わがはいはトウカイテイオーであ~る。
見ての通りのウマ娘。
好きなものはハチミーとか甘いモノ。あとレース!
嫌いなものは……にがぁいもの。(最近ブラックコーヒーを飲んだ)
そんなボクの夢は……三冠ウマ娘!
いつか、憧れのカイチョーに追いつき――じゃなかった。
……てことで、自己紹介しゅーりょー。
さてと、そんなボクなんだけどね。
つい最近、専属のトレーナーが付いたんだ。
誰かって言うと……なんと、カイチョーと肩を張り合ったことがある娘でさ?
なんとびっくり。あの「アストラルウィング」のトレーナー
因みに「だった」って言うのは、実際にアスウィーから話を聞いて気づいたから。
だってボクのトレーナー、テレビで見た時と全然恰好が違うんだからさぁ?分からないのも無理ないと思うんだ。
んっん! 話を戻してと。
スカウトはトレーナーの方からもらった。
ただ、その時のボクはちょっと色々あって気分が落ち込んでて。
決めるまでは、ちょっといろいろ悩んだり。まあ、なんていうか色々あった。
でも、最後はボクの意思でトレーナーと走ることを決めた。
ここら辺の話はまた今度すると思うから、楽しみにしててね。
そう遠くないうちに
……なになに?トレーナーについて?
ん~
なんていうか、面白おかしい人?
ていうか、おかしい人?
ううん、絶対おかしいね。ボクのトレーナー。うん。
あーいや、練習とかはすごく細かく組んでくれるし、会話もパパみたいにゆるーくできるし。
あれから1月くらい一緒にいるけど、結構楽しいんだよ?
……なんだけど、トレーナーって色々普通とはかけ離れてるところがあって。
髪は灰色で服はいつも灰色のパーカーを着てて代り映えしないしさ。
トレーナーなのにお店の店長やってるし。
もっのすごい数のパソコンの画面持ってて目がチカチカするし。
……2日に1回は練習を見に来てくれないでどこかでサボってるし。
――振りかえってみたらおかしなところしかないね。
まあでも、ソレ込みで面白いって思ったから、今のところ後悔はないよ。
一緒にトレーニングしてくれてるアスウィーも優しいし。
しっかり速く走れるようになってきてるし。
何より、トレーナーがボクを大事にしようとしてくれてるのはひしひし感じるから。
……ただ不満はあるからね。
トレーニングに顔を出しに来ないのは、流石にまだ納得がいってないから。アスウィーはなんか諦め半分な感じだけどボクは納得してないから!
ねえ、
「トレーナーの喉仏、意外と大きかったりしない?」
「比べてこともねぇから知らんわ。――てかくすぐってぇ、いきなり指でなぞるな」
「いや、改めて見るとすごいゴツゴツしてるなって。気になってさ。」
「無視!? だからねえ聞いてってば!ていうか自然にイチャイチャするのどうなの!?ここ河川敷だよ!?人が歩いているんだよ!?」
草の上。
目線を前に向ければ、青い水が一直線に流れる川のそば。
ボクはその芝生の上に座りながら、横ですっごいイチャついている2人にツッコんだ。
あと、さっきの抗議内容も。
そしてその返答は。
「うっせ」
「ひどい!?」
実にあっけなく、軽く、バッサリと。
心底どーでもいー、みたいなうんざりした顔で一言で切り捨てたのだった。
やっぱりさ、おかしいよボクのトレーナー。
今更だけど、今日の予定をいうとね。
今日は休日。
朝は一緒にご飯を食べてから、外で軽い準備運動。
そして本格的なトレーニングに入って、筋トレだったり体幹鍛えだったり……まあ体を鍛えてて。
そして午後。まあ、今の状況。
お昼休みってことで学園を出てから、近くの河川敷でお弁当休憩をして。
食べ終わっていざ動くぞー、って気になったら隣に座るアスウィーにどうどうと抑えられてね。
「1時間は休憩。ただでさえ脚を故障しやすい体質なんだから。連続で体を酷使するのはダメ」
優しくそう言って、アスウィ―はその隣で芝生に寝っ転がっているトレーナーに向けて目配せをした。
「えー!? ボクは大丈夫だって。ちょっと疲れてるけど……ほら、こーんなに元気なんだからさ」
「それでもだめなの。これはトレーナーのお達しだからね」
