トレセン学園の隠れた名店   作:[]REiDo

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何気に初めてのレース描写だったりする



止まらない高揚と壊れたブレーキ

 

 正直、不安が無かったと言えば噓になる。

 

 アイツが――アストラルウィングが走ると、走りたいと、そう聞いて最初に頭に浮かんだのは「おま、テイオーおい……」という呆れではなく、単純な心配だった。

 呆れは次に湧いて出たがな。てことで俺の胡坐の中心に座ってるテイオー、お前は後で説教タイムだ。

 

 話を戻すが、心配というのは、もちろん怪我について他ならない。

 

 現役から引退して約数ヶ月。テイオーとの併走で脚を慣らしてるとはいえ、それでも全盛期程の練習量には程遠く、鍛え方も、筋力の質も甘くなっている。

 そんな状態で現役を飾る彼女――ライバルのシンボリルドルフと走るというのだから、これまた話を聞いた時には腰が抜けたもんだ。

 

 幸い、アイツはテイオーに比べて遥かに頑丈な足を持っている。

 のだが、それでも怪我をする可能性を危惧すれば全然ありうる話だ。それこそ――

 

 

 ――ウィング(アイツ)が全力で走れば。否が応にもその可能性はグンと膨らむ。

 

 

 ……一応、念を押して言ってはおいた。本気は出すな、と。

 『飛翔(ひしょう)』まで逝くんじゃねぇぞ、と。

 

 それでもあり得るんだよ。というか、その不安が的中する可能性の方が高いんだよな。

 長年の付き合いで、アイツの性格を知っているからか。

 それとも、楽しいことをしている最中はそれに夢中になってしまう、という実体験からか。

 

 ……結局、心配の念は尽きないばかりだった。

 

 だから保険を掛けた。

 いつものように。いつかのように。わざわざホテルから機材を持ってきて。

 怪我だけはさせないという俺の私情だが、それはたぶんアイツも分かっての事だろう。念を押して言っといたし止められても文句は言わないはずだ。

 

 だからまあ、なんだ。

 もし、マジでやらかすようなら、後で頭にチョップくらいはしてやらないとな。

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 ――言葉はいらない。ただ抱える思いを胸に乗せて走るだけ。

 私たちが走る2000mに敷かれた芝。極限に長く感じるこの3分間をただただ噛みしめる。

 

 

 ゲートが開き、最初に前に出るのは私――アストラルウィング。

 後方に相手のシンボリルドルフがついてくる。

 

 私が使うのは逃げの一手。

 矢のように迷いなく前に進むその走り方は、未だ体に染みついていて離れてはいないようだった。長い時をかけて手に入れた自身の能力に誇りを感じつつ、それをわざと捨てて、今この状況を楽しむことに専念する。

 

 対して、ルドルフは後方から私を観察しつつ、絶え間ない走りの中私の隙を窺っている。

 いつぞやに何度も眺めた差しの走り。私を何度も屈服させてきたその走法。

 私とは違い、相手を正面に捉え、確実に叩き潰す『絶対』は今も健在だ。

 

 正直、彼女の姿を視界の端に捉えるだけで震えが走る。

 それは恐怖からくるものなのか、それとも歓喜から得るものなのかは分からない。

 分からない、が。

 

 

「は、ぁ……!」

 

 

 吐いた息が暖かく、底冷えた肝を身に染みつつも。

 抱えた思いが、今も私の中で渦巻いているのを自覚し、感じているところを見ると――

 

 ――私は、この状況を楽しんでいるのは間違いないらしい。

 

 それが分かれば十分。

 あとはこの高揚に身を任せて、ただただ走るだけだ。

 

 

 

……

…………

………………

 

 

 

 

 ()()()()()()

 

 極限の3分。油断も許さないはずのその刹那にも関わらず。

 私は、私の胸? の中で渦巻き続ける感情に違和感を自覚し、意図せず意識が緩む。

 

(……なんで?)

 

 久しく感じる先頭の特権ともいえる暴風の雨。

 誰にも邪魔されない、真っすぐで綺麗な緑の景色。

 吐いた息が気道を燃やし、連続して踏みつける脚の振動。

 油断すれば抜かされるかもしれないという、常に纏わりつく緊迫感。

 

 本能的にどれも楽しんでいる。全部楽しめているはずだ。その筈なのに――

 何か、すっぽりと抜けているような虚無感が拭えない。

 

(な、んで……?)

