終末世界の救世主になりました!   作:雷神デス

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『今や世界でトップクラスの大企業となった「   」社。その社長によって、かつて救世主がいた時代を生き抜いた遠い先祖の手記が公開されたのは記憶に新しい。重要な歴史的資料として評価され続けたその手記の中には、頻繁に彼が想いを寄せていたと思われしワルキューレが登場するが、彼女の名は手記の最後まで明かされることはなかった』


外来人

 

 

「救世主?」

 

「そう。世界を救う可能性をただ一人持つ、人類の希望だってさ」

 

 

 アメリカや中国、ロシアといった大国は、ほんの数か月たらずで滅亡してしまった。

 フォーリナー達はたった数年で、いとも容易く地球の9割を滅ぼした。

 日に日に進化する宇宙からの来訪者は、銃弾や爆弾すらも超越した。

 個体差はあり、中にはナイフで傷つくような弱いフォーリナーも存在するが。

 目立つ街や集団には、毎日のように進化し続けるフォーリナーが投入される。

 

 

 結果的に、生き残った人類の大半は、小さなコミュニティの中で生活するようになった。

 少し強いフォーリナーが攻めてくればすぐ壊れる程度の、砂の城。

 しかしすぐ崩せるからこそ、フォーリナーはそのコミュニティに本腰を入れなかった。

 要は見逃されているということだが、それでも人類はほんの少しだけ生きていた。

 

 

 そんな数少ない生存者の間には、ちょっとした噂があった。

 人類が未だ地球の長であった頃よりも発展した国が、この世界のどこかにある。

 そしてその国を治めるのは、数百年もの間生き続けている一人の人間らしい、と。

 

 

「ばっからしい噂だな」

 

「私もそう思う。けど本当にいるのなら、早いとこ救ってほしいね~」

 

「フォーリナー全部やっつけてか?無理に決まってるだろ」

 

 

 フォーリナーは、隕石に取り付く微生物として来訪してくる。

 そして人間や動物の身体を乗っ取ったり、吸収したりして進化する。

 最初期に一つ落下しただけで人類は阿鼻叫喚となったのに、今や空を見上げれば当たり前のように、彼等は地上に降り立とうとしてるのが現状だ。

 

 

「くだらない噂に縋る暇があるなら、さっさと歩け」

 

「えー。夢があっていいと思うけどなぁ。結婚とかもできるらしいよ?」

 

「興味ねぇよ」

 

 

 そうだ、そんなものは存在しない。

 存在しているとするなら、俺達がこんなに苦しい訳がない。

 もしいるのなら、さっさと俺らを救って、存在を証明してくれ。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

「君達、どこから来たの?」

 

 

 生存者は二名。俺達は無駄にコミュニティをでかくし過ぎてしまったようだ。

 食料を求め移動している最中に、馬鹿でかいフォーリナーから襲撃を受けた。

 リーダーは最初に殺され、銃弾も爆弾も効かずに俺達は蹂躙された。

 たった一体のフォーリナーによって、俺達のコミュニティは壊滅した。

 

 

 死を覚悟した俺達を救ったのは、見たことも無いくらい美人な女だった。

 銃弾が効かぬ皮膚をトイレットペーパーみたいに切り裂き、脳を一刺し。

 剣なんていう原始的な武器を扱ってる癖に、ほつれ一つない服。

 

 異質に過ぎる。

 助けては貰ったが、人間というより擬態したフォーリナーと言われた方が納得できる。

 警戒し、後ずさった俺とは対照的に、能天気なアホは喧しく礼を口にする。

 

 

「西の方から歩いてきました!助けていただいてありがとうございます女神様!」

 

「ごめんねー、女神じゃないよー。……他の人達は、間に合わなかったみたいだね」

 

「いえいえ!私達を助けてもらっただけでも十分!あなたは命の恩人です!」

 

 

 ペラペラと喋る馬鹿女に愛想笑いを浮かべ、そいつは小さな端末を取り出した。

 どうやら通信機のようで、訳の分からぬ単語を並べ、まるで子供に向けるような笑顔で、俺より一回り年下に見える少女は言う。

 

 

「ようこそ、お父様が治める楽園に。よくここまで頑張ったね」

 

 

 俺達はその日から、胡散臭い楽園の住民となった。

 

 

 

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「いい街でしょ?ここ」

 

「はい!すごくいいところですね、ここ。食べる物にも、住むところにも困らない」

 

