵わないフォーリナーが出現した。
俺が出て、すぐに殺した故被害は少なかったが、それでも救い切れはしなかった。
また、大事な人を一人失った。
そして、この頃から一人の娘が、ある提案をしてきた。
それは、ワルキューレが俺の子を産むという、要は近親相姦の提案だ。
当然俺は拒否したが、そうもいかない事情があった。
ワルキューレは強力だが、徐々にその力が追いつけなくなっていた。
彼女達が強い理由は、いう間でも無く俺の血だが、それでも所詮は二分の一。
俺が持つ本来の力には到底及ばず、このままでは遠からぬうちに街が滅ぶ。
ならば、血を二分の一ではなく三分の二、それでダメなら四分の三。
つまりは、近親相姦を繰り返し、俺の血の純度を高めようという策だ。
結果的にこの提案はなし崩し的に許可され、そして成果を残した。
俺の血が濃くなるほどワルキューレは力を増していくようだった。
気が狂いそうだ。
◆◆◆年###月+++日
今日もまた、俺の部屋には沢山の女の子達が……俺の娘達が訪れている。
今日もまた、俺は娘達の未来を奪い取り、のうのうと暮らしている。
今日もまた、フォーリナーの襲撃で死んだ娘達の墓に通う。
未だフォーリナー達の発生を防ぐことはできない。
未だフォーリナーの進化を止めることはできず、人間は生きている。
未だこの地獄は終わらない。
俺に寿命の概念は無いようだ。
百から先は数えないようにしてるが、多分五百は経っただろうか?
科学技術はドンドン発達しているが、それでもまだ娘達は死ぬ可能性がある。
彼女達の血はドンドンと濃くなっていく。
それでも尚、俺の力の数万分の一にすら及びはしない。
この星を壊せば、この地獄は終わるだろうか?
宇宙を壊せるようになれば、この世界は終わるだろうか。
ダメだと分かってはいても、ついそんな考えが脳裏に浮かぶ。
もう日記を書くのはこれで終わりにしようと思う。
自分の人格を保つために続けていたが、もう限界だ。
人格すらなくなってしまえばいいと思うほど、擦り切れてしまった。
もしまた、この日記を開くことがあるとすれば。
それはきっと、俺が死ぬ時になるだろう。
【人物紹介】
『救世主』
主人公。チート貰って転生したよ。
かわいい幼馴染がいるよ。死んだ。
凄くなついてる両親がいるよ。死んだ。
娘がいるよ。だいたい死んでる。
寿命という概念及び死の概念が存在しないよ。
頑張って世界を救おうね。
『フォーリナー』
敵。なんか突然宇宙から攻めてきたエイリアンだよ。
強いよ。擬態するよ。成長するよ。知性もあるよ。
なんで地球攻めてきたかは知らないよ。
大体全人類滅ぼせたけど、救世主の護る街は無理だよ。
救世主を怖がってるよ。
『ワルキューレ』
味方。救世主の娘達だよ。
強いよ。救世主の千万分の一くらい。
ちなみに救世主はフォーリナーの三倍くらいの速さで強くなるよ。
最初の子は億分の一くらいなので大分強くなったよ。
フォーリナーと同じくらい強いよ。
ゴキブリみたいに数がいるけど全員美少女だよ。
一人でも攫ったりしたら親がぶち殺しに来るよ。
『幼馴染』
幼馴染。死んだよ。
相思相愛だったらしいよ。
『両親』
両親。死んだよ。
子供の将来のために働いてる途中であっさり殺されたよ。
最後は家族の名前叫んで死んだのかもね。
『助けた子』
負けヒロイン。なんか生きてたよ。
救世主が幼馴染を好きなのは知ってたよ。
最後まで救世主が己を愛してくれなかったことは知ってたよ。
名前を憶えてくれて、抱いてくれただけで満足して死んだよ。
ハーレムメンバーその1だよ。