後日談とか事後談とかそういうの
あのレース――じゃなくて。あの『併走』が終わってからは何事もなく事は進んでいった。
教官付きウマ娘のトレーニングを済ませ、休んでいるウィングの代わりにテイオーのトレーニングも並行に進め、やがて今日の解散時間になっていた。
現在時刻は午後5時。練習に参加していたメンバーも全員解散している。
俺は俺とて、閑散としたターフの隅で俺は持ち込んだ機材を片付けていた。
その後ろではテイオーとウィングが隣同士座って話し合っている。すごかったよ!とか、そんなものでもないよ、等の会話が繰り広げられている所を聞くと、どうやら併走もとい模擬レースと化したシンボリルドルフとの走りについて語っているのだろう。
「そーいやウィング、お前何の話がきっかけでテイオーの欲を駆り立てたんだ?」
「ん? あーあれだよ。ルドルフと私について昔の事とか、まあそんな感じの昔話みたいなモノをちょっと、ね」
「
「……レースの話は少ししたかな?」
「それが原因だわアホ」
手を止めずにウィングになんで
「ったく……。とりあえず、コレ片付け終わったらお前の検診行くからな。言っとくが、異論反論口答え文句は問答無用でナシだ」
「はぁ~い、分かってるよ~」
「わっ、重いよアスウィ―ぃ……」
俺の言葉に仕方なし、って感じで承諾しながらフワフワした返事と同時にテイオーに寄り掛かるウィング。やがて耐えられなくなったのか、ターフの芝に2つの小さな体が落ちていった。あとめっちゃ笑ってる。楽しそうだなお前ら。
ガチャガチャと機器を片付けながら、愛バらのじゃれ合いを眺めて俺は少し微笑する。
「ま、楽しそうで何よりだな……っと」
アイツらが何事も楽しんでいるのなら万事オッケーだ。
今日ウィングが無茶した件についても、アイツが楽しんでやれていたのなら……いや、間違いなく楽しんでいたからまあ、咎めやしないし怒ったりもしない。ていうかする理由もない。
ただ、体の怪我を考慮しなかった点については後で説教確定コースだ。
これについては、楽しんでやれたかどうこう関係無しだ。無論怒りはない。ただただ呆れと俺の信条に反する点だから説教するだけだ。てか常々言ってきてるし。怪我だけはするなって。
「ひぃふぅみぃ……よし、これで全部だな」
「終わった?」
「おう、丁度な」
機材をテトリスをするように隙間を作らず鞄の中に詰め込み、しゃがみ状態を解除して重い腰を上げた。
重量にして約6キロ。スーパーで売るような米袋の重量が片腕にのしかかる。
「ほれ、帰るぞ」
「はーい! 行こアスウィ―」
「あ、うん。よっこいしょ――っ?」
言葉に応えたテイオーが立ち上がり、ウィングもそれに続こうとするが……。
「「?」」
どうも動きが鈍い。
立ち上がったは立ち上がったが、いつもの足取りとは思えない程の軽快さがない。一歩を踏み出すごとにギシッ、と錆びた歯車が動いているかのようなぎこちなさ。
妙な挙動に俺は違和感を覚える。
「アスウィ―大丈夫?」
「あはは……。平気平気、ちょっと、ね?」
目に見えておかしいのが分かったのか、しまいにはテイオーに心配されている始末。
……まさかとは思うが、レースでの疲れが抜けきっていないのだろうか。
あの
……ふむ、とにかく不安だな。
俺の触察では軽い筋肉痛、酷くて炎症ぐらいだと想定してるが。
――いや、どちらにしろこんな状態だ。自分で歩かせるのは身体的に少しまずいか……。
(…………はぁ。しゃあない)
少々の思考。
ウィングが抱えているリスクと向き合い、少し覚悟を決める。
まあ何、少し持ち物が増えるだけだ。軽い筋トレだと思えばいい。
「ウィング」
「ん、なに?」
「乗れ」
えっ、と後ろの愛バらから自然と漏れ出たであろう声を聴き逃すことはできなかった。
ウィングの前で背を向けながらしゃがみ、俺は目を閉じる。