「なんでこんなでかいコミュニティを維持できてるんだか……」

 

 

 生まれて初めて汚染されてない野菜を食べて、生まれて初めてふかふかのベッドで眠った。

 驚くことに、そいつらが楽園と呼ぶそこは、たしかに夢のような街であった。

 一か月に一度程度の頻度で街にフォーリナーが襲撃してくるが、ほぼ毎日のように命の危険に晒されていたあの頃と比べれば、生きやすさは雲泥の差だ。

 

 

「食べるものも美味しいし、お風呂にも入れるし。ほんとにすごいところだなぁ……」

 

「フフッ。何せここは、お父様が治める街だからね」

 

「お父様?」

 

「この街のリーダー。皆からは救世主って呼ばれてる」

 

「……ってことは、滅茶苦茶偉い人じゃないですかあなた!?」

 

「アハハ、そうなるかな?けど、珍しいことじゃない。そこら中を見渡せば、私の姉妹はいくらでもいるよ?ほら、あそこで手を振ってくれてる子も、私の姉妹だし」

 

「どういうことだよ」

 

 

 そいつはさも誇らしげに、狂った事実を俺達に説明する。

 この街を守る兵士ワルキューレの存在と、その誕生の理由。

 そしてそれを増やすための、狂った生産方法を。

 

 

「……自分の娘を、産ませる?」

 

「うん。そうすることで、よりお父様の血が濃い娘を生み出せるからね」

 

「それってつまり、近親相姦ってこと?」

 

「えーと、定義的にはそうなるのかな?気にもしてなかったけど」

 

 

 イカれてる。こいつらも当然のように、それを受け入れているようだった。

 変態野郎に産まされることを至上の喜びとし、それに人生を捧げることを苦ともしない。

 その生き方に悪寒を覚えると同時に、ほんの僅かに胸が痛んだ。

 

 

「お前は、そんな人生で満足なのか?」

 

「勿論。そう願われて生まれてきたんだから」

 

 

 歪んでいることを宣う少女は、しかし真っすぐに頷いた。

 この街を守るために、そして人類のためにやっていることなのだと。

 何よりも、偉大なる父の役に立てることこそが、最も名誉あることなのだと。

 

 

「凄いですね。この国はそうやって守られてるんだなぁ」

 

「えへへ。二人も安心してね?この国の人達は、私達ワルキューレが守って見せるよ」

 

 

 まだ二十にもなっていない自分の娘達を、最前線で戦わせている。

 俺が救世主とやらに嫌悪を抱くには、十分すぎる理由だった。

 

 

 

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「無理だよ。君が思うより遥かに、この国を狙うフォーリナーは強大だ」

 

「働かずにのうのうと暮らしてても気持ち悪い。元居たコミュニティじゃ、俺は荒事専門だった。それくらいしかできねぇんだよ」

 

「とは、言ってもなぁ……」

 

 

 無理を承知で、対フォーリナー用の武器を借りれるか交渉することにした。

 この街に住み着いて三か月ほどが経ったが、その間俺達は何もしなかった。

 あいつは気にしていなかったが、俺としては食わせてもらってるのに自分が何もしないのは、なんだか居心地が悪かった。

 

 

「……なら、私の助手として働いてくれるかな?雑魚の掃除を任せたり、荷物持ちをしてもらうくらいだけど」

 

「それで構わない。武器は、できるなら拳銃がいいんだが」

 

「あー……多分君じゃ使えないね。整備班の人に調整してもらおうかな」

 

 

 その言葉に少しムッとなり、ここに来る前から持っていた拳銃を握る。

 百発百中、とまではいかないが、それでも命中精度には自信があった。

 

 

「馬鹿にするな。拳銃くらいなら何度も扱った。ショットガンも、ライフルも」

 

「アハハ、ごめんね。けど、私達の武器は特別だから」

 

 

 最初はその言葉の意味を理解できなかったが、彼女達用の拳銃を使って理解した。

 一発撃つだけで、肩がぶっ壊れて、反動に耐えきれず吹き飛んだ。

 痛みで気絶し、気が付けば医務室に連れていかれていたのは苦い思い出となった。

 

 

「ごめん、一応弱めに調整してたつもりだったんだけど……」

 

「あれで、弱めなのか」

 

 

 聞けば、この街を襲うフォーリナーを殺すには、それくらいの威力が最低限必要らしい。

 対物ライフルを超える威力を持つ拳銃ですら、彼女達にとっては牽制用の小道具だ。

 筋力も、体力も、人体の構造すらも人間とは異なっている。

 

