予定通り、今回から旅行回に突入なり
男女を交えた温泉旅行は家族モノと思われがち
本日の天気、満天々の晴れ具合。
場所は日本の中心から北に滝登りした北海道。
それ故、満点の快晴にも拘わらず12月の寒波が押し寄せてくるのでお気をつけくだせい。
てなわけで。旅客機内で地元の天気予報を見てから。
「着いた~!!!」
「飛行機降りた途端テンション高いなおい」
「まあまあ、遠出の旅行なんだしいいんじゃない? はしゃがせてあげようよ」
両手を天にぶち上げてからの万歳である。
労苦すること約1時間半。窮屈な飛行機からようやく解放されたテイオーの声が響く。海賊王もびっくりな大声であった。
つか、周りにはまだ乗客がいるんだが……。
……まあいいだろう。せっかくの旅行だ、解放された気分に指さすのも野暮ってもんだしな。
俺も俺で、テイオーを見習って一つ伸びをする。うん、椅子で固まった身体が少々ほぐれる感覚が心地よい。
さて、体もほぐしたことだし移動といくか。
さてと、何故俺らが遠く離れた北海道にいるかだが。
まあ事情がどうこうの説明は要らんだろう。
俺とテイオ―、そんでウィングを交えた文字通りただの旅行である。
詳細としては、目的は疲れた体を癒すための慰安旅行。北海道の温泉地に出向いてしっかりすっぽりレースで溜まった疲れを抜き切ろう、という会だ。
因みに<アトリア>の面子全員を誘って……と行きたかったが、人数が人数だ。10人を超える団体を率いる余力は無かった為、つか主に
旅行の予定の話に戻るが一応、1泊2日の羽休み期間をとっての温泉旅行ということにしている。年末前といえど長期の拘束をするわけにはいかねぇからな。この2人にも実家に帰る等の事情もあることだし。
ウィングは別に気にしなくていいって言ったが……そこはまあ大人の事情も含め、だ。
とにかく、タクシーに乗って窓の外眺めながら俺は今日明日の予定を脳裏で整理したのだった。
「楽しみだな~温泉! ボク行くの初めてかも~!」
「おいおいテイオー、尻尾揺らすな。……いやだからって俺の腰に巻くな。少しは大人しくしろよ。出来ねぇのか」
「出来なーい。だって楽しみなんだもーん!」
「コイツ……」
窓の外を眺めていれば、隣で興奮状態のテイオーが笑みを浮かべて暴れだす。
後部座席は左からウィング、俺、テイオーという順で並んでいるため割を食うのは俺だ。因みに当初は助手席に座る予定だったんだが、先に車内に入ったウィングに手を引っ張れて突っ込まれた。またヒトミミ族の力負けである。クソが。
腰にこそばゆい感覚。テイオーの尻尾の毛先が何処か触れているのだろうか。
巻きつく尻尾が窮屈という訳ではないが、降りた後抜け毛があるかどうか心配になる。あったらあったで後でタクシーの運転手に謝らんとな。
そんでテイオーは相変わらずのクソガキ具合なようで何より。凛々しいとか言う言葉はコイツの辞書に無いらしい。もう1年は立つのに学んでねぇな。
……まあ、そんな元気なクソガキ具合が嫌いかといったら、即座に否と返すが。
と、細い目でテイオーを見てると急に運転手のおっちゃんから問われる。
何ともまあ、覇気のある声色で。
「はっはっは! 仲いいですな。ところで兄ちゃん、そちらお子さんか何かで?」
「まあ、そんなところですかね。手間がかかる分、存分に可愛がってはいますけど」
「そりゃいい! 何もせずの不仲より暴れて喧嘩する方が家族仲がいいってもんだ! 幸せもんだな嬢ちゃん!」
「え!? あ、ありがと?」
運転手の豪快な言葉に、思わずぴょっと跳ねるテイオー。
いきなりの声にびっくりしたのか、さっきまで腰に巻き付いていた尻尾すらピーンと立っていた。
「となるとなんだい? その隣にいるのは兄ちゃんの嫁さんだったりするのかい?随分と若そうに見えるが……」
「…………んっ!? よ、嫁!?」
続いて間を開けず問われたその内容に、今度は反対に座るウィングがビクッと跳ねた。
突拍子もない俺の嫁疑惑に驚いて、恥ずかしがっているのか赤面もしている。
……あーなるほど?
お子さんがテイオー、俺がその保護者、んで消去法でウィングに俺の嫁かどうかって疑問が回ってきたわけか。
まあ当然の流れか。トレーナーがどうこうとかの事情知らないと、
まあ、一応誤解を招かんために肯定はしないでおくとして。
「あーいや、そういう訳じゃ」
「ん? それじゃあれかい?俗にいうシングルファザーって奴……」
「いやそれはもっと違くて」
……肯定したほうが話が早い気がしてきた。
つか、否定する理由もまあ無い気もしてきたな。逆に話がこじれるからもう俺の嫁っていう扱いでいいんじゃね?
あーだこーだ、遠回しに誤魔化したりと話を進めると、ふと服の袖を引っ張られる感覚。
なんだとその方向に視線を向ければ、そこには窓の外に目を向けたウィングが居た。
「どしたよ」
「…………」
声をかけてもだんまり。ただ、首筋が少々赤くなっているところを見るに反応はしてる。
……はて、俺はコイツの行動にどんな意図を見出せばいいのだろうか。
だんまりで、恥ずかしがっていて、でも俺の袖を引っ張って構ってほしい風な様子を見せるウィング。言葉には出さず、ただ俺の問いを受けながら窓の外に顔を向けている。
まるで恥ずかしいから言えないと。だからその反応をせめて指先で伝えようとする少女の姿は何処か、その羞恥を肯定しているように見えて――
……ん? 嫁扱いされた恥ずかしさを受け入れてる?
