トレセン学園の隠れた名店   作:[]REiDo

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お仕事辛い。推し事楽しい。


在り方は人それぞれだろ?楽しい生き方を見つけよう

 

 

 とっても今更な話をしよう。

 内容は俺がいつもしてるめんどい仕事の話。ハイ始まりー。

 

 

 俺がトレセン学園で行う業務は大まかにいうと2つある。

 

 一つは、他のトレーナーが抱える雑務業の肩代わり。

 

 トレセン学園におけるトレーナーというのは、常日頃から人手不足に陥っている。

 何せトレーナーの資格というのはハードルがクッソ高いのだ。去年の合格率って確か5%切ってたっけ。

 

 まあ、中央の学園ともなればそのくらいのハードルは超えてもらわないと困るようなものなのだろう。

 

 雑務業の肩代わり、ってのは主に書類関係とかの処理だ。

 例えば、トレーニングの費用整理だったり、施設の予約だったり。

 言ってしまえば他のトレーナーに任せても構わない業務を、トレセン学園に勤めているトレーナの()()()()()を、俺が肩代わりしてるのだ。

 

 おかげ様で、他のトレーナーが自身の担当のウマ娘に割く時間が増えたらしく、俺の仕事は非常に好印象だ。昔から変人を見る目は変わらないが。

 おい、なんだこいつ、みたいな目で俺を見るな。間違ってないけど。

 

 

 んで、二つ目だが。こっちは趣味と業務の掛け合いって感じになるな。

 

 以外に思うかもしれないが、小さな拠り所『ウマ小屋』の経営である。

 

 これに関しては俺がトレセンに入って、しばらく経った後に頼まれた仕事だ。

 元々この小屋は廃墟同然の使われなかった倉庫だったのだが、俺が自分の居場所確保用に理事長に頭を下げて勝ち取った場所なのだ。

 

 だが勝ち取ったとはいえ、やはり廃墟同然の倉庫。見た目はほんとに脆く、壁面に至ってはカビすら生えていた有様で、当然このままでは私用で使うことができなかった。キノコも生えてたからな。あの時マジでビビったわ。

 

 なので、俺はこの倉庫を改造――もといDIYすることにしたのだった。

 

 実家が自然豊かな北海道にあったおかげで木こりとかの経験もあったし、同じく趣味活を生きがいとする親父に色々教えてもらっていた身だったから、特段、建築に苦労することはあまりなかったな。

 

 あ、でも電気関連の設置とかは流石に専門外だから理事長に相談した。

 そして、それがきっかけになった。

 

 理事長からのふとした話題――理事長が個人的に抱えてたにんじん畑の運営についての話題に合わせて、気まぐれに『俺が飯屋でも開いてそのにんじん畑の運営を合法的に認めさせましょうか?』なんて返したのが全ての始まりになった。

 

 冗談交じりで答えたつもりだったのだが、あの見た目マジロリ理事長はすっげぇ真に受けて『驚愕! ぜひ頼みたい!!』と、俺の手を握ってきたのだ。今でも思い出すあのキラキラした目、マジで嬉しそうにしてたな。理事長秘書のたづなさんは額に手を当てて呆れてたけど。心中お察しします。

 

 ただ気分屋の異名で通ってるさすがの俺でも、即時決断とはいかなかったので半日ほど時間をもらい俺は返答を考えた。仕事に影響するくらいの規模にもなると、じっくり考える必要があったのだ。

 

 幸いにも、俺は人並みには料理できるし、料理自体をめんどくさいと思わない性格――なんだったら楽しめる側の人間だった。俺一人暮らし。そこそこ自炊できる。世間じゃこれが異性にモテる人間らしいね。あまり興味ないけど。

 

 あの時の俺は芝生に寝転がりながら、特に断る理由もないことを自覚し数時間ほど呻いていた。

 

 んで、ちょっと考えて決定的な決断理由が生まれたのだ。

 

 

『……店主ってなんか……良いな』

 

 

 だって、飯屋の店主って一度は夢見るじゃん。男の夢じゃん。以下完結。

 てなわけで即決である。

 

 俺は理事長の手を、固く握り返しに行くのだった。

 

 結果、理事長は大歓迎といわんばかりに、小屋の改造計画と飯屋の創設を学園側に即提出。

 1日を通しての会議で、提案に対する利害が一致したため、計画が承認されることになった。

 

 