今頃、テイオーとウィングは困惑してるんだろうなぁ……と当たり前の予想を立てる。
そりゃそうだ。いきなり背を向けておぶってやるとか、気でも狂ったんかと。思っても仕方ねぇし。
だがまあ、違和感が悪化したら俺が嫌だし。
偶にはこう、気を使ってやるとしよう。
「えーと、それじゃ遠慮なく?」
「ん、遠慮なく乗れ」
「え、そんなあっさり!?」
背に乗せかかる少女一人分の重量。
テイオーがテンポの速さに驚いてるが、長年の付き合いである俺とウィングの間柄じゃ、このくらいは言葉足らずでも通る。
背に乗ったウィングの顔、というより口が俺の耳元に近づく。
疑問を浮かべるまでもない、わざとだコイツ。吐息がかかって少しくすぐったいんだが。
「……ありがと」
細い音量で鼓膜を通る感謝の一言。
耳に近づけたのは感謝を伝える為だったらしい。
なんだい、律儀なやつめ。
「気にすんな。俺がやりたくてやってるだけだし」
そう言って俺はウィングをおぶったまま立ち上がる。
……そういや、最近ウィングから
こういう時は大体、少女側が赤面している場面があったはずだ。
つっても現実、俺後ろ見えねぇから実際にウィングが赤面しているのかは分かんないんだが。
ああいう場面見るたびに思うんだけど、背負ってる男側はどんな心情なんだろうか。
焦ってるのか、照れているのか、それとも――
今の俺はどうなのか、自分の胸に聞いてみるが返ってくるのはいつも通りの鼓動だけ。
ふむ、動揺も焦りも無し。顔も暑くないから照れも無し。至って平常心らしい。
さて、ササっと診察する施設のとこまで運ぶか。
なに施設はすぐそこにある。ウィングが怪我しないよう優しく丁寧に運んで終わりだ。
その後は飯でも作って、テイオーらと一緒に団欒でもするか――
「いいなぁアスウィ―だけ。ボクもトレーナーにおんぶしてもらいたいなぁ~」
展開変わったなおい()
ウマ耳を後ろに倒し、尻尾をぶんぶん回しながら拗ねるようにそんな一言をだべるテイオー。
「……あのなテイオー。冷静に俺の状況を見てくれ」
「うん。両手はふさがってるし、背中はアスウィ―に取られてるね」
「ああ、だからな――」
「でもやってほしいなぁ~?」
滲み出る冷や汗。
……待てテイオー、そのジト目をやめろ。そんな目で俺を見るな。
「ふふ……っ! 断れそうにないね、トレーナー?」
おい、諦めるな察するなウィング。お前は味方してくれねぇのか。
コイツ担いだら年頃の少女2人分だぞ? 60kgは担げる流石の俺でも腰の負担が、腰の負担がな?(大事なことなので2回ry
「ね、ね。だめ?トレーナー?」
…………
「………………背中は空いてねぇから肩に乗れ」
「いいの!? わ~い!!」
「やっぱり折れた」
袖を握られて観念しました、はい。
無理です。やってほしそうに見る視線に耐えられませんでしたよはい。
やっぱ俺って子供に弱いんだろうか。弱いんだろうな。うん。
まあ、子供って基本的に欲に純粋な所があるしな。そういう所が俺によく刺さるんだろう。言い換えれば数少ない俺の弱点ともいえるかもしれない。
思考終了、一拍。
そしてテイオーの方を見ると。
…………ん? おい何やってんだテイオー。
幅跳びするみたいにしゃがんで、前に体重傾けて……
って、おいまさかおい。
待て待て待て!?!? まさか飛び乗るつもりじゃ――!?
「えいや~!!!」
「うっおおぉぃ!?!?」
警戒したと同時の次の瞬間だった。
ドカッ、っと覚悟していたはずの少女2人分の重さが俺にのしかかる。
背に預かるウィング、肩に乗るテイオーの太もも。
肩車におんぶ。傍目から見れば合体ロボットだ。ロマンがあるね。
「あっははっ!!それじゃしゅっぱーつ!トレーナー号だぁ!」
「元気だなぁおい!」
それはそうと非常に暑いんですだがね!?
太ももが頬に張り付いて密着するし、ウィングの胸が背中に密着して圧迫するし、もう暑いったらありゃしないんだがね!?