立ち上がって元気だってわかるようにステップを踏んでみる。
けどアスウィーの意志は固いらしくて、ダメ、と一点張りのまま。
「むぅ~……トレーナー?」
「どした?」
不満が溜まりながらも、ボクは隣で灰色のフードを被ったトレーナーに話しかけた。
「ボク、まだ動けるよ」
「そうか」
「元気!」
「おう」
「ボクってば天才!」
「言われなくても分かってら」
フードの下から覗いて見えるトレーナーの目を見ながら、ボクは短い言葉を次々と言い放ってみる。余計な一言もあるけど、疑問も持たず肯定してくれることにちょっと嬉しみを感じてしまったりもした。
そんな感情的なボクに対して、トレーナーはすごく淡々と、短く返してくる。
「特訓!!」
「ダメだ」
「どうしてぇ!?」
流れで許可がもらえるんじゃないかなーって、放った最後の一言はあえなく撃沈。
そしてここで不満爆発。
ここ1月で溜まりきっていたボクトレーナーに対しての不満が限界地を迎えて……
ていうか主に、普段からたまにしかトレーニングに顔を出してくれないトレーナーへの不満が風船みたいに膨らんで、さっきの一言で針が刺さったように破裂した。
「むぅ~……!」
ここからボクの全力全霊を込めた、最近のトレーナーに対する不満と不満と不満を叩きつけることになる。
結果は果たして……
……
…………
………………
で、今、ボクが全力で抗議している最中、曖昧な笑顔を浮かべていたアスウィーが急にトレーナーとイチャイチャしていたから思わずツッコミを入れてしまったところに進む。
返答? いつも通りはぐらかされたような気がしてならないよ!いつになったらトレーナーはボクのトレーニングにしっかり顔を出しに来てくれるのさ!?
……なんて言ってるけど、文句言ってるボク自身も分かっているんだ。
トレーナーはボクの身を案じてくれて言っていること。
トレーナーのサボりは、他の――『トレーナー業』以外の趣味に勤しんでるから顔を出す暇がないことも。
多分、ボクが感じているそれ以上に、
分かってる。分かってはいるんだけど……。
……~~!!!いやそれでも納得はできない!
どうやってトレーナーを引きづり出そうか、作戦を考える必要があるよね……。今度アスウィーと一緒に相談でもしようかな。
まともに誘っても効果が無いのは分かってるから……強引に連れてこようか……。
――うぅ、ああもう。いいや。これは後で考えよ。
それよりも気になったことがあるからそれを聞こう。
せっかく休憩時間って言ってるんだし、お茶を濁すようなこと聞いてもいいよね。
……でもこれ、今更感あるような。
いや、聞いた方が早い! 欲には正直に!初めて聞いたトレーナーの教え!!
よし!きこー!
「トレーナーって付き合ってたりするの?」
「――――――」
「ごぐぶぅ!?」
ボクがそう聞いた瞬間、トレーナーの喉仏をなぞっていたアスウィーの指が、ズルッっと滑って
すごい。ウマ娘の力で思いっきり顎を叩かれて、芝生にごろごろ転がってるだけで
体を鍛えてるのってほんとなんだね。じゃないと人じゃ耐えられないよね、あれ。ゴスッって鳴ってたくらいだし。
「て、テイオー? なんでそんなこと聞くのかな……?」
トレーナーがうずくまるくらいの大打撃を与えたアスウィーが、芝生に座っているボクの隣に座って聞いてくる。その声は冷静に見えてどこか震えているだと思ったのは気のせい……じゃないかもしれない。
「ん~? いやだって、あれだけイチャイチャしてたら気になるからさぁ?聞いてみたんだけど、ダメだった?」
気になった理由はそんなもの。
……っていうか、トレーナーとアスウィーは普段から距離がすごく近い。
近い、もっと言えば自然な距離感。パパとママみたいな、そんな雰囲気なんだ。
「待って? その、付き合ってるって誰と誰が?」
「え?それは……」
疑問に思ったようで、アスウィーがボクに聞いてくる。
それに対してボクは当たり前のようにトレーナーとアスウィーの2人を指さした。
指を差した時、アスウィーの顔が一瞬赤くなったように見えた……けど日差しのせいで赤く見えただけなのかもしれない。