 お偉いさん(学園)側の利益としては

 【普段から他のトレーナーが抱えてる業務に対するストレス解消を行う場の創設】と、一つ目に語ったことに関係する点【雑務業のデータを受け渡す際に通す中継地点としての場所の活用】だ。

 

 俺の利益としては

 【自分の作業と自由スペースの確保】と、【飯屋の店主というロマンを手に入れること】

 

 この見事なまでの利害一致に、会議に出てたお偉いさん方は反論の意見がまったく出てこなかったことを今でも覚えてる。何せこの計画がトレーナーの業務システムを良い方へ一新する可能性があったのだ。否定の理由がない。

 

 ここだけの話、眉間にしわが寄っているお偉い爺さん婆さんを見るのは非常に気分が良かったです(ゲス)

 

 そして承認から数か月。

 小屋も完成し、俺は晴れて 小さな拠り所『ウマ小屋』の店主になったのだった。

 新人トレーナーには、勝手に飯屋を開いていると思われがちだが、しっかりと学園側の意図を理解したうえで俺は経営してるのだ。えらいぞ俺。

 

 ――てなわけで以上、俺が普段行っている業務である。

 トレーナー業? ああ、あれは趣味の内だから。趣味=業務じゃない。QED 証明完了。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 さて、今更な説明も終わったところで場面は変わり、時は今、場所は『ウマ小屋』主演は俺、ウィング、東条先輩、ゲストに新人トレーナーを呼んでおります。

 

 

「演劇の紹介みたいだね」

「みなまで言うなウィング。あ、お待たせしました東条先輩」

 

 

 もはや当たり前のように俺の隣に立つウィングの言葉をいなしながら、俺は目の前で腕を組みながらカウンター席に座る東条先輩に語り掛ける。

 さらにその隣には俺に用事がある()()()新人トレーナーが座っている。……なんか挙動不審状態で。

 

 

「遅いわ。休憩時間も過ぎているのだしもう少し早めに支度をしてほしかったのだけど」

「すいませんね。経理処理を終わらせて速攻寝たもんで、データのコピーをし忘れたんですよ」

 

 

 そう言って、俺はカウンター席に座る二人に黒色のUSBを渡す。

 

 

「あ、コレ今週分の書類データです。隣の新人トレーナーの人もどぞどぞ。せっかくなんで今渡しておきますね。日付順にフォルダも並べておいたんで案外見やすいかと」

「……あ、はい。ありがとうございま……ってはい!? もしかして終わらせたんですか!?

 昨日サーバーに保存したばかりの山みたいにあったあの書類を!?

 

 

 渡した途端、新人トレーナーの方が静止していた体に鞭を打つように跳ね上がった。

 ああうん、そういう反応もう慣れたから。毎回俺を始めて利用する新人トレーナーに驚かれる反応されるからね。

 まあそりゃ昨日まで四苦八苦していた書類共が片付いてるってことを聞かされりゃ驚くのも無理無いと思うが。少しは安堵してくれる反応をとってもいいんだよ?(無理)

 

 

「そうだけど。あ、もしかして紙での出力の方がよかったか?だとしたら一回小屋に戻って印刷しなきゃいけないから時間が少しかかるが」

「いえそうじゃなくてですね……えっと、と、東条先輩!? 今更な気もするんですけど説明が欲しいです!」

 

 

 動揺に動揺を重ねて助けを求めるように東条先輩に説明を求む新人トレーナー。

 

 やかましうるさしという感じで眉間をつまみながら東条先輩は説明を始めたので、俺は傍に置いてある袋から氷砂糖を取り出して口の中に放り込む。

 

 ウィングもいるか?いらん? あ、そう。じゃあニンジンジュース用意するわ。飲むだろお前?

 

 

「そういやウィング、お前授業は?」

「東条トレーナーに呼ばれたって名目で二コマだけ休みにしてあるよ。休む口実ができたから少しうれしい」

「おー、そりゃ良いな」

「聞こえてるわよ貴方達」

 

 

 ひぇ、地獄耳。

 

 

 

 

 

 今先輩が新人トレーナーに言ってる俺の業務の説明は上記で終わらせてるから、まあこれは補足ということで。

 

 通常、順調に処理し終わったデータを受け渡す時は、昼休憩が終わった後ぐらいに俺自ら出向いてそのトレーナーに渡しに行く。もちろんセキュリティの都合上、受け渡しに行くまでの道中は監視が付くぞ。学園側の用意した黒服のきっちりとした真面目そうな人がな。あと筋肉もガチムチだ。

 