 更に驚くべきことに、彼女達は個体によって様々な特性を持つらしい。

 身体から炎や雷を放出したり、身体を透明化させたり、瞬間移動したり、という風に。

 人智のものとは思えない機能を、彼女達は当たり前のように保有していた。

 

 

「バカげてる」

 

 

 結論から言えば、彼女達の言う雑魚との闘いですら、俺にとっては死闘となった。

 男の意地でどうにか勝てたが、後日から俺はみっちり訓練をつけられることになった。

 少しはマシになったが、それでも彼女達から見れば吹けば飛ぶ程度の存在らしい。

 それを生み出した救世主とは、いったいどんな化け物なのだろうか。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「もう行くのやめたら?無駄でしょ、そんなことしても」

 

「……なんだ、今更」

 

 

 ワルキューレの助手を務め、半年近くの月日が経った。

 仕事に向かおうとしたら同じ部屋に住んでる相棒に文句を言われた。

 最初の方はヘラヘラと送り出してくれたのに、最近はなんだか不機嫌そうだ。

 

 

「別にあなたが行ったところで大して役に立ってないんでしょ?任せればいいじゃん、あの子達に。働きたいなら、私と一緒に野菜育てようよ。慣れれば割と楽しいよ」

 

「俺は戦うしかできないって前も言ったろ」

 

「その戦うことすら、ここの基準じゃ碌にできないじゃん」

 

 

 痛いところを突かれ、押し黙る。

 事実、この街においては彼女達しか碌な戦力にはならない。

 彼女達が雑魚と呼んでいるフォーリナーですら、俺にとっては強大な敵。

 最近はようやく安定して倒せるようになったが、それでも生傷は絶えない。

 

 

「あの子のことはほっといて、この国でのんびり暮らそうよ。あの子だって、数か月も会わなけりゃ君のことなんて忘れるよ」

 

「助けられた借りをまだ返してない」

 

 

 それだけ言って、逃げるように彼女の下に向かった。

 何故俺がそこまであいつらに拘るのか、自分でも分かっちゃいない。

 分かっちゃいないが、このまま何もせず、彼女達に守ってもらって、平和に暮らして。

 そんな生活を続けたら、自分が嫌いになる気がした。

 

 

「毎日ご苦労様です。今日もよろしくお願いしますね!」

 

「守られてるのは俺だけどな」

 

「それでも、一緒に戦ってくれる人がいるだけで気が楽になりますから!さあ、見習いなりに頑張って資源を集めに行きますよ~!」

 

 

 それに、俺達を救ってくれた彼女に恩返しがしたかった。

 救ってくれた方はあまり気にしてはいないだろうが、それでも俺は心底救われた。

 絶望しかないこの世界で、ほんの僅かな希望を示してくれた。

 武器を手に取る理由なんて、きっとそれだけで十分だ。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 彼女達がどれほど危険な戦場に身を置いているか、俺は理解してなかった。

 この街が、この地球上でもっとも危険な場所であると、理解できなかった。

 何故街の護衛ではなく、外の探索が見習いの仕事なのか。

 単純に、外のフォーリナーより、街に攻め入るフォーリナーの方が危険だからだ。

 

 

「お父様以外で初めて、本気で誰かを好きになれました」

 

 

 この街は地球上で最大規模のコミュニティだ。

 そしてフォーリナーは、それを壊すために進化し続ける者達だ。

 ならば当然、この街を襲撃するフォーリナーは地球上で最強の個体が担当する。

 考えればすぐわかることから、俺は目を背けていた。

 

 

「行くなよ。まだ、まだ大人になれていないだろ。やりたいことだって、いっぱいあるだろ」

 

 

 通常よりも大規模な戦力で行われた襲撃は、瞬く間に終了した。

 また一段階進化したフォーリナーによる攻撃は、ワルキューレ達の強固なはずの装備と身体を容易く貫き、骨を折り、命を散らした。

 

 それでも、彼女達は引かなかった。

 一撃で殺されるような相手を前にしても、一歩も後ずさることはなかった。

 それは、彼女も例外ではなかった。どちらの意味でも。

 

 

「ありますよ。ありますけど、無理そうです」

 

「無理じゃない。ふざけるな。ここで終わっていい筈がない!」

 

「『   (識別不明)』さん」

 