 

 ――1000m地点通過。

 

 一秒

 この瞬間に、さっきの思考が奔る。

 地を踏む脚取りは止まらない。意識が緩まろうともギアの回転が減速することは無い。

 

 二秒

 理由を。違和感の理由をふと考える。

 だけどレース中、酸素も上手く取り込めない中で考える思考は全く纏まらなかった。

 

 三秒

 思考を放棄した。

 その代わりに……というか、頭で考えることやめて自分の体の事だけに集中し、感じたことで分かったことが一つ。

 この虚無感、これはお腹が空いているときのようなものなのかもしれない。

 そんな、どこか穴が開いた、満足できてないような感じが――

 

(満足?)

 

 どうして、と思う。

 こうして楽しんで走れているのに、何で満足してないんだろう。

 満たされないモノでもあったのかな。

 

 前に凸るしか知らないはずの足取りだけど、一瞬。

 ほんの一瞬だけ、ルドルフのいる後ろに視線を移動させた。

 

 

「……?」

 

 

 私の視線に気づいたのか。

 疑問を浮かべるように表情を変化させるルドルフ。

 炎天下の中で汗はかいているけど、その表情に焦燥感は見えない。

 

 そして、私は気づいた。

 

 さっきまで感じていた虚無感の正体。

 お腹がすいていたような感覚が渦巻いていた理由に。

 

(全力が……)

 

 そう、全力。

 やり切れていると、自分の限界を引き出せるかというそんな焦燥感の塊。

 それが足りない。満たされていない。

 

 走っているうちに現役の頃を思い出しちゃったのか、本番のレースのような思考になっていたらしい。

 

 でもルドルフは?

 そう疑問を覚えた瞬間、ふとターフの外、(らち)から声が聞こえてきた。

 聞こえた。

 

 ――()()()()()()()()()()

 

 

 

『すごい…! 』

『あれが…【皇帝】と【飛翼】の走り……!』

『レベルが…格が違う……!』

 

 

(そっか……)

 

 私に合わせているんだ。

 全力じゃない私に乗って、合わせて。

 彼女はまだ、魅せる走りをしているんだ。

 

 だってほら。

 

 彼女も。私も。

 まだ、周りの音が聞こえてしまうくらい。

 耳を傾けることができるほどの。

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

………………

 

 

 

「アスウィー笑ってるね。すっごい楽しそう」

「……ああ、そうだな」

 

 

 ターフの外で胡坐をかく男とその中に座る少女が言葉を放つ。

 少女にとって、目の前の光景は待ちに待ったと言わんばかりのモノらしく、思わず顔を緩ませていた。

 憧れの対象であるルドルフ(カイチョー)の走りは、映像と、実際のターフで目に焼き付けるほど見てきた。

 普段から世話になっている彼女(ウィング)の走りは、見るだけでなく、実際にこの身に受けてきた。

 

 しかし、その全力は知らなかった。

 

 だからこそ見て見たくなった。

 憧憬を抱くテイオーは、栄光を掛けた彼女達の話を聞くたびにその欲望が抑えられなくなり――

 

 

「すごい……っ!!」

 

 

 こうして、親愛の彼(トレーナー)の手によってこの状況に至る。

 

 

 そして、そんな状況を作り上げた彼だったが。

 跳ねる声色に体をうずうずさせているテイオーの頭の上に顎を乗せながら。

 嬉しそうに眼を開くテイオーとは対称に、その目を細めていた。冷静に観察していた。

 

 アストラルウィングの、歓喜に満ちた、弧を描く口角とその表情を。

 

 

「これは……準備しといたほうがよさそうさな」

 

 

 そう言って、彼は手元のPCを操作する。

 音量のUIを確認し、手に持ったマイクのミュートボタンを解除し、再び彼女の走りに目を向ける。

 

 彼は、仕事以外のどんな時でも趣味事を優先させる男。

 それを行う身体に、支障をきたすことを許容することができない性格だった。

 美徳ともいえるその決定事項は、どんな人間にも例外は無い。

 

 

 

………………

 

 

――1200m地点通過。

 

 

(……もっと)

 

 弾ける。

 何かが、どこかで弾けた。

 それはきっと持ってなくちゃいけないモノで――

 

(…………もっと)

 

 思考を停止させる。

 ただ一つの思いを、胸に残して。

 残りのものを放棄する。

 

(……もっと、もっと!)