 だが、もし重要な用事で受け取りができない場合。

 それこそ、各トレーナーの担当絡みの用事があった場合はどうするか。

 

 幾ら雑務業のデータの受け渡しとはいえ、トレセン――それも中央の施設のデータとなると、ただの雑務業のデータの規模もとんでもない規模になる。

 例を言うと『数百万単位の費用が必要になる施設の貸し出しの取引資料』とかだ。そんな貴重な情報を監視無しで業務終了後に持ち運ぶことは、まあ言わずもがな流石に危険すぎる。

 

 だからそういう時、俺の店を経由して受け渡すのだ。

 さっきも語った【雑務業のデータを受け渡す際に通す中継地点としての場所の活用】である。

 

 飯屋の飲食や予約での来店という名目なら、データの受け渡しという可能性を感づかれることもまずないし、持ち運びの不要ということも合わさって安全性は高い。なんせ俺の業務室の扉って鉄製でセキュリティーロック3重のガチガチ部屋だからな。覗かれるような窓もないし。

 

 っと、先輩の説明が終わったぽいな。

 

 

「――ということよ。今日は挨拶だけで終わらせるつもりだったのだけど……」

「まあ、初回サービスってことでささっと終わらせておきましたよ。数日はそっちの新人トレーナーの方も担当に集中できるでしょうね」

「…………毎回思うのだけど、貴方そういう気遣いは普段からできないのかしら」

「それ、数ヶ月前に沖野先輩にも言われました」

 

 

 まあ、これが俺の通常運転なんで変えるのは無理っすね。うん無理(大事なことなので2度)

 

 

「……んで、新人トレーナーの方は確か俺に用事があるらしいですけど。一体何の用事です?」

「さっきの言った通り、ただの挨拶よ。良くも悪くも、これから貴方に世話になるのだから」

「『悪くも』は余計過ぎません?」

「否定できるのかしら?」

「いやしませんけど」

「……できないじゃなくて『しない』って言いきれるところ、自分を理解してる感じがしてトレーナーらしいよね」

「そりゃ俺だし。で、挨拶でしたっけ」

「っ!」

 

 

 空気になりかけてた新人トレーナーがビクリっと体を震わす。

 東条先輩は新人トレーナーの方に目線を向けて、「ほら挨拶しな」という風に顔を動かす。

 

 新人トレーナーはそれに応える様に俺に顔を向けてお辞儀をした。

 

 そして、俺と新人トレーナーは――……名前長いから『後輩B』と略すか。

 まあ簡単な自己紹介と挨拶をお互いに終えた。

 

 で、用事はそれで終わりかと思ったんだが……

 

 

「あの、多良先輩。一つだけ聞きたいことがあるんですけど良いですか?」

「ん? ああ、まあ。俺が答えられる範囲ならいいが」

 

 

 申し訳なさそうに後輩Bが俺に問う。

 あー、いつものあれかな。先輩としての助言みたいなのが欲しいとかそんな感じのやつg

 

 

「先輩があの都市伝説の――【童心】なんですか?」

「――――」

 

 

 ハイ絶句。

 ああそう、そういうことね。コイツまさかのネットの渦出身かよくそったれ。ああ、くそくそくそぅ……現実(リアル)って奴はいつも俺に牙をむきやがってあ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"!!!!(発狂)

 

 頭を抱えそうになりながらも、俺は冷静に周囲を見る。

 

 東条先輩は言葉の真意が分からず頭上に?を浮かべている。

 そりゃそうだろうけど。この人がネットの世界に入り込むイメージ付かねぇし。

 

 

「くっふ……っ、まさか掲示板に居る人だったなんて……っ!」

 

 

 んで隣に立つウィングはめっちゃ笑いをこらえてた。

 この野郎他人事だと思いやがって。お前は世間に【飛翼】とか良い名前で知られてるかもしれねぇがよぉ……俺なんか酷いんだからな?

