終末世界の救世主になりました!   作:雷神デス

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『フォーリナーによって一度滅びを迎えた文明は、途方も無い時間を経て少しずつ復興していった。そんな今が続いているのは、救世主の存在があってこそだ。だが、救世主のその後の記録を残した資料は、今でも見つかってはいない。彼が一体、今どこで何をしているのか、知る者は存在しない。それこそ、神以外は』


救世主大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!!

 

 

 

 

「見つかりました」

 

 

 その日は唐突にやってきた。

 フォーリナーの本拠地が太陽系のどこかにある、それは早いうちから判明していた。

 科学力の発展と、宇宙でも活動できるようになったワルキューレの懸命な捜索。

 それによって、ようやく人類はフォーリナーの巣を見つけることができた。

 

 そしてフォーリナーの研究を続けた結果、ある一つの事実が判明した。

 フォーリナーとは、人間や動物のようにそれぞれの個体が独立しているのではなく、全ての個体が一つの意思により働いている、という希望になりうる情報だ。

 

 これはつまり、人類はフォーリナーを殲滅するのではなく、ただ一体の個体を破壊すれば勝利する可能性があるということだ。それは確かな勝算となりうる。

 それさえ殺せば、フォーリナーは知性を失い、行動を停止する可能性がある。

 

 ただし、問題が幾つかあった。

 

 

「……遠いな」

 

 

 娘達が発見したフォーリナーの本拠地は、確かに太陽系にあった。

 太陽系にある一つの星は、それ自体が丸ごと、フォーリナーによる擬態であった。

 一見変哲も無いただの惑星だが、内部は夥しい数のフォーリナーで満ちている。

 しかも、そこに存在するフォーリナー達は全て今までの個体の数倍は強い。

 

 何よりも厄介なのは、本拠地までの距離だ。

 月くらいまでなら数秒とかからず移動することは可能だが、この惑星まではどう見繕っても五分程度の時間がかかる。

 短いようにも思えるが、今の状況ではそれは致命傷となりうるものだ。

 

 

「私達姉妹が全力で防衛に当たっても、長くて十分が限界でしょうね」

 

 

 街を囲むフォーリナーの数は、年々数も質も増している。

 少しずつフォーリナーを打倒する方法を研究しているのを、彼らも気づいていたのだろう。

 もし俺が一瞬でも街を出ようものなら、フォーリナー達は総力を以てこの街を潰しにかかる。

 そうなれば、例え今の娘達であってもものの数分で壊滅するだろう。

 

 

「ですが、これでようやく終わらせられます!」

 

 

 それでも、娘達はそれを実行する気でいた。

 何の躊躇も無く俺を宇宙に送り出し、自分達は街を守って死ぬ気でいた。

 ようやく己達の悲願がかなうのだと、彼女達は目を輝かせていた。

 彼女達の目には、未来ではなく終わりが写っていた。

 そんなところまで俺に似なくてよかったのに。

 

 

「フォーリナー達も、おそらくは準備が整ったことに気づいているはず。下手な妨害をされる前に、全てを終わらせましょう。お父様なら、それができるはずです!」

 

「君達は死ぬよ」

 

「はい!死んでも、絶対に街は守り切ります」

 

「……そう、か」

 

 

 とっくに、人類は限界だった。

 夢を奪われ、尊厳を奪われ、星を奪われ。

 それをどうにか、俺という鎖で繋ぎ止めていただけだ。

 

 だから、俺はその責任を取るべきだろう。

 ここまで人類を生き残らせた、希望を持たせた報いを受けるべき時だ。

 娘達は死ぬ。俺を慕ってくれた、血を分け合った子供達は、明日死ぬ。

 

 

「頑張ってください、お父様!」

 

 

 その日の内に、計画の内容は全ての娘達及び市民に伝えられた。

 市民達は歓喜した。娘達もまた、悲願を叶えられると喜んだ。

 狂っている。まともな人間が見たら、そう零すかもしれない。

 まだ成人していない少女達が、人類を守るための犠牲になる。

 そんなことを、当事者含め容認している。

 

 

 もう限界なのだろう。

 ここまで続いたのが奇跡だったのだ。

 フォーリナーは奪い過ぎた。

 大切な人を、希望を、故郷を、星を。

 人類が己達を律するための楔を、彼らは無造作に引き抜き過ぎた。

 

