不定期更新もいい加減にしないと読者から蹄鉄投げられそうだ
今日も今日とて、普通の仕事日和だった。
電子書類を整理し、処理し、保存し、休憩時間に趣味活に赴く。
学園が放課後に入ってから、愛バのウィングに一用事を任せ、さあ後は一仕事残ってるからさっさと済ませるかーと、そんな思考が働く程度にはなんてことない日だった。
「そのはず……だったよなぁ……!?」
それが何故だ、とトレーナーは叫ぶ。叫ばずにはいられなかった。
何故、なぜに今こうして両手両足を――というか自身の体をほぼ同期の職場仲間に拘束されているのか。
何故、禍々しい色をした薬剤が入ってる試験管を持った少女が――マッドサイエンティスト顔負けな表情をして正面に立っているのか。
正直に言って意味が分からなかった。
頭がぶっ壊れそうだった。なんだったら今からぶっ壊されるのかもしれない。
だから、せめてもの抵抗としてトレーナーは叫ぶのだ。
――――ざけんな、と。
「はっはっは! いい加減諦めたまえウィングのトレーナー君。なぁに痛みを感じるのは一瞬さ。後の事はこのアグネスタキオンが保証してあげようじゃないか」
「後ってなんだ後って!? 何か起こること前提で話を進めんな!つか、俺はタキトレみたく全身蛍光色に光りたくなんざねぇんだよ!! だから離しやがれぇ!?」
「すまんウィントレ……。すぐに終わるはずなんだ、大人しくしててくれ」
満面笑みな
に、吐き捨てながら全身に力を込めて抵抗するウィントレ。
勢力差は1対2。ウィントレ側の完全不利。というか今にも勝敗が決しそうな瞬間であった。
……はてさて、再び何故にこうなったのか。少しその経緯を語ろう。
時間は遡り1時間ほど前になる。
ウィントレは本日最後の仕事として、学園に赴いてとあるデータを渡しに行くところだった。
いつもの学園関係なデータとは違って、私的な要件の入ったデータだ。昨日の内に渡されたソレを速攻で終わらせ、後は手渡しするだけの用事だった。
で、その用事がある場所が……学園の中にある『研究室』であったわけで。
当然、そんなところに住まう生徒など約2名しかいないわけで。
「よっす。どこだアグネスタキオン、ご注文のデータを届けに来たぞー」
ガラリッと快音を立てて扉を開けたウィントレが用のある人物の名を呼んだ。
しかし、返答も反応も無し。
静かな空間に眉をひそめたウィントレが、訝し気にもう一度呼んでみると。
「おーい?」
「ああ君か。すまないね、少々取り込んでいる所なんだ」
2度目の呼びかけでようやく部屋の奥から顔を出してきた少女。
鹿毛のアホ毛を揺らして出てきたのは、誰が言ったかトレセン屈指のマッドサイエンティストである「アグネスタキオン」だった。
「実験中か?」
「いや、もう終わったよ。今日は薬の投与だけだったからな」
「お、タキト――って眩しいわい」
「副作用だ、許せ」
「許す」
「会話が早いねぇ」
プラスでそのトレーナー……もといタキトレも顔を出してくる。
今日はやけに激しい具合に体が光っていた。空に浮かぶ虹もびっくりな1677万色にビッカビカである。眩しいわボケ。
とまあ、こんなのはもうトレセンでは見慣れたものだ。
ウィントレはさほど動揺もせずそんな異常で日常な感じの2人に話しかけ、一用事を済ませた。ここまでは良かった。
――そう、ここまでは良かった。
話をしている合間合間で、タキオンとタキトレがタイミングを見計らうようにチラチラと視線を交わしている様子を、ウィントレがしっっかりと見逃すことさえなければ。
「んじゃ、データ渡したってことで……」
「おっと、待ちたまえウィングのトレーナー君。すまないが君にもう一つ頼みたいことがあるんだ」
「……なんだ?」
用事も終わったところで踵を返そうとしたウィントレをタキオンが止める。
今日の件以外に、何か任せたいことがあったのだと述べていたが……。ここで、時間を稼ぐような様子を察せなかったのもウィントレが悲劇に陥る一因だっただろう。
それと、やけに楽しそうなタキオンの様子になんとも思わなかったのも問題だった。
「なぁに、君自身に手間は取らせないさ。時間は少々取るが」
「ふぅん? まあ、仕事終わったし良いけどよ」
「それは上々。ならちょっと前に出てくれないかい? そうだねぇ、部屋の真ん中あたりまで歩いてくれると助かるよ」
「おう?」
急な頼まれごとを断る理由も無く、サラッと承諾したウィントレ。
そして急な先導に疑問を抱きながらもタキオンの言うとおりにしてみる。
部屋の中心に身を寄せると、相も変わらず暗い照明に目が……眩みそうになっていた。
何故って?