 

 彼女は俺の名前を呼ぶ。

 俺は彼女の名前を必死に叫ぶ。

 終わる。消える。

 彼女の命が、人生が、終わりを迎える。

 

 

 俺が戦場に立っていたからだ。

 俺を庇って、彼女は死ぬんだ。

 たった一人の馬鹿のせいで、輝く未来を持っていたはずの少女が終わるんだ。

 ふざけるな、そんなこと許されるはずがない、なんでこんなことになるんだよ。

 

 

「私のこと。忘れないでくださいね?」

 

 

 ほんの少しだけ、彼女の身体が軽くなったような気がした。

 何かが抜け落ちるような感覚がした。

 少女の命は、今ここに終わりを迎えた。

 

 

 空を見上げる。

 そこに立つはただ一人。

 まさしくその名に相応しい、あらゆる全てを超越した強さだった。

 たった一人で、彼女達では歯が立たぬ奴らをまとめて消し飛ばした。

 

 

 ふざけるな

 ふざけるな

 ふざけるな

 

 

 なんでそんなに強いのに、最初からお前がいなかったんだよ。

 なんで彼女が死ぬ前に、あいつらを消し飛ばしてくれなかったんだよ。

 なんでなんでもできるのに、娘達を死なせてるんだよ。

 

 

 八つ当たりだ。

 救世主が来なければ、俺も死んでいた。

 本当なら礼をすべきで、崇めるべきで、感謝すべきで。

 それでも、俺はあいつを許せなかった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「お帰りください」

 

「お父様は多忙です」

 

「あなたのような他人に構う暇はありません」

 

 

 当然ながら、宮殿に向かっても会えるわけが無かった。

 それでも、何度も声を荒げて、あいつに会わせろと叫んだ。

 何度もボコボコにされ、何度門前払いを受けようと叫び続けて。

 

 

「通してあげろ」

 

 

 よりにもよって救世主が、俺を自室まで招きいれた。

 

 

「お前の娘が、あの日に死んだぞ」

 

「お前の娘は、人間らしいことを碌にできずに死んでいった」

 

「あいつの人生は何だったんだよ。あんなことになるために、今まで生きてきたのかよ」

 

「なんで父親が、助けてやれなかったんだ。なんで娘が、父親より先に死ぬんだよ」

 

「本気であんたのことが好きだったんだ。そんな奴が、あんなにあっさり、死んだんだ」

 

「彼女は、何のために生きてきたんだよ。答えろよ、救世主!」

 

 

 訳の分からぬ言葉を並べ立てる。

 どうかしている。俺は頭がおかしいのだろう。

 こんなこと言っても、何の意味も無いのに。

 それでも、言わずにはいられなかった。

 

 だからそれでおしまいだ。

 おしまいの、はずだった。

 

 

「ありがとう」

 

 

 返ってきたのは、罵倒でも、死を告げる拳でも、無視でも無かった。

 そこには、心底救われたような顔をした、ただの人間の。

 ただの、あいつの父親がいた。

 

 

「あの子の傍に、ずっといてくれて」

 

「あの子を愛してくれて」

 

「あの子のために泣いてくれて」

 

「あの子のことを忘れないでいてくれて。本当に、本当に」

 

 

 罵倒や怒りの方が、よっぽど救われた。

 こいつは、本気で自分の娘達を愛していたようだ。

 百はとうに超えているであろう無数にいる娘達を、そいつは本気で想っていた。

 

 死んだ娘のことをずっと抱えていた。

 道具なんかじゃなくて、家族として扱っていた。

 死んでしまったことに本気で悲しんでいた。

 

 

 それでも、彼女は死んだ。

 こんな奴がいるのに、彼女はあっさりと死んだんだ。

 

 

「最期の言葉を聞いたのが、僕じゃなくて君でよかった」

 

「ありがとう。ごめんなさい」

 

「俺に、彼女は守れなかった」

 

 

 後で聞いて、見たことではあるのだが。

 この街の周辺を探索すれば、すぐに分かることなのだが。

 この街は既に、大量の強力なフォーリナーによって囲まれているらしい。

 

 

 おぞましい程の数が、山や海に。地面や空に潜伏し、隠れている。

 何故奴らは姿を現さないのか?その答えは実に簡単だ。

 奴らの目的は、戦力ではなく抑止力だ。

 

 