 

「俺達は死んでも構いません」

 

「子供がフォーリナーに殺されました。仇を取りたいんです」

 

「親を殺されました。遊ばれて殺されました」

 

「僕らを救ってください。救世主様」

 

 

 市民達は、自分達が殺されるかもしれないと承知した上で賛成した。

 娘達は、自分達が殺されると確信した上でそれでもいいと頷いた。

 俺は、娘達が死ぬと知った上で、剣を手に取った。

 

 

 無限にも思えるような地獄は、今終わりを迎える。

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「あの、本当に邪魔になりませんか?姉妹全員の通信機とつなげるなんて……」

 

「大丈夫。その程度で集中を乱されるほどやわな精神はしてないさ」

 

 

 娘達は全員、街を守るため戦闘配置に着き準備を整えている。

 フォーリナー達も焦っているようだが、俺がいる以上は街に手を出すことはできない。

 戦力を無駄に消耗させるよりは、街を壊した方が俺が戻る可能性が高いと踏んだか。

 と言っても、今となっては最早それすら叶わぬのだが。

 

 

「それとも、余計なお世話だったか?」

 

「そんなことはありません!……最後にお父様に言葉を届けられると、皆喜んでました」

 

 

 せめて、娘達を殺す俺は、娘達の声を聴かなければならないと思った。

 娘達の願いを、娘達の死を背負って戦いに臨むべきだと思った。

 だから、例え無駄な行いであったとしても、そうすべきなのだ。

 

 

「地獄のような戦いになる」

 

「けど、この数分が終われば、地獄は終わります」

 

「地獄が終わった後の世界を、お前達は見ることができないよ」

 

「それでも、他の誰かがその世界を見ることができます」

 

 

 本当に、俺の娘達は馬鹿な子だ。自分のことなんて考えやしない。

 もっと自分のために生きていいのに。もっと俺を恨んでくれていいのに。

 そう思ってしまうのは、きっと彼女達の覚悟を侮辱する行為だ。

 

 

「誰に似たんだろうな」

 

「お父様であれば嬉しいです」

 

 

 指定された時間になった。

 足に力を籠め、グッと屈む。

 一秒経つごとに、果たして何人娘が死ぬのだろうか。

 一秒経つごとに、一体どれだけの人類が死ぬのだろうか。

 

 

『お父様!!』

 

 

 娘達の声が、通信機越しに聞こえてくる。

 色とりどりの声達が発する言葉が、たった一つだけだった。

 

 

『行ってらっしゃい!!』

 

「行ってきます」

 

 

 そういえば、初めて娘達にこんなことを言ったな、なんて考えながら。

 下を見ることはなく、宇宙を目掛け跳躍する。

 爆音。異音。血しぶきの音。フォーリナーの足音。落下音。

 通信機から、惑いは直接に、それらの音は俺の耳をつんざく。

 

 

『今までありがとうございました!』

 

『私、生きててよかったです!』

 

『頑張ってください、お父様!』

 

 

 遺言が聞こえる。星を出るまでに二十人の娘が死んだ。

 全員名前を付けていた。全員と楽しく会話したこともある。

 人間的にはとってもまともで、されど戦闘員として向いてない彼女達がまず最初に死んだ。

 

 星を踏み台にして、更に加速する。

 宇宙にもフォーリナーは存在していたようで、そいつらは俺を止めようと口を開ける。

 一秒の足止めにもならない。一瞬でも足を止めることはあってはならない。

 その一瞬で、どれだけの命が失われるのか、俺は知っている。

 

 

『たのし』

 

『あ、心臓』

 

『頑張って』

 

『愛してます』

 

 

 戦闘が激化した、また数十人娘が死んだ。

 全員聞き覚えのある声だ。全員俺の血を継ぐ娘達だ。

 赤ん坊の頃からずっと見てきた、子供達だ。

 

 

『一分経過!』

 

『案外やれるね!まだ左腕なくなっただ』

 

『油断してたら一秒無駄になるよ、気を付けて!』

 

『うっわ山よりでかい!最後に凄いもの見れた!』

 

 