ただ、目の前で胸をなでおろしている反応をしているのは明らかだ。
「安心してるの?」
「うん? あー、いや、どうなんだろうね。トレーナーに限って、そういう恋愛ごとのイベントは無いからちょっと驚いたっていうのが本音かな」
頬をかいて苦笑するアスウィー。
……人の顎に致命傷を与える反応をちょっとで済ませていいものか、一瞬考えてちゃったけど、後回しにした。
代わりに、未だに芝生で転がっているトレーナーに憐れみの目線を送って、ボクはアスウィーに聞いた。
「恋愛ごとのイベントがない、ってどういうこと?」
「……あーそれ聞く?」
「うん。ちょっと気になって」
トレーナーくらい顔がいいなら、ていうかすぐ隣に年頃の女の子が多いトレセンで、恋愛ごとのイベントが少ないっていう話に注目した。
トレーナーのとこに来てしばらく経ってからのことだけど、
で、そんな噂が商店街に流れてるくらい恋愛ごとに近いあのトレセン学園で、恋愛ごとに縁が無いっていうのはどういうことなのか、少し気になったのだった。
困ったように頬を掻いて、アスウィーが答える。
「まあ、一言で言うとトレーナーが特殊過ぎるだけなんだけど」
「うん」
「…………うん。分かりやすく話した方が良いかな。どのみちテイオーとトレーナーは長い付き合いになるんだし」
一つ瞬きをしてボクの頭を撫でながら、アスウィーはそう言った。
その眼には、何か深い事情めいたものがあるように見える。
そしてボクがどうするんだろう、と思ったのもつかの間。
長い
いや、投げ放った。
「トレーナー、今からキスするけどいい?」
「キッ!?」
アスウィーが投げたのはとてつもない爆弾だった。
キス。確かにそう言った。乙女なら誰しも人生経験として憧れるソレの名を口にした。
それも一切の躊躇もなく! 部屋に入っていい?くらいの気軽さで!!
……い、いや。でもそんなのいきなり聞かされても困惑するだけで――
「……?
「ウェ!?」
唐突にそんな提案をされたトレーナー。その反応はとても淡々としていた。
いや、淡々とでは済まないような、なんていうか許容したような。まるで抱っこをねだる子供を甘やかすような、そんな返答。
冷静に答えたトレーナーに対してボクは素っ頓狂な声を上げてしまったが、それと同時にどこかトレーナーの異様な部分を垣間見てしまったような感覚に陥った。
「……ふふ、嘘。やっぱいいや。
「はぁ?」
自然な――あまりにも自然で、不自然なやり取りを繰り広げたアスウィーがボクの方に体を向けなおす。
顔の火照りが収まらないボクに対して、超特大爆弾を放ったアスウィーは何ともなさそうな平然ぶり。
まるで、トレーナーがどういう反応をするか分かり切っていたように。
「ね?こういうこと」
アスウィーは、肩をすくめてそう言った。
その姿は悲しそうにも見えたが、すぐに呆れた風になった。
ボクは、もう、何が何だか。唐突に大人な世界を見る羽目になるのかと、思考が飛んでいちゃった。
そんなボクの反応を、クスリと笑ってアスウィーが口を開く。
さっき、ボクが聞いた問いの答え合わせ。
「トレーナーってば、やること成すこと趣味に特化しすぎて、他の事どうとも思わないんだよ。本人の前でキスするぞーって言ってもあんな反応するくらいさ」
「今はマシになった方でね?昔はもっと酷かったの。興味ないからそういう知識すらなかったし。あれだよテイオー、壁ドンも知らないくらい」
「だからまあ、恋愛ごとのイベントが無いって言うのは
「キスするって言ってもあの反応なんだよ? 抱き着こうが、告白しようが、トレーナーは多分平然としたままだから。そんな人に恋愛ごとの縁なんて、周囲に可愛い女の子が居ても関係ないんだよね」
「だって興味ないから近づきもしないし、そもそもどうでもいいからさっきみたいに普通に許容しちゃうんだよ」
「恥じらい? あはは、無い無いそんなの。トレーナーにとってキスなんて握手の一つしか思ってないから」
流れるように語られるトレーナーの一面。
1月くらい隣で立っていた、ボクのトレーナーの異質で、面白おかしいところ。
そんな一面を聞いたボクは、頭のキャパシティがパンクして。