あ。まさか
「まさかお前、俺の嫁扱いされてんの、まんざらでもないってか」
可能性の一つとして思いついたソレを、ウィングと答え合わせすると。
「…………」コクリ
なにこいつかわいい。
窓の外を眺めながらではあったが、小さく首を縦に振るウィングの姿がそこにはあった。
ついでにさっきよりも首筋が赤く染まっているのも確認。羞恥が増したのかどうなのか知らんが触ったら火傷しそうな温度なのは分かる。
……ったく、今更何恥ずかしがってんだか。
「お熱いねぇお2人さん。もしかして新婚さんだったりするのかい?」
「……そんなとこですかね。まあ、直接的に関係を言われると照れるらしいんであまり弄ってもらわないでくれると助かります」
「おっと、そりゃすまんな。俺としたことが客さんの事情に踏み込みすぎたか?」
「いえ、長距離の運転で話し相手がいないのは口が寂しいでしょうから。俺は気にしませんよ。なんだったら次の休憩地点で俺が助手席に移動しましょうか? 話し相手ぐらいにはなりますけど」
「お、そりゃ有難い」
バックミラーで俺らの様子を見ていた運転手が追及を続け、俺はそれにうやむやながら肯定する。なんせこんな状況だ、もう誤解もクソも無い。認めた方が話も早いってもんだ。
そうして助手席に乗り換える為、近くのコンビニがどこにあるか携帯で探していると、一人分の少女の体重が膝上に乗る感覚を覚える。
「あ、アスウィーまた照れてる! ねえねえ、こっちに顔見せて!」
「て、テイオー! 勘弁してよぉ……」
ナニカと思ったら反対に座っていたはずのテイオーが、ウィングの表情見たさに座ったまま俺を跨いでちょっかいをかけていた。
クソガキ具合は健在だ。何なら俺と初めて会った時より増してるように感じた。
……マジでコイツ、レースで見せる威厳はどこから引っ張り出してんだか。変貌しすぎだろ。
大人と子供を使い分ける俺が言うのもなんだがな。
結局、ウィングは赤面している表情を何とか隠し続け、テイオーはわがままにちょっかいをかけ続ける時間が過ぎていった。
因みに後で、何であんだけ恥ずかしがっていたのか本人に聞いてみたんだが。
――何でも、他人から改めて恋仲みたいだねって言われると少し恥ずかしいとのこと。
……お前それこそホントに今更だろ。
とまあ、そんな紆余曲折あった道中を過ごし、俺らは宿泊所に向かう。
窓の外を見れば田舎らしい畑の数々と木々の山。
寒波がひしめく外気から隔離された車内の窓、そこから見える冬空に白い粒は見えておらず。ただただ曇天の灰色が広がっていた。
助手席から眺める光景は……まあ
すぐ先の曲がり道には確か小さい石造が。
そのまた先の突き当りを曲がれば短い橋が。
橋を渡って数分歩けば、田舎には貴重なコンビニが――って無くなってやがる!?マジかよ!?ガキの頃に世話になって溜まり場だった唯一の安息所がぁ!?
……と、すまん。ちょいと昔の情景と違った部分が一部あったから感傷に浸っちまった。
あぁそうかぁ……確かに田舎で立地は悪いしなぁ……閉店ガラガラ店仕舞いってのはあり得る話ではあったんだが……。まあ時代の流れって奴かねぇ……。
まあ、一人事情の話は置いといてだ。
とにかく、見慣れた道を走って宿泊所を目指してる最中なんだが、ここで耳より情報をひとつお伝えしておこう。
えー今現在向かっている宿泊所なんだが――何と俺の実家です。
木々が覆い茂る田舎道を走って数分、あとちょいで着きますハイ。
てかもうそろ見えるはずだが。
「あ! あれがトレーナーの」
「うん、実家だね」
ああ、見えてきたな。
特徴をあらかじめ話していたからか、目の前に見えるのが俺の実家だと予想を立てるテイオー。気分も上がっているのか声色にも高調があるように感じる。
そして2年前。
一度だけ俺の実家に来たことがあるウィングはテイオーの予想に正解の答えを返す。
バックミラーから見えたその表情はどこか微笑んでいる。
さて、左右に茂った木々を抜けて見えるのは、ポツンと孤立した1軒家。
木造建築で、瓦で並べられた屋根。外見からして和式満載な見た目をしている。
敷地は思ったよりも広く、そこらのアパートが2つか3つほど埋まるほどの広さ。流石は北海道といったところか、田舎らしく土地が無駄に余っている。
「はぁ……とりあえず、たでーまっとな」
久しぶりに見た実家を見て俺はそう独りごちた。
まだ玄関に足を踏み入れたわけでもないんだがな、どうも様変わりをしていない家を見て思わず帰宅の挨拶をしてしまった。
(……ま、帰ったらまず親父と母さんにテイオーを紹介してやらねぇとな)
そんなことを脳裏で考えて、俺はタクシーの助手席から降車した。
そして荷物を持ち、3人で宿泊所兼俺の実家へと足を進める。
思えば2年ぶりの帰省……にはなるのか。
まあなんだ、色々あったことだし思い出話には事欠かない。
帰省ついでだ。ウィングとテイオーも交えて、俺の家族と雑談祭りでもしようかね。
他ウマ娘との絡みもっと欲しい?
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くれ
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いらん
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どうでもいいからイチャイチャ見せろ