 

 ギアが上がる。

 加速を開始。脚に力を込めて、ただ自身の全力を振り絞るために。

 

 一瞬だけ、空を見る。

 目の前に広がる青の海。目の前に誰もいない景色。

 トレーナーと見つけた、私だけの大事な――――

 

 

(──もっと!!)

 

「なっ……!?」

 

 

 二度目の加速。

 私の異様さに気づき始めたルドルフが表情を歪ませた。いきなり豹変した私を見て困惑中なのかもしれない。

 

 でも大丈夫、相手は【皇帝】のルドルフだ。

 そんなことで止まったりはしない。最後まで追いつく、そして追い抜かそうとしてくれる。

 確信はある。それは彼女が頂点に立っているが故のプライドがあるから。

 だから、本気を出しつつある私にも付いてきてくれる。

 

 

『そんな……!?まだ!?』

『まだ速くなるの!? アストラルウィングってもう引退した身じゃ……!?』

『生徒会長もすごい……! いきなり加速した彼女についていって……!?』

 

 

 トレーナーが連れてきた……?

 ううん、もう誰の声かもわからないや。とにかくそんな誰か達の言葉が耳を貫く。

 

 そして私は、誰が言ったかもわからないその言葉に否定を入れる。

 

 まだ。

 まだまだ。

 

 こんなものじゃないんだ。

 もっと速い。もっと強い!もっともっと!!

 彼女は、ルドルフの全力はもっとすごいんだよ!!!

 

(私が本気にならなきゃ。全力で追いついてくれないんだよね?ルドルフ?)

 

 だから、全力で。

 もっともっともっと、この先にある楽しみを。

 本気の彼女と戦える楽しみを!

 

 

「……あは♪」

 

「……っ!!」

 

 

 後ろを駆ける彼女の表情が変わった。

 当然。私がもう1段ギアを上げたからね。

 ルドルフも私に合わせるように加速する。追い付いてきてくれる。

 

 その様子を、彼女の焦燥を見て不意に私の口角が上がった。

 

 私も同じ。

 追い付かれる、追い抜かれるかもしれないという思考がよぎって、少しの興奮と焦燥感が心に沸き立つ。

 でもそれが良い。

 

 簡単で、約束された勝負なんてつまんない。

 面白くない。

 楽しくなんてない。

 

 不確定だから楽しいんだ。

 やり切れるから楽しいんだ。

 

 だからもっと見せて。

 ルドルフ。もっと私と一緒に走ろう。

 私と一緒に楽しもっ!!

 

 

「……! 待てアストラルウィング!キミは──」

 

 

 最後のギアを上げる。

 何かが、弾ける音が再び。

 

 

「っ……♪」

 

 

 ギチリ、と。

 不意に――いや、来ると分かっていた()()が。

 体に響く痛みが全身を駆け巡る。

 けど関係ない。それじゃぁ止まらない。止められない。

 足りないんだ。もっと楽しく。面白く。全力で!

 

 私の【飛翔】を、今ここで──

 

 

 ――――

 

 

 

 

「ウィングゥッ!!!」

 

 

 

 

 ――――!!

 

 甲高く、走ることに夢中になり過ぎていた私にも聞こえるほどの大声量で聞こえた声。

 意識外から呼ばれた私の名前に、思わずびっくりして私はギアを緩めてしまった。

 

 あと一歩、ほんのコンマ数秒先だけその声が無かったら、もっと楽しめたのに、と。

 そんな口惜しい感覚が私の中に生まれる。

 

 あ、ルドルフが私を抜いて前に……

 まずい、スタミナが、あと体が痛……痛い?

 

(って、さっきの声トレーナーの……?)

 

 ここで、声の正体が誰であったか気づいた。

 いけない、集中しすぎた。

 私のトレーナーの声に気づかないなんて、どれだけ集中してたん、だ――

 

(…………あ、ああ!!ああぁ!!?)

