とある隠居魔術師と使い魔   作:花韮

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タイトル詐欺


まどう森を抜けて

まどう森を抜けて

 

「迷いの森か、妖精の悪戯だろうか」

「薬草取りが頻繁に入る森が迷いの森になっちゃって、大変なんだって」

「ふむ、なら森のお守りでも作るか。

 妖精の悪戯なら、そのうち飽きるだろうし、それまで凌げればいい」

「そうだね。確か、サラハーブ、慰めの石と、結びの紐だったっけ」

 サラハーブは白い花をつけた、ミント系のハーブだ。過去にいた亡国の王妃が名の由来らしい。

 慰めの石は勾玉型の緑の石で、特定の魔物に見せると襲って来なくなる、という石だ。

 結びの紐は、封じの石と繋ぎの水を練り合わせた糸で作った紐で、白と赤に染められている。

「ああ。よく覚えていたな」

「結構、作ったからね。そんなに迷う人いるんだなぁ」

「妖精の仕業でなくとも、森は迷いやすい。それに、不慮の事故も防ぐから、木こりも一つは持っていたいからな」

「森の事故って?」

「地滑りとか、木を倒す方を間違えるだとか、穴に落ちたり崖から滑落したり……懐かしいな、俺もよく落ちたものだ」

「それってアンタがボーっとしてるだけなんじゃ……」

「さて、作業にかかろうか」

 魔術師は背中を向けた。

 自覚はあったらしい。

 

・・・

 

「サラハーブの上に慰めの石を置いてくれ」

「おいたよ」

「では、手を構えて、結びの印を結んで、呪文を唱えるんだ」

「……え、僕がやるの?」

「当たり前だろう、というか、未だに呪文の一つもまともに唱えられないとか、どうなんだ」

「うっ、いやーほら、ぶっつけ本番とかちょっと緊張するし」

「……緊張するようなタマだったか? おまえ」

「うるさいなっ」

 ふしゃーっと毛を逆立てるが、自分が悪いことはわかっているので、しぶしぶ爪で印を描く。

「えーと、結びの印は確か、pみたいな奴だったよね」

「ああ」

 ただしくは違うが、魔術師は指摘しない。

 あえてである。消して説明が面倒くさかった訳ではない、単純な図形の方が口頭で説明するの難しいよねってなっただけである。

「呪文は……"seal a bless"……あれ?」

「……ああ、そうか、簡略化したものしか見せていなかったな」

「ちょっと⁉︎」

「しかし、参考書をしっかりと読んでいればすぐに分かるはずなんだが」

「うぐぅ……ひ、ヒント」

「a は、簡略系だ」

「それだけ⁉︎」

「ああ、本なら自由に読んでいいぞ?」

 そう言って、魔術師は本棚から溢れ出した山を指す。

 それを見た使い魔はみるみる青ざめ、項垂れた。

「うう、鬼だ……」

「むしろ今までが優し過ぎたんじゃないかと、今思ったんだが……

 道具の出し入れとか、街までのお使いくらいしか出来ないなら使い魔である意味もないし」

 使い魔は、魔術師の魔術を補佐するのが大抵の仕事である。

 魔術が使えないと話にならないのだ。

 雑用全般しかしないものは一般的には小間使いと呼ばれる。

「うー、ひとが気にしている所をズバズバと……」

「気にしているなら努力しろよ……」

 魔術師は呆れて首を振った。

 

・・・

 

「これならどうだ! "seal ai key oy bless"」

「お、できたな。頑張ったじゃないか、日が暮れるまで」

 因みにこの魔法は、一般人なら修行始めて三日で覚えるような呪文である。

「やった!」

「まさか家に火をつけようとした時は焦ったが……いやぁ、おまえは才能がないなぁ」

「ぐはっ」

「今やった事は忘れるんじゃあないぞ?

 じゃ、帰るついでにそれ届けてくれ。紐は結んでおいたから。って事でまた明日」

「あっ、まっ、このっ、もっと褒めろよ!」

 魔術師は使い魔を締め出すと、焦げた椅子や歩き出した箒を片付ける為に杖剣を抜いた。




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気まぐれで書いているので。
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