もちろんタキトレの発光が原因である。
暗闇の中、1677万色にビッカビカ光る約170cmのホタルなんか置いてみろ。シャンデリアよりもよっぽど光るインテリアの完成だ。眩しいわボケ。
「私はウマ娘の研究に熱心でねェ。ヒトに対する時間を割いていられるほど暇ではないのだよ」
眩しさに思わず細目になっていたところで、タキオンから独り言のような声がする。
「……はぁ。まあ、タキトレから聞いた事はあるが……。あれだろ? ウマ娘の可能性が知りたいとかなんとか」
「その通り。正確にはウマ娘という種族に対する好奇心から、だがね」
念を押すなぁ、とウィントレの独りごちは響かない。
あるのは前に……というか、
(?)
ここでウィントレがようやく違和感に気づく。
何故、わざわざ部屋の中心へ身を置かせるような誘導をさせて来たのか。
周りにはタキオンの研究機材、割れモノばかりな部屋の一室。その中心に彼はいる。
激しく暴れないよう、逃げ場を無くす為に、としか思わない配置。
(……?)
そして。
ついでに加えられた1766万色に光るタキトレの配置だ。
まるで、
万が一、暴れても抑えられるように導入された、彼と力比べでタメを張るタキトレが……背後に佇んでいる。
(……!?)
空気が変わる。
額には一筋の冷や汗。少し浅くなった呼吸。
これから自分の身に何が起こるのか、それを想像したウィントレの想像力たるや。
「唐突なのだが、今日君に渡してもらったデータがあるだろう?」
だが、それを待つ前にタキオンからの問いが放たれる。
引きつった声でそれに一言肯定の意を入れると、続きを述べる。
「頼んでおいて言うのもなんだが、アレのデータ量を大分多く送ってしまってねぇ。私の想定では、最低4日以上はかかると思っていたのだよ」
それがどうした、と彼は問いを投げかかる。
そんな簡単な依頼など、当然
一般人なら顔を青くするはずだった仕事だったが、
つかむしろ、トレセン職務の奴から投げられる書類の方が100倍多いと返す。
……と、どうだ。彼女はキョトンとした顔をしたのち。
くつくつと。含んだ笑いをしたのである。
そう、まるで――マッドサイエンティストのように、だ。
「なぁに、予定外だが
瞬間。
ゾクリッ、と。
まるで嘗め回すような――不気味で粘りのある視線が彼を指した。
合ってはいけないよな、捕まれば即ゲームオーバー確定の敵モブに出会ってしまったようなそんな感覚が身を絞める。
視線を返した途端、今目の前にいるこの少女のやりたい事が分かった気がした。けれど何をされるか分からない。何故ならその詳細を知らないから。
だからこそ不気味で。鳥肌が立つくらいの危機感知が働いた。
その本能に身を任せるがまま、立っていた部屋の中心から立ち去ろうとするウィントレ。
軸足を起点に、助走無しの猛ダッシュ。決して部屋内の研究機材を壊さないよう、細心の注意を払いながら走り去るイメージを作り上げる。難しいが不可能ではない諸行。
普段から筋トレを欠かさずしておいてよかった……!と、そう安堵したのもつかの間。
もう、全てが遅かった。
「――モルモットくん。確保だ」
ガシッっと。力強い何かに体を押さえつけられる。羽交い絞めというやつである。
行動を起こす1秒前。
アグネスタキオンの台詞と同時にウィントレを押さえつけたその正体はもちろん……。
「え、は? ちょっタキトレさん?」
「すまん多良トレーナー……。俺じゃタキオンは止められないんだ」
何度も言うが1766万色に輝くタキトレであった。
力比べではタメを張るタキトレに羽交い絞め。完璧に嵌ってしまい、抜け出すことは困難と察しのいいウィントレだが、抵抗はやめない。諦めが悪いとでもいえばいいのか。
「ちょ、マジで勘弁してください。……なあおいアグネスタキオン、お前さっき言ったよな? ウマ娘に興味津々だからヒトに割いてる時間は無いって言った――」
「そう。私には『ヒト』に割く時間はない。そして私は、君を、ヒトではなく別の『
早口で焦った風な台詞を吐くウィントレ。
さらっと人外扱いされた件についてはこう……何も言うまい。そんな扱いなど掲示板でされ続けてきた。今では人力コンピューターなどと言われる様なのだから。
だから、ヒトとは思えない能力を持った頭脳に興味を持ったと。
冗談じゃねぇ、と脳裏によぎった吐き捨ての台詞。
珍しく声色は引きつり、もはや絶望めいた何かすらちらつくさまだが。
またも、タキオンはウィントレの台詞を待つ前に独り言ちる。
狂気めいたハイライトの無い眼で、彼の瞳を覗きながら。
「いやはやウィングのトレーナーくん。君の頭脳ははっきり言って
