トレセン学園の隠れた名店   作:[]REiDo

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忘れてないか?
拙作のタグは【モブウマ娘】だぞ?


閑話 夏の夜の女子会は恋バナ必須定期

 

 

 

 夏の夜、少女の仲睦まじき集団がそこにはいた。

 彼女たちは今を駆ける若きウマ娘。

 その集団の名は、()()ない。

 

 未だ目立たず、淡く輝きもしない、されど可能性を残している。

 そんな一つの目標に向けて、ひたむきに走り続けている少女たちだが――

 

 

「女子会だ~!!!!」

「「わー!!!!」」

 

 

 そう、一端(いっぱし)の乙女であることには変わりなく。

 ベッドで寝転がりながら、地面で寝そべりながら、行儀よく椅子に座りながら。

 

 夏の夜と称し、夏の思い出。

 良い記憶を残そうと、合宿場所のホテルで女子会を開く少女たちがそこにはいたのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「いやぁ~、今日はより一層疲れたね~」

 

 

 開幕から言葉を発するのは、ベッドの上から疲れた表情で気楽な態度をとる少女。

 

 少女の名は「メルトステイ」

 常に明るい雰囲気を周囲に放ち、気落ちしない性格。

 そして教官付きのウマ娘であり、教官付きでありながらある男にトレーニングの面倒を見てもらい始めた()()のウマ娘である。 

 

 

「メルト? そのおじさんみたいな口調やめて。あとその脚をブラブラするのも。女の子らしくないから」

「えー、いいじゃんかー減るものでもないんだしー」

「良くない。トレーナーみたくノンデリな人になりたくなかったらやめる事。今すぐ」

「トレーナーに対する印象低いなぁ……」

「否定できないでしょ」

「それはそうだね」

 

 

 メルトが伸ばした脚を素手ではたくのは、メルトの友人であった。

 彼女もまた、男に惹かれたウマ娘。順番的には4番目だ。

 

 ……ていうか、この一室に集まった9人のウマ娘は全員、揃いも揃い男に面倒をかけてもらっている少女たちである。

 

 正論とトレーナーのdisを聞いたメルトが脚を渋々引っ込める。

 そんな子供のような態度に一同が苦笑していた。

 

 

「……ま、疲れたってのは同意だな。今日は特にトレーニングに気合が入ってたようだったし」

「おー、やっぱりそう思うよね?」

「まあな。最近のトレーナーはなんかそうやって調整してるように見えるし」

「わかる~。私たちの成長に合わせてるんじゃないかって思うよね」

 

 

 前言の言葉に同意して言葉を繋げるのは、声が低めな男寄りの口調をした少女だ。

 メルトに続き2番目に男に身を寄せた少女。

 走りの実力的にも、メルトに最も拮抗しているウマ娘である。

 

 そんなナンバー1,2の言葉に、他7人のウマ娘が相槌を打つ。

 

 

「私達のことよく見てるっていうか、なんか成長してる感はすごいよね。最近」

「だね。私も体力がいい感じに付いてきたし」

「<リギル>との併走もさー、私付いてくのが精一杯かと思ったんだけど意外と大丈夫だったし」

「わ、私も……今日の2000mでタイムを縮められました……」

「いいな~、そっちは成果出てるんだ~」

「あれ、アンタは?」

「私はちょっと目ぼしい成果ってものが出てないんだよねー……。今度トレーナーに直談判しに行こうかな~」

「いいじゃん! それ私も行きたい!」

「私も私も!」

 

 

 次々に流れる会話の波。

 『レース』という彼女たちにとって大事な部分の話ではあるが、その声色に緊張も焦りもなく。表情にはただこの一時(いっとき)を楽しもうという、緩んだ笑み。

 お互いに腹内を探らない、純粋な子供の、友達同士の会話で。

 

 それぞれが主に今日の振り返りや、最近の成長具合を語り合う少女らであった。

 

 

 ――会話が進むたびに成長具合……つまりは()()()()。『どこ』とは言わないが明確に目立つ一部の部位に対しての話題もあったりしたが、プライバシーの件で割愛。

 ……一部内容を抜粋するが、年中弱気で耳をへたらせた少女が、()()()()()()()()()身体の一部が成長しない事で泣きそうになったのを他の()が慰めていた場面を上げさせてもらう。

 なお、一番成長具合が大きい男寄りの口調をした少女は実に堂々としていた。自分の武器を理解しているようだ。

 

 ソレを見ていた周りの同期生。

 どうやったらそこまで大きくなるのかという周囲の熱烈な問いの中。

 男口調の少女は『胸』を張ってこう言った。

 

 

「知らん」

「「「だったら見せつけるようにその胸を張るなぁ!!!!」」」

 

 

 平均的に小さい部類に入る3人の娘が吐いた苦言はごもっともであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 それからも時間は流れ、ガールズトークのボルテージはうなぎ登りに上がっていった。

 

 最近見ている少女漫画は? という話題から、気になっている異性はいるのか?に至るまで。

 時間の経過と共に濃度を上げる会話の話題は、深夜テンションというものが彼女たちを取り巻いていることを証明しているのは明らかだった。

 

 なお、前言の話題では、後者についてほとんどが否定の意を示す。

 そもそもトレセンという女子高みたいな空間では、気になっている異性など職員やその関係者、あるいは一部のトレーナー以外にはいないのだ。

 ……逆に言えば、ターゲットにされる異性がソレに固定されるわけだが。掲示板でトレセンはある種の婚活会場などと言われるのは妄言の類ではないということである。

 

 ――と、そういう話題になれば、だ。

 

 すぐ近くにいる異性、もとい男性といえば。

 彼女たちのすぐ近くに普段からいる者がいるではないか。

 多くの面倒をかけてもらい、返しきれない恩もあって、あまりに自由気ままに動くトレーナーが。

 