 救世主が動き出せば、すぐに街を襲えるように。

 救世主が本気で潰しに来た時に、彼の大切なものを全て奪えるように。

 たった一つの弱点を、彼がただ一人しかいないという弱点を突くために。

 たった一人の男のために、フォーリナーはすさまじい規模の戦力を集中させていた。

 

 

 だから、彼はフォーリナーの本拠地を探しに行くことはできない。

 街から離れた瞬間に、フォーリナー達は街を壊滅させてしまうから。

 そして同様に、フォーリナーはワルキューレ達を壊滅させる戦力を保有しなければならない。

 ワルキューレだけで対処できる戦力であれば、救世主が全力で動けてしまうから。

 

 

 何もしていないのではなく、何もしていないことこそが最大の防衛であると。

 この男がいなければ、とっくにこの街は滅んでいるのであると。

 そう理解してしまって、俺の心は容易く折れた。

 

 

「いつか、一緒に彼女の墓に手を合わせに行こう」

 

「きっと、彼女もその方が喜ぶから」

 

 

 なんとも悲しきことに、この世界は既に終わるはずだったらしい。

 外にいては気づかなかった。俺達は本当に、ただ見逃されていただけだ。

 たった一人の男を封じる枷として、人類が人質に取られているだけだ。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 彼女の墓参りに来た。隣にはこの街を守る救世主。

 九十まで無駄に生き延びた。この人ともそれなりの付き合いになった。

 あの馬鹿女と結婚して、子供も生まれた。子供は孫をこさえて、その孫も曾孫を産んだ。

 

 あの頃からは考えられないほど幸せな人生になったと思う。

 それでも、彼女のことはずっと忘れられなかった。

 それは贖罪かもしれないし、惑いはまた別の理由かもしれない。

 ただ分かるのは、俺は結局、この世界には何の役にも立たなかったというだけだ。

 

 

「なぁ、救世主様」

 

「なんだい?」

 

「儂はもうすぐ死ぬよ」

 

 

 救世主は、悲しそうな顔をして頷いた。

 彼にこれ以上想いを背負わせたくはないから、できる限り軽い遺言にすることにした。

 多分それくらいの方が、彼も無駄に重くならずに済むだろう。

 

 

「かなわぬ願いかもしれないけどさ。あんたも、幸せになってくれ」

 

 

 それだけ言って、俺は墓場を去って行った。

 救世主は困ったように笑って、肯定も否定もしなかった。

 けど、どうかこの願いを叶えてあげてくれ、神様。

 

 あんなに頑張った人が幸せにならないのは、なんだか気持ちが悪い。

 だから、頼んだよ。

 




【人物紹介】
『男外来人』
無謀な人。自分でも何か役に立てると思っていた。折れた。
終末世界とは思えないほどまともな感性を持っている、ある意味異常者。
喧嘩や殺し合いに強かったらしいが、あまりにもレベルが違い過ぎた。
名前を最後まで明かさなかったのは、ちょっとした独占欲故だとか。
なんだかんだで女外来人と結婚した勝ち組。
救いは無いんですかと聞かれたので救いを作りました。


『女外来人』
割と腹黒い子。描写してないけど内心ワルキューレを気味悪がってた。
男外来人とは長い付き合いで、何度か守ってもらう内に惚れてたらしい。
人当たりがよいため楽園でも上手く生きており、計算や商売が得意。
男外来人を引き留めたのは「まあすぐに危なくなってやめるだろう」と考えてたのに思ったより長く続いて焦ったのと、ワルキューレの子と仲良くなってるのを見て嫉妬心に駆られたから。
総じてまともな女の子、最終的には旦那ゲットした勝ち組。
救いは無いんですかと聞かれたので救いを作りましたその2。


『死んだワルキューレ』
当たり前のように死んだ子。運が悪かったね。
標準的な子で、前話の子ほど運も性能も良くは無かった。
それでも、大事な人が生きてるだけあっちよりは勝ち組かも。
最後の願いは、ちょっとした出来心。
「ずっと心に居続けてればいいな」とか思って言ったらしい。
しっかり死ぬまで残ったので、多分救いはある方。


『救世主』
ドンドンチートが盛られてく奴。現在もハーレムは増加中。
とっくに娘は100人超えてるが、それでも尚戦力は足りないらしい。
時間をかければ地球上のフォーリナー全部滅ぼせる。
けど離れたら街が滅ぶので、ワルキューレが強くなるまで頑張ってる。


『神様』
「考えとくね」
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