あと、ウィングは意外と成長してるようで何より。セクハラとか言われそうだからどこがとは言わないが。
「テイオーテイオーテイオー、テイオーテイオーテイオー、テイオー⤴テイオー⤴テイテイオー⤴♪」
テンション上がりっぱなしか。
なんか歌いだしたぞコイツ。癖になる音程だな。録音しとこ。
俺は固定された手でぎこちなくポケットに手を入れ、携帯の録音機能を起動した。
変な歌が茜色に溶け込む中、俺はほのぼのとした心地よさに浸る。
「筋組織の炎症ですね。症状的には軽いものなので自然治癒で治るかと」
「そうですか。ありがとうございます」
施設に着いた後、すぐに検査。
そして、出された回答にひとまず安堵し、俺は目の前の職員に一礼する。
「いえいえ、むしろ私としては悪化する前に止めることができたことに脱帽です。
確か『飛翔』でしたね。私も彼女の走りを見たことがあるので分かりますが、素人目にもあの走りは脚への負担が大きいと分かりますから。……それに引退した後の彼女では、体の造りは大きく変わっているでしょうし……この程度の怪我で済んだのは、トレーナーである貴方のおかげだと思いますよ」
「もしかしてファンでした?」
「……お恥ずかしながら、初のG1を取得した時からの追っかけですね」
急にめっちゃくちゃ長文言われて反射的に質問してしまった。
やっぱりそうなのね。なんかスレ民みたいな反応してるからまさかとは思ったが。
「G1初勝利したあの瞬間は、今も目に焼き付いてますよ。ボロボロの両脚で立ったまま両手を空に掲げる姿はもう……すごく印象的でした」
なんかヲタク心を刺激してしまったようだ。
俺は喋ってないのに、すごい長文がまあ出るわ出るわ。
ウィングは……慣れてんなぁ。赤面すらしてない。むしろ誇らしげだ。ドヤ顔はやめい。
掲示板で鍛えられたか、ファンサで鍛えられたか、どちらにしろ精神的に成長しているらしい。
昔じゃ絶対にありえない光景だなこれ。
コイツ、前はそんな評価受けたところで、まだまだとか言ってネガティブになりがちだったからな。自己肯定力が上がっているのだろう。良いことだ。
「あ、因みに、今この施設で定期健診を行っているのはご存じですか?」
「? いえ、初耳ですけど」
ヲタク語りが終わったのか、話を転換させて真面目モードに入る職員の人。
定期健診……そういや受けてなかったな。
テイオーはレースに忙しくて受ける余裕なかったし、ウィングは必要なかったし。
俺は……まあいつも健康体だし受けてなかったな。
「丁度、定期検診を行う特別車がここの施設に泊まっているんですが、その、良ければ受けていきませんか? 私からトレセン学園にお話は通しておくので、是非」
「あ~……だとよウィング。どうす――」
職員の提案を承諾するかウィングに目線を向けようとした時だった。
「…………どこ行った?」
そこにあったのは外枠が鉄パイプで出来た椅子のみ。
一瞬、目を離したすきにウィングの姿が雲隠れしていた。
出入り口である扉に体を回せば、ガラガラと音を立てて横開きになっている扉の様。
足音すら聞こえなかったんだが、アイツの前世はアサシンかなんかか?
「ちょっ、離してアスウィー!! オネガイダカラー!!」
「あ、ごめんねトレーナー。ちょっとテイオーを追いかけててさ」
と思えば扉の端から姿を見せて帰ってきた。
ウィングが片手でテイオーの腕をつかんで、まるで駄々をこねる子供を引きずってきた。
「何してんの」
「いや、せっかくだからテイオーにも定期健診受けてもらおうかなって連れてきたんだけど」
「注射はいやなんだってばぁ! やだやだ、離してよアスウィー!!」
「こういうこと」
「なるほ」
すげぇ簡潔に状況を聞かされて理解する。
テイオーって注射苦手なのな。新しい一面を知れてラッキー、メモメモと。今後の対策に役立てよう。主に検診に連れてく時に役立てよう。
てかシュールだなこの光景。
がっしりとテイオーの腕をつかんでいるウィングに、何とかして逃げようと傍にあるものを握力のある限り握って抵抗するテイオー。
めきめきと悲鳴を上げる扉には同情をせざるを得ない。アーメン。ウマ娘のパワーからは逃げられないぞ。(3敗)
「あ~……とりあえず受けるってことで、よろしくお願いします職員さん」
「はい、分かりました」
「トレーナァ!?!? 薄情者ぉ!!」
別に固執している宗教とかは無いが、不遇な目に合っている扉に心の中で十字を書き、とにかく定期検診を受ける旨を職員に伝える。
「ウィング、テイオーの介護はお前に任せる。力づく系は俺じゃ無理だ」
「分かってるよ。強制連行でいいんだよね?」
「モチのロンだ」
「りょーかい」
「ちょっ、まっ、ヤダアァァァァ!!!」
今度は首根っこをひっ掴まれて連行されていくテイオーに俺は思わず敬礼する。
どんまいテイオー。嫌な事する気持ちはよく分かるよ。でもやらなきゃいけない時はあるんだよ。仕事とか仕事とか仕事とかな……。
遠ざかっていくテイオーの声を聴きながら、俺は職員の人とウィングの検査結果について再び語り始めた。
がんばれテイオー。俺も後で行くからよ。
終わったらせめてもの労いとして飯でも作ってやろう。アイツの好物マシマシで。
「あら? 今のは……」
「あ、そこの君ちょっといいかな。今ちっちゃい子が通ったと思うんだけどどこに行ったか知らない?」
「ちっちゃい……トウカイテイオーの事ですの? 彼女なら今海岸の方に走っていきましたわよ?」
「ありがと!」
「ということがあったのですけど」
「何ィ!? テイオーがいるってことはヒヤオ爺もいるってことじゃねぇかぁ! 遊びに行ってやろ!!」
「ヒヤオ爺……? 一体誰ですの、ってゴールドシップ!? もう就寝時間ですわよ!!戻ってきなさい!」
お久の更新ですまそ。
忙しいし、評価がモチベに直結してる。時間あったらくだせぇ(乞食)
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