 

「正直さ、みんなってトレーナーのことどれだけ好きなの?」

 

 

 流れになったように放たれたメルトの言葉。

 同時に表情を変える他のウマ娘たち。赤面や困った表情にポケっとしてる者と十人十色といった反応だ。

 

 

「……メルト、それノンデリよ」

「なんで!?」

「同感だ。他は良いにしても、トレーナーについてそれを聞くのは結構ヤバイ」

「最悪、戦争が起こるわよ?」

 

 

 再び「なんでぇ!?」とメルトから悲鳴が上がる。

 

 メルトステイ、彼女はいわゆる残念な子の類に分類される少女であった。

 明るい性格や気落ちしない性格は普段から何も考えていない証。それに惹かれる者も確かにいるのだが、考えなしに発言したり行動をするため、普段は友人に何とかして抑え込んでもらっているという始末なのだ。あと成績も悪く、勉強も友人頼みであることを示しておく。

 

 が、その残念さ――もとい尖り具合がトレーナーの眼に着いたからこそ、彼女は今もこうして多くの友人と笑い会えているのだ。

 

 

 閑話休題

 

 

 悲鳴を上げたメルトだったが、駄々をこねるかのようにベッドの上で納得のいかない表情をしていた。

 

 

「いいじゃんいいじゃん! せっかくの女子会なんだからさ、こう、バーっと色々話そうよ!」

 

 

 むぅ、と周囲の少女からうねり声が上がる。

 夏の思い出作りとして、女子会というガールズトークは印象に残りやすい。それも恋愛事となればなおさらである。

 とはいうものの、その焦点は普段から世話になっているトレーナーだ。

 どう思っているのか、などと今更ながらここにいる皆々共にさらけ出すのは気恥ずかしいと思うものも少なくない。

 

 そんな葛藤がそれぞれ呻いている中、最初に口を開いたのは男口調の少女だった。

 

 

「……まあ、悪くは思ってない。むしろ好ましい。オレはそんな感じだな」

「おー! それはどんなの!? like的に?それともlove的――」

「メルトうっさい。あと単語が頭悪い。ノンデリ。バカ」

「酷い!?」

 

 

 言葉を聞いて顔をガバッと上げたメルトに待っていたのはそんな友人の罵倒。メルトは再び布団にうずくまって泣いた。

 

 

「ローラン、いいの? 私のバカの言葉に付き合って」

「……メルトの言い分にも一理あるって思っただけだ。別に他意はない」

 

 

 ローランと呼ばれた男口調の少女はそっぽを向いて答える。少々赤くなった頬は隠しきれて入れず、周りの娘も「気恥ずかしい思いがあるんだな」と、若干察しながら見守るような優しい笑みでローランの顔を見ていた。

 

 

「……なんだよ」

「いやぁ? 普段から表情が硬いローランのそんな顔を見るのが面白……じゃなくって珍しくってさ~」

「仏頂面も偶に変化があるとギャップがすごいなーってね」

「やー、流石は2番目だね。どこかの1番様と違って乙女らしいや」

「…………うっさいっ」

 

 

 照れたように言葉を跳ね返すローランに、一同は思わず黄色い歓声を上げる。

 あまりにガールズトークらしい会話だ。糖分多めでブラックコーヒーが欲しくなるほどに。

 

 さりげなく罵倒されたどこかの1番様の悲鳴は虚空に消えていったが、それを気にする少女は誰一人いなかった。そろそろ枕を涙で濡らす頃合いかもしれない。

 

 

 

 

 そこからも、話題は問答無用で加速していく。

 生じていた気恥ずかしさも、ローランが先陣を切ったことで吹っ切れたのか、周りの少女の口も軽くなっていた。

 

 

「ま、正直私はlike寄りかな。9番目って言うのもあるかもしれないけど、まだ関わりが深まってないっていうか」

「ん~、私もまだちょっとlikeかな。あの性格に慣れてなくてさ」

「アタシは……どうだろ。わかんないや。嫌ってはいないんだけど……今はメルトの世話が大事すぎるっていうか、考える暇がないっていうか……」

「え、もしかして私にlove? や~、友人に絡め捕られちゃう~」

「…………バカは無視して。次行こうか」

「酷い!?!?」

 

 

「わ、私は……ご、ごめんなさい! ノ、ノーコメントで!」

「知ってた」

「うんうん。無理しなくていいからね。ホントは恥ずかしいんだからこんなの」

「誰だよ、こんな可愛い子に無理やり恋愛事情を吐かせようとした1番目様は。このノンデリめ」

「そろそろ泣くよ私!?」

「あ、あの私、気にしてませんから、そのくらいにしてあげても……」

 

 

 こうして盛り上がるガールズトーク。

 若干一名、他8名からダメージを食らい続けているが総勢で無視。この流れを作った功労者ではあったが、気弱で優しく可愛いマスコット的少女を困らせたことが最終的な採点を大きく減点してしまっていた。

 そして、いい加減メルトが涙で枕を濡らしそうな頃合いな時だった。

 

 誰が言ったか、他愛ない一言が女子会を楽しむ少女たちに、ある灯火を着火させた。

 

 

「そういえば、アストラル先輩ってトレーナーにloveなのかな?」

 

 

 顔を見合わせた少女達は、揃いも揃って疑問を浮かべながら。

 正直、すっごい気になるという表情を誰も隠し切れず。次の一言である行動に移す。

 

 

「せっかくだし聞きに行こうよ!」

 

 

 メルトが放ったその言葉に異を唱える者は誰一人いなかった。

 

 

 

 

 

 

他ウマ娘との絡みもっと欲しい?

  • くれ
  • いらん
  • どうでもいいからイチャイチャ見せろ
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