 空元気を浮かべる娘、遺言すら残せぬ娘、まだ頑張ってる娘。

 沢山の娘の声が。まともに生きられなかった娘の命の散る音が聞こえてくる。

 よかった。これで、立ち止まらずに済む。

 

 

『二分経過!まだ街は残ってる!』

 

『姉妹達何人残ってる!?』

 

『半分くらい!詳しい数不明!あ、ごめん死ぬ!』

 

『時間を稼げ!治療できる能力持ちは死ぬ気で働け!』

 

『死んでも働けたら楽なのになぁ!』

 

 

 見えた。元凶が見えた。星が見えた。

 あれだ。あれがフォーリナーを生成しているユニットだ。

 あれがフォーリナーの核だ。フォーリナーの知性だ。

 あれが、地球を襲った敵だ。

 

 

『お父様、今どうなってるかなぁ』

 

『きっともう、ボスのところまで辿り着いてるよ』

 

『じゃあ、もうすぐ終わる?もうすぐ勝てる?』

 

『勝てる、じゃなくて勝つの!きっとどうにかなる!』

 

 

 希望を捨てるな。娘はまだ生きている。まだ戦っている。

 あらゆる宇宙の法則を無視して、あらゆる摂理を打ちのめして。

 ただ己が勝つだけのチートによって、既に勝利は確定している。

 だから、これはタイムアタックだ。

 どれだけの物を失わずに済むかの、タイムアタックだ。

 

 

『街が壊された!守りに行って!!』

 

『もう人数が足りないよ!』

 

『あと数分!あと数分だけ、お願い耐えて』

 

『私達の存在理由を果たせ!!』

 

 

 目の前にいる敵のことすら、もう曖昧な存在になっていく。

 ただ壊して、殺して、一秒でも早く、一瞬でも早く。

 星と同じ大きさのフォーリナーを殺す、0.1秒が経過した。

 太陽より熱を持ったフォーリナーを殺す、0.5秒が経過した。

 雑多な奴らを纏めて消滅させる、一秒くらいが経過した。

 

 

 通信機から聞こえる声が、段々と少なくなっていく。

 絶え間なく響いていた声達が、徐々に小さくなっていく。

 あと十秒で、終わらせられる。

 

 

「ああ、そうか」

 

 

 ずっと考えていた。

 何故あいつらは地球を襲ってきたのか、何故人間を殺すのか。

 それを見て、ようやく俺はフォーリナーが地球を襲った理由を知れた。

 

 小さな虫だ。

 地球より巨大な星の中に、生命体として、小さな虫が一匹だけいた。

 地球上のどの生物とも違う、ハエくらいの大きさの虫が一匹。

 それが、フォーリナー達を生み出し、統括していた存在のようだった。

 

 そいつは必死に、俺に怯えるように巨大なフォーリナーを操っている。

 人型を作った。その人型は、俺の娘達や、俺の幼馴染によく似ている。

 賢い奴だ。それを攻撃することがどれだけ辛いか一応理解してるんだな。

 

 

「お前、別に大した理由なんて無かったんだな」

 

 

 どうやって生み出したか、なんて興味はなかった。

 なんでそんなことができるのか、なんてのも意味の無い考えだ。

 こいつは『それ』ができるから、やってただけの話なのだ。

 

 どこかの宇宙で、フォーリナーを作り出す何かを身に着けたのだろう。

 それで『なんとなく』地球を見つけて、『なんとなく』で人間を殺したのだ。

 とても分かりやすく、まあなんともつまらない話であった。

 

 大層な理由なんて無かった。

 大切な人が死んだのに納得できる理由なんて、初めから存在しない。

 俺の幼馴染は、俺の両親は、俺の沢山の娘達は。

 こいつの気まぐれから始まったそれで、死んでいったらしい。

 

 

『お父様』

 

 

 娘の声が聞こえる。

 

 

『私が最後の一人になったみたいです』

 

 

 娘の声が聞こえる。

 

 

『多分これ、人質なんでしょうか?その気になれば一瞬で殺される状態になってます!多分、お父様を止めるためにやってるんだと思います。案外馬鹿なんですね、フォーリナー。これつまり、お父様があいつらを殺せる直前まで来たってことなんでしょ?』

 

 