 

 そして、ルドルフに抜かされたことで、トレーナーの声に気づいたことで、体を走る激痛で。

 私はさっき、このレースで何をやらかそうとしていたのかを理解した。

 さらに思い出す、レース前にトレーナーから言われた注意を。

 

 

『……俺が言わなくても分かってると思うが、くれぐれも『飛翔』までは行くなよ? 今のお前の脚じゃ間違いなく――』

『それくらい言われなくても分かってるってばトレーナー。それじゃ行ってくるよ~♪』

 

 

(な、に、が、分かってるってぇ!? うわぁやっちゃった!!やらかしちゃった!!)

 

 ――残り200mくらい。

 前はルドルフに譲った。うん。いや、今はそれどころじゃない。

 やっちゃった、と。この後の事を考えながら私は焦っていた。

 

(久しぶりのレースだからって思考停止して楽しみ過ぎた!? 私あともうちょっとで『飛翔』するとこだったよね!? トレーナーから注意されてたのに!)

 

 思考し、体に意識を持って行けば、待っているのは限界を超えようとした代償にやってくる痛みの信号の連鎖。

 当たり前のようにやってくる痛みが私の全身を襲う。

 

 ただでさえ引退してから鈍っているのに、あれからギアを2つくらい上げた……よね?

 ……そりゃ痛いよね! テイオーとの併走ですらまだレベル合わせのために1段階くらいに調整してあるんだし!

 

(いだ、だだだ!!? ちょ、私ってば本当に顧みないでこんなこと……っ!!)

 

 ―残り50m。

 集中力が、アドレナリンが切れた今、前に出るルドルフを追いかけるのは得策ではないと、安全な走りに移行する。

 これ以上痛みが悪化しないように。

 

 ……後でトレーナーから怒られる要素を減らすためにも、ゆっくりとゴールの線を踏み切った。

 

 ゴールインして、その場に止まり、肩で息をしながらトレーナーの方をちらっと見る。

 うわぁ……トレーナー頭抱えてるよ。こうなるって分かってたんだ。私の理解度高すぎ。

 怒っては……いないと思うけど、後で説教くらいは覚悟しといたほうがいいかもしれないかなぁ……。

 

 う~ん、やだなぁトレーナーの説教。

 すごい理屈的に諭してくるから反論もできないし、長いんだよねぇ……。(最長2時間)

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 アストラルウィングは戦闘狂である。

 

 ひでぇ語り始めから始まったが、これは事実だ。マジだ。本気と書いてマジな奴。

 普段は大人しい感じなウィングだが、ことレースが関わると、アイツは異常なまでに興奮する性格を持っている。

 

 これ、言っとくが俺が関わる前――契約を結ぶ前からの話しな。

 

 挫折時期、とでもいうか。まあ、3年前に負け続きで心がへし折れていた時期があったんだが。

 その頃ですら、その片鱗は垣間見えてた。シンボリルドルフに叩きのめされて、なお努力する姿なんてまさにそう。

 まあでも、こんなもんはまだ序盤も序盤。

 そこからまた1年の間でそれがさらに表面化してきたのだ。

 

 なんせ、アイツ自分の体が頑丈だからって大体月に2回のレースを要求してくるんだぞ?

 

 参考までに言うが、他のウマ娘だって普通は月に1回、もっと長引かせて2,3ヶ月に1回が限度だ。

 理由なんて単純、脚が()()()()からである。当然。

 

 だというのに、アイツはその常識ガン無視でレースに出る。うん。

 しかも()()()()()()()()()()()()()()()、だ。

 

 ……そんなことして冠取ってりゃ、スレ内で【奮励の化身】なんて呼ばれるわけで。

 

 まあ~……有名になったよな。それこそドーピング疑惑が出る勢いで。

 G1初めて勝ったときなんか、()()が開催されたもんだ。

 

 

 んで序盤の話に戻すが、アイツが戦闘狂だってことについてだ。

 ここまで異常なレースへの執着を持っておいて、昔のアイツは今見たようなガチでマジ顔染みた豹変はしなかった。

 そこはまあ、一度叩き潰された弊害だな。表面上に出ることが少なくなっていたのだ。元気なかったし。

 

 ……んだが。問題はなぜ今こうなってしまったか。

 結論を言おう。

 

 それ、俺のせい。

 

 昔のアイツは、それが表面上に出てなかっただけ。

 んで今だ。

 