「えぇ……えぇ~……?」
語彙力消失。もう疑問の言葉しか浮かばなくなってしまった。
と、そんな状態になりながらも、よくよくアスウィーの様子を見てみると。
「…………」
平然としているように見えたけど、どうやら違った。
不満が隠しきれずに尻尾はトレーナーの体にビシバシ当たり、耳はペタンと折れていた。
尻尾で叩かれ続けているトレーナーは、うっとおしげな表情をしながら何も言わない。
アスウィーの行動を受け入れている。仕方なくではなく、至極当然の行動だからといった具合で。
「え」
灰色のフードで目線を隠したトレーナー。その瞬間。
自分でもその悪癖は分かっているんだと。そんな声が聞こえた……ような気がした。
鳥のさえずりが拍を埋めるように鳴く。
トレーナーはそれに合わせるかのように、口を開いた。
「てかお前ら、そういう恋愛系の与太話って、当人がいる前でするもんじゃないよな? 最近読んだ少女漫画で学んだぞ俺?」
「トレーナー限定なら問題なし。そもそも気にしないでしょ」
「そりゃそうだが」
「普通気にするよねぇ!?」
普段の会話に戻る。
さっきまでは、呆れと静かな感じだった雰囲気が。いつもの、他愛ない会話の一コマみたいな雰囲気になる。
軽い会話に思わずツッコミを入れてしまうボク。
……今まで言わなかったけど。ボク、意外とこの空間が心地いいんだ。
言葉使いは気にしないでいいし、アスウィーは優しいし、トレーナーは……面白おかしいし。
何より、ボクがボクらしく居ていいよって言われているようなこの空気感が好きになっている。
もちろん不満はある。トレーナーがトレーニングに出てこないことは、今あるボクの悩みの一つである。
でも、それすら面白い。楽しいと思えるようになっているのも、ここにいて心地いいと感じてしまう要因になっている。
だって、トレーナーってば普通じゃなくて面白おかしいんだもん。
そんなトレーナーに興味を持って、ボクはトレーナーと遊ぶことにしたんだ。
そしてボクは3か月後、絆されたようにトレーナーのことを気に入り始める。
まあ、これが原因でトレーナーに惹かれた……というわけでもないんだけど。
改めて、興味を持ち始めたのを意識した。そんななんてことない――
そんな、ただ芝生で青空を見ているだけの午後のひと時だった。
「ちなみに今の奴を補足しとくが、俺は人にどう思われてるかわかんないほど鈍感じゃねぇからな。そこら辺履き違えんなよ?」
「…………? どういうこと?」
「あー、つまりね? 好かれてるのは分かってるけど、どうでもいいから放置してるってこと。なんていうか……「野良猫に好かれてるけど、興味ないから無視する」とか。そんな感じだよ」
嫌われてても、どうでもいいから無関心。いつも通りのまま。
……なので。
女の子の純情な気持ちすら、無関心になると。
どうでもいいから、と。気にもしないと言っているのだ。この
「……あのさトレーナー、一回アスウィーにドロップキックでももらった方が良いんじゃない?」
「食らったことある。不機嫌さ満載でな」
「そうだね。あ、でも私は今でも足りないと思ってるからね? ……よしテイオー。思い立ったが吉日、私達の尻尾でトレーナーを一緒にはたかない?」
「さんせー」
「は?」
いやお前が参加するのは聞いてねぇ!? なんて妄言は無視した。
さっきまで気にしていた周囲の目線。
ボクはそんな視線があるというのに、何も気にすることなくアスウィーと行動できた。
ハタハタと、トレーナーの体を尻尾ではたきながら思う。
やっぱ、ボクのトレーナーおかしいよ。うん。
午後の河川敷には、布団をはたくような音が鳴り響いていた。
他ウマ娘との絡みもっと欲しい?
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くれ
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いらん
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どうでもいいからイチャイチャ見せろ