 娘の、声が、聞こえる。

 

 

『けど、最後に遺言を残せるのは感謝です。皆死んじゃいました。街も結構ぶっ壊れてます。それでも、まだ人間は生きてます。私達は勝ちました』

 

 

 そうか。

 

 

『お父様』

 

 

 分かってる。

 

 

『娘一同。あなたのことが大好きでした!やっちゃえ!』

 

「俺もだよ」

 

 

 俺がそいつを斬る音と、通信機越しに何かがつぶれる音は同時に響いた。

 なんてことの無い襲撃者との闘いは、この瞬間に終わりを迎えた。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 それが終わった瞬間を、人類が知覚できぬ場所から眺める。

 なんともまあ、あっさりと終わるものだ。

 最早数えるのすら億劫になった時間を経て、適当に選んだ人間は地球を救った。

 なかなかいい気晴らしにはなった。

 

 

 結局送り込んだ人間は、糸が切れたように動かなくなってしまった。

 地球に帰った後に見た娘達の死骸を土の中に入れ、それらと一緒に埋まってしまった。

 当然ながらその程度で死ぬような肉体にはしてないのだが、それから数百年経ってもピクリとも動きはせず、骨すら残っていない娘達と共に眠っている。

 

 

 これ以上進展も無さそうなので、さっさと魂を握りつぶそうかと考えて。

 ふと、『そういやなんか色々祈られてたな』、と思い出す。

 別に無視しても良かったけれど、気まぐれに興が湧いた。

 

 

「たまには祈りに応えてあげよう」

 

 

 救世主を想う願いは、今ようやく実を結ぶ。

 実にちんけな展開だ。自分が読者ならふざけるなと野次を飛ばそう。

 それでもまあ、ちんけな物語にはお似合いの結末だ。

 

 

「君チート持って転生してみない?」

 

 

 

★★★★★

 

 

●月●日

 

 突然だが、俺は転生者だ。

 

 いやまぁ日記に書いてるだけなので誰にも言わないが、日記の中でくらい明かしてもいいだろ!ということで書き綴ってる。多分他の人が見たら俺は羞恥心で死ぬかもしれないので、読んだ人は誰にもこのことを伝えずそっ閉じして欲しい。

 

 神様とやらに「君チート持って転生してみない?」と誘いを受け、どんな外敵にも負けないチート能力を授か……らずに、現代日本っぽい場所に生まれ落ちて早十数年。

 

 マジでなんでチート持ってないんだろうな。七夕の日に『なんでチート無いんですか』って書いたら、後日手紙で『もうあげたよ』と返された。何も貰っちゃいないんだが?まあいいや。

 

 かわいい幼馴染や金持ちの両親を持ち、退屈ながらも幸せな日常を過ごしていた中で、ある事件が起きた。なんと俺の家の敷地内から、凄まじい美少女が発掘されたのだ!どういうことだ!

 

 その子は伝説上の存在であるとされたワルキューレらしく、何故か俺に懐いてしまった。マジでどういうことか分からないが、なんか色々とどうでもよくなるくらい楽しい日々を過ごせている。何故かはわからないが、とても幸せだしまあいっか!

 

 あ、それと最近になって何千年も前に地球を救ったとか言う救世主の日記が見つかったんだとか。歴史ってすげぇなぁ。

 

 

●月▲日

 

 今日は幼馴染とデートに───

 

 




【人物紹介】
『チーレム主人公』
ただのチーレム野郎。
九十歳くらいまで生きて死んだらしい。
死ぬまで書き記した日記には、楽しい日常がびっしりだ。


『幼馴染』
ハーレムその一。
九十歳くらいまで生きて死んだらしい。


『発掘された子』
ハーレムそのニ?
彼女によれば、神様がついでで助けてくれたらしい。
姉妹が滅茶苦茶多いらしいが詳細不明。


『フォーリナー』
救世主の被害者。
ゲーム感覚でなんとなく地球侵略したら死んだ。
宇宙にいるのに攻め込まれるとか聞いてないって。
力を得た理由は不明、多分神様とかにもらったんじゃない?


『神様』
「楽しかったよ」


【アンケートの最後の一人は一個上にいる人です】

残った一体ぶちのめす追加話いる?

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