 アイツは、俺のやりたいように生きるという信条をガッチリ受け止めたのか、なんていうか。

 うん、躊躇が消えた。

 

 俺と同じだな。やりたいことに対して遠慮も躊躇もない生き方。

 それを完全に真似てる。ていうか、今も学んでる最中ていうのが正しいか。

 

 

 それが、今回起こった事案の根柢の理由だ。

 アイツはやりたいことやっただけ。

 それこそ、怪我をしようが、どうなろうがただ楽しみたいがために全力を出そうとした。

 

 ただ、それだけである。

 

 

 

 

 

 レースが終わった。

 ……って、違う。レースじゃねぇ。これ元は併走だっての。アイツらのマジな気迫に当てられてさっきまでG1レースかと錯覚してたわ。

 

 あー、東条先輩頭抱えてら。俺?俺も頭抱えてるよ。

 言っとくが怒りは無いからな? アイツはやりたいことやってきたんだからそこに怒る理由は全くないぞ。

 まあ、注意したのにも関わらず本気を出そうとした件については、内心呆れてるがな。

 どうせアイツ、後のことビクビク考えてる最中にも満足感に浸ってるに違いない。

 根拠? 俺がそうだから。以上。

 

 

「ト、トレーナー……? 今の……」

「……あ、すまんテイオー。いきなり大声耳元で出しちまった」

「ううん、それは良いんだけどさぁ」

 

 

 俺の胡坐の上で座っているテイオーが上目つかいで俺を見る。

 その様子は挙動不審気味で、ライオンでも見たかのようにビクビクしていた。

 いや、ごめんて。あとで頭撫でてやるから、そんな怯えないでくれ。

 

 

「アスウィー、大丈夫かな?」

「脚の事か? まあ、たぶん大丈夫だとは思うがな」

 

 

 全力はなんとか止めたし、シンボリルドルフと元気に話し合いをしているところを見ると、そこまで深刻なダメージではないと予測できる。

 ただ、冷や汗はかいているな。全力1歩手前まで行ったんだし、流石に筋肉の張り許容量が超えかけたんだろ。激痛くらいは感じているかもな。

 

 

「ま、どの道後で施設の医療班に鑑識を入れることには変わりないな。久しぶりにガチで走ったんだし診せるモンは診せておかないとな」

「…………」

 

 

 俺の言葉にテイオーが口を閉める。

 どこかおろおろとした様子。孤児院で何度も見たような、罪悪感を感じる仕草だ。

 

 

「……お願いしなきゃこんなことには、てか?」

「……分かる?」

「顔に書いてあるよ。申し訳なさが全開だ」

 

 

 はにかみながら目線の下にいるテイオーは微笑する。

 

 

「一応言っとくが、このレースに関しちゃ、アイツが望んで志願したものだからな。しかも怪我をしかけたのは単なる自業自得だし。責任はアイツと、それを止められなかった俺にある。だからまあ、なんだ。お前のせいじゃないから気にすんな」

 

 

 無駄に考え込むテイオーの性格を考えて、頭に顎を載せながら忠告をしておく。

 テイオーも日に日に成長してるし(精神的にも)大丈夫だとは思うが、まあ、念のためにだ。

 

 

「むぅ……」

 

 

 納得がいかないようで、ウマ耳を俺の頬にペシペシ当てながらうねりを上げる。

 

 悪いがこればかりはいくら可愛げのあるテイオー。お前でも譲らんよ。俺はお前らの身を預かっている身だ。保護も教育も、その全ては俺の責任にある。

 異論反論口答えの全てを認めん。

 

 

 それより、その耳をペシペシやる奴さ。なんか気持ちいいからもうちょっとやってくれね?

 

 

 

 

 





早めの投稿完了。(毎日投稿とは言ってないごめんな俺の執筆速度じゃきちぃ)

ウィング、戦闘狂だということが判明ってことでね。
やりたいことをし過ぎた結果、タガが外れてしまった者の末路だよこれが。
まあ、元々その素質はあったけどね(常人の努力から出る弊害怖ぁ……)

これが脇役でいることに耐えられなかった少女の姿か……。


あ、レース描写どうでしたかね。
なんか感想やら入れてくれると参考になるんで、まあ育成するくらいの時間がある人は一筆もらえるとありがたいっす。

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