生物の度を越えたコンピューターのような処理性能はもちろんのこと、それを維持する耐久力、他のどれをとっても事例がない君の頭脳に私はとっても興味を引かれていてねぇ。この際はっきり言ってしまおう」
サラッと、タヒ刑宣告を行った。
「一度、私に実験されたまえ」
……以上、経緯の詳細であった。
これにて冒頭に戻る。
さて、こういった経緯からウィントレは
別に彼とて、一概にタキオンがこれから行う諸行を否定したいわけじゃない。実験がどうとか、ウマ娘がどうとかいう信念や心情は彼女自身が決めたことで
普段やりたいことをさせてやりたい精神なウィントレとしては、できるだけそれを尊重させたい気持ちもある。
ただ、その実験内容が得体のしれないモノばかりであるのが多少……大分抵抗感があるだけで。
――つか、背後で羽交い絞めをしている
「いい加減抵抗はやめたまえよウィングのトレーナー君。ほらほら、この容器に入ってる液体を飲むだけでいいのだよ。その後の事は私が全てを請け負うのだから君にとっても楽な仕事だろう?」
「ざっけんな!? それ絶対意識失う系のヤベェ奴じゃねぇか!副作用も分かんねぇのにサクッと飲めるわけねぇだろ!?」
「強情だねぇ」
当然だ。誰が喜んで内容不透明な人体実験に喜んで身を投じるのか。
……あ、すぐ後ろにいたな。身を投じる
「副作用は無いよ。事前に飲んでおいたから安心してくれ」
「タキトレが言うと説得力あるけどなぁ……! かといって飲む気になれねぇよ!全体的に俺の意識飛ばした後何する気だお前らは!」
念押し気味にささやかれたタキトレの提言はありがたいが、彼にとってはだから何?という感じだ。安心要素が一体何処にあるというのか。
「何って、ねぇ?」
「……そうだな。内容は伏せるべきか」
「その言い淀み方でもう抵抗する気満々だわ!」
ざけんな、いい加減離してくれ! と。もはや子供の抵抗みたいな叫び声が部屋に響いた。
しかし反応するものは誰もおらず。
部屋の中を反響するのはマッドなタキオンの笑い声と、すまんというそのトレーナーの一つの謝罪だけであった。
結局、暴れようを見て観念しないと見たタキオンは試験管に入った薬品をウィントレに強引に飲ませることに成功。
当然のごとく、効果通りにウィントレは眠りにつき、その間タキオンは実験の限りを尽くしたという。
もちろん楽しそーな笑みを浮かべながら。
「あ、おかえりー……ってどうしたのトレーナー!? 顔すっごく青いけど!?」
「…………ああ、テイオーか。いやなんだ……俺は……なんか……色々弄られたらしい……」
「トレーナー!? え、チョ、トレーナー!?ヤ〇チャみたいに倒れてどうしたの!?」
その後のタキオンとトレーナーの一幕。
「ふぅむ……」
「お疲れタキオン。……それ、実験の詳細か?」
「ウィングのトレーナー君のね。丁度脳波の測定結果を分析してた所さ」
「そうか。紅茶、入れといたぞ。角砂糖は何個いる?」
「5つは欲しいね」
「んしょ……どうだ? あの人、タキオンから見ても興味をそそる?」
「大いに、ねぇ。本来、人間の脳はマルチタスクには向いていないのだが、彼は異常なまでの同時思考を可能にしているらしいじゃぁないか。脳波の反応を見る限り、よっぽど大脳基底核の動きが活発と見える。……それを加味しても『ヒト』として異常――いや
「聞いたところ、あくまで思考の内での処理が得意で、実際に手を動かすとなると遅れるらしいけど」
「それは彼の謙遜だろうに。元より生き物は考えて動作をするものだ。器用の差は別として、思考より手が追い付かないのは2本の手しかない『ヒト』として当然だろう。むしろ思考と手が同時に追いつくのなら、私は翌日彼をもう一度捕まえて実験しなきゃいけないところだ。色々とねぇ?」
「あと彼の髪、アレは地毛かい?」
「灰色の? いや……地毛は確か白色だとかなんとか……。それがどうした?」
「ふぅむ……元来、白髪とは加齢や遺伝的要因、それか精神ストレスによるものだとされているのだが……。一体彼はどうしてあの若さからして白い髪をしているのかと思ってね。まあ、多少気になる程度のものだ。モルモット君は気にしないでくれ」
「まあ、正直彼の能力には助かったさ。溜め込んでた未処理のデータも今じゃさっぱり無くなったことだしねぇ」
「それはまあ……トレセンの職員全員が思ってることだろうな。何せあの人がいなかったら今頃俺も残業……」
「ブラックだねぇ」
「タキオンを支えることができるならブラックでも頑張り続けるけどさ」
「ふぅん……? 流石私のモルモットくんだ。忠実そうで何より」
「褒めているのかそれ?」
「褒めてるのさ。……この先も、君以外では私のモルモットは務まりそうにないと思うくらいにはね」
他ウマ娘との絡みもっと欲しい?
-
くれ
-
いらん
-
どうでもいいからイチャイチャ見せろ