 【童心】って俺の行動が()()()()()()()って付けられた名前だぞ?どこにカッコよさも敬意もあるんだよ。

 

 ……愚痴が長くなったな。まあしっかり受け答えはしよう。

 

 

「…………あー、お前あれか。スレの出身か」

「トレーナーを目指していた随分昔の事ですよ。最近はご無沙汰です」

「そうか。まあ、偶にはスレに顔を出してやれ。まだあそこ(深淵)全然過疎ってないから面白いぞ」

「考えておきます。……自然な受け答えってことは、答え、合っているんですね」

 

 

 なんでキミが落胆した感じの表情をするんですかねぇ……。

 あれか、真実は残酷って奴か。都市伝説の真実を知って想像してたイメージと違ったって奴か。

 

 

「……ま、その問いに関しちゃ正解で構わねぇよ。あとこの件、一応言っとくが他言無用で頼む」

「大丈夫です。自分もネットの民だった者なので、そこら辺のプライバシーは守ります」

「よし」

「貴方達、一体何の話をしているのよ……」

 

 

 ジト目で俺達を見る東条先輩。

 これはあれなんで、そういう世界に入ったことのある人間しか分からないアレなアレなんで、理解しなくていいですよ東条先輩。ていうか理解したらあんたのキャラ壊れそうで怖いっす。(ちょっと見てみたい)

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 一つ礼をして、僕達はその小屋――いや『店』から出る。

 

 僕が挨拶をした後、多良先輩は「腹減ってるだろ」と簡単な食事を作ってくれた。

 一応お店ということだから代金がかかるのかと思ったのだが、多良先輩が「世話掛けた迷惑料だ。割り引いとくよ」と気を聞かせてくれるらしい。

 後日、給料から10円だけ差し引かれているのを確認。店主ということだけあってしっかりと代金は取っていったようだ。

 

 

 濃いめの味付けがされた生姜焼きはすごく美味しかった。

 

 

 多良先輩との会話はとても有意義な時間で終わった。

 伝説を育てた大先輩からの助言の数々、些細な会話に至るまで覚えている。

 スレの民というところからも波長が合っているのかな。根拠はないけど。

 

 

『助言? あーそうだな。まあとにかく、お前が今面倒かけてる娘を楽しませる事を考えてみたらどうだ?』

 

『なんでか、ってそりゃお前その方が楽しく走れるからに決まってるからだろ。……おい笑うなウィング、分かってるから。昔お前に言ったのと似たようなこと言ってんのは』

 

 

 一つ思うが、アストラルウィングは多良先輩との距離が近すぎではないのだろうか?

 なんか気づけば隣に立っているような……元担当との一心同体感っていうものなのかな。

 引退バになっても、トレーナーとの絆が固く繋がっているとか。

 

 このお互いに遠慮のない感じ……夫婦のような関係性を思わせるなぁ。

 

 

『ま、楽しいってのは重要だぞ。モチベの維持、精神面の安定、何より物事が楽しいって思えるようになるからな。人生の価値が上がる』

 

『在り方は人それぞれだ。十人十色(じゅうにんといろ)、適材適所。こんな言葉もあるくらいだし』

 

『時間はあるんだ。お前に合ったやり方で、お前なりの【トレーナー】てのを見つけりゃいい。選んだ娘と一緒にな』

 

 

 まるで自由奔放を体現しているような人だった。

 厳格でもなく、他人の意思を尊重する自由人のように見えた。

 

 

「その見方は間違いじゃないですよ。あの人はどこまで行っても()()()()()()()()ですから。

……まあ、気まぐれで行動することが多いから、周りの人が着いていけないこともありますけど。今日みたいに」

 

 

 隣を歩くアストラルウィングが誇るように、楽しそうに語る。

 

 子供のようで大人……うん、確かに納得できる。

 短い会合だったけど、それに納得するだけの理由も、言葉も、行動も見れたからね。

 

 

 ……あと、どうして多良先輩は僕にスレの民だって気づかれて嫌な表情をしていたんだろうか。

 世間に顔を徹底的に出そうとしない理由もだ。アストラルウィングのトレーナーなら求める以上の名声とかも得られるだろうに。

 

 

「あれだよ。噂は噂のままにしておきたいから、トレーナーは秘密にしているんだよ」

 

 

 ??? その心は?

 

 

「『その方が()()()』らしいですよ。考察とかも捗るだろ?って♪」

 

 

 ……ああ、確かに。多良先輩らしい。

 自分の糧より、他人の楽しみを優先するのか。それができる人なのか。あの大先輩は。

 

 確かに伝説だな。僕が思っていたより、もっと。

 人として完成されているなんてものじゃない。

 

 それよりもっと大事なものを、あの先輩は信条に持って行動している。

 

 尊敬を越えて、憧れにでも昇華しそうだ。あの生き方には。

 

 

 

 

 





理想の生き方って決めてた方が楽しいよね。


追記:遂に評価バーが満タンに行きました。いつも見てくれてる読者のおかげです本当に感謝感謝(土下座)

あとは赤にするだけだ……がんばろ。


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